※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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Aブロック予選(前半)

「…皆!この度は地底闘技場最大トーナメントにエントリーしてくれて本当に有難う!」

 

 にとりがマイクを渡そうとするが勇儀はそれを手で制止し、地声のみで挨拶及び説明を始めた。勇儀の隣に居たにとりは、彼女のあまりの声量に耳を押さえて、急いでその場から退散した。

 

「主催の星熊勇儀だ!宜しく!じゃあ、堅苦しい挨拶は抜きにして、私の方から手短に、ルールの説明をさせてもらうぞ!違反者は失格になるから皆よく聞くんだぞ!!」

 

 会場中の観客達も、耳を塞いでみたり、または肩を竦めたりして、声の大きさに辟易している。俺も、内容を聞き取れる程度には耳を軽く塞いで耳を保護している。そうでなければまずい。

 

 一、決闘方法は、基本的に弾幕格闘

 一、格闘のみ、弾幕のみでも可

 一、スペルカードは一試合につき三枚まで

 一、殺してはいけない

 一、不老不死者でも殺してはいけない

 一、自爆攻撃は可

 一、殺したら失格、死亡者は蘇生の後に不戦勝

 一、相手を戦闘不能に追い込んだ者の勝利

 一、降参、棄権アリ

 

…の九つだ!以上ッッ!!」

 

 最後の一言だけ余計に大きい。全く、そこまで強調しなくてもいいだろうに…と思っていると、会場中から歓声と拍手が沸き起こった。

 自爆攻撃可という事は、自殺はOKだが他殺はNOという事だろう。それなら俺や妹紅は好きに自爆できる。

 これから始まる予選の方法は、極めて簡単だ。クジに当選できた64人がそれぞれ一度ずつ戦う。そこから勝利した32人だけが本戦へ進めるのだ。

 64人は半分の32人になって、そこからは8人で1組のブロック毎にトーナメントを行い、勝者を1人選出する。

 ブロックは4つある。つまり、その4人が決勝トーナメントへと駒を進められるというワケだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地底闘技場最大トーナメント予選が始まった。

 まずはAブロック、そしてクジの番号が小さい順からのスタートだ。俺は観客席からその様子を見守っている。何か仕組まれてるのかと思う程、Aブロックには妖精が多い。

 

 

┏┻┓ ┏┻┓ ┏┻┓ ┏┻┓

大 リ チ サ ク ル ス 磨

妖 リ ル ニ ラ ナ タ 弓

精 ┃ ノ ┃ ピ チ ┃

 

 

┏┻┓ ┏┻┓ ┏┻┓ ┏┻┓

紅 霊 ロ 神 ア 袿 パ 魔

美 夢 リ 綺 リ 姫 チ 理

鈴   ス   ス   ェ 沙

 

 Aブロック本戦は、この16人の中から出る勝者8人によるトーナメント戦だ。前半の緩さからは想像も出来ないほど、後半戦は激しい戦いになりそうだ。

 俺以外の観客達も同じように思っているのか、今はあまり緊張感が見られない

 いつもの流れからすると、霊夢がAブロックの勝者となるのだろうが…チルノでも魔理沙でも、または母さんでも妹でもいいので、誰か、予想を覆してくれる猛者(ブラックホース)が現れないだろうか……。

 

「さァ、いよいよ始まりました!地底闘技場最大トーナメント、Aブロック予選!!まず戦うのはこの2人だァァァッ!!春を告げる幸せな妖精、リリーホワイトッ!!!対するは、氷精チルノの良心的存在で保護者的存在でもある!大妖精こと大ちゃんんんんんッッ!!!」

 

 アナウンスのにとりはノリノリだ。流石毎晩のにとりんレイディオで鍛えられているだけある。そしてにとりの相方は、いつも通りの雛だ。

 

「記念すべき第一試合目ですけれどもね、これは激しいというよりも、我々にとっては微笑ましい戦いになりそうですね~!お2人共、本戦進出を目指して頑張って下さいっ!!」

 

 ワァッと更に湧き上がる会場。そんな雰囲気に気圧されてしまっているのか、2人共俯いて手をモジモジとさせている。

 

「さぁさぁ、お2人共!試合を始めますよー!!それでは…試合、始めィッ!!」

 

 歓声が止んだ。観客の目は闘技場中央の2人に釘付けである。そんな緊張状態の中でまず最初に動いたのは……リリーホワイトだった。

 

「ごめん大ちゃん、私、久しぶりにはしゃぎたい気分なのっ!!」

 

 そう言うと、リリーは青と赤の全体的に…主に横に広く拡散するタイプの弾幕を放った。春では無いので彼女は本調子では無いだろう。しかし、それでもリリーは“今”はしゃぎたいと思っているらしく、その意思がビシバシと伝わってくる。

