※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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後遺症

『いただきまーす!』

 

「いただきます…」

 

「エスカルゴどうしたの?元気無いよ?」

 

「…なんか食欲無い」

 

「えっ?そうなの?」

 

「うん…」

 

湖に落ちたから風邪引いたかな…。

 

「お気に召しませんでしたか?」

 

済まなさそうな顔で俺を見る咲夜さん。

 

「い、いえ!そういう訳じゃ無くて…体調があまり良くないと言いますか…」

 

「そうですか…無理はなさらないで下さいね」

 

「もちろんです」

 

 

 

『ごちそうさまでしたー!』

 

「ごちそうさまでした」

 

なんだかんだ言って全部食べれたな。

やっぱ咲夜さんの料理は最高だ。

 

「全部お召し上がりになりましたね」

 

「ええ。やっぱ、咲夜さんの料理は美味しいので」

 

「そんなこと…」

 

「へへ…また食べた…ゲホッ!ゲホゲホッ…」

 

なんとか手が間に合った。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「え、ええ…ちょっとむせちゃいました」

 

「風邪ですかね…」

 

「多分…。手、洗ってきま…す?」

 

「どうしました?」

 

なんだこれ…!?

 

「………病院…永遠亭行ってきます」

 

「えー!?また鈴仙に会いにいくの!?」

 

フランが声を上げる。

 

「いや、そーじゃなくて…」

 

「じゃあ何よ!?」

 

「血が出た」

 

『え?』

 

「咳したら手に血がついた」

 

「…お姉様?昨日やりすぎたんじゃないの?」

 

「えぇ?エスカルゴはそんなヤワじゃないでしょ…ちょっとチクチクぶっ刺しただけじゃない…」

 

俺も、それが原因ではないと思う。

まぁ、あの後は梨汁…じゃなくて、鮮血ブシャーだったけど。

 

「とにかく、病院行ってくる」

 

『私も行くわ!』

 

「私も行きます!」

 

なぬっ…フランたちだけじゃなくて咲夜さんも?

 

「…とにかく急ぎます」

 

急いで永遠亭に向かう。

 

なんだこれは…なんで咳したら血が出てくるんだよ?喉奥の粘膜切ったか?いや、なにで切るんだよ?咳のしすぎで切れたってんならわかる。だが初めての咳で切れるなんてある訳ない。

んー、なんか気分が悪くなって…

 

「うっ…ゲホッ…ゲホゲホッ!…ブフッ…」

 

地上が俺の血で染まってく。

 

「きゃあああああああ!!どうしたの!?」

 

「エスカルゴ!しっかりしなさい!!」

 

「大、丈夫…」

 

…なんだ?なんかバランス取れん…。

 

「エスカルゴ!?今すぐ高度上げなさい!竹林にぶつかるわよ!!」

 

「エスカルゴさん!!!」

 

「………?」

 

…ん?竹林が…?あ、ぶつか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んにゅ……」

 

目が覚めた。気分は良い。

目の前に和風な感じの天井が見える。

あれ?永遠亭に着いたのか?

 

「あ!起きた!!」

 

…鈴仙か。

 

「よぉ…鈴仙」

 

「まだ起きちゃダメ!!」

 

起き上がろうとしたが肩を押さえつけられた。

 

「なんでよ?」

 

「…これから話すわ。でもそれは皆来てからね」

 

「おう」

 

「呼んでくるわ、待ってて」

 

「オッケ」

 

…えーと?なんでこうなったんだっけか?

空中でフラついて…そんで竹林に突っ込んだ所までは覚えてる。だけどその後がなぁ…わからんな。

 

「!」

 

『エスカルゴぉぉ!!』

 

「エスカルゴさん!!」

 

3人とも来た。

 

「よっ」

 

「もう大丈夫なの!?」

 

「あなた竹林に突っ込んで…血だらけだったのよ!?」

 

「あれま。そーなのかー」

 

「“そーなのかー”って…他人事みたいに…」

 

「というか、まるでルーミアね…」

 

「はは…だって覚えてないし」

 

「あら、覚えてないのね」

 

「!」

 

その声は…。

 

「どもです永琳先生!」

 

なんかテンション高いぞ俺。まぁいいや。

 

「…元気ね」

 

「へへっ」

 

「まぁそれもそうね。臓器ゴソッと抜いたから」

 

「…?」

 

今何つったこの人?

 

「もう一度お願いします。理解出来ません」

 

「臓器を抜いた、と言ったのよ」

 

「…またですか?」

 

「今回は前回と違って全部の臓器を抜いたけどね」

 

「いやいやいや、心臓は?」

 

「人工心肺装置に繋げば良いわ」

 

サラッと何言ってんのよこの人…。

 

「なるほど。なんで臓器抜いたんです?」

 

「内部被曝ね。かなり酷かったわ」

 

「ほぇ〜…内部被曝…」

 

は?

