※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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Aブロック本戦(決勝戦)

「とうとう迎えました、Aブロック決勝戦~!!今回戦うのはコチラの二人だっ!!破竹の勢いで勝ち進み、とうとう地獄の妖精をも打ち倒した、自他共に認める最強の妖精!!チルノ~!!!」

 

「相手はこの方!圧倒的パワーで、対等な勝負が出来そうだと思われた魔法使いを文字通り瞬殺!あれすらも、博麗の巫女としては当然なのか!?博麗霊夢だぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「…あたい、霊夢に勝つ!」

 

「そう、出来るといいわね。ていうか凄いわね、本当にステージ全体が凍ってるじゃない。足元が不安定ね、気を付けないと」

 

「これがあたいの力だ!冬のあたいは強いぞ!!まだ真冬じゃないから、ホントはもっとも~っと強いんだけどな!!」

 

(大人の見た目でいつもの口調…違和感の塊ね)

 

「空中戦を得意とする霊夢が降り立った!これはつまり、チルノの得意な方にノるという事か!?それではAブロック決勝戦、始めェェェッ!!」

 

 チルノは、またすぐに動くだろうと思っていたのだが、どうした事か、様子見しているようだ。あのチルノが作戦を考えてるようで、俺としては嬉しい限りである。

 

「…ッ……」

 

「どうしたの?先手必勝じゃないの?」

 

「いや…ッ!今回は違うッ!」

 

「ああ…作戦ってヤツを考えてるのね。あんたの頭じゃロクな考えが浮かばなそうだけど。まぁ、待っててあげるわ」

 

 すると霊夢は、おもむろに目を閉じて、何やらブツブツと詠唱を始めた。あれはきっと、魔法の類ではない。魔法なら魔理沙や姉ちゃん達が何か反応を見せるはずだ。

 そしてその詠唱を終えた時…。霊夢の気配は、妖怪や悪魔のそれとは比べ物にならないほどに、禍々しい気配となっていた。

 

「博麗霊夢with鍵山雛。フフ、これでもまだ私に勝てると思うかしら?」

 

「えっ?ちょっとどういう事、雛…って居ない!えっ雛、どうしたの!?」

 

「エスカルゴ(あのバカ)とエスカルゴ(バカ)に力を貸す神と違い、普段から私に力を貸してるワケじゃないからね。直接、私に憑依させたわ」

 

「どぅえええええっ!?そんな事できんの!?」

 

 成程。雛は厄神…つまりは神様だ。霊夢なら、雛でも簡単に神降ろしできるだろう。なら近付く戦い方は厳禁だ。きっと、不運な目に遭う筈だ。

 

「だって私巫女だし。…どう、チルノ?かかってきなさ……えっ…?」

 

 霊夢がにとりからチルノに、それからにとりや俺達観客が霊夢からチルノに視線を戻すと、何とそこにチルノの姿は無かった。あるのは、ただの氷像だった。気がついた霊夢は真上を見る…が、そこには何も無かった。

 

「上ばっかじゃバレるだろ!あたいはここだ!!冷符『瞬間冷凍ビーム!』」

 

 消えたと思ったチルノは、普通に霊夢の後ろに居た。何故気が付かなかったのか。それはきっと霊夢や消えた雛に注目しすぎていたからだろう。どこか一点ばかりを見ると、その他のものはよく見えなくなる。

 チルノはその盲点を突いて霊夢の背後に回った。そこでこのスペルだ。

 

「しまった……!」

 

 霊夢は当然ながら回避した。しかしお祓い棒を持つ右手にヒットしている。彼女の手は、棒ごと浅く凍り付いているように見える。まさか霊夢に一撃入れられるとは、思いもよらなかった。

 

「イケるか?チルノの奴、霊夢に勝てんのか!?霊夢がお遊びのつもりなら…イケるのか?なぁ、サグメはどう思う?チルノ、勝てると思うか?」

 

「…どうだろうか。難しい…と思う。いくらこの戦いが遊びだとしても、妖精に負けてあげるほど霊夢は優しくない…。あ、いや、ごめんなさい…

『優しくない』は言い過ぎた…」

 

「…?訂正の必要は無いぞ?」

 

「嫁をバカにされたら怒ると思ったから…」

 

「あぁ…でも霊夢が優しくないのは事実だしな。なぁ、鈴仙?そう思うだろ?」

 

「えっ!?あー、まぁ、ねぇ…うん…優しいとは言えないよね…お世辞にも…」

 

「なっ?霊夢は妖怪に対しちゃ優しくねーのさ」

 

 俺が人間になった時はめちゃくちゃ優しかったような気がするが、吸血鬼に戻ったら扱いもすぐ元に戻った。まぁ、それが博麗霊夢なのだが。

 

「でも…嫁なら勝ってほしいと願うのが自然だと思うのだけど…?」

 

