「これ以上は少しキツイ。魔力を温存するから、ボスにつくまでの間は休ませてもらう事にする。その間は頼むぜ」
魔力を消費し、結晶が白いフランの翼のような翼を消した魔理沙は、俺達にそう告げた。確かに多少は無理をしていそうだったが、先程の大量の埴輪との交戦で更に消費を早めていたらしい。
普段の魔理沙だったら、多少無理してでも維持しそうなものだが、もう少しでボスかもしれないということで慎重になっていると見える。
「そのままずっと休んでて良いわ、私がこの異変終わらせちゃうから」
「そうはさせないからな!」
「ふふん、どうだかね」
霊夢は、そうやって相変わらず軽口を叩くが、本当は魔力が回復する事など見抜いているのだ。本心からそのつもりだったらゆっくり飛ぶ必要は無いし、寧ろ魔力不足の魔理沙に合わせて速度を落とす必要も無い。
「やっぱり、翼の出しっぱなしはキツイのか?」
「そりゃキツイ。お前が暴走しっぱなしだったらどうなる?身体にガタくるだろ。そんな感じだ」
「成程ね。でも強そうなヤツ倒したし、そろそろボスのとこだと思うんだけどなぁ…。もう、その霊長園とやらに到着する─────」
ガチャガチャ、チャキチャキと。陶器の欠片がぶつかり合うような耳障りな音が聞こえてきた。漸く霊長園に到着した俺達を迎えたのは、先程の埴輪を遥かに超えるであろう大量の埴輪だった。
「何でこうもしつこいのかなぁぁぁ…!魔理沙が動けない今、こりゃあ厄介だな…クソぉ…ッ!」
立体機動装置のアンカーを射出し大きな埴輪に斬り掛かろうとしたが、その埴輪軍団の中から、あのおかっぱ埴輪少女が出てきたので、引き金を引く指を止めた。
四肢欠損、頭部半壊。しかも、時間経過と共にカラカラと崩れてきている。そんな見るも無惨な姿になっても尚、こうして歯向かってくるとは。彼女にもきっと、守りたいものがあるのだろう。だからといって、こちらとて「はいそうですか」と譲れるものでは無い。
「生身の妖怪がこんなに強い生き物だなんて…!夢のような現実だわ!」
「またあんたなの!?もうやめなさい!これ以上抵抗しても無駄よ、さっきのでわかったでしょ!完全に崩れる前に、ボスを連れてきなさい!」
「ええい、五月蝿い!私は私のすべき事をする!ただそれだけだ!例えこの身が打ち砕かれようと使命を果たせるのならば本望ッッ!!!」
「あっそ…。最後通牒は出したからね。…妖夢、エスカルゴ!さっさと突破するわよ、早めに勝負つけなさい!」
「了解っ!」
「はいよ、任せな!」
「先程は不意討ちを喰らった…。だがもう先程のようにはいかない!埴輪『熟練騎馬兵埴輪』!」
「魔理沙!あんたは回避に専念しなさいよね!」
「わかってるさ、早く終わらせてくれ!」
後方支援は霊夢に任せ、俺と妖夢で二手に別れ左右から斬り込む。少女埴輪はやはり矢のような弾幕を全方位に放ってくるので、それを避けつつ埴輪伝いに接近していく。
立体機動装置での移動なので動きは直線的だ。しかしそれでも、変に自分で動いて当たるよりはまだマシだ。それに、埴輪も更に数を増したので弾幕の密度が濃い。
フランが遊びで放つスターボウブレイク並だ。
弾の大きさがまばらなので、体感ではそれより難しく感じてしまう。
加えて、弾幕を放つ埴輪は先程のと違って移動してくる。流石は「騎馬兵埴輪」だ。
