「線形『リニアクリーチャー』!!」
「ッ……!!」
規則正しく並んだ小さい弾幕に加え、貫通力のある細いレーザーを、複数の方向から放つ袿姫。3または4方向からのレーザーでこちらの動きを制限してくる。まるで永琳のような攻撃だ。神や神要素を持つ者はみんなこんな攻撃をするのかと思ったが、幻想郷にいる大多数の神々はそうでもなかった事を思い出した。
もしや早苗の九字刺しは、いつか早苗が強大な力を持つ神になるという伏線なのでは?…などと今考えたところで、意味は無いだろう。とにかく今は袿姫との戦闘に集中しなければ。
「これも相殺できないなら…ッ!」
少しは相殺出来ているが、一瞬途絶えるだけでほぼ意味を成さないのが現状だ。かの布都御魂剣と言えど、一瞬で過ぎ去るレーザーを全て斬る事など不可能だ。
なので俺は、
そしてそのまま、袿姫へと突撃する。こちらの間合いに入れば彼女の「意識」を断つ。神の剣の力で、早々に決着をつけたい。
「へぇ、そうきたか…特攻、ねぇ…」
結界には早くもピシピシとクモの巣状にヒビが広がり始める。だがそれも当然だ、俺が現在強化しているのは雷の能力の方であって、霊力の方は素のままなのだから。そもそも霊力の方は霊夢の助け無しでは強化なんて出来ない。
「これならどう?」
ダメ押しとばかりに新たに弾幕を放った袿姫。度重なるレーザーによって脆くなっていた結界はこの一撃によって砕け散ってしまう。こうも早く結界が壊れたのは、先程の戦いで夢想封印を使用して霊力を消費していたからだ。先を見据えて、霊力はとっておくべきだったと今更後悔しても、時既に遅しである。
「コレでトドメよ!」
こちらの動きを制限するように放っていた筈のレーザーだったが、袿姫がそう言うと俺を狙って向かってきた。
回避しようとしても今更間に合うわけがない。斬撃を放てど、そんなのは無駄に決まっている。アーマーは…結界以下の防御力で防げる筈無い。
コンマ数秒後には、レーザーによる集中砲火を浴びて地面に墜落するだろう。そう予感した瞬間頭の中に直接、諏訪子の声が聞こえてきた。
《ふっふっふ…!久しぶりに、私の力を貸す時が来たようだね!防御は出来ないけど敵弾の到達を遅らせるくらいは出来るから、その隙に回避して攻撃を叩き込むんだよっ!!》
次の瞬間、俺の全身を水が包んだ。半径が10m程度の大きな水の球体の中心に、浮かんでいる。そこについにレーザーが突っ込んでくる。するとどうだろう。
なんと、レーザーの進みが遅くなったのだ。
《さ、その隙に回避するんだよ!》
《サンキュー諏訪子、助かった!》
光は、水中だと遅くなる。周知の事実である。レーザーは光ではないものの、水の抵抗によって進みが遅くなることは理に適っている。諏訪子はそれに気付き、そして力を貸してくれた。
水の球体の上部から脱出し、再び斬りかかる。
《お礼は勿論…分かってるね?》
《はいよ》
「面白い、武甕槌命とは違う神の力を使ったか!嗚呼、お前は一体どれだけの力を持っているの?これ程までに退屈しなかったのは久方ぶりだ!!さぁ、もっと力を見せてくれっ!埴輪『アイドルクリーチャー』!!」
しまった、と思った。同時に後悔した。まさか袿姫までも埴輪を使用してくるなんて。しかも、サイズが大きい埴輪ばかりだ。立体機動装置は、先程スキマに収納したばかり。もう一度装備する時間なんて、あるはずがなかった。
「こうなったらもう、全部纏めて破壊してやる!紅武器『
ガリッと手を噛み千切って流血させて、それに魔力を込めて全力で投擲する。今回は、俺の元に帰ってくるような仕様にしたので埴輪を破壊した後はブーメランの如き軌道を描いて戻ってくる。
しかしそんな事をしている間にも埴輪は徐々に数を増していくばかり。もっと一気に破壊せねば大勢の埴輪からの集中攻撃を浴びることになってしまう。
それでなくとも、多数の黄色い弾幕と放射状に広がる水色の矢の弾幕に苦しめられてるのに。
「魔術『
