※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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…思えば、生命を生み出したのが原作内で明確に描写されたのって神綺と諏訪子だけでは?
神綺は夢子、諏訪子は木々などの植物を。
隠岐奈はあうんを生み出したように見えますが、あうんが言うには「前から見守っていた」らしいので、隠岐奈は好きに動ける肉体を与えただけに思えます。

となると生命を生み出してるのってマジで神綺と諏訪子だけなのでは…。



マステマ

「おう来たか器。遅いぞ。呼んだらすぐに来い。飛んで来るな、スキマで来い。または瞬間移動で来い」

 

「そんな事より、何なんだよさっきの連絡……?異変を起こすって??」

 

 ある日の事。建御雷に呼び出されて守矢神社に出向くと、境内には野良神とは違う力のある神が何柱も集い、普段と違う妙な気配を発していた。

 諏訪子、武甕槌命、神奈子様、へカーティア、隠岐奈、母さん。どうしてだ、どうしてこんなに力のある神ばかりが守矢神社に……。

 

「はぁい、エスカルゴくん。ご機嫌よう」

 

「カルちゃん、呼んだらすぐに来ないとダメよ?お母さん心配しちゃうじゃない」

 

「あ、あぁ…うん、ごめん……。で、なんで急に異変を?」

 

「それについては神を代表して私が説明しよう。よく聞いてくれ!」

 

 隠岐奈がドンと胸を叩き説明とやらを始める。皆揃って神妙な顔をしていることから、どうやらろくでもない内容であるのは話を聞く前からほぼ確定している。

 

「神は幻想郷になくてはならない存在だ。しかしその存在は妖怪と同様、人間からの想い…つまり信仰心などで成立している。それは分かるな?」

 

「まぁね」

 

「その信仰心が年々少なくなりつつあるんだな。私は様々なものを司る神だから全然影響は無い。だが、他の神はというと……そうもいかないな。特に守矢の二柱は、その信仰心が目的で幻想郷に来たにも関わらず、年々その力を失いつつある。これは由々しき事態だ。だからそろそろ、異変を起こしてこの事実を周知してもらう必要がある」

 

「でも去年それが原因で諏訪子が飢饉を起こしたはずだ。その前の年には予告までして、結局ダメだったから、収穫量を大幅に減少させたろ。大量の備蓄も底を尽きるほど里を苦しめた筈だ。……諏訪子が」

 

「そうだな。しかしそれでは足りなかったんだ。残念ながらね。あの時の飢饉で僅かばかり得したのは諏訪子だけだった。祟りだと畏れられれば、祟り神の諏訪子しか得しないのも無理はないな。だから、次こそは……」

 

「……神々の、神々による、神々の為の異変ってわけか。じゃ俺は解決する側に回るから、好きに暴れてよ。この話は霊夢には言わないでおくし」

 

「まぁ待つんだ。お前はこっち。こっち側だよ」

 

 手をヒラヒラさせ、隠岐奈が俺のつくべき陣営を示す。俺は妖怪で神の器でもある。それ故か、俺は神側だと隠岐奈は言う。

 すると今度は、ショタの姿の建御雷が言う。

 

「何の為に、神々がお前を器として育てたのか。これが分からぬほど阿呆ではあるまい?隠岐奈の説明はここまでだ。お前はもう器としての役割を果たすことだけを考えろ」

 

「これまでの成果が試されるってこと?」

 

「それは少し違うな。お前が戦うわけじゃない」

 

「でも俺は神側だって……」

 

「言ったはずだ、お前は器だと。お前の肉体は、我が使わせてもらう。大人しくその身を神に差し出せ、お空のようになッ!!」

 

「!?」

 

 建御雷が消えた。その直後、身体がバリバリと帯電し始めた。建御雷の力を借りている時のあの感覚だ。しかし今回はその比ではない。あまりの電圧に境内の石畳が焦げ始めている。ここまでの帯電は初めてだ。

 というか、お空がなんだと言った?理解がまだ追い付いていない。

 

「………ふむ、きちんと力を受け止められているようだな。すっかり神の力が肉体に馴染んでるとみえる。それにしても武甕槌命よ。思うんだが、少々エスカルゴと馴れ合いすぎではないか?」