一旦打上げられ、降ってくる様な鋭い放物線を描く黄色い弾幕は、隙間が無い程連なっていて、多く迂回するしか回避する術が無い。しかし回避した先は彼女の矢が降ってくる。何が何でも力で守りきる、という固い意思を感じる。
「断迷剣『迷津慈航斬』ッッ!!!」
「小癪な…ッ!」
やはり妖夢は凄い。俺が剣などを強化して漸く斬れる埴輪を、野菜を斬るかのようにスパスパと軽く斬り刻んでいく。剣を扱うレベルが違う。
「…消すかな。魔術『
俺より圧倒的格下の外敵を消す魔法だ。範囲、消せる敵の強度などは消費する魔力によって調整可能となっている。今回は、先程の魔法で大量に消費していたとあって、雑魚の埴輪を消す程度の効力しか発揮できなかったがこれで十分だ。次でこの勝負に決着がつく。
「…な……に…………?何が…起こった……?」
1人だけ残された少女は、キョロキョロ辺りを見回す。その度に頭部は音を立てて崩れていく。しかし本人は、そんな事はまるで意に介してない様子だ。
「ちっ……。埴輪『不敗の無尽兵団』!!……?どうした、何故皆が集まってこない…!?」
「戦わずして負けたようだな、不敗の無尽兵団」
「…!バカにするな!」
「奴隷系のスペル使い過ぎだぞ、埴輪女子。またそういうスペル使うだろうと思ったから…近くに居る埴輪を全て消させてもらった」
「なっ…全てだと…!?嘘だ、そんな事は無い!我らは無敗の埴輪兵団!無敵なんだッ!!そして私は、無敵の埴輪兵長、杖刀偶磨弓!!例え敵が生身の妖怪だろうと、この身体が砕けようとも、我が忠誠心だけは決して砕けはしない!!!」
自分にそう言い聞かせ奮い立たせているように見えてきた。現実を認めたくない、もしくは直視したくないという考えが彼女にそうさせているのだろう。
「今回は俺がキメるぞ、霊夢」
「ハイハイ、好きにすれば」
「……雷極『夢想封印─反魂蝶─』!!」
虹色(黄色が多め)の霊力弾+電力弾に幽々子さんがよく使う蝶の弾幕も混ぜ、彼女に集中的に浴びせる。これはどれもホーミングなので、先に埴輪などを消しておかなければそちらにも無駄に弾幕がいくのだ。つまり
◆
「気持ち悪いところねぇ。お目当ての敵は何処に居るの?私に取り憑いているオオワシ霊さん」
(……これがあの霊長園の内部か………。人工物ばかりになって……。美しい自然は何処に!)
魔理沙も妖夢もそれぞれ自分に取り憑いている霊に話し掛けるが、彼らはだんまりだった。ただ取り憑かれている3人曰く、怒りの感情が流れてきたそうだ。
彼ら動物霊にも、思うところはあると見える。
そう納得していると、彫刻刀を何本も持った、作業服と思しき格好の少女が前から飛んできた。頭には緑の頭巾を被っていて、頭巾の中ではあの埴輪女子のようにお団子にしているのか、二つの出っ張りがある。
「来客とは珍しい。もう私達に敵う者等いないと悲しんでいたのに……」
「出てきたか。畜生の理を破りし破壊神!埴安神桂姫!お前の天下はもう終わりだ!」
霊夢に取り憑いたオオワシ霊は、霊夢の身体を借りてそう叫ぶ。どうやら、かなり頭に来ているらしい。俺は彼女…埴安神袿姫がこの畜生界にて何をしたのかは知らない。しかし、あんなに怒るという事はそれなりに酷い事をしたに違いない。
「破壊神だって?酷いわねぇ。この食うか食われるかの畜生界で、私ほど物を生み出している者もいないわよ」
「あのー、えっと。貴方は何者なの?」
