雷の発生源に近付いていくと、唐突に地上から聞こえてきた叫び声が二人の耳を貫く。よく聞き覚えのある、あの少女の姿をした神の声だ。
「待て待て〜ぃ!!くぉら、霊夢と魔理沙ー!私を無視するなーっ!!」
「なんか地上で呼ばれているような気がするが、空耳じゃあないよな?」
「聞こえたわね。まぁ無視でしょ、雷落としてる本人じゃなさそうだし」
「だな。声を聞くに諏訪子だものな」
「ええ」
「どうしても無視するってんならこうしてやる!!合掌『だいだらぼっちの参拝』ッ!!」
何やらスペルカードを宣言する声が聞こえる。この距離で何をどうするつもりなのか、と二人は高を括っていた。が、次の瞬間、地面から巨大な手のようなものが前後に現れ二人を推し潰そうと迫り来るのである。
「うわわわわっ!なっ、なんじゃこりゃあ!?」
「驚いてる暇あるんなら逃げなさいッ!!」
霊夢は魔理沙の襟首を掴み、ギリギリ真上へと回避ができた。お返しにと霊夢は霊力弾を放ったものの、諏訪子までは結構な距離があるからか、彼女はスイスイ回避してしまう。
「こうなったら、先にあいつ倒すわよ!」
「ちっ、仕方ないな!」
「よしよし、来たね!これでもくらえ〜!!」
「「ッッ!!!」」
地面が盛り上がったかと思えば、そこから突然木が生えてきた。普通の木よりも大きいものだ。すると、ワサワサと枝を揺らして、落葉による目くらましをしてくる。
「結構アガってきたねぇ……!自分で自分の力に驚いちゃった。今回の異変は成功だったかな」
「……!今回の異変は何が目的なの!?」
「へへん、私は言わないよ。あとで隠岐奈にでも聞けば?ま、黒幕は私なんだけどね、初見さん」
「黒幕本人が『黒幕は私』なーんて言うわけないでしょ?」
「だな。あの時のレティと同じパターンだな」
「ふっふふ……勘が鋭いのか鈍いのか……。まぁその方が楽しめていっか〜!そろそろ矯正も済むだろうし、勝負の続きといこうか!あとは全力で遊ぶだけさ!」
「来るぜ霊夢!」
「分かってる!」
「逃げ場は無いよ、パンパン!パパン!」
諏訪子がリズムに合わせて手を鳴らすと、その数だけ地面から巨大な手が現れ、二人を潰そうと地面を鳴らしながら迫り来る。
「空にも逃げられないよ?そぉ〜……れっ!!」
土砂を飛ばしながら、二人を囲むように木々が生えてくる。しかも上空で葉を生い茂らせ空への回避を困難にしてくる鬼畜っぷりだ。
「そーれ、それそれ!パパパン、パン!」
「魔理沙!!」
「分かってる!恋心『ダブルスパーク』!!」
迫り来る壁の方は回避に専念。ダブルスパークでは自分達を囲む木々を吹き飛ばす。周囲に木の欠片が飛び散るが、二人はそれすらも回避しつつ反撃を仕掛ける。
しかし諏訪子は、地面に潜ったりフラフープで跳ね返したり打ち消して回避してしまう。
「ホントだねぇ、逃げ回る様は小動物みたいだ!エスカルゴがフランにそう言われてるのは不愉快だったけど、こりゃあそう見えても仕方ない!」
「誰が小動物みたいですってぇ!?」
「ヤツの言葉に耳を貸すな!目の前の勝負に集中しろ!」
「分かってる……けど……!」
バカにされ慣れていない霊夢は、ググッと拳を握るばかり。しかし何とか言い返したい気持ちを抑え込み、深呼吸の後、反撃に転じる。
