静かの海。ただひとつの生命も無く、文字通り静かな海である。戦闘部隊の玉兎達は周辺を哨戒することもあるが、ある日そこで、金と木などの材料で制作されたと思われる妙な船を見つけた。
「ッ!?……なっ、なななな…!?何なの、あの大きな船は……!!」
その船はとても巨大で、どう見ても百人単位の人間くらいは乗せられそうな程だった。だがその外装はとても趣味が悪い。
真正面には、大仏のような顔が象られている。しかもそれが黄金で出来ているのだから、余計に悪趣味に見えてしまう。更に船の側面には大きく
「神」という漢字が書かれている。自己顕示欲というか何というか。玉兎達は、サイズに驚いたあとは半ば呆れていた。
「ヤハハハハッ!!着いた…とうとう着いたぞ!ここが
そんな声が聞こえてきた。声の出処は、すぐに検討がついた。あの悪趣味な船の上からだった。
その時、船から1人の人間が飛び降りてきた。その者はとても小さく見えた…が、それが船との対比のせいだとすぐに玉兎達は気がついた。
大きい。この男はとても身長が高い。そして、絵の中の雷神が背中につけているような、輪っか付きの太鼓を背中に装備している。輪は肩甲骨のあたりから生えているように見える。手には金の棒を持っていてかなりリーチがありそうだ。
そして、耳たぶが異常に長い。両方の耳たぶが臍の少し上ほどまで届いてしまっている。もはや福耳という次元を超えてしまっている耳たぶに、1人の玉兎がつい吹き出してしまった。
「ぷふっ……ぷくくっ……な、何あれあの耳…くくっ………あーもう、ダメだぁあははははっ!あんなの笑っちゃうってアハハハハハッ!」
「……何だ貴様?」
「「「……ッッ!?」」」
玉兎達は総じて顔を引き攣らせた。彼と玉兎達との間にはまだまだ距離があった。それなのに、彼は一瞬で距離を縮めていたのだ。まさに目にも留まらぬ速さだった。
笑っていた玉兎もそうでない者も、その瞬間に戦闘態勢に入った。
「おっ…お前っ…!何でこんな所に居るっ!?」
「ん…?何を聞きたいのかサッパリだ。まずは、我から問おうか。お前達は、この
「ふぇ…フェアリー………なに?」
「バースだよ、バース!フェアリーバース!」
「ヴァース…じゃない…?」
「え、ちょっと待って、どういう意味?」
「わかんないよそんなのっ!」
男が言ったその謎の言葉に疑問を抱いた玉兎は他の玉兎達に尋ねる。しかしどれも、ろくな回答ではなかった。
「……………成程、『月の都』か。やはりここは限りない大地に間違いない……ヤッハハハ!!」
目を瞑り、何かに耳を澄ませる素振りを見せたその男は、玉兎達が言ってもない事を口にした。だが月の都が近くにあるのは紛れもない事実で、この男が何を言っているのかが理解出来ていない玉兎達でも、想像力を掻き集めてひとつの結論に辿り着いた。
「…侵略者!侵略者だっ!!」
「ヤッハハハ…そんな武器を我に向けて…。神に仇なすのか?兎風情が」
「お前なんか…神じゃない!神様はもっとこう…そう、依姫様が降ろすような人だっ!」
「……何を言っているのか、サッパリわからん。だがまぁ…話のわかりそうな女を見つけた。もうお前達は用済みだ、消えろ。
「「「─────ッ!!」」」
玉兎達に向けられる男の手が青白い光を放つ。そこから放たれたのは、一筋の電撃。レーザーのような電撃は全員を貫き、背後の森をも焼いた。
それに耐えられたのは凡そ半分。その中でも、話せるほどの者はたったの一人だけだった。
「な…………に……?」
「ほぅ…気絶していないとは。人間ではない分、幾らか耐性があるようだな。ふむ。…だがまぁ、今ここで殺す必要は無いだろう、お前達はいずれ我の手下となるのだからな」
「イ…ヤ………だ……!!そん、なの……!」
「…お前達の上司が向こうで何か言っているぞ?
『そろそろ戻ってくる時間だというのに、近くに気配すらない…。玉兎達はまたどこかでお姉様とお話しているのか』……とな」
(ッッ!?ダメだ…もうこうなったら依姫様達を呼ぶしかないっ…!『気付いてレイセン、私達は今、静か─────』)
ひとりの玉兎が、都内に居るレイセンへ向けてテレパシーを送る。しかし男はそれに気付いて、その通信を遮断する。
「ぁ………ど……して……?」
「小癪な小娘め…。そのような小声で届くとは…思念通信の発展系か…?しかしそれも波長、波長ならば私の能力の範疇。妨害などは造作もない」
「くぅっ………くそぉっ…!」
「神である我をおちょくった罰だ、今この場にて死なせてやる。1000万ボルト
「──────……」
先程の10倍もの威力で放たれる電撃に打たれ、彼女は一瞬の内に意識を持っていかれてしまう。いや、残りの辛うじて意識を保っていた玉兎達も巻き込まれてしまっていた。
「…さて。一先ず都を制圧するか」
こうして玉兎達は、男の侵入を許してしまったのだった………。
今回のクロスオーバーはワンピースです。
果たしてその男は月の都を乗っ取れるのか……。