 

「どこ行ってきたの?」

 

「え…昨日は皆で雪遊びしましたよ?」

 

「昨日じゃなくてね…もう少し前に、よ」

 

「ずっと紅魔館やその周辺に居ましたけどね…」

 

「いや、この前エスカルゴは紫にどこかに飛ばされたじゃない!それよ!」

 

レミリアが正解を叩き出す。

 

「あ…」

 

「いつ頃の話?」

 

「3日前くらい?ですかね?」

 

「…ああ…四季の草花が咲き乱れてた頃かしら?」

 

「ええ、そうよ」

 

「エスカルゴ、どこ行ってたの?」

 

「…外の世界に。俺が昔住んでた所に行ってました」

 

正確には、飛ばされてた、だけど。

 

「そこで何かあった?」

 

「…少し戦争を…」

 

「え?」

 

今度は永琳が聞き返す。

 

「“破壊生物”呼ばわりされて、世界中の軍隊から襲われました。まぁ返り討ちにしましたが…」

 

痺れさせようとしても、戦闘機乗ってるから出来なかったんだよなぁ。だからアイツらを利用して嫌いだった世界を…。

 

「エスカルゴ、やっぱ意味わからないわね…何をどうしたらそうなるの?」

 

「…いえ。欲望を満たしただけです」

 

“学校の破壊”、それに“暴れ回ること”…。

これは俺の欲望と言っていい。

国は終わらせたかった…けど、一般人は殺したくなかった。矛盾してるかもしれないが、住民が避難するまで待つつもりだったんだ。

駅ではストレスが爆発しちまったけど…。

なんて言うんだろう…あの感覚。

身体がいうことを聞かない…いや、少し違うな。

“暴走してるけど意識はあった”…みたいな。

とにかく、アメ公共がせっかちに攻めてきたから逃げるしかなかった。逃げるというか誘導か。

あのままあそこに留まってたら死んでたから。

 

「それで、被爆の心当たりは?」

 

「…こっちに帰ってくる瞬間、防御が解けて無防備になった…としか」

 

うん、フワッとなった瞬間、鎧は解除されてた。

あれしか心当たりは無い。

 

「それだとしたら、とんでもなく高濃度な放射能だったのね…」

 

「にゃはは…」

 

そりゃ、何発もドカンドカンやってたからな…。

 

「笑い事じゃないのよ?ほんとに、もう少し遅ければ大変なことになってたんだからね?」

 

「でももう大丈夫なんですよね?」

 

「まぁ…汚染されてた臓器は全部取ったからね…」

 

「そして、例によってもう再生してる…と?」

 

「もちろんよ。じゃなかったら喋れないでしょ」

 

「ですね」

 

「それと、脳には今のところ異常無しよ」

 

「あれ?脳みそは取ってないんですか?」

 

「当たり前でしょ?流石に死ぬわよ」

 

「あらー…」

 

こんなに慌てる永琳は初めて見た。

 

「今日は泊まって、明日退院よ」

 

「私泊まる!」

 

「ふ、フランが残るなら私も」

 

「お嬢様方が残るのでしたら私も…」

 

「咲夜はダメよ。パチェが居るじゃない」

 

「……はい…」

 

「…トイレ行ってもいいですか?」

 

「起きれる?」

 

「ええ。よっこら…せと…」

 

「うん、大丈夫なようね」

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…すっきりすっきり。…血を吐いたのも放射能のせいか…くっそー…貧血気味じゃねぇか…」

 

「ごめんねエスカルゴ」

 

目の前にフランが…。驚いたわ。

 

「?なにが?」

 

「泊まれないってさ」

 

「ありゃ…。ま、明日会えるし…ね?」

 

「うん…」

 

「よしよし…」

 

フランの頭を撫でてやり、フランと部屋に戻る。

 

「いけない、そろそろお夕飯の準備しないと…」

 

「あら。ならそろそろ帰らなきゃね…」

 

チェッ…帰るのか。

 

「また、明日ね」

 

「おう」

 

「お大事にして下さいね」

 

「はい」

 

はよ咲夜さんの料理食べたい…。

ここのも美味しいんだけど咲夜さんのには勝てない。

 

『……………』

 

フランとは黙って見つめ合う。

 

 

 

玄関まで見送りに来た。

ずっと寝てるのも退屈だからな。

 

「迎えに来てあげてくださいね」

 

永琳が3人に言う。

 

「もちろんよ」

 

「うん!」

 

「早く仕事を終わらせなければ…」

 

「んじゃの」

 

手を振って見送る。

辺りはすっかり真っ暗になっていた。

というか、前回よりも大手術だったのに前より早く目覚めたんだな。

 

 

 

その夜。

 

「さーて、寝るかー…」

 

一通りの検査を終えたので、電気を消し床に就く。

 

「エスカルゴー…居る?」

 

暗がりの中で声がする。鈴仙だ。

 

「居るよ。どうした?」

 

「具合大丈夫かなって」

 

「大丈夫だよ」

 

「そっか…良かった。私も寝ていい?」

 

「もちろんいいよ。おやすみ」

 

「そうじゃなくて…」

 

「ん?」

 

「一緒の布団でってこと」

 

「ん…。良いよ」

 

「ありがと。入るね」

 

「おう」

 

モゾモゾと入ってくる鈴仙。

 

「またピッタリくっついちゃったね」

 

「そうだな」

 

「昨日くっついたばっかりなのに…なんか不思議」

 

「ふふっ…」

 

「熱測ってもいい?」

 

「良いけど、さっき測っ……!?」

 

お、おで…おでこ!?

