「さて、
「フン、神を相手にいい度胸だ」
「俺は神の器だけど、お前はちょっとばかり力のある人間でしかないよ。思い上がりも甚だしい。厨二病を疑うレベルだな」
「神を相手に何たる無礼…。反乱の芽は早急に摘まねばなるまい」
「三下の雷使いがイキがるな、俺以下のくせに」
「よかろう、貴様の守りたいものを全て破壊した後に嬲り殺しにしてやる…ッ!!」
いい具合に煽りにノッてくれた。今回の煽りは単なる煽りではなく、戦略的煽りだ。確か奴は、冷静なままだと下級の技しか使わない上、更にはカウンター紛いな攻撃をしてくる。だからこそ、こちらからではなく、奴から行動を起こさせる。気分が高揚したり、戦局が不利になるまで大した動きを見せないエネルだ。煽る事によりどうにか感情を波立たせる事ができれば、それでいい。
「俺より強い雷使いなんてのはな、この世に存在しちゃいけないんだよ。俺こそが雷使いの頂点に立つ男なんだからな」
当然、建御雷のような本物の雷神は除いてだ。ここで言う「雷使い」とは俺や巫月、衣玖さん、魅玖、雷鼓姐さんのような能力者を指している。屠自古……彼女は怨霊の類なので除外だ。彼女の能力ではなく、種族特有の能力だからだ。彼女の場合は、数多の怨霊よりも少し強いというだけ。
まぁ尤も、どちらにせよ俺は雷使い達の頂点に立たなければならない。使命感?そんなチープなものではない。ただの、人生の目標だ。
「消えろ。
空中に雷エネルギーを濃縮させていくエネル。俺を狙っている訳では無い。宣言の通り、「俺の守りたいもの」を破壊する腹積もりらしい。
俺の主な武器は剣、弾幕、魔法、物理。対して奴は雷と熱。となれば対抗手段はひとつ。目には目を歯には歯を。雷には雷で対抗だ。
「させるか!雷壁『雷纏反撃壁・結』!!」
エネルはほぼ本気の
だからこそ俺は威力を上乗せして跳ね返すこの反撃壁を使った。結界型なので単なる壁ではないのがこの技のミソだ。結界…つまり霊力との複合技術なので、強度も上がっている。
「小賢しい、それ諸共消し去ってくれる!!」
エネルは雷を放つ。やはり青白い雷だ。俺より電圧は強いんだろう。魔理沙の本気のマスパ程に匹敵する威力だと思う。
「ぬぅっ……!?」
それでも、今回は俺の防御力の方が上だった。エネルは跳ね返された雷を避ける。その地点にはクレーターが出来てしまったが後で直せばいい。
「生意気な小僧めが…」
あの速さを避けるなんて、やはりエネルの移動速度はとんでもないらしい。文や穹でないと目で追えないような気さえする。
少なくとも俺の目には映らなかった。きっと、レミリアやフラン、咲夜さんにも見えてはいないはずだ。
しかし困った。俺の雷弾幕はエネルの移動速度以下で、音速弾幕結界は超電磁砲。物理攻撃だ。つまり…もしかして俺は、カウンターすらも奴に叩き込めない…?
「どうした、その程度か?そんな反撃では我には勝てんぞ!」
ドドドン、と背中の太鼓を幾つか叩くエネル。すると真っ黒な雷雲が発生し、次第に雷を帯びるようになる。今回は非常に大規模だ。雲の範囲に含まれているのは紅魔館だけでなく、更に広い。妖怪の山、魔法の森までもが含まれている。あの標高だと守矢神社も入っているだろう。
「ちょっとちょっと…何なのよこれは!広すぎるじゃない!」
「レミリア、皆を連れて中へっ!」
「わかってるわよっ!行くわよフラン、咲夜!」
「ヤハハハハ、逃げても無駄だぞ?館と心中でもしたいのか?…マクシムが無くとも、雷雲程度を生み出すのは造作もない事なのだ…!!我の力を甘く見たな、小僧!」
「この程度の範囲攻撃でイキがるなよ人間が…!夜の帝王たる吸血鬼に敵うとでも思ってるのか?ブチのめしてやるッ!!」
たかが数キロ、もし俺が本気を出せばこんなの普通に出来る。レミリアもだろう。紅い霧はこの幻想郷中を覆い尽くす。霧を弾幕に変換すれば…超範囲攻撃となる。
「フン…イキがっているのはどちらだろうなァ?