「気を付けなされ、其の木は普通の木に非ず♪」
「「ッ!!」」
魔理沙に破壊され散らばった木片が、神々しく光る弾幕となって、ホーミング性を伴って二人に向かってきた。破壊された木は大きくて、しかも数が多いため、その弾幕の量の多さは言うまでもない。
「何でこんなに……威力が……!!」
「昔より上がってるなんて……!!」
「んーん、
『獄熱の間欠泉』!!」
光の弾幕は収まった。けれども諏訪子は空中に浮かび上がり、黒いモヤモヤとしたモノを地面に投げつける。するとそこから凄まじい威力の火柱が噴き上がってきた。
「なんて熱さ……まるで地獄の炎……!」
「キャンプファイヤーするにはまだ早いぜっ!?もっと暗くて、メンツ集めないとな!」
「そんな軽口叩く余裕が、果たして今の
「何だと……うわっ!?」
「魔理沙!きゃっ、ちょ、何よこれっ……助け……」
その黒いモヤを三つ……いやそれ以上を彼女に投げつける。当然魔理沙は回避しつつレーザーを放つが、次に着地したその地点でぬかるみに足を取られて転んでしまう。
「うわわわわ、待て、なんだこりゃ!?底なし沼みたいに身体が沈んでく……!!」
「あははははははははっ!凄い、凄いよ魔理沙!誘導に惑わされすぎ!そりゃっ!」
「くっ……!?いや、お前の方こそ、もっとよく狙うんだな!当たらないぞ、そんなモン!!」
笑いながらモヤを投げる諏訪子、しかしそれは魔理沙に当たらず、かと言って囲むわけでもなく適当に散っていく。
膝あたりまで両足が埋まった魔理沙だったが、どうにか抜こうと悪戦苦闘していると、うっかりミニ八卦炉を落としてしまう。その瞬間、たった一つだけ魔理沙のそばに着弾し炎を噴き上げる。
「っ……何だか大きな炎が不気味に思えるな……まるで、一度焼け死んだ経験があるような根源的恐怖が……って……あッ!?あぁぁああっ!何だこりゃ!?」
「燃える覚悟で抜け出さないからだよ。ちんたらしてる間にぬかるみは炎の熱で乾いた。あーあ、足が埋まったまま固定されちゃったねぇ……」
「そ、そんな……」
カエル座りしたまま、ケロケロとわざとらしく笑う諏訪子を見て、魔理沙は言い知れぬ絶望感に襲われる。自分はこのまま動けないのか。彼女にされるがままになってしまうのか……と。
「格ゲーだったら、HP尽きるまでボコれそうなコンボ技でしょ?これぞまさにデスコンボさ!!いやぁ、ここまで綺麗に決まったのは初めてだ、嬉しいね!」
「っ……」
「ほら、もっと喜びなよ。私の初めてになれたんだからさ。神奈子も早苗もエスカルゴも樹里愛もいっつも空中戦でさ、坤を創造する私とは能力面だと相性が悪くてねぇ。あ、エスカルゴとは体の相性はバッチシなんだけどね?ウフフフフフッ♡この前なんてね〜……」
すっかり動けなくなった魔理沙を前に世間話を始める諏訪子。魔理沙の中で彼女に対する恐怖が高まったのは言うまでもない。そのまま、助けを待つ間一方的に話を聞かされた。やがて諏訪子は唐突に話すのを止め……。
「……おっと、そうだ。動けないままなのは怖いよね。うんうん、わかるよ。ごめんね?そこから助けてあげるね?動かないでね?」
「動きたくても動けねーぜ……」
「魔理沙救出大作戦〜!諏訪子、いっきまーす!