 

「なんだ、嫉妬か?隠岐奈よ。我は常に、強敵を欲している。対等に戦えそうな強者を、な。器がチルノを育てているのと同じだ」

 

「やれやれ。悪趣味だな、お前もエスカルゴも」

 

「クカカッ、全くだな。ましてやコイツが育てているのは妖精だものなァ。妖精なんて、殺しても死なないから、我よりよっぽどタチが悪い」

 

「エスカルゴも殺しても死なないがな」

 

「おっと、そうであったな」

 

 おかしい、意識はあるのに喋れない。まるで、建御雷に憑依されているような……。マスターとスレイブの関係で見れば、今の俺はスレイブか。だが強制的に憑依とは……これは酷い。

 そういえば、憑依も強制的に可能だったと誰か言っていたような。

 

《憑依とは少し違うかな〜。今のエスカルゴは、神降ろしした状態だよ。月で依姫が見せてくれたアレの……もうちょっと発展したやつね》

 

 諏訪子の声が聞こえてくる。さっきからずっと黙っていたようだが元気そうでなによりだ。でも信仰心が無くなりつつあるということは……。

 

《そう遠くない未来、消えちゃうのかもね。でも私は祟り神。畏れられて成り立つ。だから存分に人間共を脅して……畏れさせるのさ。力を貸してくれるよね?私のエスカルゴだもんね?》

 

《……異変で悪役になってくれって言いたいのはわかった。観念するよ。身体も乗っ取られたし、逆らったって良い事は無いわな》

 

《ま、そーだね。その時が来たら、私が建御雷と交換するだろうから、その時はヨロシク〜》

 

《……?》

 

 何が何やら、もうよく分からん。ただひとつ、今回は只事じゃないという事実だけは理解した。そうでなければ諏訪子や神奈子様の依頼で俺一人動けばいいだけの話だからだ。

 

「今回は、少々大規模だぞ。紫からも了承を得たから、皆が思っているよりは暴れられそうだぞ?なぁ、武甕槌命」

 

「おうそうか、それなら暴れさせてもらおうか。それにしてもお前達賢者は……話だけ聞いてれば随分と勝手だなぁ」

 

「幻想郷はもう、誰にも止められない。私や紫のような賢者にもな。だがこれは賢者が望んだ事。とはいえ、軌道修正をするのも私の仕事である」

 

 ……先程は信仰がどうのと言っていたが、絶対こっちが本音だ。絶対アレは建前だ。いや、建前というよりは、「信仰心目的でもある(・・・・)」といったところか。

 一度の異変で一石二鳥を狙うつもりか。

 

「つまり今の幻想郷は軌道から外れてるわけだ。仕組みが、少しずつ狂いつつある。来たばかりの武甕槌命には分からないだろうが」

 

「あ゙ぁ?なんだ神奈子、煽りか?」

 

「違う、なんでお前はすぐにそう考えるんだ」

 

「阿礼乙女が10年程度も長生きしたと聞いた時は椅子から転げ落ちたよ。全く、仕組みが根本から狂ってきてるんじゃないか?こんな事は、完全に想定外だったよ。人間が信仰心を失うより想定外だった。どうやら幻想郷は、遥か予想外の方向に進化しつつあるようだ」

 

 狂いだったのか、阿求は。折角、稗田邸の者は阿礼乙女が長生きできたなんて喜んでいたのに、それも修正されるのか。…全ては賢者の手の上、というわけか。

 

「人の変貌が神を弱らせ、そして幻想郷を狂わせ仕組みを狂わせ、阿礼乙女の寿命すら狂わせた。長年賢者をやっているが、ここまで厄介な時代は初めてだよ。信仰心が減るのも、我々の予想より早すぎる」

 

 一つの何気ない事柄から大きな事象に繋がり、パッと見関係の無いような事にも繋がり始める。まるでバタフライエフェクトだ。一体、どこから運命が狂い始めたのやら。

 

「へカーティア、神綺。神々の為、幻想郷の為…力を貸してくれるな?単なる人数合わせだが」

 

「オッケー、任せて☆」

 

「力を貸すのは構わない。けれど、私は魔界の神なのだから、本来力を貸す義理はないわ。でも、カルちゃんの傍に居させてくれるのなら、喜んで力を貸すわ」

 

