※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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めっちゃ短いデス。



Dブロック本戦(一回戦後半②)

「それじゃあ、Dブロック一回戦、最後の試合にいってみよー!」

 

「はるばる畜生界からやってきた、鬼傑組の組長らしいこのお方!吉弔八千慧〜!!」

 

「やれやれ…やっと私の番が来ましたか…」

 

「吉弔?吉弔って確か…幻の…?」

 

「そうっ!なんとこの方はね、伝説の幻獣の吉弔本人らしいよ!吉弔っていうのは、すごく簡単に言うと龍になれなかった龍のことなんだ!」

 

「というと?」

 

「龍ってのは通常、卵を二つ同時に産むらしいんだけどさ、片方は普通に龍として誕生する一方、龍の体内で卵として成形される前に、龍の要素をもう片方にそっくりそのまま持ってかれるんだ。そっちが吉弔という種族…だって聞いてるよ!」

 

「へぇ〜…龍って不思議ねぇ…。案外、龍神様の片割れがあの人だったりしてね?」

 

「だとしたら間違いなく最強格じゃん、フツーにそれ怖いなぁ……」

 

「………………………」

 

「「ひぃっ!?」」

 

 八千慧が、ギロリとヤクザならではのドギツイ視線を向けると、二人は文字通り飛び上がって、彼女から静かに視線を外した。

 

「た、対するはこの神様!我々妖怪の山のメンツとは顔馴染みで、関所の門番をしつつ妖怪の山で鶏の地位向上運動を頑張っている仕事人っ!庭渡久侘歌〜〜っ!!」

 

「吉弔…八千慧…ッ!早鬼ならまだわかる…でも本当に鬼傑組の組長本人が来ているなんて…!」

 

「その言葉、そのままお返ししますよ番人さん。まさか、仕事をほっぽり出してまでこんな児戯に参加なさっているとは思いもよりませんでした」

 

「有給申請は行ってますので問題はありません。でも…まさかあなたと戦う羽目になるなんて…」

 

「…何です?私と戦うと、何か不都合でもおありでしょうか?」

 

「っ……」

 

 気まずそうに少しだけ視線を泳がせる久侘歌。あれは少々まずい。彼女は考えている事が表情に出やすいタチだ。凡人より頭のキレる八千慧なら読心じみた発言をするに違いなかった。

 

「『地獄の関所の番人である私の実力が測られる恐れがある』…とでも考えているのでしょうが、安心して下さい。こんなお遊戯であなたの実力を測ろうとする程、私は愚かではありませんから。そもそもあなただって(・・・・・・)、本気を出すつもりは全く無いのでしょう?嘘の本気で私に策を練らせて、次に鬼傑組が総出で攻めてきた時にそれを挫く。

……それとも、そこまで読んだ上で敢えて本気を出すのでしょうか?」

 

「…何も、言うことはありません。にとりさん、開始の合図をお願いします」

 

「はいはーいっ!」

 

「全く…そう焦らなくていいでしょう。そんなに早く彼に迎えに来てもらいたいのですか?」

 

「迎えに…?どういう事ですか」

 

「あなたは敗北するんですよ。この私にね」

 

「…面白いですね。やってみて下さい。あなたの実力で私に勝てるかどうか…!」

 

「フッ…」

 

「これは激しい戦いになりそうだっ!それじゃ、よーい…始めぇっ!!」

 

 合図と同時に両者は動き出した。まず久侘歌は飛び退いて距離をとって、一方八千慧は、まるで体術を使ったかのように静かに動いて、久侘歌へテールアタックを繰り出していた。

 どちらが速いか。両者共に速かったが、僅差で久侘歌の方が速く、尻尾による鞭のような攻撃を避けていた。尻尾は浅く地面を削り、後方に砂を飛ばす。しかし八千慧は尻尾が地面に当たる際に尻尾を利用して棒高跳びのように跳躍し、後方に飛び退いた筈の久侘歌まで接近した挙句、胸ぐらを掴み、地面へと叩きつけてしまった。

 当然、八千慧は地面に叩きつけた後に久侘歌を拘束することも忘れない。…足で背中を踏んで、胴体を圧迫させている。そんな八千慧のことは、あとで俺がボコボコにしてやりたい。

 

「グッ…これじゃあ身動きが……!あなた…結構速いんですね…少々驚きましたよ…」

 

「ええ、まぁ…。あなたの目の前に罠を仕掛けるだけの隙を作れる程度には、私は速いですよ」

 

「えっ………」

 

 罠と聞いて、久侘歌は即目の前を見る。しかしそこには何も無い。すると、そのタイミングで、八千慧はズズズと足を引いて一本の線を描いた。それを見た久侘歌は、まるで時間が止まったかのように、動きを止めてしまった。八千慧が久侘歌から足を離しても、ピクリとも動かなかった。

 

「フフ……引っかかりましたね。やはり、大元の鶏の性質は色濃く受け継いでいるようですね」

 

「なっ、ななな…!?何が起こっているのか!?久侘歌の動きが止まってしまったー!!」

 

「なんて事はありません。鶏とは目の前で直線を引かれると、催眠状態に陥るのですよ。なので、彼女にもその催眠をかけてやっただけです」

 

「ま……まさか、そんな事が…」

 

 いかにも余裕といった様子で、動かなくなった久侘歌の顔のそばにしゃがみこむ八千慧。彼女が一体何を考えているのか分からずに、思わず身を乗り出してそちらを注視する。すると、八千慧は手刀をつくり、ドスッ、と音がする程に勢いよく手を振り下ろした。

 久侘歌はそのまま静かに瞼を閉じて、呆気なく意識を失ってしまった。人間ならともかく、人外からの手刀の威力は並ではない。人間だったら、手加減しなければ首が飛んでもおかしくない程の威力を出せる者もいる。やはり、人外のパワーは舐めてはいけないものだ。

 

「…これでいいでしょう。降参並の早さで決着がつきましたね。フフッ…」

 

「これは恐ろしい策略家だ…敵に回しちゃダメなタイプ…かもしれないねっ…!これにて第四試合決着!勝者、吉弔八千慧ー!!」

 

 ここで八千慧が勝ち上がったという事は、次の二回戦では妖舞と戦う事になる。以前までの妖舞ならともかく、今の妖舞ならばどうなるのか…。少し彼らの戦いが楽しみに思えてきた。

 そして俺は、八千慧の想定通り、気を失ってしまった久侘歌の迎えへとステージに降り立つ。その際に彼女と目が合うが、薄ら笑いを浮かべる奴に対し、軽く睨み返すことしかできなかった。

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