「んー…好き嫌いと勝ってほしい負けてほしいは両立しないと思うよ?」

 

「そういう…ものなのだろうか?私は…あなたに勝ってほしいし…何なら、霊夢にも勝って…このトーナメントで優勝してほしいと思っている…。私の見立てでは、決勝戦ではあなたと霊夢が戦う事になるから…」

 

「そっか。応援してくれるのは素直に嬉しいよ。でも俺は、霊夢の事は勿論好きだけど、チルノも大好きなんだぜ?」

 

「………犯したいの?」

 

「ぶふッ………くくくっ…くっくっ…」

 

 サグメのド直球な発言を聞き、永琳がド派手に吹き出した。輝夜や鈴仙、巫月は、ギョッとした顔で永琳を見る。先程「クラウンピースとは経験済み」という事を知ったからこそ、サグメのこの疑問はある意味当然のものだとは思うが…。何を思っているのか、てゐも笑っている。

 

「いや、あのな…?犯したいとかそういう事じゃなくてだな…?好きっつーのは…そうだな、弟子として?友達として?そういう意味だからな?」

 

「あっ………そっか…。そっちの意味…」

 

「そうそう、そっちの意味だぞ」

 

 勘違いしていたサグメは少し縮こまる。すると戦いを見ながらも、永遠亭陣営はシンと静まる。

 

「どうするのよこの空気…気まずいじゃない…」

 

「いや、永琳先生が笑ったからってのもありますけどね??てゐも」

 

「あらそう?モロに言うサグメが面白くて、つい笑っちゃったわ。………ま、霊夢は負けないわ。チルノに勝たせる訳が無いもの」

 

「急に真面目モードになったし…」

 

「切り替えは大事よ?」

 

「そーですけどね…」

 

 永琳の言葉に従い、俺も試合へ意識を戻した。ステージでは、未だにチルノが弾幕とレーザーを放っていて、霊夢はそれらを回避し続けている。右手は相変わらず棒ごと凍りついているが、全然苦になっていない様子だ。片手だけでは、流石にアドバンテージにもならないと見える。

 

「得意の剣はどうしたの?私は棒以外手ぶらよ、すぐに制圧できるんじゃない?」

 

(ッ…そうだと思うけど…!霊夢から言うんなら罠の可能性が高いような気がする…。でも本当に棒以外は手ぶらだし……近付きさえすれば霊夢の手を斬り飛ばして…戦闘不能にできるかも……?いや、手を斬ったらエスカルゴに怒られる…?)

 

 未だ、チルノはレーザーや弾幕だけに固執しているようだ。何か考えがあるのか、それとも躊躇しているのか…。最近は接近戦を得意としていたチルノが今更あれだけに固執するとは思えない。しかも、霊夢に真っ向勝負を挑んでいる。彼女が簡単に敵う相手ではない事くらい、チルノならばわかっているはずだ。

 一昔前のチルノならともかく、今のチルノなら自分との力の差くらい心得ているはず。…一体、何を考えているのだろう。

 

「いけチルノッ、霊夢に負けんなー!!チルノ、お前ならいける!最強の妖精の力、もっともっと見せてやれ!!霊夢に思い知らせてやるんだ!!言っとくが、今のチルノでは巫月には勝てんぜ!もっと攻めてやるんだ、ガンガンぶっぱなせ(・・・・・)!」

 

「エスカルゴ…。だよね、あたいやるよ!もっと攻める!!」

 

(…成程ね、エスカルゴでも分かったのね、私の狙いが。だから弾幕を使えと遠回しに指示した。問題は、チルノがアドバイスを誤認していないかどうかだけど…どうかしらね、興奮状態のアイツだったら誤認してそうね…)

 

 直接言えば霊夢に作戦がバレる。だが勘のいい霊夢ならば、このように遠回しに言ったところで多少は読まれているような気がしてならない。

 

「氷魔剣『アイスコフィン』!!」

 

「掛かったわね、チルノ…!」

 

「ああぁッ…チルノ……」

 

 剣はまずい…と言おうとしたのだが、スペルを発動させてしまった以上もう遅い。貴重な一枚を俺の指示ひとつで無駄にさせる訳にはいかない。というより、これはチルノの戦いなので、余計な口出しはもうやめておこう。

 

「喰らえ霊夢!たああああぁっ………ふぎゃっ」

 

 剣を上段に構えたチルノは、一気に急降下して霊夢に斬り掛かる。霊夢はギリギリまでチルノを引き寄せ、その上でギリギリで飛び退いて回避。当然ながらチルノは空振り……足元の氷のせいでバランスを崩して、前のめりに転んでしまった。しかも、転んだ衝撃で剣がポッキリと真っ二つに折れてしまった。

 