すると、頭上に広がる黒い雷雲が光った。もう雷が落ちてくる。広いから防げない。…しかし、本体を止めれば技も落ち着くのはもはや王道だ。だから、手の届く範囲で守れるものは守りつつ、エネルを止める。
エネルが雷を落とすのに集中している隙を狙い俺も攻撃の為の準備をする。
「『霊力遷移』…からの『妖魔封結』!!」
剣に結界を纏わせ、エネルに斬りかかる。雷で攻撃しても避けられるなら、物理とは違う方法で斬るしかない。もちろん、この非スペルは特別なもの。上手くいけばエネルにさえ通用する。
「ハァァァァッ…!!」
「
俺はエネルを殺す気で剣を振るった。だが奴は黄金の棒を槍の形にして斬撃を受け止めた。当然俺はそれを読んでいた。やがて破壊された結界は散ってエネルを囲い、能力を封じてしまった。
そう、エネルは避ければよかったのだ。
「な、に……!?何をした…貴様…!!」
「お前のその能力は、神の能力なんかじゃなくて悪魔の実によるもの。けど生憎、この結界は魔の力を無効化するんだ。お前は雷人間だし、全身に魔の力がまわってる状態。…もう、言わなくても解るよな?今のお前は、ただの人間程度の力しか無いんだ」
「うそ、嘘だ…そんな、事…できる訳が…!神の力…なんだぞ…」
エネル本人の力を封じたので、雷雲は晴れた。どこかに雷が落ちる前でよかった。もし落ちれば同時多発的に被害が広がるだろうし、大変な事になっていたのは間違いない。
そこで俺は、ただの人間程度になったエネルにトドメを刺す為に魔力回復薬を服用し、ひとつの魔法をかける。戦闘が落ち着いたからこそ魔力を回復させられるだけの余裕が生まれた。
「雷の力が神の力だと言うのなら、お前より強い俺の方がより神に近いよ。魔術『
「ッ……何故…だ………」
ガクリと倒れ伏したエネル。やっぱり、魔法は素晴らしい効力を発揮してくれるらしい。問題はどうやってエネルをあの世界に帰すかだ。
「…うーん…」
「何だか、凄くあっさり倒しちゃいましたね…」
「!…美鈴、避難してなかったの?」
「ええ、門番ですから。雨の日も風の日も、雷が降る日も、この館を守るのが私の役目です」
「数年前の美鈴に聞かせてやりたいセリフだね」
「うっ、それは言わないで下さい…。ところで、何をそんな唸ってるんです?」
「コイツをどうしようかと思って。どう思う?」
「始末してしまえばいいのでは?…と思いましたけど、曲がりなりにも人間…なんですよね?」
「そう。だから、巨人と違って易々とは手出しができないし、ちょっと違う意味で別世界となると俺には手が出せない。時空を歪めるったってさ、不可能はフツーにあるし、俺のは練度は低いし。別な幻想郷って訳でもないし。となると、頼れるツテは3つのみだ」
「3つもあるんですか」
「母さんと紫さんと茜だよ。茜はまだ子供だし、母さんに頼むのが早いか。紫さんにお願いするとまた『貸し一つね♪』って言われそうだしね…」
「あぁ、成程。…大丈夫なんですかね?こう……なんというか、上手く言えないんですけど〜…。まぁ、お母様なら大丈夫ですよねっ!」
「…?多分大丈夫だと思う」
その後スキマにて母さんを呼び、エネルを元の世界へと返してもらったものの、結局「もう少し夜も帰ってきなさい?昼だけでは寂しいわ…」と言われ、新たな約束を交わした俺であった……。
◆