「息子離れができないのか?まぁいいさ。神綺はエスカルゴ達(・)の前に解決組と戦ってもらおう」

 

「あの子…お空ちゃんは大丈夫なの……?ここに来るまで知らなかったとは言え、あの子に何かがあったら、カルちゃんにもさとりちゃんにももう顔向けができないわ」

 

「安心しろ。先程は少々神の力に呑まれたが……今は八咫烏が肉体の主導権を握っているはずだ。エスカルゴと武甕槌命のような感じだな。だから大丈夫、安心するといい」

 

「そう……」

 

「それは大丈夫と言えるのか?幻想郷が消し炭にならないといいが……」

 

「守矢の神は、何も心配しなくていい。幻想郷の心配は私がすればいい。“畏れ”を待つがいいさ。神同士、仲良くしよう」

 

「……ああ」

 

 神奈子様と隠岐奈が握手している。なんだか、異様な光景だ。母さんは母さんで様子が変だし、一体これから何が始まると言うんだ。

 

「それにしても、エスカルゴくんはアレよねぇ。まるでマステマみたいよ」

 

「システマ?」

 

「それは格闘術だ、この戦闘バカが」

 

「デンターシステマ?」

 

「それは歯磨き粉だ。…って、こんな時に諏訪子までボケに回るな!せめて中立にしろ、私が大変だろう!」

 

「神奈子がツッコミ役なんだからイイじゃ〜ん」

 

(こんなユルいから信仰が無くなるんじゃ……?まぁいいか…守矢神社に協力すると言ったのは私だしな…。やれやれ)

 

 マステマ……確か、人間に試練を与え、神々に帰属する悪魔…または天使だったか。ヘブライ語では敵意、憎悪などを意味するとパチュリーから教えてもらったっけ。人間達を試す必要悪だとも言われている。

 

「…へカーティアさん。カルちゃんは誰にも所有されていないわ。そんな下賎で犬みたいな悪魔と一緒にしないで頂けるかしら」

 

「所有されてなくとも従ってはいるじゃない?」

 

「全てはあの子の意思次第。強制力が無いなら、それは従ってるとは言えない。今だってあの子は納得してお願いを聞いてくれてる(・・・・・・・・・・・)だけよ」

 

「ふーむ…それもそうかもねぇ。にしてもエラくご執心ねぇ、何かあった?」

 

「別に……何も無いわ」

 

 絶対嘘だ。いつものほほんとしている母さんがあんな事をガチトーンで言うはずがない。いつもだったら、常に語尾に「♪」がついていそうな程暢気でのんびり屋なのに。

 

「さて、お喋りもこの辺にして、そろそろ異変を起こすか。…へカーティア、武甕槌命、神奈子、諏訪子。頼んだぞ。ここで派手にやらなければ、霊夢はすぐには動かないぞ。人里の人間は畏れも抱かないだろうしな」

 

「勿論任せて隠岐奈。とびきりの魔法をぶつけてあげるわよん」

 

「ククッ、楽しみだな!器も我の中で楽しめよ、神の祭りを…!!そして貴様も思い知るがいい、諏訪子…祟り神の恐ろしさをな……!」

 

「神綺はお空…いや八咫烏を起こしてきてくれ。多分、まだ眠っているだろうから」

 

 黙って頷いて、母さんは守矢神社の中に入る。そういえば、早苗と樹里愛はどこに居るのやら。気配は近くにない。とすると、山から離れた所に居るのか。

 

《異変を始める前に教えてくれ。どうして身体を乗っ取るような真似を?建御雷なら、その姿でも好きに暴れられるだろ》

 

《こうでもしないと、器である自覚が芽生えないだろう、貴様は。器とは、なにも力を借りられるだけの存在ではない。そんな都合のいい話があるはずがないだろう?だから貴様は今回は見学だ》

 

《…………人間の信仰心や畏れを稼ぐんだよな。てことは、人里の周辺に危害を加えるんだよな》

 

《ああ、そうなるな》

 

《美宵ちゃんや鯢呑亭に手ェ出したら許さねぇ。もしもあそこに何かしやがったら、絶対、どんな手を使ってでも復讐してやる》

 