 難易度的にはハード程度だろうが、大妖精には少しキツイと思われる。チルノとは違い、彼女は訓練などしていない、普通の妖精なのだから。

 

「うっ………ぐっ、うう…っ……ああぁっ!」

 

「ああーっと、これはまずいーっ!!大ちゃん、リリーホワイトの弾幕を連続で被弾しているー!頑張れ大ちゃん、反撃してやるんだー!!」

 

「させないよ、反撃、なんて…!このまま、私が力を使い果たす前に…大ちゃんを、倒…す…っ」

 

「……リリー、ちゃん…!私だって…私だって、ただじゃ負けないんだから…!!」

 

 弾幕を喰らいながらも、何とか空中に飛び出し集中砲火から脱出を果たす大妖精。更に、スペルカードの宣言のように、声高々に叫んだ。

 

「桜の花びらをも燃やし尽くす炎を喰らえっ!」

 

「なっ……!?大ちゃんが、炎なんて…っ!」

 

 観客達がどよめく。大妖精が戦闘する事自体が珍しいが、それ以上に炎の弾幕を放つ事が意外に思えたらしい。

 先程とは一発逆転し、リリーが劣勢に陥る。

 

「いっけえええええ、大ちゃああああんっ!!!トドメ刺しちゃえー!一回休みにさせろー!!」

 

 妖精の言う「一回休み」は死亡と等しいので、それをやると、大妖精は失格になるに違いない。そしてリリーは一回休みになるので、Aブロック本戦の一回戦の一試合目は誰かの不戦勝になる。

 となると、大妖精が本戦に行く為には、やはり正攻法でリリーに勝つしかない。

 

「やだ、負けたくない…!動け、なくたって……私が勝ってやるんだ…っ!刺し違えてでも、私が勝ってみせる!春符『季節外れの春告精』!!」

 

「え────っ!?」

 

 薄桃色の綺麗な弾幕が、風に吹かれて舞い散る桜の花びらのように前方…大妖精の居る方向へと散らばっていく。スペルカードを使うとは微塵も思っていなかった大妖精は防御が遅れて、全身に被弾してしまう。

 力を普段よりも使って疲弊して、尚且つ先程のダメージも残っている大妖精にとって、一撃必殺にも等しいスペルであった。

 

「……ごめんね…チルノ…ちゃん……。負けちゃった…」

 

 最後に小さく呟いた大妖精は空中から落下し、それきり動かなくなった。消えてはいないので、一回休みにはなっていないらしい。意識を失っただけのようなので、じきに目覚めるだろう。

 

「きっ…決まったぁぁぁ!!Aブロック予選第一試合目は、リリーホワイトの勝利だぁぁぁっ!!いやー、最初から激しい試合だったねぇ、雛!」

 

「そうね、まさかリリーがスペルカードを使ってくるとは思わなかったわ…!!本人の力が増す春ではないというのにね…。何だか、温かい季節の力を見せつけられた気分ね!」

 

 そうこう話しているうちに、リリーは観客席へ直接戻っていき、気絶した大妖精の事はチルノが迎えに行き、観客席の空いている席に寝かせた。

 

「そうだね!…じゃあ、二試合目いってみよー!この試合を勝ち上がり、親友の敵を討てるのか!熱き氷の妖精、チルノォォォォ!!」

 

「あたいが勝つぞー!!!」

 

 ステージに戻ったチルノは、元気に叫ぶ。俺は勿論、チルノを応援する。

 

「対するは、光の三妖精の一角、光の屈折ならばお任せ!!サニーミルクだ~~~!!!」

 

「すごいプレッシャー掛けてくるなぁ…」

 

 また妖精同士の戦いである。…尤も、訓練したチルノだったら直ぐに決着を付けてくれる筈だ。絶対にチルノは負けない。チルノ推しの俺がそう考えるのだ、間違いない。もしサニーとの戦いでチルノが負けたなら、俺は今回のトーナメントを棄権する。

 

「それでは第2試合、始めぇぇっ!!」

 

 今度は雛が開始の合図を送る。するとすぐに、チルノが動いた。……いや、2人共動き始めた。

 

「今回もあたいが勝つぞ、サニー!何年か前の、妖精大戦争みたいにな!!」

 

「へんっ、そんな昔のこたァ忘れたね!けど私は負けないよ!!それっ、私を探してみな(・・・・・・・)!」

 