その晩。大体、深夜0時頃だろうか。次の日が決勝トーナメントという事もあり、遊ぶ事も無く早めに就寝していた俺は、コツコツ、カツカツと窓を叩く小さな音で目を覚ました。
小さな音で目覚めるなんて俺らしくはないが、最近は日付けが変わる前に寝る事が無く、今回は特別眠りが浅かったというのもあるのだろう。
目を覚ました俺は、音に誘われるまま窓の外へ視線を向けた。そこには青髪の少女……チルノがフヨフヨと浮かんでいた。
フランとレイチェルがモゾモゾと動いたので、起こさないよう細心の注意を払いながらスキマで外に出る。この移動方法はもう見慣れたからか、チルノは全く驚いた様子を見せない。
「よう。こんな夜にどーした?」
「…ん。寝てたのにごめんね…?」
「それは別にいいよ、どうせ浅い眠りだったし。で、どうした?何かあった?」
頭が冴えてきて、やっと気が付いた。今の俺はパジャマだ。チルノにパジャマ姿を見られる日が来るとは微塵も思っていなかった。尤も、彼女は全く意に介していないようだが…恥ずかしい。
「今度さ。決勝戦?じゃん?」
「行けるかも分かんねーけどな。早鬼には何回か殺されてるし、準決で負けかもしんねーぞ?割と真面目に」
「それは無いよ。だってエスカルゴだもん。対策考えてるんでしょ」
「そりゃあまぁ…そうだけど。俺だってそこまでバカじゃねぇ、対策できるものなら対策するさ」
「だからさ、決勝戦は霊夢とエスカルゴの戦いになると思うんだ。…あたいあの時、本気出す前に霊夢に負けたからさ…。だからお願いっ、霊夢に勝って!あたいの無念晴らして!」
「本気を…出す前に……??」
確かあの時は、大人姿のチルノになっていた。だからアレがチルノの本気…のはずだ。まさか、彼女には更に上があるとでも言うのか…?待って怖い、本当に俺達吸血鬼族の天敵になるのでは?天敵やライバルを育てる思いでこのチルノを指導してきた俺だが、もしかしたら俺は本当の本当に強敵を生み出してしまったのかもしれない。もしそうだとしたら、あまりにも将来有望すぎる。
「…怒ってるよね。ごめんなさい…折角……特訓してくれたのに…っ…」
声を震わせ、目元に涙を溜めるチルノ。月光に照らされキラリと光を反射させて綺麗だが、今はそんな事を考えている場合ではない。
「待てっ、怒ってない、怒ってないから!てか、俺はそういう事で怒らないから!…でも、なんで俺が怒ってると思ったんだよ?」
「『本気を出す前に?』って言ったし…『本気を出す前に負けるなんてダメな奴』って意味かと…思っ…てぇ……うっ……うぅぅ…!」
「ちょ、泣くなよぉ…オイオイオイ…。ごめん、そういう意味じゃないんだ。アレが本気だったと思ってたから…」
「違うもん…あたいもっと強くなれるもん…!」
少女に泣かれるのはとても心が痛む。ましてやかなり親交が深い少女だ。如何に妖怪の俺でも、目の前で泣かれるのは居心地が悪い。
その後、頭を撫でてどうにか泣き止ませた上で改めて彼女の話に耳を傾ける。
「あれで…本気でいっぱい凍らせた後に、最強のあたいになってやろって思ったんだ…。その方が普通に変身したよりいっぱい燃えるから…」
「!」
チルノの言う「本気」の意味が漸く分かった。バーニングチルノだ。俺はあの形態を「チルノの形態変化の一種」と捉えていた。だからこそ大人チルノが最強の形態だと思い込んでいた。