「へっ?つい今さっきは、私を知っているような素振りを……って、もしかしてお前、妖怪!?」
「そう、妖怪よ。動物霊達を退治しようと思っていたら、こんなところまで来ちゃった」
「貴方は黙ってて!今は目の前の邪神を倒すチャンスなんだぞ。今だけは、このオオワシ様が博麗霊夢になる!」
「あ゙?」
「ひぃっ!?な、なんだ急に!?」
「てめぇは霊夢には成れねぇよ余計なことすんなぶっ殺すぞ。自分でどれ程アホな事言ってんのかわかってんのか?」
「わ…分かった、大人しくしてる…」
最大限に殺気を放って、出来る限り凄みながらオオワシ霊を意気消沈させる。博麗霊夢になる?畜生如きが?そんなことは許されない。絶対に。例え霊夢が許しても俺が許さない。霊夢の身体は霊夢のもの、しかし俺のものだ。
「成程…。取り憑いて妖怪をここまで連れてきたのか。だけど、何も知らない愚かな妖怪を騙して連れてきて、それで一体何になると思ってるの?オオワシ霊さん」
「……」
「お前は剛欲同盟だっけ?プライドだけ高くて、実力は他に劣る事で有名な……」
「ふ、ふん、しかしお前を倒せば畜生界一の座を奪えるさ。生身の人間や妖怪が苦手だと聞いた!さあ、勝負しろ!」
「他は鬼傑組のカワウソ霊、勁牙組のオオカミ霊かしら。どうやら私を倒す為だけに、手を組んだらしいわね。…面白いわ」
「何が面白いだって?」
「ふっふっふ。妖怪達よ。動物霊に騙されるな」
「「「えっ?」」」
「………」
霊夢、魔理沙、妖夢は、揃って素っ頓狂な声を出すが、俺は黙って彼女の声に耳を傾けている。どこか胡散臭い。紫さんほどではないが、何故か心の底からは信用ならないような…。第六感にも似た、妙な感覚を覚えていた。
「私は畜生どもから人間霊を守る
「「「……!?」」」
「騙されるでないぞ、巫女よ。こいつは、人間の味方なんかじゃない。自分を喚び出した人間霊を破滅に追い込んだ邪神だぞ!だから早く…」
(……生身の妖怪を恐れない!?吉弔様ー!話が違うじゃないのー!)
オオワシ霊は、霊夢を説得しようと出てくる。しかし俺が睨みを利かせると、言葉途中で静かになってしまった。一方、中身のカワウソ霊なのか素の魔理沙なのか…何故だかかなり驚き、そして焦っている様子だ。理由は分からないものの目に見えて焦り始めている。
「う、うう……何か面倒な事に巻き込まれているような。けどお前からは邪悪なオーラが見える!取り敢えず倒してから考える!」
「そう、勘が鈍いのね。今なら見逃してあげると言っているのに、それに気が付かないなんて…。しかたがない。しかたがないねぇ……」
「敵じゃないなら倒さなくてもいいのかな…?」
「騙されるな、冥界の剣士よ。こいつは、自然の摂理を破壊する邪神だ!こいつは動物の敵であり人間の敵、妖怪の敵だぞ!」
「や、やっぱりそうよねぇ…。ここまで来たら、動物霊を信じないとおかしくなっちゃう」
「オオカミが本当のことを言っていると思う?」
「そ、そりゃそうね…。オオカミ霊!もう騙されないぞ!」
「この優柔不断ヤロー!あいつが敵だー!」
俺は一体、何故妖夢の漫才を見ているのか…。俺が言うのもアレだが優柔不断にもほどがある。これはオオカミ霊だってキレてしまうだろう。
「ほんと、優柔不断なのは損よねぇ。きっと一生後悔するわ……」
「ま、まずい!時間をかけすぎたぞっ!こいつの造形術が来る!