 なんとサニーは、光の屈折を利用し自らの姿を透明にしてしまった。闘技場の明かりさえ利用し相手を翻弄する。流石は妖精だ、自分の身を隠すことには長けているらしい。

 だが、かくれんぼが得意な(・・・・・・・・・)チルノにとっては、大した問題ではなかった。

 

「笑止!そんなのあたいには通じないよ!直ぐに見つけ出してやる!!」

 

 すると、ステージ内に幾つもの氷の柱を作ったチルノ。彼女の狙いが分からず、観客達の殆どは首を傾げる。またバカな妖精が何かやってる、などと嘲笑する者も居た。

 氷の柱でプリズムが発生しているらしく、このステージの各所で虹が発生している。しかしこの氷の柱が、本当はどんな意味を成すのか。彼女の視線を追っている者にだけは、それが分かった。

 

「サニー、危ないっ!!」

 

 スターサファイアが観客席から叫んだ時には、もう遅かった。

 

「……そこだっ!!」

 

「ふぎゃっ!?」

 

 あるタイミングでチルノが弾幕を放つと、姿を隠していたはずのサニーに弾幕がヒットした。

 チルノは、サニーが光の屈折を利用出来る事を知っていたので、光とステージの間に氷を置き、適当にプリズムを発生させて、サニーに都合良く屈折させるのを防いだのだ。

 サニーが屈折させられるのは光であって、氷を通し分散してしまったものは対象外なのである。

 よって、サニーも気付かぬうちに部分的に姿を曝け出す事になり、被弾を招いたのだ。

 

「どっ、どーして私の位置が…!?」

 

「光を曲げるんなら、その邪魔をすればいい!!ただそれだけだからだっ!!トドメだ!!!」

 

 大量の弾幕を浴びせられてしまって、サニーはあっという間に意識を刈り取られてしまった。

 チルノの圧勝だった。

 

「なっ、何という事だ~!バカと揶揄されてきたチルノが、とんでもない頭脳プレイを魅せた!!これは賞賛されるべき事態ですね雛さん!!」

 

「え、で、でも、今のどうして分かったの……?全くわからないんだけど……」

 

「分からない人の為に簡単に説明すると、相手の妖精がやったのは所謂光学迷彩だね!私達河童はこの光学迷彩を利用して姿を隠したりもするよ。だけど光学迷彩には致命的な弱点がある。これは光を利用しているから、逆に敵に光を利用されてしまえば、光学迷彩が不完全になることがある。チルノがやったのはまさにそれだね!!光が氷の柱を通過すると、そこで光は屈折して、サニーの想定とは違う動きをする。きっと、それで能力の使用が不完全になったんじゃないかな!」

 

「えーっと、つまり……屈折込みで考えていたらまだ勝機はあったってこと?」

 

「んー…屈折を利用してたんだとしたらそうなるかもしれない…かな?…いやぁ素晴らしい戦いを魅せてくれました!!リリーに続いて、チルノも本戦出場決定です!!」

 

「おめでとうございまーす!!」

 

「あたい勝ったぞーー!!大ちゃん見てるー!?エスカルゴも見てくれてるー!?後でちゃーんと褒めてよねー!!あたい頑張ったーーっ!!!」

 

 何といじらしいのだ、チルノは。元々、あとで会えたら褒めるつもりだったのだが、あんな事を言われたらますます甘やかしてしまいたくなる。

 

「さぁて、三試合目いきましょー!地獄から来た妖精、しかしたまには乙女っぽいところも…!?友情に厚いぜ、クラウンピースぅぅぅッ!!!」

 

「対するは、サニーと同じく光の三妖精の一角、ドジっ子ルナチャイルドぉぉぉ!!!」

 

「いやぁ~、また妖精同士の対決ですけどもね、先程から熱い戦いばかりですし、今回の戦いにも期待ですね雛さん!!」

 

「そうね!それじゃあ三試合目……始めっ!!」

 

「先手必勝だっ!あたいは勝つ!そんでもって、ご主人様と友人様、エスカルゴに褒めてもらう!さぁルナチャイルド、これを見ろ!!!」

 

「っ…!?」

 

 高々と掲げられた松明。確かあの松明を見ると狂ってしまうんだっただろうか。そんな松明を、ルナチャイルドは直視してしまった。

 刹那、クラウンピースはその能力にて、ルナを狂わせ…というより正気を失わせ、半ば催眠状態にも似た状態に陥らせる。

 

「はっはァ!あたいの勝ちだ!!獄炎『グレイズインフェルノ』ッッ!!!」

 

 ボケーッとした状態であるルナチャイルドが、密度の濃い弾幕を回避出来るはずもなく…。速度自体は遅いが、隙間が極めて狭く、グレイズすら出来ずに被弾する。

 しかしそのおかげで目が覚めたのか、やっと、ルナチャイルドは動き出した。

 

