※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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Dブロック本戦(二回戦後半)

「二回戦二試合目で争うのはこの二人だ!突如能力を発現し、姉を打倒して我々の予想を覆したブラックホースっ!身体から刃を出すのって鬼畜能力過ぎないか!?魂魄妖舞〜〜!!」

 

「対するは鬼傑組の組長、吉弔八千慧!!我々の情報網によると、予選期間中の幻想郷で、彼女の姿が何度か確認されていたらしいぞっ!!」

 

(っ…!?バレないように尽くしたハズ…!一体どこで私を見かけた?何故私だとわかった…?)

 

 因みにその情報をにとり側に流したのは俺だ。いつだったか、予選があった日の夜の散歩中に、紅魔館周辺を飛行していたのを見かけた。気配は抑えていたので鈍感な俺は最初は気付けなかったものの、肝心の尻尾が丸見えだったので、偵察に来たんだろうなと何となく分かった。

 

「そーか分かったぞ!お前偵察に来てたのか!」

 

 あの用意周到そうな八千慧がわざわざ散歩的な気軽さで畜生界から地上まで来るのだろうか…?いや、それは少し考えにくいと思う。となれば、自らが実地調査に来たと考えるのが自然だ。

 妖舞がそこまで考えている…とは思えないが、やはり素人目に見ても偵察などに感じられる行動だろう。何だか彼女らしくないような気がする。何というか、あからさますぎるというか…。

 

「突然お前呼ばわりとは、生意気な子供ですね」

 

「うっせぇ!幽々子様が負かされたから今の俺はイラついてんだ!さっさとお前倒して、あの黒い馬女にも勝ってやらァ!特に恨みはねーけど覚悟しろよッ!俺はあんな催眠にはかからねぇ!」

 

 あの催眠は鶏専用だというのに…やはり妖舞は理解力が死滅しているようだ。あの時の八千慧の説明でそこまで考えが及ぶはずだが…やはり少し寺子屋で勉強させたいものだ。

 それにしても、弦月姫と戦った時のようなあの冷静さはどこへ行ったのやら。これではまるで、普段通りの妖舞だ。

 

「鈴仙、今の妖舞の波長って?」

 

「もうすっかりいつも通りの状態よ。もしかしてさっきのは、弦月姫ちゃんとの宿命の対決だから本気で気合を入れてた…って感じなのかしら…」

 

「気合い入れただけで波長まで変わるとかもはや意味わかんねぇ…どんだけ勝ちたかったんだ…」

 

 勿論それが良い事である事に変わりはないが、願わくばあの戦いのような集中を今回も発揮してほしいものだった。情緒不安定な妖舞を相手に、それを求めていいのかは分からないが。

 

「随分と強気ですね。つい先程、己の能力を使いこなし始めたばかりだというのに」

 

「ヘッ、強気でもねーとお前の能力には勝てないだろーが!」

 

 妖夢や妖舞は彼女の能力を知らないはずだが、妖舞は一体、どこから八千慧のクソ厄介な能力を知ったのだろうか。異変解決後に、俺の中にいた幽々子さんが教えたというのなら納得だが……。幽々子さんだったらそういう事もやる……いや、やるのだろうか?そうやって幽々子さんが誰かに教えるイメージがまるで湧かないが、現時点ではそれしか考えられない。

 

「ほぅ…勇ましいですね。私に恨みが無いなら、あなた、我が鬼傑組に入りませんか?情緒不安定であるところには目を瞑りますよ。…私は早鬼と違って動物霊しか入れませんが、あなたは半分…いや四分の一ほどは既に霊体だ。…どうですか?あなたの力を見込んでそれなりに好待遇でお迎えしますよ?」

 

「そんなの死んでもお断りだッ!俺はいつまでも幽々子様の従者だ!!」

 

「…大人しくこの私に従っていれば、余計な傷を増やさずに済んだというのに…。後悔した所で、もう遅いですよ」

 

「しつこいな、お前について行くつもりはない!そもそも俺なんかを引き入れようとするあたり、お前の組は元々弱いんだろ!この俺がそんな所に入るわけが……」

 

「口を慎めよ…餓鬼が……ッ!!」

 

「っ…!?」

 