「えっ?ちょっ、オオワシ霊!?」
「カワウソ霊まで逃げろって言ってるな…。まだ力も回復しきってないし、少し休みたいのは山々なんだが……どうする、霊夢?」
「ッ…一旦退くわ!これは戦略的撤退よ!(主力の魔理沙がこれじゃ仕方ないかもしれないわね…。まぁ次はエスカルゴのスキマで来れるし、大丈夫だとは思うんだけど…)」
「策を縛ってきて敵前逃亡とは!愚の骨頂だな。神域を冒して乗り込んできておいて逃げられると思うなよ?肉のお前を滅し、土と水で美しく造り直してやる! お前は一点の瑕もなき
威風堂々と言い放ち、埴安神袿姫は弾幕を発射し始める。真ん丸の大きめの弾を小さな星型弾幕で囲い、大きな1つの弾幕としている。それを360°全方位に放ち、攻撃を仕掛けてくる。
「エスカルゴ、早くして!!このまま逃げたって追い付かれるのがオチよ!」
「分かった、皆掴まれ!博麗神社に
霊夢と妖夢はすぐ俺に掴まるが、魔理沙は少し躊躇った様子だったので、彼女の持っている箒を掴んで、母さんから貰った異世界間往来の能力を使った。
「なっ……消えただと…?この私から逃げ遂せるなんて…中々の力の持ち主のようね……!ふふ、これは久々に楽しくなりそうね…♪」
「ふぅ…。ちょっとオオワシ霊?一体、どういうつもり?折角終わりが見えてきたっていうのに」
「済まない…だがアレは巫女達がやられていた。ほぼ…確実に。いや見くびっている訳では無い。だがそれほどまでに袿姫の力は強いのだ……」
「じゃー私達はどうすりゃ良いんだよ…。なぁ、カワウソ霊?」
「あっ…吉弔様…ッ!!」
「「「──────ッッ!!!」」」
縁側を見ると、先程「エリスと似てる」という印象を抱いた少女が座っていた。逃げられた安堵から、周囲への警戒を怠っていた。
「あんた、どうしてここに…」
「折角ですからね、あなたの帰還を待っていたのですよ。…ですがどうやら、あの邪神の方が一枚上手だったようですね。残念ですが敗北者に用はありません。それでは……」
指を銃のような形にし、それを霊夢に向けた。彼女から静かな殺気を感じ取った俺は、迷わずに霊夢と彼女の間に割って入る。
「待てよ」
「何か?」
「今はちょっと、力を消費しすぎていただけだ。力が回復したら、すぐに向かうつもりだ。だからもう一回行かせろ。いや止められても行くがな。途中放棄はポリシーに反する」
指を向けられたままで数秒間睨み合う。折れるつもりが無いことを悟ると小さく溜め息をつき、俺に向けていた指を下ろした。
「…分かりました。そういうことなら。だがもう失敗は許されないよ。お前達の代わりなんて幾らでも居るんだ」
「フン、言ってろ。…先に行ってるぞ霊夢、すぐ追い付いてね。じゃ」
「えっちょ、どうやってそっちに行けって……」
確かに、俺という移動手段が居なければ此方に来れないかもしれないとは思ったが、魔理沙なら何か魔法を作ってるだろうと勝手に判断し、俺は再び畜生界…霊長園へと向かった。
俺としては、磨弓は袿姫によって作り替えられた元人間という説を推してます。その根拠ですが、生粋の埴輪が「夢のよう」とか言うなんて、少し考えにくいと思うんですよね。
埴輪って夢見るの?いや、恐らく無いでしょう。袿姫は作り替える事が可能ですから磨弓を埴輪に作り替えたのではないでしょうか。
磨弓が望んだのか、無理矢理なのか…。どちらもありえそうなんですよね。
秋季例大祭、凄く楽しかったです。沢山の方々の優しさに触れた2日間でした。(前日を含めて)
それから私事ですがリアルでも彼女できました。
ワァ───ヽ(*゚∀゚*)ノ───イ
少しはエスカルゴみたいに押せるようになったと思います。まぁ即エッチなんてエロ本的展開にはなってませんがこれが普通ですよね。………ね?
台風19号、凄いですね。19だけに、逝くレベルの強さなんでしょうか。いやそんな事言ってられる状況じゃなさそうですね。まず規模がヤバいですよね…。皆さん、くれぐれもお気を付けて。
それではまた。