《貴様を加護している神々に背くつもりか?》

 

《……そうだ》

 

《何年も貴様を保護し加護し成長させてきた神々よりも、最近知り合った娘を選ぶか。所詮貴様の信仰心もその程度か?》

 

《違う。俺の女に手を出したら誰であろうと(・・・・・・)敵と認めるってだけ。そこに信仰の有無は関係ねぇ。異変でちょっと脅す以外の事をしてみろ……!!俺は悪魔なんだ、神殺しの汚名を背負うくらいの覚悟くらいはある!!》

 

《ククッ……こういうのを「覚悟ガンギマリ」と言うのだろうな。そいつに関しては大丈夫とだけ言っておこう》

 

《本当だろうな、それは……?》

 

《安心しろ、なにも人里を破壊する訳では無い。貴様には神の器……いいや、必要悪である自覚も足りていない。祟り神の器になるということは、悪の立場にならなくてはならない時もあるのだ。神とは、必ずしも善ではないからな。よく覚えておくのだな》

 

 無論、知っている。神とやらが必ずしも善ではないことくらい。全ての神様が必ず善なら、争いなんて起きていない。争いは正義のぶつかり合いなんて言うが、やはり、心のどこかに悪意、害意というものが潜んでいるものだから。

 

「そら、いくぞお前達!大異変の始まりだ!!」

 

 建御雷はフワリと境内から飛び立った。それに続いてへカーティア、神奈子様、諏訪子も飛ぶ。そしてへカーティアは里から少々離れた地点へ、守矢の神々と建御雷は人里の上空へと散らばる。この布陣……もはや嫌な予感しかしない。

 ────それにしても、畏れを抱かなくなったから再び畏れを抱くように異変を通して遠回しに脅すなんて……。

 ある意味、神々が人間を洗脳しているようだ。しかも幻想郷の軌道修正というごもっともな大義名分がある分、レミリアのワガママよりよっぽど邪悪に思えてならない。




大丈夫、誰も死にません。ただの異変なので。



むかしむかしのその昔、諏訪子が神奈子に地元を明け渡した時、地元住民は諏訪子(の祟り?)が怖くて神奈子を受け入れることができなかった。

諏訪子にはこんな感じの原作設定がありますが、もし本当ならこの時点の地元民による諏訪子への信仰心(畏れ)はとんでもないものですよね。
諏訪子が負けるってことは、神奈子は諏訪子より強いというのは明々白々。それなのに、諏訪子を畏れるあまりより強い神であるはずの神奈子でも受け入れられなかったって……。
つまり当時の地元住民は「強い神様」より「恐い神様」を恐れた、ということですね。

にしても不思議なもんですね。「祟り神より強い神様だ!これでもう祟りなんて怖くないぜ!!」とはならないんですかね?
「あの神様は強いけど祟り神が怖いよ…強くても受け入れられないよ、祟り怖いし」ってなるほど怖かったんですね、当時の諏訪子は……。
まぁ正確には諏訪子の従える祟り神(ミシャグジ様)でしょうが、その親玉は結局諏訪子ですしね。



幻月が天使の見た目で実は悪魔なのって、元ネタマステマだと思うんですよ。マステマって悪魔は書籍によっては天使とされているんですが、これ東方的に見たら両方の要素を備えてる(・・・・・・・・・・)と言えると思うんですね。
例えば、ミスティアは夜雀とローレライの両方の性質を備えてますよね。

だけど幻月は夢幻世界の創造主ってだけで神様に仕えてる描写は無いので、どうなのかなー…と。
(だから、初登場は神様じゃないけどサリエルの手先みたいにしてた)
で、「従ってる」を示す為の夢月の「メイド服」なのでは…と思うんですよね。「従う」といえばメイドさんでしょうし。
幻月は、東方幻想郷にて「二人で一人前」という旨の発言をしてましたがそれって「二人で一つの元ネタ」って事なのでは?なんて思ったり。
悪魔、天使、従うとなればマステマですからね。

まぁ、それを本作で上手く書けなかったのでね…それなら明確に神様と繋がっているエスカルゴにマステマの要素をぶち込んでやろうと。元から、諏訪子の手先みたいな扱いにはしてましたし。
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