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勇 に 鈴 巫 レ 霊 早 ヘ
儀 と 仙 月 ミ 愛 苗 カ
り リ
ア
早くも、Bブロックも決勝戦になった。今日の試合はここまでだ。決勝戦は勇儀とへカーティアという規格外対決だ。どちらが勝つのか、予想も不可能な戦いだ。
因みに一回戦四試合目の早苗vsへカーティアはへカーティアが圧倒的なパワーを見せつけて圧勝してしまった。予想していたことはしていたが、いざそれを目の当たりにするとそれなりに衝撃を受けてしまうものだ。早苗も、かなり善戦したと思う。俺ならきっと、チート無しでは勝てない。
二回戦一試合目の勇儀vs鈴仙は、途中で鈴仙が棄権したために勇儀の勝利となった。勇儀本人は不満そうな顔をしていたものの、俺としては心の底から安心した。鈴仙が無事なら、それでいい。鈴仙も安堵しているようだし、これで良かった。
二回戦二試合目のレミリアvsへカーティアは、レミリアが一方的にやられていた。流石は地獄の女神・へカーティア。傷一つつけられる事なく、彼女を地面に叩き伏せてしまった。
どうもへカーティアは、体術も使えるらしい。鬼畜な弾幕だけではなく体術も使えるとは、凄くチートらしい。しかも司る神徳が多いので、まだ彼女は底を見せていない事になる。恐ろしいにも程があるだろう。
「とうとうやってきました、本日最後の試合!!今回戦うのは、両者共にステージ破壊の名人だ!身の危険を感じたらすぐにでも結界を張ることをオススメするぞっ!片方はこちら!山の四天王の一角、星熊勇儀~!!これまでは能力は未使用!正真正銘、腕力のみで勝ち上がってきた猛者だ!果たして彼女に勝てる者は居るのかッ!?」
「対するは異国の女神!!鬼達ほど突出した怪力ではないものの、弾幕の破壊力と鬼畜さ、そして服のセンスは折り紙付き!!まともな奴ならまず挑まないほど、圧倒的なパワーを持つ神様だっ!ヘカーティア・ラピスラズリィィィィッ!!!」
まるで、「ぼくのかんがえた最強同士の戦い」のような組み合わせに思わず頬が緩んでしまう。非常に楽しみな戦いだ。因みに俺の誕生月である九月の誕生石は、何と彼女の名前にも入っているラピスラズリ(とサファイア)だ。偶然一致しただけだとは思うが、どこか運命を感じてしまう。
「ほぉう、異国の女神ねぇ。さっきまでの戦い、ずっと見ていたよ。でも私の方が上に思えるな。そんなヒョロい体でこの私に適うと思うかい?」
「よーし、可愛いねぇ。ちょっと遊んでやるわ。本来なら鬼など相手にしないんだけど、『貴方は私を下に見た』。それだけの理由で貴方を地獄へ堕とすわ。ただそれだけの理由だッ!!死んでも悔しがれ!!」
「ハハッ、面白い!受けて立つッ!!」
「な、なんかヤバい雰囲気だぞ!?観客の皆は、本当に自分の身は自分で守ってね!!それでは、Bブロック決勝戦、始めーッ!!」
直後、へカーティアは後ろに飛び退いて勇儀と距離を取り、自身の目の前に禍々しい気配を放つ紅色の魔法陣を浮かび上がらせる。そしてニッと口角を上げて笑いながら、その中に手を入れる。
「
「ッ……!?」
「
すると魔法陣から火がついた棍棒のような物を取り出した。クラウンピースの松明に見えるが、放つ気配がまるで段違いに強い。単なる武器ではないように思える。まるで十拳剣…神専用の武器のように感じられる。
そして彼女が呟いた呪文のようなその言葉は、ギリシャ語を少し齧った程度の俺には、全く理解できなかった。「クリュティオス」という名前の部分しか聞き取れなかった。そして松明を出したことから察するに──────。