布都御魂剣を一旦格納して、残り少ない魔力を掻き集めて自爆する。霊夢の前だと、彼女に何を言われるか分からないので行わないものの、1人なら自爆し放題である。威力は小さかったが埴輪くらいなら一掃できた。
「じ、自爆だって…?そんな馬鹿な…何で…」
見るからに狼狽えている袿姫の背後で、新しい肉体を構築して復活する。彼女の背中に手を翳し雷撃を放とうとしたその時、気配で察したらしい袿姫は、咄嗟に振り向いた。
「驚いた。まさか復活できるなんてねぇ。気配が完全に消えたから、死んだものと思っていたよ」
などと軽口を叩いているが、付け入る隙が全く見当たらない。布都御魂剣を再召喚したはいいが反撃の手立てが思い付かない。こんなことなら、多少のリスクを背負ってでも、袿姫から提案した神遊びにしておいた方が良かったかもしれない。
埴輪からの弾幕に加えて袿姫自身からの紫色の弾幕が合わさり、更に密度が増している。自爆にあまり意味が無いなんて悔しい。
魔力も霊力もリセットされたのである意味では意味のある行動だと言えるが…。
「こうなったら…!創符『岩石落とし』!!」
上空に岩石を多数
「あークソ、もう魔理沙達喚んじまおっかn…」
「待たせたな!!」
そんな勇ましい声と共に魔理沙が現れた。勿論霊夢と妖夢も一緒である。
「あら、タイムアップね。予想よりも早い登場にビックリしちゃったわ」
律儀にも一旦は弾幕の発射を止めた袿姫。だが埴輪はそのままだ。…いつ牙を剥くかわからないので、油断は禁物である。霊夢達と話すにしても袿姫から目を離すわけにはいかないだろう。
「時間稼ぎはしたぜ、霊夢。4枚くらいスペカも使わせたしな。さっきはキス出来なかったから、今度こそ褒めてくれよな?」
「はいはい。分かったから、まずは目の前の敵に集中しなさいよ。…ていうかまた埴輪?嫌ねぇ、今日はこればっかりかしら」
「……斬る!!」
「おー頑張れー、私は奴を直接叩くから、周囲の埴輪を片付けておいてくれると助かるぜ」
「やろ、エスカルゴ!あの埴輪を…斬る!!」
「いいや、妖夢も奴を叩いててくれ。俺は今回、サポートに徹するよ。…融解『森羅万焦』!!」
そう言って俺は「融解『地上の人工太陽』」の上位互換と言えるであろうスペルを発動させた。
力量はあっても、出力が無いのが俺の欠点だ。ならば神の力でそれを補助してやればいい。その結果、火球は大きく熱く、稲妻は太く速く成長しある程度は欠点を克服する事が出来た。
…魔理沙や美鈴の本気の出力はもう少し上だと思うが、それでも対抗出来る程度にはなった、と自信を持って言えるくらいには成長した。
「暑い…暑すぎる!ちょっとエスカルゴ、火の玉大きくしすぎよ!少しは加減ってのを考えなさいよね!吸血鬼はこういうの苦手なんだからね!?あんたも吸血鬼なら分かるでしょ!」
「そうか?私は暑いの感じないけどな」
「魔理沙は魔法使いだからでしょ…いいなぁ…。私は半分人間だから普通に暑く感じるよ…」
巨大な火球の下、汗を流しながら霊夢と妖夢がそう苦言を呈す。直径15mほどの巨大な火球だ、距離は離れていても熱波はそれなりに伝わるし、暑く感じるのも仕方ない。今の俺だって、流れる汗が止まらない。俺達の身体能力も一定時間低下する事を考えれば、ある意味諸刃の剣と言える。
「この出鱈目な力…ホント武甕槌命にそっくり。でもこのままだと霊長園がまずいわねぇ…」
「喰らえェッ!ウオオオォオオオオオッ!!!」
「まずいッ…『鬼形造形術』!!」
横長に広がる赤い弾幕、更に斜め45°に重なる2つの正方形の様な模様を描く青い弾幕が放たれ火球を受け止めた。火球は弾幕を消しているが、それでも中々前には進ませてくれない。
横に広がっているのが、微妙ながらも足止めの役割を果たしているらしい。それに加え、先程のスペルで生み出した埴輪達も火球に突っ込ませ、少しでも威力を落とそうとしてくる。
「助太刀するぜエスカルゴ!!魔砲『ファイナルスパーク』!!!」
「待て魔理沙、それだと火球ぶっ壊さねーか!?
