「ついにやってきました、Cブロック決勝戦~!今回戦うのはこの二人!魔性のロリっ子、吸血鬼だけど魔法少女!その魔力は姉も凌ぐ程らしい!フランドール・スカーレット~!!」
「お相手はこの人だ!そのフランドールを第一の彼女とし、今では一部の者から英雄と称される、最強のヒモ男!エスカルゴ・スカーレット!!」
「紹介がヒデェ…ヒドすぎる…」
確かにほぼ無職みたいなもんだがこれは酷い。里への行商は専ら分身に任せっきりだが、一応は俺の仕事で俺の手取りだ。ヒモとは心外すぎる。俺の能力による分身を行使しているのだから俺の働きだ。だから俺は、ヒモではない。割とマジでヒモではない。断じて────
「ねぇ、エスカルゴ…?」
「!…何だ?」
「今日は本気でヤり合いましょう?これまでは、あなただけじゃなくて私も力をセーブしてた…。だけど、ここだったら屋敷を壊す心配も無いわ!思う存分、好きなだけ戦いましょうっ!!」
…正直、フランの本気はヤバいと思う。怪力と弾幕ですら紅魔館を更地に還したレベルなのに、アレすらも本気ではなかったのだから。そうだ、フランは吸血鬼でありながら魔法少女でもある。魔力量は姉のレミリアをも上回っている。それはつまり、彼女が本気を出せば、魔法も物理攻撃も超一流のパワーを持つようになるということだ。
普段だったら、屋敷や環境破壊に繋がるので、こんな勝負は受けない。だがここは地底、しかも地底以外の実力者までも蠢いている。多少の事は彼女らが何とかしてくれるはず。大丈夫だろう。
「…おうよっ!どんだけ強かろうが、返り討ちにしてやるぜ!」
「そう言ってくれると思ってたよっ!」
「な、何だか、これまで以上にヤバい戦いになるような気がしてきたぞっ…!?念の為に非常口を解放しておいたから、有事の際には自分達で避難してね!…Cブロック決勝戦、始めェッ!」
グネグネしたスペード付きのレーヴァテインを装備する。昔は『雷刀』で振り払えば俺の勝ち…だったが、本当はアレすらも手抜きだったのだ。少し考えればわかる事だ。超怪力娘が持つ物を、どうしてそうも簡単に振り払えるのか。いいや、普通に考えれば振り払えるものではないだろう。とどのつまり、手抜きだったという訳だ。全く、底が見えない彼女だ。…色んな意味で。
「そっちのレーヴァテインか…なら俺は…ッ」
妖魔雷霊剣を抜き払い前進し、空中でフランのレーヴァテインと武器を交える。果たしてアレは剣なのだろうか。一般的に、レーヴァテインとは魔剣という部類に入るので、外の世界のモノとは違うが彼女のも魔剣と考えて良さそうではある。名が被ったのも恐らく偶然では無い。恐らくだが意図しているものだろう。
ザワッとフランの気が立ち上った所で、恐らく本能的に緊急回避し、ある程度の距離をとった。
「フフッ…私の本気の剣を受けて壊れない
「やれやれ、この俺を玩具扱いですかい。まぁ、偶にはこういうのも悪くねーかもしんねーけど…
『風の傷』ッッ!!!」
叩き付けるように妖魔雷霊剣を振り下ろして、前方に衝撃波を放つ。地面を抉りながら突き進むそれは、呆気なくフランを飲み込み─────。
「………フフン♪」
「…ハハ…マジか…」
…怪我のひとつでも与えるかと思ったのだが、衝撃波はフランの薄暗い紅色のバリア…魔法陣で防がれてしまったようだ。これが…これこそが、魔法少女としてのフランの真骨頂。俺なんかより圧倒的な魔力の持ち主である事が魔法陣を通してよく伝わってくる。
俺は……霊夢の下でいい。しかし逆を言えば、霊夢以外の全てを、打ち倒さなくてはならない。目の前のフランすらも、俺と霊夢の間に聳え立つ壁だったのだ。
「俺はフランより強くなった。力をつけた。…と思って手加減していたんだけど…まさか俺の方が手加減されていたなんてな…。驚いたし…大した皮肉だよ、ホント」
「でも、本気を出さなくてもエスカルゴとの弾幕ごっこは楽しいわ。これも、あなたが力をつけたお陰。だからここで、お互いの本気をぶつけて、どちらが上か決着といきましょ!」