「あっぶな、気絶するところだったわ……!あの松明は見ちゃダメなのよね、すっかり忘れてた…けどもう大丈…ぶぇあっ!?」

 

 コケた。彼女のドジっ子気質がまさかまさかのここで現れてしまった。いつもコケているなとは思っていたが、戦闘中もだとは思わなかった。

 

「今だ!喰らえ、『フェイクアポロ』!!!」

 

「うわわわわ……!!」

 

 三つの巨大な満月が現れた。それらは容赦なくルナチャイルドの身体にぶつかっていき、敢無く気絶まで追い込まれてしまった。

 

「こっ、これは驚いた~!!やってしまったー!ドジっ子ルナチャイルド、まさかまさかのここでドジが発動してしまったかー!!!」

 

「これは痛いミスだったねー……」

 

「はぁ…はぁ…!やったぜっ!ちょっとアレだがあたいの勝ちだー!!」

 

 クラウンピースは、へカーティアと純狐の位置がわかっているのか、二人の居る方向に向かってピースサインを送っている。そして、そちらへと飛び立った。

 

「あらあら、相手の子も惜しかったわねぇ……。ともあれ、お疲れ様、ピース。よく出来たわ♪」

 

「へっへへ~…」

 

 クラウンピース、へカーティアと純狐の子供説無いだろうか。いいや、無いだろう。しかしそう見えてしまうほどに親子っぽく見える。

 

「続きまして四試合目にいきまーす!光の三妖精最後の砦!かくれんぼの鬼はやらせちゃダメよ!スターサファイア~~~っっ!!!」

 

「お相手は、はるばる畜生界からお越しの、埴輪兵団の兵長!杖刀偶磨弓ィィィッ!!!」

 

(袿姫様…必ずや勝利致します…!)

 

 会場中が静まり返る。彼女を知っているのは、畜生界から来た者、そして異変解決に赴いた者達だけなので、それ以外の大多数の者にとっては、初めて見る人物だからだ。

 

「杖刀偶磨弓?畜生界?…聞きなれないね…?」

 

「今回のトーナメントを開催するにあたって、広報活動を手伝ってくれたあの人の知り合いって感じかな。じゃなければ参加出来ない…というか大会の存在すら知らないからね」

 

「相変わらずあの人は顔が広いねぇ。それじゃあ第四試合、始………」

 

「棄権します♪」

 

 挙手して、満面の笑みで宣言するスター。一瞬シンと静まる会場だったが、少し間を置いてまたざわめきだした。特にざわついたのは、雛達だ。

 

「え、と……スターサファイア…さん?棄権は…まぁ出来るんですが、棄権するにあたって理由をお聞かせ願えないでしょうか……??」

 

 ステージに降り立った雛は、スターにマイクを向けて理由を訊ねる。すると意外な事にすんなり答えてくれた。

 

「私が彼女に勝てる可能性がまるで無い。まるで霊夢さんのような強気な威圧を感じたからです。戦う前から勝敗がわかっているので、私は勝ちを彼女に譲ります♪」

 

「…だそうです…。えっと…お相手の磨弓さん…コメントお願いします…」

 

「逃げるな、正々堂々私と戦えッ!…と言いたいところだが、棄権はルールで認められているので彼女を責める事は出来ない…。観客の皆様方も、試合見たさに彼女を責める事は無いよう、私の方からお願いしたい。今回は不戦勝だったが、次に私が出場する暁には、私も観客の皆様も完全燃焼できるような試合をお見せする事をここに誓う」

 

「おお…!素晴らしいです、杖刀偶磨弓さんっ!次の対戦相手の人は棄権しない事を祈りますか!えー、それでは、Aブロック予選第五試合っ!!いってみましょー!!」




大ちゃんって妖精大戦争ではそれなりにヤッベェ弾幕使いますよね。自然の具現化が妖精なのに、何で「自然を焼き尽くす」炎の弾幕を使うの…。
というか、サラッとリリーにオリジナルスペルを使わせてるというね…。少しくらいは原作に近いネーミングになったのではないか…?

スターってこういう所あるよね。サラッとなにかやらかす感じが。そんな感じが出てたらなー、と思います。

予選(64人による32試合)を8話程度に収めて、それからトーナメント本戦突入する予定です…!ブロック毎に誰が準決勝まで行くか等、少し予想してみて下さい(笑)
予選の中でも力を入れて書きたい試合がチラホラありますねぇ…。
磨弓の騎士道精神?みたいなの好きですね。でもこの後は、恥ずかしさのあまりに袿姫に顔合わせできなくなってる。
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