…あぁ、遅かったか……」
魔理沙の放つ光線は、火球を貫いて袿姫へと…向かうことは無かった。俺の予想に反し、なんと光線は火球を押し始めた。魔理沙はこうなるのを分かっていたらしく、俺が驚愕の視線を向けると口角をクイッと上げてドヤ顔を見せてくれた。
「霊夢と妖夢はトドメの準備をしててくれ!この勝負、時間が経つと俺らが不利にしかならねぇ!アイツは神、何をしてくるか分からねぇ!だから早々に勝負を畳む必要がある!」
「そんな事、アンタに言われなくてもわかってるから!準備整えなさい妖夢!」
「え、う、うん…でも…」
「何よ、煮え切らない態度ね?」
「どうせなら全員でぶちのめしたいなぁって……思ったんだけど…。ダメ、かなぁ…?」
「そんなの私に言わないでよ、指示してきたあのバカ本人に言いなさいよ。…エスカルゴ、今の話聞いてた?妖夢は皆でやりたいそうよ?異変解決最中だっていうのに、真剣味が無いわねぇ」
「その方が確実に倒せるじゃんっ!」
「ハイハイ、そういう建前ね。…で、どうなのよエスカルゴ?早く答えてあげたらどう?」
「霊夢もホントはそうしたいんだろ?でなきゃ、わざわざ妖夢とエスカルゴの間に首突っ込まないだろ、本人に聞こえてないわけないんだからさ。ほらエスカルゴ、力むのもいいが答えてやれよ」
「…わぁったよ、そうしよーぜ。だけどそれは、この火球を押し切った直後にやるんだぞ。霊夢と妖夢にトドメを任せたのも、間髪入れずに攻撃を仕掛ける為なんだから。まぁつまり…全員の息を合わせなきゃならねぇって事だけど」
「問題無いわ。私は合わせられる自信あるけど。妖夢は大丈夫?一人で突っ走るのはダメよ」
「それ霊夢じゃん!私は大丈夫だから!」
「決まりだな!よォし、そうと決まったらすぐにコイツ押し返してやろうぜ!!」
「オーケー魔理沙!『真・
布都御魂剣から、出力も威力も上がった極太な光線を放つ。それは魔理沙のファイナルスパークと混ざり合い、うっかり火球を貫いてしまった。
「うッッ……あああぁぁあぁっっ!!!」
苦しそうな悲鳴を上げる袿姫。しかし、攻撃の手を緩めたりはしない。予定通り、四人全員でのスペルを叩き込み、この戦いを終わりにする。
「もう少しだけ力貸して下さい、幽々子さん…!雷極『夢想封印─反魂蝶─』!!」
「いくわよ!『夢想天生』!!」
「魔砲『ファイナルマスタースパーク』ッ!!」
「魂魄『幽明求聞持聡明の法』!!」
「…ちょっと待ってよ……そんなのオーバーキル過ぎでしょ─────!!」
眩いばかりの光、弾幕を全身に浴びた袿姫は、遥か彼方へと吹き飛ばされた。吸血鬼の視力でも視認できないほどだったが、霊長園の人間霊達が袿姫の元に集まって行ったらしく、それを知った妖夢の案内で、彼女の所へ向かうことが出来た。
「イタタタ…酷い集中攻撃だったわねぇ…。服がボロボロになっちゃったじゃないの」
「服なんてどうでもいいわ。あんたが余計な事をしなければこうならなかったのよ」
「ははぁ…もしかしてあなた達、鬼傑組の吉弔に良いように使われたね?それなら仕方ないかー。そっかそっか…やっぱり愚かだねぇ…」
