「よし、さっさと火球の方に向かうぞ!!」
「あんたを待ってたんだから、少しくらい申し訳なさそうにしなさい!」
「へへっ、悪かったZE☆」
「ったくもー……」
回復した魔力を使って魔力回復薬を取り寄せた魔理沙は、即座にそれを服用して魔力を満たす。魔力さえ満たせばあとはこっちのもんだ、とでも言わんばかりに、霊夢を抜かして火球へ一直線に向かっていく。
なぜ大量の雷ではなく火球を先に対処する事にしたか。それは、雷より一撃の被害が大きいからである。見るからにアレはマズイ。どこに落とすのかはまだ分からないが、どこに落ちても雷より甚大な被害を与えるのは火を見るより明らかだ。
その真下に人影が一つ見えたというところで、二人の目の前を遮るように瞬間移動してくる者が一人。
ロングの銀髪を風になびかせて、季節に合わぬ肌を露出しない暑そうな格好をする、禍々しくもどこか神々しくもある妙な気配の持ち主。魔界神である神綺だ。
「神綺……!やっぱりあんたも……」
「ええ、参加させてもらってるわ。あなた達を、この場で止める為にね」
「ッ……ど、どう……する?霊夢……。まさか、とは思ってたが……その通りになるとはな……」
神綺は強い。前に戦った時なんてほぼ総力戦でようやく勝てたのだから、強いに決まっている。それも、神の力を借りてやっとだったのだから。
「今のあなた達では
「そんな漫画みたいな展開が本当にあるとはな。だが本当にどうするんだ霊夢、私達だけでコイツには……」
「それでも私達がやるしかないでしょ。有事の際には、私があの時の雷神を神降ろしするわ。一度エスカルゴ越しに会ってるし、ちょっとくらいは力貸してくれるでしょ」
「あぁ、アイツか。あの神ならまた────」
「助けてくれないわよ、その神は」
「「えっ……?」」
神綺の放つ無機質な言葉に、二人は硬直する。それもそうだ。あの時の雷神とは、武甕槌命だ。その武甕槌命がこの先に控えているのに、ここでこの二人を助けるはずがないのである。
「今、幻想郷に彼がいる。これがどういう意味か分かるかしら」
「……ッ!?こっちに来てるの!?」
「まさかさっきから雷落としてんのは……アイツなのか!?」
「……さぁね。そこは私も、何とも言えないわ。カルちゃんなのか、武甕槌命さんなのか……一体誰が雷を落としているかなんて分かりやしない。でもこれだけは言える。……
「それでも私は……戦うしかないのよ。相手が誰だろうと、どれだけ強い神だろうと、異変解決は博麗の巫女の仕事だから……!!」
「そうよね。それならやっぱり私を倒してからにしてね。魔理沙ちゃんも、それでいいわね?」
「おう!魔理ちゃんもそれでオッケーだぜっ!」
「そう……。ありがとうね、二人共」
少し弱々しい笑顔で、どういうわけか礼を言う神綺。すると、弱々しい態度とは正反対に、神の凄まじい力が立ち上ってくるのが分かる。
「二人の戦い方はあの時に学んだわ。もう様子見なんてしない……全力でお相手するわ!」
バサリと黒翼を生やした神綺。白翼という変身形態も経ず文字通り最初から全力で来るらしい。黒翼が生える瞬間はある程度の弾幕が漏れるが、掠らなくてもそれがどれだけ強い力を秘めた弾幕なのか、ひしひしと感じ取れた。
「今回こそ、ちゃんと弾幕ごっこにしてくれるんだよな!?」
「もちろん。スペルカードも何枚か開発したし、お披露目といきましょう」
「楽しみだな……!」
「あのねぇ……」
楽しんでる場合じゃない、と霊夢に窘められ、真剣さを取り戻す魔理沙。確かに、通常弾幕でもあんな密度だったのだから、スペルカードならばもっと濃い密度になってもおかしくない。
そもそも相手が相手だ、遊ぶようなそんな軽い気持ちでは決して勝てるわけがない。
「世界を焼き尽くせし魔界の焔よ……!!魔界神『原始の焔』」
とてつもない強さ・量の魔力が溢れ出したかと思えば、それは黒紫色の焔となって、大小様々な大きさで二人に向かい始めた。少々ホーミング性があるようだ。
「お前も魔法を使うのか!?」
「何を驚く事があるの?魔界は魔法のメッカで、その魔界を創造したのが私なのだから魔法くらい使えて然るべき。そもそも、魔界の殆どの魔法は私が考案したモノなのだからね」
「そうだった……ッ!なにも、創造だけが取り柄じゃないんだな……」
