…地底闘技場最大トーナメント予選の二日目。今日は、昨日よりも「異界の住人」が多い。だがどういう訳か、組み合わせを見る限りではあまり幻想郷の住人とはぶつかっていないようだ。
異世界間での対立を避ける為なのか何なのか、厳密な所は俺には分からない。クジで決めた筈…なのだが、公平性をあまり感じない。
まぁ尤も、俺は運営には携わっていないので、あんまり深い事は考えないでおこう。単に、運でこうなったのかもしれないのだから。
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フ 魅 天 衣 ド サ マ こ
ラ 玖 子 玖 レ リ ミ い
ン ミ エ ゾ し
┃ ル ウ
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さ エ 幻 エ ル く 小 カ
と リ 月 リ イ る 町 ル
り ス ┃ ズ み ゴ
「さぁ始まりました、予選二日目!!Cブロック第一試合目は~!?」
「悪魔の妹、しかし魔法少女!密かに魔法を開発してたりするかも!?怒らせたら破壊されるぞ!フランドール・スカーレット~~~!!!」
「そのお相手はこちら!竜宮の使い・永江衣玖の実子にして、一時はあの山の英雄の隠し子だったという情報もあるっっ!!!永江魅玖~っ!!」
「なっ…魅玖だと!?何で魅玖が出てんだ!?」
昨日と同じように鈴仙達と観戦していた俺は、思わず身を乗り出してしまった。末っ子の魅玖が予選に出ているなど、全くの予想外だった。
今日は、昨日とは違って誰と誰が出てくるのかをお楽しみにしようとしていたのだが、やはり、対戦表は確認しておくべきだったと後悔した。
だが闘技場の一角で、同じように身を乗り出す女性が一人。魅玖の母親、衣玖さんだ。どうやら衣玖さんも予想外だったらしい。
「あれ、魅玖ちゃん呼びじゃないの?」
「あぁ、呼んでる内に違和感覚えるようになったから、普通に呼ぶ事にしたんだ。…けど、マジで何で出てんだ…天子には声掛けたけど衣玖さんと魅玖には声掛けてねェ…しかも魅玖なんて、まだ弾幕経験すら浅いってのに……!」
「しかも相手は悪魔の妹…最悪にも程があるわ。お父さんはどうするのかしら?」
「止めたい……ですけど、フランからはあんまり攻撃的な気配を感じない…どうなるんだこれ…。もしこの組み合わせを昨日のうちに知ってたら、心配で夜も眠れなかっただろーな…」
「吸血鬼としてはその方が正しいんだけどね」
「俺ら幻想郷の吸血鬼は、夜も昼も起きてられる体質なんですっ。主に夜に寝るだけで。……てかどうなるんだ…手加減してくれよ、フラン……!フランなら大丈夫だって信じてるからな……!」
「第一試合、始め~っ!!」
祈るような俺の思いを知ってか知らずか、無常にもアナウンスは試合を開始させる。だが二人は全く動かず、ただ見合っているだけだった。
「……あなた、戦えるの?」
「うんっ!みく、たたかえるもんっ!」
「ふーん……じゃア、もシ私に壊されテモ文句言わナいデネ…?」
「ひっ……!」
狂気に歪むフランの表情。それを見て逃げ出す観客も居るが、大多数は戦闘態勢に入る。もしもフランが暴れ出した時にすぐ鎮圧できるように。自分達が殺される可能性すらもあるというのに、やはり幻想郷の住民は優しい。
そして、ドンドン妖気を溢れ出させるフランの目の前にいる魅玖は、へたり込んでしまって全く動けていない様子だ。
「さァ…早く逃げないト食べチャうヨ?あナた…ソレでモいーノ…?」
「やだぁ!たべられたくないっ!うわあああん、おかあさまああああぁっ!!やだぁ!でれない!でれないよおおおお!!たすけておかあさまぁ!おとうさまあああぁっっ!!!」
大声で泣き叫んだ魅玖は、飛ぶ事も忘れて母の衣玖さんの元へと駆けていった。ステージを覆う壁に阻まれ更に号泣するも、俺が向かう前に衣玖さんが舞い降りて魅玖を抱え上げる。
「……ふぅ。全くもー、自分の子供はちゃーんと見てなきゃダメなんだからね?」
「えっ…?」
妖気を収めたフランは何食わぬ顔で衣玖さんにそう忠告する。確かに彼女の言う通りだが…何故衣玖さんが娘から目を離していたからこうなったと分かったのだろう。
「『えっ?』じゃなくて。この子が出たときに、あなたも驚いてたじゃないの。それって、自分の知らない所で勝手にエントリーされていたから…じゃないの?」
「え、えぇ…そうですが…。あなたまさか……」
