「よし、風は何とかしたな。次はどうする?まぁ確定してるようなもんだけど」
「次ったって、そりゃあ……」
「「勿論、
ものの見事にハモった二人。しかしその内容は別物で、互いに相手の言葉に驚いているようだ。一瞬顔を見合せたあと苦笑し、魔理沙が言う。
「冗談だろ?なんで雷なんだよ」
「逆にどうして隕石なのよ?どうせなら広範囲に超スピードで攻撃してくる、厄介な雷の方を先に片付けるべきじゃない?」
「オイオイ、博麗の巫女ともあろう者が一体何を言っているんだ?後の事を考えろよ、後の事を。雷と隕石、どちらの処理が面倒なんだ?」
「……言われてみれば……そうかも?」
「幸い雷は家屋には落ちてない。範囲は広いが、所詮は地面だけだ。だが隕石は違う。まぁ地面に落ちてるのは同じだが、物体としてその場に残るからな……後回しにして今よりも数を増やせば、後処理が大変な事になるのは確実だ」
「そうね。正直、後処理の事は盲点だったわ」
「しっかりしろよな、博麗の巫女さんよ」
「はいはい、気を付けるわ」
◆
不幸中の幸いだと言うべきか、隕石の発生源は案外すぐに特定できた。隕石は大体同じ地点から生成され、方向を変えて落下していったからだ。それなら、その地点に向かえばいいだけなので、神奈子より楽に相手が割り出せた。
「んもう、待ちくたびれたわよん。二人共?」
「へカーティア……まさかあんたまでこの異変に加担しているなんて……」
「嘘だろ?よりにもよって、どうしてお前が相手なんだよぉ……こんなの相手が悪すぎる……」
「何を怖気付いてんのよ、本気出せばどうにでもなるでしょ」
「よっぽど手を抜かれないと無理だっつーの!!何なんだよその膨大な魔力……!?パチュリーの比じゃない!!」
「ヘェ、案外良い眼してるじゃない。魔法使いとなったことで、その辺の感覚も研ぎ澄まされたのかしら?前回と違って、良い反応で嬉しいわ♪」
「創造魔法はタダでさえ負担が大きめの魔法だ。魔力という形無き力から有を生み出す、世の理を軽く捻じ曲げる魔法……。それを長時間使用し、しかも既に隕石は100個近く創造しているんだ。そんな現場を直に見てしまえば、嫌でも理解してしまうな。とてつもなく膨大な魔力だって……」
「うーん、エクセレント!素晴らしい理解力よ、魔理沙!エスカルゴくん以上かもしれないわ!」
わざとらしく笑顔で拍手をするへカーティア。しかし当の魔理沙は、褒められたのか、それともバカにされたのかと判断がつかず、苦笑いをするばかりである。
「そりゃどうも。……でもなんでお前がここに?お前は地獄の女神様だろう」
「知り合いから、一緒に異変を起こさないかって誘われてね。楽しそうだと思ったから、私も参戦してみたのよ。実際、これからの相手を想定するなら、手を抜いた私を先に相手するくらいが丁度良いかもしれないしね」
「『手を抜いた私』?言ってくれるじゃないの!ぶっ飛ばしてやるわよ、魔理沙!」
「あ、ああ!でも、待てよ……?へカーティア、まさか今回は……魔法を使うつもりか?」
「ご明察。その方が楽しめそうだし♡」
「な、何だよそれ……!それじゃあお前は、実質何でもアリじゃないかッ!!」
「当然でしょう?私は魔法を
「なんッてデタラメなんだ、神様ってのは……」
「格が違うのよ。操るのと司るのとでは、実現が可能な規模も全く違う。それこそ、ちょっとした災害から天変地異レベルまでね。まさにピンキリだわね」
あっけらかんととんでもない事を言ってのけるへカーティア。つまり、天変地異も起こせるぞと遠回しに言ってきているのだ。幾ら魔力が増えた魔理沙でも、マスパで山を消し飛ばす程度のことしかできない。天変地異だなんて、夢のまた夢な絶対的な領域である。無論、魔理沙に天変地異を起こす気は無いが。
「魔法は素晴らしいわよん。術式さえ組めれば、あとはそれ相応の魔力さえあれば、全てが可能になってしまうわ。パチュリーがエスカルゴくんに教えたみたいに、魔法は何でもアリだからね」
「確かに魔法は何でも可能にしてくれるが……!時間の逆行は無理だろう、時間を操る咲夜でさえ過去には戻れないんだから……」