「その通り。……それにしても、やっぱり、ワンパターンな弾幕は華が無いわねぇ。見栄えしないばかりか、魔力を回復させる暇を与えてるだけになってるわ」
「その方が後が楽しいぜ?」
「楽しむ必要ないから!勘違いしないの魔理沙!負けるわよ!」
「負けないって、大丈夫大丈夫!」
「……本当に大丈夫かしら?」
その時、紫炎の弾幕の中に、黄色くて目立つ、しかもこちらの動きに合わせてぐにゃぐにゃ動く弾幕がいくつも混ざり始めた。
「う、うわあぁあぁぁっ……
たくあんとは、超ホーミング性の黄色くて長い弾幕の通称である。パッと見、たくあんに見えるのが特徴だ。弱ホーミング性と強ホーミング性が混ざり合うと、思ったよりも厄介である。
「魔理沙!!」
「分かってる!こんなの全部消してやるよっ!!魔砲『ファイナルスパーク』ッッッ!!」
小さなミニ八卦炉からは想像もできないほどに太い光線を放つ魔理沙。それを見て、相変わらず物凄い迫力だな、と霊夢は息を飲む。
神綺はそれを結界一枚で防いで、軽い溜め息をついてみせる。
「危ない危ない。凄い力だわ。魔法使いになって数年とは思えないくらい。頑張っているのね」
「へへっ、それほどでもないぜ!」
「お返しと言ってはアレだけど、氷属性の魔法でお返しするわ。
雪の結晶のような形をした弾幕が、ポロポロと降ってくる。なんてことは無い、別に濃くもない密度なので寧ろ拍子抜けだった。
しかし、背後から迫っていたらしい弾幕が顔を掠めたことで、二人はあることに気付いた。このスペルは前方からだけではない、後ろからも……しかも左右から襲いかかってくる弾幕だ、と。
「結晶の形は当たり判定が分かりにくい!全く、厄介な弾幕だ……!」
「本当にそうね、魔理沙の弾幕の方がまだわかりやすいわ!」
「よし、もういっちょいくぜ!魔符『マジカルR360』横ver.だ!!」
今回は縦ではなく横に回転し、レーザーで掻き消していく。星弾幕もお返しとばかりにパラパラ撒いていくのが神綺にとっては厄介に思えた。
それが済んだら、また神綺の
「魔界の全ての魔力を、今、ここに……。魔界神『
先程までとは比べ物にならないほどの弾幕が、神綺から溢れ出す。クナイ弾に小粒の弾幕などが綯い交ぜになったような弾幕が配置され、やがて堰を切ったように放たれる。
「次はどんな弾幕だ?」
「いや違う、これ、ギミックも何も無い!ただの超高密度弾幕だわ!!」
単純だからこそ、二人にはより脅威に思えた。カーブなどのギミックがあればパターン化も可能だろう。しかし、こういったただの高密度な弾幕だと終始根性避けにシフトするしかないのだ。
それらを掻き消すなり、魔力などの消費を抑え回避し続けていると、ついに神綺が宣言をする。
「ラストワードいくわよ。これに耐えられたら、先に進んでもいいわ。創造神『異世界送り』」
ラストワードの宣言をする神綺。すると二人の間に小さなブラックホールのような物体が現れ、二人を吸い込み始めた。
数秒間は吸い込みにも抗っていたものの、結局呆気なく飲み込まれてしまい、二人は幻想郷から姿を消した。気配も、魔力や霊力の気配も無く、完全な無になったような錯覚に陥る。
「フー……初めての弾幕ごっこだったけど、案外何とかなったわねっ……!」
小さくガッツポーズする神綺だったが、背後にある神の気配を察知し振り返る。すると、まさに隠岐奈が扉から現れる瞬間だった。
「どうしたのかしら?」
「いやいや!『どうしたのかしら?』はこっちのセリフだ神綺!あの二人をどこへやった!?」
「異世界に飛ばしただけよ。大丈夫、死ぬか効果時間が終われば自然と帰ってくるんだから」
「い、異世界……?その世界は、その……時間が終わったらどうなるんだ?」
「どうなるってそんなの、消えるだけよ?」
「スペルの度に逐一世界を創っては消してる……とでも言いたいのか?」
「そうだけど……ルール上、何か問題でもあったかしら?」
「あー……いや、それならいいんだ。別に世界の創造に関するルールは無いよ」
「そうなのね、それなら良かったわ!」
(そもそも世界をポンポン創れる奴が居ないって話だ。何なんだ、異
隠岐奈は内心ドン引きしている。自らも後戸の国を持ってはいるが、あんなモノをスペル単位でポンポン生み出すなんて、隠岐奈にとって想像もできないことだった。