《わかっていると思うけれど、クリュティオスはギガントマキアで私が倒した巨人の名前よ。あの鬼は中々に頑丈そうだから、ついあの頃の武器を取り出しちゃったわ♡》
《…こりゃー、へカーティアの勝ち確だわな…》
《ん?何を言ってるの?武器なんて使わずとも、一瞬で倒せるのよ?元から、私の勝ちは確定しているもの。それなのに敢えて私の
《ここは多分、
《ピンポンピンポン大正解!さっすが私の
《へへ、それ程でも…ってオイ、へカーティアの下僕になった覚えはないんだけど》
《あら、気付かれちゃった。あなたの事、第二の吸血鬼モルモーにしようと思ったのに…。まぁ、私の意図を読み取ってくれたのは嬉しいわよん♪無駄に深読みされたらどうしようかと思ったわ》
吸血鬼モルモー。確か夢魔のエンプーサと共にへカーティアに仕えた女吸血鬼だっただろうか。神話の本には、エンプーサと違って親しみやすいという主旨の記載がされていたような気がする。なら俺は、第二のモルモーには成れまい。全く、紫さん並に考えの読めない神様だ。それに、俺を部下にしたところで使い物にならないだろうに。
「ほほぉう、松明かい!だが、そんな炎は私には効きやしないよ!」
「どうかしら?案外効くかもしれないわよ?」
「抜かせッ!!」
瞬時に拳を構え、土を後ろに飛ばしながら肉薄してくる勇儀。射程内に入ると猛烈な速度で拳が振り抜くが、へカーティアはそれを、舞い落ちる木の葉の如く軽く回避した。風圧が拳の延長線に襲いかかるが、母さんが結界を張りガードした。
「わお、凄いパンチね。当たったら結構痛そう。だけど………
カチッ…と、時計の針のような音が聞こえた。すると世界は音を失い、誰かの動きも無くなる。こんな世界を俺はそれなりに高頻度で体験する。咲夜さんや弦月姫が時間を止めた時にだ。
「へカーティアが…時間を止めたのか…?」
「あら、やっぱりあなたは動けるのね。じゃあ、あの二人も動けるのね?」
紅魔館メンバーが居る方へ目を向けると、何も驚いていない様子の十六夜母娘は小さく頷いた。時間関連の能力等を持っていないへカーティアが時間を止めたのだから、少しくらい驚いていいと思うのだが。
「これが魔法の究極系の一つ…時間操作魔法よ。こんなものは、神様ほどの膨大な魔力が無ければ成し得ない、時の理から外れた大それた魔法ね。魔理沙は勿論、パチュリーでもあと数千年くらい研究と訓練を重ねなきゃ無理だと思うわ。早くて数千年…ね」
「そうなんですか…。パチュリー様でも数千年…恐ろしい魔法ですね」
(私やお母様はそんな力を使い回していた、と。そういう事なんですね…。この能力に特に代償は無いけれど、何だか怖くなってきたような……)
「前にパチュリーがエスカルゴに言った通りよ。魔法は基本的に何でもありなの。ただし、術者の魔力量に依存するだけでね。…私は魔術の神でもあるから魔力量は無限と言っても過言じゃない。私の時間操作魔法の影響を受けないのは時間操作能力者と、それを打ち消せるエスカルゴのみよ。尤も、エスカルゴのはあなたのお陰らしいけど。ね、咲夜さん?」
「…ええ、そうですね。経緯はどうあれ、時間を止めて特別な時間を過ごせるようになった事には感謝してもしきれないですわ」
「あらま、見せ付けてくれちゃってぇ。…じゃ、その『特別な時間』の為、今日最後のこの試合をさっさと終わらせましょっか」
メラメラと燃える松明を野球のバットのように構え…勢いよく振り抜いた。バゴォンッ、と嫌な音が響き渡るものの、勇儀は動かない。これは、きっとアレだ。時間停止を解除した途端に衝撃が与えられ、吹き飛ぶタイプのものだ。咲夜さんもたまにこの方法を使うので、容易に推測できた。
「…
「ゴハッ……!」
カチッ、と再び時計の針の音がすると、勇儀は呻き声を上げて、身体をくの字に曲げつつ後方に吹き飛んだ。勇儀の巨体が、である。俺が本気で力を込めて、やっと打ち上げられたのに。