「流石ね、厄神パワー。厄神が力を抑えていないとき、厄神に近付く者は皆等しく不運になる…。恐ろしいものね。霊符『夢想封印』!!」

 

「オイオイオイオイ、ウソだろ霊夢…!?そりゃ追い討ちがすぎるってモンだぜ……あぁぁ…」

 

 目の前で滅多打ちにされるチルノを見るのは、娘が負けるのと同じくらい辛いものだ。自分でも無意識のうちに、血が流れ出るほどに強く下唇を噛んでいた。いくら神降ろしをしていたからとて今のはもう少しいけた戦いだった。あの時余計なことを言わなければ、また違った結果だったかもしれない。そう思うと、どうにもやるせない。

 霊夢の放つ夢想封印の弾幕は、ステージの氷も砕きながらチルノへ向かい続ける。相変わらず、霊夢は容赦ない。

 

「ん…?氷の欠片が……。ヘェ…咄嗟に氷の壁を作ったのね。でもほぼ防げなかったでしょう?」

 

「クッ…ソォ…!なんで…あたいが滑るんだ…!こんなハズじゃ、なかったのに…ッ!!」

 

「これも全て厄神の力よ。どうする?降参する?しない?何なら問答無用で気絶させられるけど。不運にも(・・・・)、あなたは弾幕に撃たれて倒れてるし」

 

「イヤだ…降参なんてしたくない!」

 

 全身を震わせながらも、何とか立ち上がろうと踏ん張るチルノ。しかし霊夢がそんな事を見逃すはずもなく…。

 

「そう、なら気絶させてあげるわ」

 

「…くっ……力が………出な…………」

 

 雛の禍々しい気を溢れ出させる霊夢。すると、最後は地獄耳の俺にも聞こえない声で呻き、遂にチルノは氷がヒビ割れたステージに倒れ伏した。霊夢の言う通り、不運にも(・・・・)打ち所が悪く気絶したということだろう。

 

「決着~!!神の力を行使し、覚醒したチルノを呆気なく倒した!!これが神の力…そして巫女の力だ!やはり恐ろしい、博麗霊夢ッ!!」

 

 霊夢から溢れている禍々しい気配が収まったと思うと、実況者席のにとりの隣に、いつの間にか雛が戻っていた。霊夢との憑依を解除され、元に戻ったのだろう。

 霊夢はチルノを放ったらかしにして席に戻ったので、俺が気絶しているチルノの迎えに行った。

 

「治癒『完全回復(ベホマ)』……起きろ、チルノ」

 

「…う…うぅ……?あれ…何で怪我が治って…」

 

「…決着、見届けたよ」

 

「ん…ごめん…。あたい、霊夢に負けちゃった…応援…してくれたのに…」

 

「良いんだ。霊夢なら仕方ないさ。強いからな。ただ、ひとつ聞きたい事があるんだ。どうして…弾幕を使わないで直接斬ろうとしたんだ…?あのスペルなら、濃い弾幕も使えたと思うけど…」

 

「うん…。だから斬るフリ…フェイントをして、霊夢の目の前で弾幕発射しようとしてたんだ…。そうすれば、かなり避けにくいと思ってさ。でもそれをやろうとしたら、足が滑って転んで……」

 

 こっちもこっちで作戦がエゲツナイ。まさか、目の前で発射しようと企んでいたとは。だが足が滑ったために、発射する前に負けた…と。やはり厄神パワーは恐ろしい。

 

「これからも特訓頑張ろう。言ってくれればまた相手するから」

 

「うん…っ…頑張る…!あたい、サイキョー……なんだからっ…!」

 

 変身を解除したチルノは、溢れそうになる涙を必死に堪え、頑張ると意思表示する。

 神の数は実に八百万(やおよろず)…。それぞれ対策を考える事なんて不可能だ。しかし、自分自身を強くして全方位に備える事ならできる。短期間でここまで強くなれたチルノなら、時間をかければ……。




今回の霊夢は酷くダーティな手を使いましたね。
ある意味では儚月抄霊夢と変わらんw

さて、次からはとうとうBブロックですね。
誰が居たっけ?(嘘です)
大体のストーリーは浮かんでいるんですけどね、強者vs強者だと決着のつけ方で二日は悩みます。Cブロックまでのプロットは出来てるんですが…公開はまだまだ先になりそうです。
下手したらこれが今年最後の更新かもです。



冬コミ行ける人、いーなー。俺は行けないので、ゆっくりまったりパルパルしながら書いてます。
早鬼、久侘歌、八千慧、磨弓、袿姫が出るものは全て欲しいレベルで渇望してます。
それから幻想万華鏡(14話前編)と旧作勢の本。
まさに喉から手が出るほど欲しいですね。しかも中には委託されない本もあるとのこと。
そんなバカなッッッ!!!!!(バキ風に)
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