「黙って聞いていれば貴様…!私のみならず私の鬼傑組をも侮辱したな…!?」

 

「へ、へへ…っ…俺を引き入れたいんならまず、幽々子様くらいの巨乳になるんだな!」

 

「──────ッ!!?」

 

 言いやがった。あのバカ、口に出しやがった。八千慧は、見るからにまな板族に近い大きさだ。本人がコンプレックスに思っているかは不明だが今の発言がきっかけでそうなるかもしれないし、これを聞いている者のコンプを刺激してしまったかもしれない。

 八千慧は相当の実力者だ、それは間違いない。そんな奴のコンプレックスを刺激すれば…あとは目を覆いたくなるような惨たらしい末路を迎えるのみだろう。

 

「きっ、貴様ァァァ!!そそそ、そんな破廉恥なコトをよくも平然と…!!」

 

 顔を羞恥に…いや憤怒に染めた八千慧は、まだ試合開始の合図が出されていないにもかかわらず弾幕を展開する。

 …どうやら我が息子妖舞は、地雷原でのタップダンスがお得意のようだ。今回は無事に八千慧の地雷を踏み抜いてしまった。

 

「そーそ、そうやって怒った方が面白くなりそうだぜっ!かかってきな、返り討ちにしてやる!」

 

「おおっ、おーっと、彼の無防備な発言によって事態が急展開し始めたぞ!?こりゃあまずいね、すぐに始めよー!始めぇぇっ!!」

 

「行くぜッ!!」

 

 開始の合図と同時に、両掌から刃を出して接近する妖舞。先程の居合斬りのような速度ではなく一応は目に見える速度での接近だ。

 

「喰らいなさい、魂魄妖舞ァ…!!鬼符『搦手の犬畜生』!!」

 

 八千慧から放たれたるは火の玉のような弾幕。それが蛇のように連なり、様々な方向から妖舞を襲い始める。

 自身が一直線に進むのに対し弾幕は複数の方向から向かってくる。これは少々不利だ。前に動いても背後に回り込まれては退路が絶たれるに等しく、妖舞は前進するしか無くなってしまう。が、そこは脳筋の妖舞だ。自前の刃で弾幕を斬りながらジワジワと距離を詰めていく。

 とはいえ、妖舞の接近をそう易々と許す八千慧でもない。彼に向ける弾幕の密度を増やしつつ、遠回しに包囲するように、ホーミング性の弾幕を大量に設置している。

 

「くっそ、しつけェ……!」

 

 妖夢や妖忌のように飛ぶ斬撃を扱えるのなら、それを放ちまくることによって囲みを突破できるはずだ。しかし妖舞は、やっと雨を切れるようになった程度。それでもかなりの成長と言えるが、斬撃を飛ばすには至らないレベルらしい。

 以前はそれをやっていたような気がするのは、俺の気の所為だろうか。

 

「フフ…あなたはもう私の手の中ですよ。さぁ、余計な怪我を負う前に、己の敗北を認めなさい。そうすれば軽傷で済ませてあげますよ」

 

「まだだ!チクショウ……まだ未完成…だけど!

『剣(つるぎ)の舞』!」

 

 本当にどうしたんだ、息子は。落ち着いているわけでもないのに語彙力が上がっている。直情で脳筋なガキンチョらしさは残りつつも、語彙力が跳ね上がっている。

 成長は喜ばしい事だが少々不気味だ。これまでいくら言ってもダメだった妖舞だからこそ、特にそう思ってしまう。

 しかも、戦闘スタイルまでもが変わっている。先程の戦いでは妖夢のような直線型だった。だが今回…というより今は、幽々子さんの歩調に似た曲線型の動きだ。

 しかし妖舞はそれに慣れていないのか、たまに足が縺れそうになっている。それでもなんとか、動きを止めずに舞いながら弾幕を切っていく。

 

「…思ったよりもやりますね。ですがその動きはまだまだ未熟…。ぶっつけ本番では、有効打には到底なり得ませ─────」

 

 余裕の笑みを浮かべる八千慧の表情が崩れた。ハッと何かに気付いた彼女が後方に飛び退くと、彼女が立っていたその場に10数センチほどの刃が大量に降り注いできた。

 発射源は妖舞の半霊。そういえば妖舞の半霊、さっきから行方不明だった気がする。いや、半霊なんて余程注意深く観察しなければ忘れてしまうものだろう。そんな心理を突いた上手い作戦だ。