「何が言いたいんだよ?そこはハッキリ言えよ」
流石オオカミ魔理沙、気性が荒くなっているし短気になっている。あまり友達にはなりたくないタイプだ。…尤も、異変も解決したのでもう少しで離れてくれるとは思うが。
「ふふ、きっとすぐに分かるわ。それじゃ、暫く大人しくしてるわね。…ねぇ、男の吸血鬼さん」
「…何?」
「あなたはどこの組の回し者?」
「どこでもない。俺はフリーランスだから」
「あなたには…人間霊が取り憑いているのよね。霊長園の人間霊ではないようだからあなた本人がどこかの組の者かと思ったけれど……ふぅん…。どこにも属していない強者…ね。あなた……私と組んでみない?……なーんて誘っても、アッサリ断られるのがオチよね」
「…?何が言いたいのさ」
「ううん、何も。ただ、あなた面白そうだから、力を貸す代わりに仲良くしてほしいなと思って。どうかしら。あなたにとっても私にとっても特に悪い条件ではないと思うけれど」
「俺は良いけど…どうする?霊夢」
(そこ巫女に許可とる…?子供じゃないんだから自分で判断しなさいよ!)
「良いんじゃないの?…何か変なコト企んでいるワケじゃないわよね?袿姫?」
「え、ええ勿論!それは大丈夫よ!」
「じゃ、いいわ。好きになさい」
「はーい。…改めて宜しく、袿姫」
「こちらこそ宜しくね。えっと…エスカルゴ君で良いかしら?」
「うん、それでいいよ」
(無理無理無理……!この子とだけは絶対に敵対してはいけないわ…!勝てるとか勝てないとか、そういう問題じゃない…。勝てるけれど、普通に敵に回したくないタイプの奴…。力を振るうのに何の躊躇いもない、ああいう奴が一番敵としては厄介な奴なのよ……様々な神の力を一身に受けているくせに少しは力を扱えているのが更に危険…これも神の器である所以、なのかしらね…。磨弓にも、吸血鬼の彼とは絶対に敵対しないように、執拗いくらいによく言い聞かせておかないと…。まさか今の地上に、
…その後、磨弓の帰りが遅い事を不審に思った袿姫は、霊長園の中を探し回った。するとすぐにほぼ全身を破壊された磨弓を発見し、彼女はより一層その思いを強固なものとした。
サラッと進撃ネタを捩じ込んでいくゥw
どこの事だか分かったらマジで凄いと思います。
今回の「夢想天生」、カワウソ霊の効果で3倍になってます。非想天則の「夢想天生」が3倍…。非想天則プレーヤーなら、その凶悪さがよぉーく分かると思います。マジでオーバーキルです(笑)
非想天則で早苗が諏訪子を召喚すると水の球体に居る諏訪子が出てくるんですよね。今回のネタはそのワザから取りました。因みに、神奈子を召喚すると背後に現れてスタンド攻撃…じゃなくて、体当たりみたいな攻撃をしてくれます。
…確かそうだったよね?
次に早鬼編を書いて、過去編のを書いてから次に進む予定です。気長にお待ち下さい。最近色々とリアルが忙しすぎて…。
それと今回、何人かはスペル全部は使わせてないですよね。つまりそういう事です。