あわわわわわわ…近い近い近い!

顔がドンドン熱くなってくのがわかる…。

 

「んー…ちょっと熱あるよ」

 

「顔近ェよ…」

 

「そうよ?おでこで測ってるんだもの」

 

「照れるぞ…。だから熱いんだよ、熱じゃない」

 

「照れた?私で?」

 

「そりゃーな…」

 

「ふふっ、嬉しっ♪」

 

ギュッ…ムニィィィ…

 

「だからさ…胸当たってるって…」

 

「当ててるの!」

 

「おいこら…」

 

「嬉しいくせに♪」

 

「……………」

 

「嬉しくないの?」

 

「…嬉しい」

 

「最初から素直に言ってよもう…」

 

「へへ…そうだな…」

 

鈴仙の細い腰に手を回す。

 

「ちょっ…」

 

「なんだ?」

 

「なんでエスカルゴも…」

 

「鈴仙が抱いてくれてるからな。俺も…」

 

「ありがと♪…チュッ♡」

 

「ん…」

 

最近鈴仙と近くなるの多いなぁ……。

 

「スゥ…スゥ…」

 

「…あれ?」

 

寝ちゃった……。ま、いっか。

 

「俺も寝よ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゔー…ううう………………………ハッ!」

 

な、なんだ今の声…。いや、自分のうめき声か…。

 

実はここ数日、寝付きが悪い。

外の世界から帰ってきてからだ。

無差別に人を殺したっていう記憶が根底にあるから…かもしれない。忘れようとしても忘れられない。

それはそうだ。人の命だ、軽いハズがない。

これから一生こんな思いする位なら、国を滅ぼさなきゃよかったと、今頃になって後悔している。

 

「………!」

 

1つ、あることに気がついた。

 

「紫さん」

 

鈴仙が起きないよう小声で囁く。

 

「はーい」

 

空気を読んだのか、小さな声で現れる紫さん。

 

「あらあら、仲がいい事ね」

 

「へへ…」

 

「それにしても、こんな夜中に何の用かしら?」

 

夜中なのか。

 

「すいません。ちょっと、お願いがありまして…」

 

「私に出来ることならなんでもやるわ。遠慮無く言ってちょうだい」

 

「では遠慮無く…。…俺の記憶を消して下さい。なんだかもう、逃げたい……逃げたいんです…。勝手言うようで、悪いんですけど……なんだか、俺、なんかとんでもない事をした気がして……」

 

紫さんなら記憶も消せるはず。

消せるというか、イジれるはずだ。

 

「記憶を……でもそれじゃ…」

 

「無論、全部じゃないです。…俺が、人を殺したという記憶…それだけを消して欲しいんです。俺だけじゃなくて…その…それを知ってる人全員の記憶を。二度と思い出したくない…」

 

「…罪の記憶ね…」

 

「はい……耐えられないです…」

 

夜もろくに眠れないし…なにか、怖い。

 

「本当はそんなことしちゃいけないんだけど…」

 

「っ…」

 

「今回ばかりは、私が悪いものね……。良いわ、目を瞑って」

 

「はい」

 

俺は大人しく目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どう?」

 

「……?」

 

なにが“どう?”なんだ?

 

「私は誰?」

 

へ?何を今更。

 

「紫さん」

 

「この前、あなたは外の世界に行ったわね?」

 

「はい」

 

「何してきたのか覚えてる?」

 

「Sightseeing」

 

「…いつもの言語でお願い……」

 

「観光」

 

「誰がそこに連れてってくれたの?」

 

「誰って……紫さんですよね?」

 

「そうね。じゃ、おやすみなさい、また来るわ」

 

「??…おやすみなさい」

 

何を言ってるんだ?てかなんで永遠亭に?

まぁいいや。よし、俺も寝よう。

 

「鈴仙柔らかいなぁ…」

 

鈴仙に抱きつきながら寝る。

 

いやはや、また腹痛で永遠亭に来ることになるなんて…学習能力0かよ俺は…。

外の世界…か。

この前“みんなと行ってきた観光”、楽しかったなぁ…。俺の地元はろくに遊ぶとこなくて…ほとんどお家デートだったよな……。

コスプレイヤーの真似とか疲れたわ。

マリカーでフルボッコにして怒られたっけ。

コントローラー壊されたなぁ。

……また…行きたいな……。




妖怪になっても少しは人間的思考な彼は、殺人の記憶に苛まれ……逃げた先は記憶の書き換え。
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