『マグマの両生類』!!」
「へ?マグマ……?」
諏訪子の足元がマグマと化し、諏訪子はそこに飛び込む。するとマグマの球体がいくつか溢れ、土の地面に落ちるとジュワリと溶かしていく。
諏訪子が飛び出すと、これまたマグマが溢れて地面を溶かし、焦がす。
「ほ〜らほらほら!早く逃げないと魔理沙の足もマグマに飲み込まれるぞぉ??」
「ひっ……や、やめろ!来るな、こっち来るな!来るな来るな来るな、来るなあぁあああっ!!」
ザブン、ザブン、と潜っては飛び出して徐々に迫り来るマグマと諏訪子。遂に諏訪子が魔理沙に飛び付こうとしたその瞬間、手を広げた諏訪子に大きな霊力弾が連続でヒットする。
「ふぎゃっ!?」
「諏訪子……!!あんた、よくも魔理沙を!!」
「れ……霊夢ぅ……」
足を失いかけ目に涙を浮かべる魔理沙は、目の前に現れたボロボロな様子の霊夢を見て、思わず情けない声が漏れる。
「あれあれ?おかしいな、ちゃんと動き封じてたはずなのに。まさかゴリ押しした?」
「そのまさかよ!」
「ちぇー……」
諏訪子は以前、器であり彼でもあるエスカルゴから霊夢と魔理沙の二人組の特徴を聞いていた。それによるとひたすらチームワークが凄いとの事だったので、諏訪子はとりあえず霊夢と魔理沙を分断する事にした。
まずは魔理沙を拘束し、それと並行して霊夢を大木で囲む。勿論、一重では弾幕に変えようとも簡単に突破される。だから、十重二十重、さらにダメ押しとばかりに囲み、魔理沙を始末する為の時間稼ぎとした。
そのハズだったのだが……霊夢は現れた。ボロボロとなって。
「まさかアレだけの弾幕を躱すなんてね。流石に想定外と言わざるを得ないかな」
「永遠に続くかと思ったわ、あの弾幕……。何よアレ、壊しても壊しても木、木、木!壊せば全部弾幕になって追いかけてくるしで、もう、最悪の耐久よ!」
「へへーん、凄いでしょ!」
大きな木片にすれば大きな弾幕となる。狭い所での大玉は脅威なので、細かくするために強めに破壊する。すると今度は、小さめで高密度という鬼畜な弾幕に変化する。どちらにせよ鬼畜だ。
(だよね〜……やっぱり霊夢は空中戦だよねぇ。地に足つけてくれないかな〜)
「溶かそうとするなんて悪趣味極まりないわ!」
「いやいや、本気で溶かすつもりは無かったよ。靴は溶けるかもだけど、魔法使いの身体ってのはそんなに脆くないからねぇ」
「どちらにせよ、私はあんたを倒す!」
「やってみな、今日の私はちょっとだけ強いよ?油断してたら痛い目見るよぉ!」
「もう十分、見たわ!霊符『夢想封印』!!」
「げげっ……神具『洩矢の鉄の輪』!!」
フラフープを何本か指で回し、空を飛ぶ。その回転を利用してか、夢想封印による弾幕を何度も掻き消してみせる。
「夢想封印を掻き消した!?そんなバカな……!霊夢の十八番だぞ!?」
「そらっ、喰らえっ!!」
「くっ……!!」
フラフープを直に喰らった霊夢だったが、何か気付いたらしく、ダメージを受けながらもニッと笑う。それを見て諏訪子は警戒心を強めた。
「そうか……!何故今日は夢想封印が不調なのか分かったわ!」
「!」
「相手が神だから!これっきゃないわ!こちらが強気で立ち向かっても、霊力による攻撃は自然と弱くなってしまう!しかもタダの神じゃなく……
「まーねぇ……そこらの野良神とは違うわねー」
「なら簡単よ、あんたを倒すのは」
「……あぁん?何だってぇ?」
「私はもう人間じゃない。よく味わうがいいわ、吸血鬼の力を。暴走『オーバードライブ』!」
「────ッ!エスカルゴが霊夢とお揃いだって言ってたのはソレか!妬けるねぇ……!!」
美しい黒髪は白く染まり、右半身には禍々しいヒビ割れたような紋様が現れる。吸血鬼としての力を解放したのだ。身近な人から禍霊夢呼ばわりされるこの姿に変身するのには、そんなに時間はかからなかった。
「さァ……掛かっテきナサい?」
「神相手に『掛かってきなさい』だってぇ……?調子に乗ってるねぇ!ぶちのめしてやる!」
「ハァッ!!」
「─────ッ!?」
短く息を吐き、パンチ一発。そのあまりの拳の圧に諏訪子は圧倒され、後方に吹き飛ばされた。霊力で適わないなら、物理で倒せばいいのだ。