「……言ったでしょ?操ると司るでは、レベルが違うの。咲夜の能力は、ただ時の神の下位互換に過ぎない。でも私は違う。私が神なの。私が上位互換。全知全能とは言わない。それでも全能ではあるわよ。殆どね」
「「ッ────!!」」
殆どと付け加えたのは、真に全能ではないからである。流石のへカーティアも宇宙は消せない。宇宙規模の大災害は起こせない。
逆に言えば、宇宙規模でなければ大抵のことは可能である。彼女は、脅す意味も含め自らを殆ど全能であると言った手前、不可能なことは敢えて言わないつもりだ。
「私は別にいいのよ?あなた達をスタート地点に戻してあげても。どう?もう一度、神奈子さんと戦ってみる?ただし、次は本気の神奈子さんよ。まぁ勝てはするでしょうけど、果たしてその次に私や彼らに勝てるかしら?」
「い、いや……いいよ別に……」
(手を抜かれるのが分かっている勝負だなんて、結構な屈辱ね……)
「よーしよしよし、いい子達ね。それじゃ、私が存分に遊んであげるわ♪」
そう言うなり、いきなり魔力弾を飛ばしてくるへカーティア。二人はそれぞれ緊急回避をして、星弾幕や霊力弾をお返しとばかりに放つ。
「……♪」
それを見るや、へカーティアは鎖を伸ばして、二つの球体で物理攻撃も与えてくる。弾幕に近い速度で迫るそれを弾幕で跳ね返しながら、徐々に放つ弾幕を増やす霊夢と魔理沙。
「ふふ、結構粘るのね。じゃあ、先に私の方から使っちゃおうかしら。……えぇと、あのスペルはなんて言ったかしら……」
「……!来るぞ霊夢!!」
「分かってるわ、あんたこそ気を付けてよね!」
「あ、そうだ。獄雷『
彼女がそう唱えると、遥か下方……地面に紅い魔法陣が浮かび上がり、そこから間欠泉のような勢いで赤黒い稲妻が噴き出す。
「待て待て、これって確か……」
「エスカルゴのスペルカード!どうしてあんたが使ってんのよ!!」
「このスペルは、魔法を通して地獄の力を借りるものなのよね。つまり、私の協力があってやっと成り立つ。私が使えないワケがない。そもそも、彼程度でも使える魔法なんだし、仮に地獄の女神じゃなくても私に使えないワケがないのよねぇ」
「……!『彼程度』だと?お前、そんな言い方は無いだろ!アイツはアイツで魔力が少ないなりに頑張ってるんだぞ!?力を貸してる身だったら、そんくらい察してやれよ!」
「?……あぁ、言い方が悪かったのかしら。ま、私は彼が使える魔法は全てコピーできるワケよ」
(ダメだ、根本的な価値観からして全く違う……真っ当に話が通じてるとは思えん……。コイツ、どんな心持ちでアイツに力を貸してるんだ?)
「それにしてもエスカルゴのヤツより長いわね、どうなってるの?」
霊夢の頬を、冷や汗が流れ落ちる。噴き出した後は完全なランダムでバラけるので、パターン化などできない。ひたすら気合い避けするしかないのである。
「同じ魔法だけど、私のは強化版だもの。威力、効果時間共に段違いよ。ほら頑張れ、頑張れ♪」
「段々と密度が増えてきてる……?くっ、面倒な強化の仕方ね!!」
「霊夢!私が隙を作る、だから本気で撃ち込め!魔符『マジカルR360』!」
星弾幕、細めのレーザーを放ちながら縦方向にクルクル回り、広範囲に渡って弾幕を相殺する。星弾幕はこれまでのものより大きく、レーザーで足りない分を補っているように見える。
「隙作れてない作れてない。回るほど余裕なら、まだ遊んでもいいかしらね?」
「「!?」」
「さぁいらっしゃい、私の忠実なる
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!だ!ご主人様に
へカーティアの隣に魔法陣が現れたかと思うと部下のクラウンピースが元気に飛び出してきた。ピースは現れるなり、レーザーや星弾幕などで、主人の弾幕の邪魔をしない程度に援護する。
ニュンペーとはギリシャ神話に登場する自然の権化、または自然を守護する存在。つまり、妖精である。たとえば泉には泉の妖精が存在し、泉が枯れると死ぬ。木の妖精は、木が枯れると死ぬ。ちなみにニュンペーはニンフとも言う。
そんな妖精ランパース……クラウンピースを、へカーティアは戦闘中に召喚して見せた。二人が驚いたのは言うまでもない。