結界に体を打ち付けられ地面に落ちた勇儀は、どうやらすぐに気を失った……という訳はなく、腹を押さえながら立ち上がった。
「あんた、中々やるじゃないか…!地獄の女神…とかいうのも、どうやら本当らしい…」
「ふふ、まだまだこんなものじゃあないけどね。折角だから、ほんのちょっとだけ『器くん』から技借りようかしら」
「『器くん』だと…?」
「獄雷『真・
次の瞬間、地面が爆発した。否、爆発したかのような勢いでステージ全体から雷が吹き出した。赤黒く放電しながら間欠泉のように溢れ出すその電流は、触れたら一瞬で焦げそうな程の絶望的な威力に見えた。俺でも吸収できなさそうだ。
彼女は地獄の女神。俺が力を借りるのと違い、地獄の雷を自由に操れるらしい。いいや、それは分かっている。分かっているのだが、いざ本物を目の前にすると、つい驚いてしまう。
ちらりと見てみれば、母さんの強力な結界は、そこかしこがヒビだらけになってしまっている。俺の攻撃だとこうはいかない。
やがて雷は止み、土煙の中に勇儀の姿が見えるようになる。髪の毛は帯電して、服も所々に穴が空いてしまっている。そしてなんと…四肢の肉が裂け、血が出ている。傷としては浅いと思うが、勇儀が出血した事に対し驚きしかない。俺でも、ちょっとした鼻血程度しか見た事がない。
「ハ…ハハハッ…こりゃ参ったねェ…。この私が出血だなんて…」
「良かったわねぇ、死ななくて。普通だったら、あんな攻撃をまともに喰らってたら死んでたかもしれないわよ?」
「……正直、バカにしていた。やはり見かけにはよらないようだな…。改めて思い知らされたよ。だが、まだ現世じゃやり残したことが沢山ある。今すぐに地獄堕ちは勘弁してほしい。降参する。頼む」
あの勇儀が地に膝をついた。土下座こそしないものの、頭を垂れた。するとへカーティアは再び魔法陣を浮かび上がらせ、手に持った松明を収納してしまう。相手は嘘を嫌う鬼、ここで奇襲等を仕掛けてくることはないと判断したのだろう。
「……鬼は正直でいいわね。一点の曇りもない。良いわ、あの件は赦してあげる。だけど、降参は認めない」
「…!」
「不完全燃焼でしょう?私もよ。だからせめて、満足するまでやり合いましょう?」
「応ッッ!!!」
……それから何分経っただろう。実況も観客も観戦どころではなく、ただただ自分の身を守って試合が終わるのを待っていた。俺はこれまで通り永遠亭メンバーと一緒に居たので、永琳の結界にお世話になっていた。
観客の思いはひとつである。乃ち、「どちらが勝ってもいいから早く終わってくれ」だ。それ程激しく、もはや会場の原型を留めていないほどに壊滅していた。
そんな中で漸く決着がついた。勝者はもちろんへカーティア。勇儀への腹パンが深く入ったのが大きな決め手となったようだ。
「Bブロック決勝戦決着…勝者、へカーティア・ラピスラズリ…おめでとうございます…」
結界などを張れないからか、近くの物陰に居たにとりは簡易マイクで結果を告げる。それどころではない、とでも言いたげな声だが、これはもう仕方ない。あとでまた母さんに直してもらおう。
「本日の試合はここまで。明日はC、Dブロック本戦をやってくよ…!今日の所は……解散…!」
勇儀推しの人ゴメンネ…。
俺TUEEEEならぬヘカTUEEEEしたかったの……。それに前に「へカーティアに暴れさせたい」って言ったけど、本命はまだこんなものじゃないの…へカーティアはもっと強いんだよ…だって彼女の神徳(の数も質も内容も)エグいから。
知れば知るほどヤバい。
へカーティア、魔法を使う時はギリシャ語でって感じが好きなんです。…何でだろう。
妖舞達はDだったか…