◆
禍霊夢の変身を解く前に魔理沙とミニ八卦炉を掘り起こして、拳を振り抜いた先で気絶していた諏訪子を起こす。するとわざとらしく痛がりつつ目を覚ました。
「痛いなぁ。ちょっとは手加減してよぉ」
「手加減したわよ、死んでないんだからね」
「鬼巫女だなぁ、うちの早苗とは大違いだ」
「フン。……あんたと神奈子が居たってことは、残るは早苗と樹里愛ちゃんだけど……まさかあの二人まで加担してないわよね?」
「あぁ、大丈夫。あの子達はあの世だよ。冥界にお使いに行かせてある」
「なら、いいけど。あんたらに振り回されるのは見てらんないからね」
「酷い言われようだねぇ。別にいいけどさ」
ケロケロと可愛らしく笑う諏訪子。彼女には、もう戦う気は無いように見える。それを感じとり霊夢はお祓い棒、魔理沙はミニ八卦炉を収める。
「そろそろ聞かせてもらうわよ。異変を起こした目的は?黒幕なら分かるわよね?」
「……全ては幻想郷の為……そして神々の為だ。幻想郷の狂いを矯正するには、その根本から……根底から着手するしかない」
「急に真面目な話だな……落差が激しすぎて風邪引きそうだぜ」
「真面目な話だし。……霊夢。これからも異変を解決するだろうから、これだけは教えておくね。幻想郷に住まう神が起こす異変は、ほぼ幻想郷の根本に関わる事だよ。隠岐奈が前に起こしたのもそうだ。表向きは二童子の後継者探し、なーんて理由だったそうだけど」
「『幻想郷に住まう神が起こす異変は、幻想郷の根本に関わる事』……ねぇ。肝に銘じておくわ。それはそれとして、今回の異変って幻想郷の何をどうするつもりなの?」
「さぁね。それは教えられないかな。まっ、もう目的は達成されてるからさ、他の神にでも聞いてみなよ。アイツはまだ異変を終わらせるつもりが無いから」
「アイツ?」
「まぁ、目的は達成
「目的達成中……なんか不思議な響きだな。現在進行形で異変は進行してると言いたいんだな?」
「そうだね。あと私から言えるのは……さっさと先に進まないと勝てなくなる……ってことかな」
「「はぁ!?勝てなくなる!?」」
「異変を起こした理由の一つに『信仰の減少』がある。信仰の強さは神の強さ。異変により神には信仰心が集まり……これまでより強くなってる。この先はもう、言わなくてもわかるよね?」
「─────ッ!!やばいぜ霊夢!」
「わかってるわ、だけど一つだけ……。諏訪子、あんたが今回ヤケに強かったのも……その信仰のおかげだって言いたいの?」
「そうだね、全盛期より弱いけどね。ほら、私と喋ってるとドンドン他の神が強くなっちゃうよ?早く行かないとヤバくない?」
「行こう霊夢、次こそ雷の方を何とかしないと!大変な事になりそうだぜ!」
「そうね。諏訪子、あんたはもう余計なことするんじゃないわよ!大人しく帰ってなさい!」
「言われなくても帰るよーだ!あっかんべー!」
霊夢達に見送られ、神奈子のように守矢神社へ向かって飛び立つ諏訪子。改めて里を見渡して、液状化した地面、所々に生えた木々を見て、内心ほくそ笑む。
「んふふっ……今晩は赤飯かな?んー、神奈子のお粥で我慢しとこっかな♪」
諏訪子が大喜びしている中で、霊夢と魔理沙はこの異変が思ったより大規模なのだと思い知り、久しぶりに異変解決に対して緊張を感じていた。
異変のクライマックスがまだ訪れてないとは、二人には知る由もなかったのである。
ミシャグジを漢字表記にした際、書き方はとても豊富なようです。200以上もあるとか。
斎藤さんの「サイ」より多いですね。
その中でも御左口神、御社宮神、御射宮司、御社宮司、御作神などが有名かと思います。秘封活動記録の第2話の字幕では、「御左口神」の表記が使われてましたね。
でも俺は「御射軍神」表記が好きです。
R18のタグがついている本作ですが、R-18G書いてみていいですか?
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おk
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アカン