「なんで召喚なんてするんだよっ!?てか今のも魔法だな?凄い魔力を感じたぜ……!」
「魔理沙、驚いてばっかいないであんたも誰かを召喚してやりなさいよ!」
「簡単に言うなよな!動かない物体はともかく、動き回る人物を召喚するのは別な負担がかかる!へカーティアが規格外なだけなんだ……!だからなのか魔法を見せつけて楽しんでやがる!全く、悪趣味なヤツだ!」
密度が増した弾幕を回避しながら、大声で会話する霊夢と魔理沙。あまり余裕が無いのか、被弾こそしないものの時たま掠ることが増えてきた。
「うふふふ、そうと分かってるのに新鮮な反応を見せてくれるのは嬉しいわ。素直な気持ちなのがよくわかるし」
「だが生憎だったな!まだ精度は低いけど、私は召喚系の魔法も鍛えてるんだ!優れた魔法使いは
「っ!?何を召喚するつもり?場合によっちゃあ女神として阻止させてもらうけど?」
「安心しな、お前も知ってる野郎さ。一発限りの大技、見せてやるよ!悪魔召喚!!エスカルゴ・スカーレット!!」
魔法陣が現れたかと思うと、そこから神々しい白い光が溢れる。成功を確信した魔理沙は喜んだものの、一向に悪魔……エスカルゴは現れない。
「あれ……まさか失敗か?クソ、こんな時に!」
「いや、成功してるわね。魔力は足りていたし、術式も組めているし、上手く機能はしているわ。惜しむらくは、異変解決に来ない時点で今の彼は召喚できない状態である事を察するべきだった事かしら」
「召喚できない状態……!?くっそー、フランにしておけばよかった!!」
「それはどうかしらね。高等な悪魔だと、術者はもっと鍛えておく必要があるわよ。必要とされる魔力も多くなるし。ある意味、エスカルゴくんを召喚しようとして正解だったかもね?」
「失敗してるってのに、何が『正解だったかも』だって?流石にイヤミが過ぎるぜ」
(なんだろ、今サラッとエスカルゴは低級だってバカにされた気がするんだけど……。いやでも、それもそうか。アイツは元人間、純血じゃないんだから高等であるワケがないわね)
「だってそうでしょ?もし今、高等な悪魔を召喚してたら……成功しても失敗しても今頃あなたの魔力は枯渇して、とっくに気絶してたわ?」
「……。成程、確かにそうかもな。そういう意味なら確かにある意味正解だったのかもな。土壇場だが、勉強になったぜ。やれっ、霊夢ッ!!」
「隙アリよ、へカーティア!『夢想天生』!!」
「隙ナシよ、霊夢。来なさいピース!」
「おわっ!?」
御札の夢想天生の方が攻撃力がある。だから、霊夢はそれを狙ってこちらを選択した。しかし、それが裏目に出たようだ。
へカーティアはしたり顔で振り返り、迫り来る御札の存在を確認するや、ピースと手を繋ぎ瞬間移動か何かで共に姿を消した。
「なっ!?まずい、避けて魔理沙ッッ!!」
「くっ……恨むぞ霊夢ぅうううぅぅう!!!」
基本的に、夢想天生から逃れる術は無い。ただ耐えるか、標的をすり替える事でしか夢想天生は防げない。へカーティアが行ったのは、一時的な異空間への退避による標的のすり替え。
へカーティアは夢想天生の効果時間くらい把握している。だからそれまで隠れていよう、ということだ。というのも、あの地底のトーナメントで夢想天生を見ていたからである。
「大丈夫、魔理沙!?」
人里の外れに墜落した魔理沙を追って、霊夢は着地する。どうやら、気絶まではしていないようだった。魔理沙への被弾を危惧して、夢想天生を中断したのが功を奏したようだ。
「んなワケあるかぁ〜……」
「生きてるなら大丈夫ね、さっさと起きなさい」
「鬼〜、悪魔ぁ〜……」
「吸血鬼だからね。……と、これは
「イテテ……受け身間に合ってよかったよ……」
霊夢が傷だらけの魔理沙を起こしたその直後、へカーティアが笑いながら現れた。どこからともなく、スキマのようなものさえ使わず……。
「アッハハハハ!面白いわね二人共!そうかぁ、これまでの相手は挟み撃ちで倒せてきたのねぇ。魔理沙なんて、被弾直前までマスパの準備してたものねぇ……。魔力の充填までして」
(笑うご主人様、すっごいカッコイイ……!)