「ん?ウフフッ、違うよ?戦いたくなかったからじゃないよ?不戦勝してみたかっただけ~♪」
「………」
口ではそう言っているが、きっと、魅玖と戦うことを自分から避けてくれたに違いない。だが、負けるのは嫌だ。だから、脅す事にしたのだ。
思えば、色々と不自然だった。普段は、狂気が表に出るとすぐさま暴れ出した。なのに今は暫く会話が可能だった。つまりフランは狂ったフリをして娘を傷付けない選択をした、という事だ。
「ありがとうございます。…色々と」
「ふふっ、どーいたしましてっ♪」
笑顔で観客席に戻るフラン。他にやり方あったでしょう、とレミリアがフランを問い詰める声が聞こえてくるが、さっきのアレが、きっと最高の方法だったと思う。
魅玖は強情だ。ならば単なる脅しでは屈しないはずだ。となれば、命を脅かす様な事を言えば…先程のようになる。フランはそう読んで、あんな暴挙に出たに違いない。
…とはいえ、溢れ出た妖気、前面に出た狂気は本物と相違なかった。まさか………狂気を完全にコントロール出来るようになったのだろうか…。
「さっ、作戦勝ちだぁぁ!!凶悪な脅しで幼子を無傷で帰らせた!!いや~、並大抵の演技じゃあここまで出来ないよねぇ、雛!!!」
「そうね…私も完全に騙されちゃったわ。すごく怖かったしね……。それじゃーお次は第二試合、いってみましょー!」
第二試合は天子vs衣玖さん。まさかの対決だ。天子は難なく衣玖さんを撃破し、天子が本戦へと進む事になった。…というか衣玖さんは、魅玖がまた変な事をしでかさないか目を離さないようにわざと負けたような気がする。魅玖も懲りているようだし、大丈夫だと思うのだが…。俺は少し、危機感が無いのか?自分でもよく分からない。
第三試合はドレミーvsサリエル。サリエルには声を掛けてないが、試合後に話を聞いてみた所、エリスの誘いで参戦したとの事だった。どうにもおかしい。俺はエリスにも声を掛けていないハズなのだが。…やはり話を盗み聞きされていたか。因みに結果は、サリエルの勝利だった。勝因は、ドレミーがサリエルのような凶悪な弾幕に不慣れだった事にある。
第四試合はマミゾウvsこいし。こちらの決着は言うまでもない。試合開始直後には、マミゾウはこいしによって意識を刈り取られていた。本当に一瞬の出来事で、何が何だか、分からなかった。しかし結果は結果である。アナウンスでこいしの勝利を報じた直後に、帽子を取ってポーズをする彼女が現れた事で改めて彼女の能力の恐ろしさを認識する事になった。
第五試合はさとりvsエリスだ。さとりの能力があれば余裕でエリスの隙を突けると予想していたのだが…現実はそう甘くなかった。エリスが悪魔にして神の力を持っているという事実のヤバさを思い知らされた。
「なによサトリ妖怪、さっきから知った風な口をきいちゃってさァ?私が
「………」
「何か言ったらどーなのよサトリ妖怪ィ?何か、証拠があってそんな言い掛かりを付けてくるの?無かったらアンタ、ただの大バカモノよ?大悪魔エリス様を相手によくそんな事が言えたものね、って感じ~」
「証拠…ですか。ありませんよ?そんなものは。だって心を読んだのですから」
「アハハハッ、やっぱり無いんじゃん!なぁに?私の方が彼と濃密な
「?仰っている意味がわかりません。あなたより私の方が濃密ですし、期間も長いですし、何ならキス以上の事もしていますが。…あぁ、そうか。自分はハグすらしてもらえないからって、嫉妬で私を煽っているのですね。何だかあなたが哀れに思えてきましたよ、大悪魔エリス。…ブフッ……いや失礼、何だか滑稽で滑稽で……プフフッ…」
袖で口元を隠してはいるが、目元にイヤらしい満面の笑みが現れている。隠す気が無いらしい。本心からの笑いなのか、煽る為の笑いなのか…。俺には彼女の心の内は図れないが、何となくだが本心からの笑いに見えてならない。さとりならば或いは…きっと本心から笑うだろう。
「何よ何よ何よ、何なのよアンタは!さっきから腹立つわねェ!!」
「その言葉、一言一句違わず、そのままあなたにお返し致しますね、大悪魔様?」
「キィ~~~ッ!!はっらたつわねぇこの女ァ!ブチのめしてやる!!!」
ステージを破壊するかのような、猛烈な勢いで攻撃を加えていくエリス。煽りに乗ったら、最早勝ち目は無い。さとりを相手に心を乱せばそこを突かれておしまいだ。
現に、弾幕もただ数が多いだけで、がら空きな部分が多数見受けられる。勢いに任せて出鱈目に攻撃しているような感じだ。
