「ご機嫌麗しゅう、パチュリー」
「ビックリするからスキマでは来ないでって何度注意したら分かるのかしら?」
眉間にシワを刻み、射抜かんばかりにこちらをジロリと睨んでくる。筋肉的な意味での力は強くないものの、溢れんばかりの魔力と、威厳だけはかなりのものだと思う。
「門までは普通に飛んで来たよ。でも図書館まで遠いんだからショトカしてよくない?」
「はぁ……。で、何の用?私の読書の邪魔をしに来たわけじゃないんでしょ」
「読み終わった魔導書の返却。ありがとね。でもまだ俺には難しいかったな…実践はムズいかも」
「今回も早いのね。…相変わらず、大事に読んでくれているみたいで安心したわ」
借りていた魔導書を手渡すと、傷や汚れなどが無いことを確認し、柔らかく微笑む。本を大事にしたいパチュリーだからこそ本の確認は怠ったりしないのだろう。
人間の時には、ヒビキに本を曲げられた経験があるから、俺にもパチュリーの本を想う気持ちはよくわかるつもりだ。
「まぁね。俺も本は大事にしたいしさ。…魔理沙にもその旨伝えて、本の貸し出しOKすれば?」
「絶対にイ・ヤ・よ!あの子は床に本を置くの!そんな奴に私の本は貸せない!魔理沙にアレコレ言っても無駄なのは、歴史が証明してるでしょ!いくら異変解決で活躍したり、私が弾幕ごっこで負けたりしても、そこだけは死んでも譲れないんだから!大体ね、あんな埃だらけの床に本を置くなんて本っ当有り得ないんだから!それくらいは分かるでしょあなたなら!」
「わかった、わかったからそんな怒らないで…」
「全く…だったら分かりきったことを言わないで頂戴」
「ゴメンナサイ…」
「…折角来たんだし、羽休めにお茶くらい飲んで行ったら?今呼ぶから」
チリンと透き通るような音のベルを鳴らすと、次の瞬間、時間が止まった。まるでベルが時間を止めるための道具であるかのように。
それから少しだけ時間が空いたが、咲夜さんが紅茶を持ってきた。勿論咲夜さんは俺の来訪にも気付いていたので、持ってきたカップは二つだ。
「ぬるめで宜しかったでしょうか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「本日は何用で?」
「魔導書を返却に。ついでに、魔法について何か話とか聞けたらなー、とか」
「なるほど。ですが、くれぐれも、魔法の練習で館を破壊しないでくださいね?」
「わかってますって」
ニコリと微笑むと彼女は時間停止を解除して、後はいつも通り接待をし、仕事へ戻って行った。
以降は、俺もパチュリーも紅茶を味わいながら魔法の話に花を咲かせた。やがて────。
「…何よ?」
「ん、何が?」
「私の顔見てどうしたのよって。話聞いてる?」
「聞いてるよ。ただ、綺麗な肌してるなってふと思っただけ。ロクに外に出てないだけあるなぁ」
「…口説き?ついに私を口説くつもり?」
「いやいやぁ…。無意識
「それもそうね」
それもそうね、ときたものだ。流石、魔術関連には自信があるパチュリーだ。しかし、意識して魔力を送り込んでも、本当の本当にパチュリーを堕とせないのだろうか?
本気を出せば、いくらパチュリーでも………。
「……………………」
「…魔力の無駄だから、やめておきなさい」
「ゲッ……バレた?」
「バレバレ。というより、魔力を私に送り込んで気付かれないとでも思ったの?」
「デスヨネー…」
表情を変えず、魔力だけをただ送り込んでいただけだというのに、アッサリ看破された。魔法に精通している彼女だから気付いたというのもあるとは思うが、少しくらい通用してほしいと思う。
「女にはとっくに満足してるでしょ。なんで今更私を堕とそうとしてるのよ」
「通用するのか試してみたくて。あと、紅魔館で堕とせてないのパチュリーだけだし」
「悪趣味ね。しかも最低」
「自覚してる。でも、
「丁度良くないわよ。そんなのそこら辺のメイド妖精に掛ければいいじゃない、なんで私なのよ」
俺を「最低」と言っておきながらパチュリーはメイド妖精を犠牲にしようとしてるあたり、ほぼ同じだと思う。というより他人を巻き込んでいるあたり俺より酷いような気がしないでもない…。
「妖精なんて
「
つまり俺は、少なくともくるみより魔力が多いらしい。以前くるみに魅了を掛けた経験がある。
逆に言うと、俺の魔力はレミリアやフランよりずっと少ないので、俺はあの二人に掛けられないわけだ。
「パチュリーの半分……ってそれ、あと1000年後でも達成できる気がしないんだけど…」
「もし私がその頃も生きてるとしたら、当然私の魔力も底上げしてるから、尚更あなたには無理な領域よ。薬物でオーバードーズしてもね」
「だろうね。…今、ダメ元で掛けてもいい?」
「やってみれば?魔力が無駄になっても知らないけどね」
「いいよ、どうせ今日は戦わないし」
「…結局読書が進まないじゃないの…」
小さく溜め息をつくと、本を閉じてじっと目を見つめてくる。俺はそんな彼女と目を合わせて、最大出力で魔力を送り込む。
くるみならば数秒で顔を赤くさせるが、やはりパチュリーともなると、そうもいかない。
「……」
「はい、これで満足?もう魔力枯渇したでしょ、いつまで見てるのよ」
魔力が尽きても継続して見つめていると、遂に本を開き視線を外されてしまった。この数秒間はただ見つめていただけだったが、いくらなんでも気付くのが早い。
「あ、バレた?へへ、もう尽きちゃった♡」
「ったく…バレるに決まってるでしょ」
「畏れ入るよ。ところで小悪魔達は?」
「今日も今日とて本の整理よ。ここから少し遠いけど。ムラムラしてるならそっち向かったら?」
「…なんでソッチもバレんの?サトリ妖怪…?」
「息が上がってる。顔も赤い。耳も薄らと赤い。妙に早口。熱じゃないのならムラムラしてるってことでしょ。これまでにも、あなたのそんな顔は見てきたし」
「今日はパチュリーに相手して欲しいなー、とか思ってるんだけどなー…?読書以外は暇でしょ」
「太陽に燃やされて死ねば?」
「わーお辛辣ぅ…。なんか今日さ、パチュリーを見てるとムラムラしてくるんだけど。もしかして俺に
「そんな事して私に何のメリットがあるっての?読書の邪魔されるだけじゃない」
「それも…そうだけどっ…」
本格的にヤバい、頭まで熱くなってきた。胸も締め付けられるように苦しくなってくる。最高にムラムラしすぎると苦しくなってくるが、まさにそんな状態だった。どうして、こんなにも性欲が湧いてくるのかも分からない。
「小悪魔ならここから北の方にいるわ」
「でも…っ」
「あーもう煩いわね。大の男が情けない顔してんじゃないの。性欲処理は小悪魔相手にしなさい。強制転移」
「待っ」
「…エスカルゴに魅了は効果覿面、と。ふむ…」
俺を小悪魔のそばに転移させたパチュリーは、ニヤリとほくそ笑んで手記にそれを記した。なおこの後は小悪魔とめちゃくちゃアソビまくった。
パチュリーだったら