「うぐ……」
「そうね、そうよねぇ……それで倒せると思ったなら回避が遅れてしまうのも無理はない。ふふ、ふふふっ……」
「「…………」」
涙を流して笑うへカーティア。笑いすぎだ、といつもの調子ならツッコむ魔理沙だったが、図星すぎてそんな気も失せてしまっている。
「うん、面白かった!だけど二人共、これで理解したわよね?挟み撃ちはあくまでも戦闘の手段であって、戦闘に幕を下ろす手段ではないことを」
「あぁ……今更だが、勉強になったと言わざるを得ないな。素直に脱帽だぜ、文字通りな」
「うんうん、成長したわね。じゃ、私はこの辺で降参しておこうかしら?まったね〜♪」
「えっ、ご主人様?もう終わりですか!?待って下さいよ〜!」
「あんた、好き放題やって逃げる気!?」
霊夢がお祓い棒と御札を構えつつそう言うと、飛び立ち始めていたへカーティアはピタと止まりゆっくりと振り返る。その顔面に、満面の笑みを貼り付けながら。
「……逃げる?この私が?……ねぇ、霊夢?一体あなたは、誰に向かってそんなことを言ってるのかしら……?」
「ッ────!!」
ゆっくりと、しかし力が込められたその言葉の圧を感じとり、霊夢は己の足が竦むのを感じた。こんな事は初めてだ。これまでは誰が相手でも、緊張こそすれ、足が竦むなんてことはなかった。
そして霊夢はやっと理解した。神様と呼ばれる中でも規格外な存在はチラホラいるが、彼女は、その中でも異質で……誰より強い存在なのだと。
強者は常に笑顔である。阿求の著作にはこんな文言がある。霊夢が見てきた強者もそうだった。紫、レミリア、幽香、文、萃香、隠岐奈、純狐、そしてへカーティア。
そんな強者も、ただの「笑顔」だった。なのにどうだろうか。今のへカーティアは、どこの誰がどう見ても、「満面の笑み」なのだ。
威圧の為に笑顔を見せることは誰にでもある。でもその多くはただの威圧。だがへカーティアのこの笑顔は本気も本気の威圧。霊夢は、底無しの強さをこれでもかと見せ付けられた様に感じた。
「……何でもないわよ」
「あっそう。じゃあね、二人共。この異変解決、頑張ってね♡」
「じゃーねー、霊夢!エスカルゴによろしく!」
「「…………」」
ヒラヒラと優雅に手を振って、どこへともなく飛んでいく二人。背中越しに、どうしてこんなに早く終わったのか、もっと戦いたかった、などとピースが騒いでいるのが聞こえてくる。
一方、この二人としてはピースはかなり厄介な存在に思えるので、早めに終わってよかった、と密かに思っている。
その背中が見えなくなったところで、魔理沙はワシャワシャと頭を掻きむしり、地団駄を踏む。
「あ゙ーっ、クソォッ!何なんだよアイツ、パクリスペルしか使ってないじゃんか!!魔法使うとか言っときながら、結局自分の魔法は殆ど見せないままで終わらせやがった!!まだ未熟な私には、魔法を披露する価値が無いって言いたいのか!?ちっくしょぉおおお!!」
「落ち着きなさいよ、外れとはいえ人里の中よ。見られたら頭おかしくなったと思われるでしょ」
「ちっ……不完全燃焼どころかイライラしてくるばかりだ!もっと凄い魔法を研究していつか絶対あいつの鼻を明かしてやるぜ!」
「……まぁ、それは置いといてもまだ活躍できるチャンスはあるわ。大丈夫でしょ。いつも通りの流れならあと4回くらい戦うことになるし」
「逆に言うと、あと4回くらい誰かと戦うことになるってことだな。……何だか今回の異変は調子狂うよなぁ……なんかもう気が重くなってきた」
「奇遇ね。私もよ」
「磨弓もどっかに行っちまったし……なんかもうめちゃくちゃだな。よし、次は雷の方に行くか」
「そうね。そうしましょ」
へカーティアにやる気を削がれた二人は、肩を落としながらも引き続き次の相手……雷の発生源を探しに、再び空へ羽ばたいた二人であった。
※へカーティアは、時間逆行について「できる」とは言っていないです。「できない」とも言っていませんけど。
もしへカーティアが黄昏作品に出たら、球体の鎖伸ばして攻撃しそうだなーと思いました。こいしだって触手?コード?を伸ばして攻撃しますし。
へカーティアとしては本当にただ遊んでるつもりなので、魔理沙が言うように「未熟な彼女に魔法見せる価値は無い」とか、そういった事は考えてません。
思い通りに同士討ちしたのがあまりにも面白く、満足したので早めに戦闘が終わっただけです。
なぜ魔理沙にとって召喚魔法が一発限りなのか?魔力の負担が大きいのもそうですが、ただ単に、凄く疲れるからです。空間系も関わってくるので主に頭が疲れるようです。演算的な意味で。
開発段階ではアリスが実験台にされたようです。
R18のタグがついている本作ですが、R-18G書いてみていいですか?
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おk
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アカン