しかし彼女の中では違っていた。大人チルノの上の段階が、あのバーニングチルノなのだ。
大人チルノで広範囲を強烈に凍らせ、その際に溜めた熱を、バーニングチルノとして放出する。成程、確かにその方がただ変身するよりも威力は出るだろう。より溜めて、反動をつけた方が高くジャンプできるのと同じだ。
更に、バーニングチルノで霊夢の御札を燃やすとしたら…。大人チルノよりもいい勝負ができたかもしれなかったのだ。
少なくとも彼女本人はそんな感じの事を考え、そして後悔している。
きっと、今泣いてしまったのはあの時の悔しい気持ちを思い出したからなのだろう。チルノは、そういう子だと思う。
「だからお願い、霊夢を倒して…っ!」
あの大会で霊夢に勝つつもりは無いんだが…。愛娘ほどに面倒を見ているチルノからの頼みだと無碍にもできない。しかし霊夢は幻想郷の調停者みたいなものだし、何より妖怪である俺が勝つと他の妖怪が調子に乗り、異変が勃発する可能性があるのだ。それは俺にとっても不都合で面倒だ。どうしたものだろう。
「あたい知ってるよ…?何年か前に、レミリアと組んで霊夢倒せたんでしょ?」
「ッ……」
「あの時より強くなってるなら倒せるよ、絶対!だって…あたいの先生なんだからっ…!」
あの時は単に不意討ちだったから勝てたようなものだ。不意討ち&初見殺しだし、あの時の霊夢でも対応できなかった、というだけなんだろう。今の霊夢は強い。今の俺では手も足も出せない。
チルノにそう言っても、きっと聞いてくれないだろう。応援してくれるのは嬉しい。しかしだ。
応えられるものなら応えたい。だが俺は霊夢に勝つ気は無いし、そもそもそこまで強さも無い。こんなんでどうやって期待に応えるというのか。
「……分かったよ。霊夢を倒せるように頑張る。その代わり、決勝戦は応援してくれよ?チルノの応援があれば、限界まで頑張れると思うから…」
「もちのろんだっ!応援はあたいに任せろ!」
「頼むぜ」
────言ってしまった。明日はとんでもない試合になりそうだ。が、決勝戦の前に早鬼組長を倒さねば…。
はい、エネル戦でした。
エネルの方が移動速度が速い為、(変更前の流れでは)動体視力を強化する予定だったんですね。ただ、動体視力強化ってのが鬼滅の刃のカナヲと丸被りだったので、知ってしまったからには強行できまいと判断しました。
鬼滅の刃といえば。
無惨vsエスカルゴではエスカルゴが勝ちますね。無惨が範囲攻撃だとしたら、エスカルゴは超範囲攻撃です。原作においても産屋敷ボンバーが割と通じてたので、火球をぶち込めれば勝ちですね。エスカルゴは地味に結界も使えますから、火球を派手に溜めるまで足止めは出来そうです。多分。
剣の勝負では、エスカルゴはクズ以上兄上以下?くらいだと思うので、剣だと無惨には勝てないんだろうなぁと思います。無惨が逃げるので。
無惨vs妖夢では、無惨の逃げ勝ちだと思います。
勝ち逃げではなく、逃げ勝ちです。逃げて勝つんです。鬼滅の刃原作を読んでる人なら分かるかと思います。寿命差ってやつです。汚いですよね。
早苗と諏訪子様が寿命戦をしたらどっちが勝つ?みたいなものです。そりゃあ諏訪子が勝つよね、早苗は人間なんだから。…という話です。
無惨vs妖忌?そりゃ勿論お爺ちゃんの勝ちです。
きっと、誰よりもスマートに倒してくれますよ。
逃げる隙も与えないでしょう。
東方界の