「そりゃ面白そうだ!『電力遷移』!」
剣に手を翳し電力を前面に出す。そこで電力の魔法陣を描き、ある簡単な仕掛けを施しておく。そして再び剣を構えて突進し、勢いよく振られるレーヴァテインをガッチリ受け止める…その時。
「キャッ……!!」
仕掛けられた魔法陣からは爆発と見紛うような勢いで光線が放たれ、光線は地面に当たったり、フランに当たったり、レーヴァテインを弾いたりする。彼女も空中に跳ね飛ばされるも、なんとか空中で体勢を整え下降しつつ斬りかかってくる。
ギリギリまで引き付け、彼女が地面に剣を叩きつけようとしたところで足元にスキマを開いて、その真上へと移動する。そして、縦に錐揉み回転しながら猛烈な勢いで剣を
「『魔界断裂斬』ッッ!!!」
「─────ッ!!」
以前、夢子が地面を叩き割った技のオマージュである。非スペルのこれなら好きなだけ放てる。剣と地面が接触する刹那、剣に込めた妖力は勿論己の妖力なども放出する事で、文字通り爆発的なエネルギーを得る事ができる。
「うっそぉ〜…。あーん、私のレーヴァテインが壊れちゃったぁ…」
「………」
地面を割る勢いで攻撃した筈なのに、フランのレーヴァテインが壊れ、彼女の足元の地面が凹む程度で済んでいる。恐ろしい。
「ま、いっか!禁忌『レーヴァテイン』!!」
今度は炎の大剣を出現させた。当然だがあれは熱いので、接近戦は不利かもしれない。なので、俺本体は彼女から少々距離をとって戦おう。
「大魔法『
全ての魔力を使って、巨人体を構築していく。今回は俺一人なので、遠慮無く15m級になった。ただし、こうすると背後が大きな死角になるので足元には大きな魔法陣を設置済みだ。これに足を踏み入れたり、上空に来たりすれば、自動で発動する仕組みになっている。しかもその威力は俺の本気に限りなく近付けてある。喰らえばフランもかなりのダメージを負うだろう。
「エスカルゴが巨人に……!?」
「うおぉぉっ……なんてデカさだ!?…こりゃ、まともに倒すのは案外厄介かもしれん…」
巨人を見たことがある霊夢と魔理沙が、驚きの言葉を漏らす。霊夢はただ驚いているのに対し、魔理沙なんかは見たその瞬間から倒す方に思考が傾いているあたり、流石だなと思う。
そういえば、二人の前で巨人化したのは初めてだっただろうか。確か、実戦ではまだ妖怪の山のクーデターの時にしか使っていなかったはずだ。二人の物珍しそうな反応も仕方ない。
「身体は大きくなったみたいだけど、的も大きくなったようなものね!たぁぁぁぁっ!!」
火力を増したレーヴァテインを振り上げ一気に距離を詰めてくる。この大きな肉体でも神経さえしっかり接続していれば反応が遅れる事は無く、逆にその大きな手で彼女をキャッチした。
すると俺の足元に広げていた魔法陣が起動し、そこから間欠泉のように噴き出した雷がフランの身体を貫く。
「あうっ……く、このぉっ…!」
「………」
「うぅっ、痺れて…やぁん、ナデナデは終わってからにしてよぉっ!も…もぉ…んふふふっ…♪」
大きな手で包み込むように撫でてみるとものの数秒で口角の緩みを抑えられなくなったフラン。これぞ、包容力(物理)というやつだ。
「もーだめ…これ戦いになってないよぉ…禁忌…
『フォーオブアカインド』…っ」
三人の分身が現れた。本体の一人は未だ手の中だが、三人の分身はそれぞれ炎の剣ではない方のレーヴァテインを出し、二人は目を、もう一人は腹を狙って、それを突き刺してきた。推測だが、本体はまだ痺れてると考えてよさそうだ。
分身にもこの魔法陣は反応し、幾度と無く雷が噴き出す。その度に本体もダメージを被るので、次第にフラン本人の反応が弱くなってきた。
本来ならば魔法陣の範囲内に入ってきた瞬間に発動するはずだが、フラン達が素早すぎるあまり俺にダメージを与えてから発動する事になった。もっと早く発動できるよう、改良すべきだろう。
「