 

「小癪な…!!」

 

 後方にもホーミング性の弾幕を放った八千慧。弾幕の密度は本体に向けられているものと同じ。肉体より小さい半霊なら斬らずに回避が容易だ。半霊は隙間を縫うようにして徐々に八千慧に接近していく。感覚なのか被弾させられない事に気を悪くした八千慧は、妖舞への弾幕は継続しつつ、己は半霊の相手を試みる。

 そのおかげで、半霊と挟み撃ちの形になった。あれは上手い。だがあれで刃を放てば、八千慧が回避した時本体に突き刺さる気がしてならない。

 

「トドメだ!!魂符『幽明の苦輪』ッッ!!」

 

「なッ……!?」

 

 半霊が妖舞の形になる。そして本体同様に両掌から刃を出し、八千慧に斬りかかる。ただしその動きは本体のトレース故に、半霊の攻撃は僅かに遅れてしまう。

 

「ぅおりゃあああああァァッ!!!」

 

「くっ…」

 

 妖舞の攻撃は背中の甲羅で受け、半霊の攻撃はよく見切った上でか、なんと素手で掴み取った。俺達観客は勿論、妖舞本人すら驚いたのはもはや言うまでもないだろう。

 手からは当然の如く流血するが、八千慧は全く意に介していないようだ。

 

「なっ、なんで…」

 

「素手ではあなたの刃を受け止められない…そう思いましたか?」

 

「ッ!!」

 

「そんなヤワな覚悟では、組長は務まりません。お返ししますよ────!!」

 

「うぎゃっ……」

 

 半霊の刃を掴んだままで腰を捻る。そうやって最大限に勢いをつけて、半霊を本体にぶつけた。咄嗟に半霊を白玉状に戻せばよかったが、妖舞は瞬間的にそんな判断が下せず、自分同士で強かに衝突してしまった。

 ゴチンともゴキンとも聞こえる、聞いてる俺が思わず顔を顰めたくなるような嫌な音が響いた。痛そうどころの話ではない。アレは絶対に痛い。

 

「龍符『龍紋弾』ッッ!!!」

 

 円形に並び、広がったり縮まったりする弾幕を連続で喰らい、吹き飛ばされる。まさか弾幕での追い打ちとは思いもよらなかった。流石ヤクザ、トドメに手は抜かないらしい。

 

「ち…く……しょう……!!」

 

 片手で頭を押さえて、片手で地面を引っ掻く。土煙の中でハッキリと見えないが、妖舞のそんなシルエットが見えてくる。頑丈なあの妖舞が頭を押さえるなんて、相当な衝撃だったに違いない。

 

「決まったァァァ!!中々攻め込ませないとは、流石は搦手の使い手だっ!!相手を思うがままに支配して圧倒してしまったぁぁぁああ!!!」

 

「痛そうな音だったね…でも自分自身とぶつかるなんて半人半霊の血縁者ならではの体験だよね!挟み撃ちまでは凄かったんだけどね〜…」

 

「まさか素手で刃を掴むなんてねぇ…。えっ!?って驚いたよ、私も…。何はともあれ、決勝進出おめでとうございま〜す!!」

 

「おめでとうございま〜す!!」

 

「やれやれですね…。私とした事が、子供の戯言如きに熱くなってしまった。私もまだまだです。親は一体どういう教育をしているんでしょうね。親のツラが見たいものですね」

 

 俺を見ながら言われても…。




計算高いのにうっかりさんな八千慧も可愛い。
早鬼にはつい本当の自分を見せちゃう…みたいな八千慧も最高だよね、なんて思った今日この頃。

リクエストのメモを見返したらちょ〜っとあったようなので、気分転換で消費していきます。
特にクロスオーバーのを。正直、そのリク貰った当時は
「お、おう…そうなのね…(汗)」みたいな心境だったんですが、そのキャラや漫画のことを知ったらなんか面白そうだと思ったので。
そこに至るまでのストーリーは…何か尤もらしい材料があったので丁度いいです。
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