「痛てっ……」
「エスカルゴ!!」
落ちたと思ったら温かい誰かに抱き締められた。
この感触は……。
「フラ…ン?なの、か?」
ここは幻想郷…?
「“どうした”はこっちのセリフよ!すごくボロボロじゃない!!」
「ああ…軍隊とか爆弾とかから逃げ回ってた」
「っ…!」
「でもま…俺は、大丈夫。つーか…腹減った…」
「そう言うと思って、咲夜に作らせたわ!」
そばに立っていたレミリアがお弁当のようなものを渡してくれた。
「ありがと…後で、お礼……言っとかなきゃ…」
「ふふ…そうね」
「いっただっきまーす!」
久しぶりのご飯なので、人目もはばからずガッツいて食べる。
「エスカルゴ…」
「!!…紫さん…」
「ごめんなさい」
今更謝られても。
時すでにお寿司…じゃなくて、遅し。
「…別に大丈夫っすよ」
「でもっ…国が…あなたの故郷が消えたのよ?」
「それはもう…いいです。外の世界のことはもう吹っ切れました。俺の故郷はここ…幻想郷です。外は……元から嫌いだったんで……」
「でも……」
「いいですよ。俺、昔から『力があったら国破壊してやる』とか思ってましたし」
「物騒ね…」
「レミリアに言われたかねーよ……?」
「んなっ…」
「なんで、もっと早く繋げてくれなかったんですか」
「…外の世界とここを繋ぐというのは、別な幻想郷同士を繋げる事くらい力の消費が激しいのよ。博麗大結界の管理も大事だから…。準備に2日かかってしまったわ」
「8日は外に居ましたよ?」
「外の世界と幻想郷じゃ、時間の経ち方が違うのよ。あなた、外で何か食べた?」
「いえ、何も」
「やっぱり。普通は、吸血鬼といえど、8日も食べなければ餓死寸前のはず。多分ね。でもあなたはそこまで元気。つまりあなたは、何も食べていないのはせいぜい2日位なの」
「へぇ〜…」
ヒビキや従兄弟が俺の記憶よりも老けていた理由がわかったよ。外の世界の方が、こっちよりも時間の流れが早いから…なんだな。
こっちの2日が向こうの8日てことは4倍なのか。
「とりあえず、疲れたので寝かせて下さい」
「…わかったわ。ごめんなさいね。(外についてこれからどうすれば……。地震大国日本なだけあって、住民の避難は極めて迅速だったから、そういう意味の被害は無いけれど…………動植物ばかりは、どうにも……)」
「大丈夫ですって。じゃ」
「……ええ」
「また来なさいね。元気になったら会いましょ」
「ああ。……じゃあな」
霊夢に別れを告げてから俺とフラン、レミリアは神社から飛び立つ。
「ねぇエスカルゴ」
「なんだレミリア」
「ホントに…何ともないの?」
「…ああ」
「だって…あなたの大切なものとかは…」
「俺の大切なもの?…大切なものならあっちじゃなくてこっちにある」
「?それってどういう…」
「あっちのもんよりお前らの方が大切だっての。だからそれ以下のものが消えようと、俺にはもう関係ないよ」
「エスカルゴ…」
クサい言い方になっちまったが、これは本心だ。
「着いたら、悪いが、寝かせてもらうよ。なんか眠すぎる」
「ううん。ゆっくり休んで」
「ありがと、フラン。一緒に寝るか?」
「うん!」
「ふ、フランが寝るなら私も!」
「結局3人か。まぁその方がいっかな。寂しさも紛れる」
『ただいまー』
「エスカルゴさん!!」
「咲夜さん……お弁当ありがとうございました、相変わらず美味しかったです」
「は…はぁ…それは良かったですが…」
「すいません、また心配かけてしまいました」
「…これからは気をつけて下さいね」
「…はい。じゃあ少し寝ます、おやすみなさい」
「ごゆっくり」
そして3人でベッドインしたのだった。
荒んだ心が彼女達に癒されたような気がした。