目が回復したら、攻勢に転じて終わらせようと考えるも、目は中々回復してくれない。何故かと訝しんだが、目にレーヴァテインが突き刺さったままだからだと漸く気付いた。それなら回復するわけがない。
「…ぁ…気付いた…?」
腹はともかく目に刺さったモノは抜かなければならない。本体の方のフランは握ったまま、もう片方の手でレーヴァテインを抜こうとする…が、その前にフランは動き出した。
「なーんてねっ!」
「ッ!?」
「キュッ!」
巨人体の臓物が、内側から引き裂かれる。骨が折れ、肉や皮膚が裂け、臓物などが溢れ出した。そして次の瞬間には、何が起きたのか完全に理解できていないまま俺は空中に投げ出されていた。周囲には巨人体の残骸が散らばっていて俺と共に落下している。それも、蒸気を上げて消えながらである。そう、彼女が《目》を潰して、巨人体を破壊したのだった。
「くっそ…!巨人化後は体に力入んねーんだぞ…やられた……ッ!!」
俺はまだまだ巨人化の練度が低い。なのであの巨体を操った後は、ガラにもなく酷く疲労する。魔力だけではなく体力すらも犠牲にする。それが巨人化…らしい。
それでも戦闘を継続する事は可能ではあるが、
フランという強敵を前にして、体力が削られるというハンデはあまりにも大きすぎる。だから、早々に決着をつける必要がある。
「心は痛むが…仕方ねぇ。背に腹はかえられねぇからな。傷翼『
地面から煙のように大量の砂鉄が湧いてくる。それを電磁石の要領で纏めて背負い、翼と成す。これで何をするか。…そんなのは決まっている。三人の分身を消すのだ。
「ッ…!本物の私がどれだか分かるの?」
「この俺様が本物のフランを見抜けないとでも?もしも見抜けなかったら俺が永遠に死んでやる」
「………いいよ。反撃しないから本物の私以外の三人を殺してみて?あなたに殺されるのなら本望だしね。間違えても誰も責めないわ。もし本物を当てられたら降参してあげる。因みに私が本物。間違えないでね?」
「私が本物よ。それ以外に言う言葉は無いわ」
「私だから!!エスカルゴなら分かるもんね?」
「ヤダヤダ!分身のくせに勝手に決めないでよ!私、まだまだヤりたい事いっぱいあるのにぃっ!いくらエスカルゴでも本物は見抜けないわ!もし仮に間違えたらどうするのよ!でも、本物の私を見抜けたら、その時に消えるのは分身のあなた達なんだからね!」
誰も責めないは無いだろ、と突っ込みながら、翼を三枚構える。分身ならば血飛沫をあげてからそれごと消える。本物なら……言うまでもなく、血飛沫をあげるが無惨になった肉体は残る。
「…じゃあね」
「ああ」
俺の翼は、彼女の小さな肉体を貫いた。一瞬、赤い血飛沫が見えたものの、ボゥンッと音を立て消え去った。三つ共だ。
「あーあ、バレちゃった。でも良かった、本当に見抜けて。…運命の能力のせいじゃないよね?」
「違うね。俺は、実力でフランを見抜いたのさ」
「良かった♡…じゃ、予告通り降参しま〜っす」
「ホントにするんだ?決勝戦だぞ?」
「だって疲れたもん。ゆっくり休みたいわ〜♪」
「そう言うと思ったよ。そういう意味も含めてたから、降参してあげるって言ったんだろうなってすぐ分かったよ。フランなら言いそうだからな」
「…ってのは冗談で…。ここで私が本気出すと、地底世界が壊れるからでーす♪」
「んなっ……!?」
「だってさー、岩盤落ちてきたら皆ペシャンコに潰れて、ウフフな事になっちゃうわよ?フフッ、まだまだ女心は読めないみたいね♡」
「……………………」
してやられた。そういう、どこか負けたような気分で、俺はトボトボ歩いて観客席へと戻った。試合に勝って勝負に負けるとはこの事なのか、と酷く思い知らされてしまった。
霊夢や魔理沙など、フランの降参という結末に納得がいっていない者も居るようだが、にとりや鈴仙、永琳など、勝負を中断して正解だった、と喜ぶ者の方が圧倒的に多かったらしく、彼女との勝負を続行したかった俺としては、内心では不満タラタラなのであった…。
結界の強度
霊夢(霊力)=神綺(神力)≒フラン(魔力)
くらい盛ってもいいよね…