※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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狙った獲物は逃がさない

「よぉ、来たよ」

 

「また開店同時に来た〜!今日も鯢呑亭の近くで待ってたんでしょ。肝臓大丈夫?」

 

「果実酒で壊れるほど弱くないぜ?」

 

「それもそうね!さ、どうぞ入って♪」

 

 あの夜、初めて鯢呑亭に行ってから俺の生活は一変した。昼間は誰かと遊んだり戦い、夕方頃になると人里に向かい、鯢呑亭で美宵ちゃんを酒の肴に果実酒を飲む。

 常連になったとまでは言わないが、少なくともこの数週間は毎日鯢呑亭に通っている。

 どうせ他の客もそんなもんだろうと思っていた俺だったが、それがどうもそうでもないらしい。毎日通っていると客の顔ぶれも分かってくるが、殆どの客は周期的に来ているのが分かった。

 尤も俺は美宵ちゃん目的なので、他の客なんて気にも留めない。もし仮に鯢呑亭が昼間から開店していたら、きっと昼間から来ていただろう。

 

「今日もいつものにする?」

 

「んー…今日は他のお客がくるまでもうちょっと強いヤツにしようかな?」

 

「えー、悪酔いしちゃわない?まぁでも、何事も慣れだものね〜」

 

 因みに、深夜ではなく夕方帯に来る時は人間に擬態している。魔法ではない。来店前に、両翼を切り落としているのだ。魔法なんて使っていたら1時間も経たずに魔力が尽きてしまう。それなら翼を切って再生を止めるのが手っ取り早いのだ。眼の色はそのままだが……まぁ別にいいだろう。

 そして俺は、毎日一番乗りする。他の客がくるまで、美宵ちゃんを視姦するために。

 

「店主は?」

 

「裏に材料取りに行ってるわ。すぐには戻らないと思うけど」

 

「ふーん…。あぁそーだ、この前言ったアレさ、考えといてくれた?」

 

「え〜…?嬉しいけど、私はお店もあるから……それにあなたは萃香さんの彼氏だもの、私なんかが手を出したら怒られちゃうわ。萃香さんから、コッテリ絞られそうよ」

 

「萃香、怒ると怖そうだもんなぁ…。鬼だしね」

 

「そうそう。だから…もうちょっと考えさせて?準備ができたら、きっと良い返事するから……。それまで待ってて」

 

「そう…かぁ…」

 

 何の話かというと交際についてだ。初対面でもアタックする俺なのだ、毎日通っていれば絶対にアタックする。そもそも美宵ちゃん目的なので、彼女も気が付いていたはずだ。しかしその答えはいつも「考えさせて」なのである。こんなことは初めてで、俺は若干もどかしさを感じていた。

 

「そんなにシュンとしないで、私まで寂しくなっちゃうわ」

 

「んー…」

 

「目が虚ろだけど、大丈夫?」

 

「うー…ん…?」

 

「んもー、早速酔っちゃった?やっぱり、コレは強かったかしら」

 

 頭がボーッとしてくる。まるで、霞がかかったようにボンヤリとしている。まともに考える事ができない。……いや、それは元からだとしても、理論建てて考えられない。目の前が真っ暗…いや真っ白だ。

 これは勘だがこのままではいけないと思う。

 

「…美宵ちゃん…」

 

「どうしたの?」

 

 ボンヤリとした頭で美宵ちゃんを見ていると、もしもここで彼女を襲ったらどうなるんだろう、などという倫理からハズれた考えが湧いてきた。だがここはカウンター席である。彼女を襲うにはもっと彼女に近付く必要がある。

 ……いや。そんな回りくどくて下らない方法、俺には似合わない。俺は俺なんだ、前に彼女にも言った通り、本能に任せて蹂躙するのみ。全ては欲望のままに。

 なんなら酔ったフリをするのだって厭わない。

 

「俺の眼…虚ろ…?」

 

「そうね…まるでもう…酔った、みたい…っ…」

 

 敢えて自分自身の眼について言及することで、美宵ちゃんには俺の眼を見るように促してやる。こうしてやることで怪しまれずに見つめ合える。

 すると美宵ちゃんは、顔をほんのり赤らめて、胸をキュッと押さえる。傍から見れば心臓発作のように見えなくもないが、そうではない。

 

「ごめん、なさい……ちょっと待ってて……」

 

 パタパタと小走りで店の裏の方へ走っていく。かと思いきやすぐに戻ってきた。どういうわけか口元が緩んでいるように見える。

 すると、胸を押さえて息を荒くしながら、こう告げた。

 

「…今日はもうお店から出て…」

 

「えっ?何でそんな急に…」

 

「私、待ってるから…お二階の窓から入って…。お店の裏の方ね……開けて待ってる……」

 

 カウンターから身を乗り出して俺の耳元でそう囁いた美宵ちゃんは、それだけを伝えるなり店の裏に引っ込んでしまった。

 すると入れ違いで、店主が材料を手に店の表に戻ってくる。

 

「あの、店主、美宵ちゃんは…?」

 

「悪いねぇお客さん、あの子体調を崩しちまったみたいでなぁ。夜更かしが祟ったのかねぇ、まだ若いからって無理ばっかしてからに…。おっと、追加で何か注文するかい?」

 

「あぁいえ…今日は俺も帰ります。美宵ちゃんにお大事にとお伝え下さい」

 

「ありがとうごぜぇます…すみませんね、有難く受け取らせて頂きます…」

 

 お会計のついでに、美宵ちゃんに良い薬でもと付け加えて、少しばかりお金を増量しておいた。体調不良ではないのは明白だが、建前上だ。

 退店し人目に気を付けながら店裏へ向かうと、丁度美宵ちゃんが窓を開けたのが目に入る。俺に気付くと、嬉しそうに目を細めて手を振った。

 俺はそれに笑みだけを返して、窓からこっそり彼女の部屋に入らせてもらう。和室ながらも女子特有の匂いが染み付いている。とても心地良い。

 

「靴、窓際に置かせてもらうよ」

 

「うん。…ねぇ、結界張ってくれる…?念の為に誰も来ないように…」

 

「分かった」

 

 二つ返事で引き受けた俺は、彼女の部屋周辺に不可視の結界を二重に(・・・)張った。物理的に入れないようにする結界と、お馴染み防音の結界だ。

 

「ねぇ、こっち来て…♡」

 

「っ……」

 

 美宵ちゃんはとうに布団を敷いていたようで、熱い吐息を漏らしながら俺の手を引いて、布団の上へと誘う。

 

「この前言ってた魅了(チャーム)…私に掛けたんでしょ…?身体が急にアツくなって…ガマンできない…♡」

 

「…そうだよ。美宵ちゃんはどうしたい?」

 

「エスカルゴさんこそ…私とナニしたいの……?今なら何でもシテあげる…言(イ)ってみて…♡」

 

 この分なら多分大丈夫だ。美宵ちゃんも確実に堕とせる。俺はそう確信し、内心小躍りした。

 この後、あんな事になるとは知らずに───。




美宵ちゃんパートはそろそろ終わりです。多分。
書きたいことが出てきたので。
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