「…無駄ですよ。あなたの能力は知っています。負の感情を増幅させるのですよね。ならば、心を無にすれば良いだけのこと」
「言ってくれるじゃないのォ!んな事言っても、そう簡単に心を無に出来る筈がないんだから!」
「出来ますが?読心能力を扱い慣れている者は、己の心のコントロールにも長けていますからね」
「…!?」
「あなたの
どこかで聞いたことのあるスペルを発動させたさとり。土塊やら岩石やらが何も無いところから自然発生し、エリスへと向かっていった。それを見て、すぐにピンと来た。
「あッ……俺と母さんの複合スペルか…!」
そういえば、エリスと戦った時にあのスペルを初めて実戦で使ったのだったか。彼女の発言から察するにエリスにとって少し苦手な弾幕らしい。だがそれも仕方ないだろう、完全なランダム性の弾幕で軌道が読みにくいし、たまにホーミング弾すら混ざってきて、まさに予測不能なのだから。
「哀れなものですね。ただの創造神と吸血鬼だと侮っていたらフルボッコにされて、神の力を待つ大悪魔としてのプライドがズタズタになって…。ちょくちょく陰からちょっかいを出すも、なんやかんやで丸く収まる。さぞ歯痒い思いをしてきたのでしょうねェ。まぁ今の私には、それを嘲笑うことしか出来ないのですが」
「何よ、あんたなんて、嫌われ者のサトリ妖怪のクセに!」
「何を今更…?サトリが嫌われ者なんてそんなの常識では?そのような戯言で私の心を揺さぶれるとでも思っているのですか?」
「とか余裕ぶってるけどォ、実際のところはどうなのかしら!?皆から嫌われてるんでしょう!」
「…そうですね。サトリ妖怪としての宿命です。でも、私には家族が居る。ペットも居る。そして彼も居る。…数は少なくても、彼らから想われていれば、私はそれで満足です」
「あんたが惚れ込んでるその彼だってねェ、心の奥底じゃあんたを毛嫌いしてるわ!心を読まれるなんて、いくらOKしてたって、そんなのは所詮リップサービス!本心から曝け出すはずない!」
「…はぁ。これだから哀れなんですよ、あなた」
「はぁ!?どこがよ!」
「心を読めないクセに、何を知った気になってるのかって言ってんですよ─────!!」
揺さぶりをかけられたエリスは回避行動が更に単調になっていき、ついに、さとりが直接攻勢に転じた。天狗…文にも似た速度でエリス目掛けて直進し、普段の彼女からは考えられない程の力でエリスの腹を殴りつける。
俗に言う腹パンなのだが、スピードと相まって威力が桁違いに上がっているらしい。
「ぐっ……う、くぅ………ッ…カハッ……」
膝をついたエリスは、声にならない声を漏らしながら大きく息をする。そんな彼女に追い討ちをかけるかのように、さとりはエリスの頭を踏み、グリグリと地面に埋め込んでいく。
「誰よりも彼の心を理解しているのは、この世で唯一……この私、古明地さとりだけです」
「このッ……クソ女ぁ…!いつか…殺…す……!絶対にぃぃっ…………」
憎々しげな言葉を呟いたエリスは、それっきり動かなくなった。被弾した際のダメージ、そして言葉責めでの心のダメージが蓄積されて、悪魔の彼女ですら戦闘不能に追い込まれたようだ。
「決まったァァァァ!!えげつないほどの煽り!えげつないほどの物量!そしてえげつないほどの精神攻撃ッッ!!!さしもの大悪魔でも、流石に読心能力者は分が悪いようだー!!」
「さとりが決めるのがもう少し遅ければ、彼女、発狂してた可能性もあるわねー…怖い怖い」
試合後、彼女は真っ直ぐ俺の所へやってきた。そして少し怯えたような表情で話しかけてくる。
「…どうですか?アレが私の本性です。実に醜いでしょう…?今更言われなくても、自分でもよく分かってますけど。…嫌いに…なりましたか?」
「…………………」
「『言葉責め…踏み付け…もしかしてさとりってドSなのかな…?こんな可愛いロリに踏まれたらすぐイッちまうんだろうなぁ……』…ですか…。全くあなたは…ほんっとうにどうしようもなく、救いようがない変態さんですね………♪」
そう言って微笑んだ彼女の目には、うっすらと涙が滲んでいた。
うーん、これは11点のお姉ちゃんかな…。
原作のさとりもクソ素早いですしね…。たまには活躍させたい。(プロットではエリスに勝たせるつもりだった…)
さとりには読心能力をフル活用してクソみたいに煽りまくってほしいです。こいしには、無意識に煽っててほしいですね…。「判る判るー。友達がいないからでしょ?せつなーい」みたいにw
さとりの煽り口調の語尾には「www」をつけたくなっちゃいます。「プークスクスw」とかも。