世界の創造はおろか、世界の破壊も、普通なら命を削るレベルの大仕事だと言えよう。そんな、真なる神の御業を、こうも容易く行ってしまえる神綺の強さ、恐ろしさに、隠岐奈は頭痛と目眩がしてきた。
「ちなみに、どんな異世界なんだ?」
「雨の代わりに弾幕、太陽光線の代わりに弾幕が降り注ぐ世界。地面以外の全てのモノ達は、そのモノの形をしただけの弾。安置は地面の中のみ。まぁ、安置なんて無いも同然だわね」
「物騒な世界だな」
「当然だわ、ラストワードだもの。神の威厳ってモノを見せてあげなくちゃ♪」
(純粋な笑顔のはずなのに……この私が『笑顔が怖い』と感じる日が来るとは。成程、これだけの力を持っているなら、信仰の有無なんて関係ない存在に成って当たり前か。神綺……お前は全ての神の頂点に立てる神だ。つくづく思うよ、お前が幻想郷の神じゃなくて本当に良かったと……)
◆
「うっ……こ、ここは……?」
二人は神綺が生み出した世界で目を覚ました。いや、目を覚ましたというより、意識がハッキリしたというのが正しい。
暗視も効かない真っ暗闇な世界だ。隣に相棒が居るのが二人の支えになっている。二人は決して離れないように自然と手を繋いでいた。
「何だ、ココは……?魔界神の力を感じるが……もしかして魔界に飛ばされたのか?」
「いや、多分魔界とは違うわよ。住民の気配や、魔力を全く感じない。魔界の住民は一般人ですらかなり魔力を持ってたしね。ここが魔界の端くれってんならまだ納得もできるけど……」
その時、東らしき方角から太陽が昇ってきた。暗闇に差し込む光は、初日の出のように神々しく見える。やっと周囲が見えるようになったな、と二人が安心したその瞬間。
「待てよ……?何か……迫ってきてる?」
「まさかッ!!」
二人は回避した。太陽光だと思ったのは全て、光を放つ弾幕だったのだ。しかも、太陽光の如く弾幕の及ぶ範囲が広い。右にも左にも、上空にも逃げ場はない。ただひたすら回避するしかない。
「霊夢、下がろう!幸いこの弾幕は真っ直ぐだ、弾の速度に合わせて動きにも合わせりゃ、被弾はしない!」
「そうするしかなさそうね……!」
一面の花畑ならぬ、一面の弾幕景色。ここには土らしき茶色の地面と、金色に輝く弾幕、青空の三色しかない。この何とも無機質な世界の中で、二人はひたすら後退を続ける。
どれだけ後退したか分からないが、いつまでも下がり続けると、街のようなものが見えてきた。どうやら小さな集落のようだ。
「見ろ霊夢、集落だ!やっぱりここは魔界だ!」
「ウソ、住民の気配も何もしないのに、小綺麗な集落だけ存在してるっての……?」
「ともかくそこら辺の適当な民家に飛び込もう!作戦会議だ!」
光る弾幕への被弾も厭わずに、魔理沙は速度を上げて窓から家に飛び込もうとする。しかし……
「ぎゃあっ!?」
「魔理沙!?」
魔理沙の箒が触れた瞬間、民家は弾幕となって弾けた。民家ではなかった。民家を模しただけのただの弾幕だったのだ。
被弾したことによってバランスを崩し、遂には背後から迫り来る光る弾幕にも次々に被弾する。
「夢符『二重結界』!!」
「た……助かったぜ……霊夢……っ」
「本当に何なのよ、ここ……!家型の弾幕なんて初めて見たわ……」
結界に守られた裏で、土を払いながら魔理沙が立ち上がる。流石は霊夢の結界、どれだけ密度が高くとも威力が低ければヒビ割れないらしい。
「家に被弾してひとつ分かったことがある……!この集落の家は全部弾幕だ!!」
「多分だけど、その辺の木とか落ちてる木の実も全てがそうよ。だから住民も誰も居ないのよ」
「やっぱりここは魔界じゃあないのか……じゃあ何なんだよ……」
「ともかく、もう少し耐えるしかないわね。あと何秒かしら……」
霊夢が時間を気にする素振りを見せると、丁度時間だよと言わんばかりに光の弾幕が収まった。しかし、魔理沙達が安堵の溜め息を漏らしたのも束の間。青く晴れ渡っていた空はネズミ色の雲に覆われ、雨が降ってきた。
第二波。雨の弾幕である。
◆
「─────そろそろ時間かしら」
幻想郷にて神綺がボソリと呟いた瞬間、二人が姿を現した。神綺に会う前より、一層ボロボロになっていた。
合計180秒の耐久。体験した二人からすれば、数十分にも思えるほどの長丁場だっただろう。
特に残りの10秒ほどが酷かった。速度、威力、密度、その全てがこれまでの170秒までより倍増したのだから。
「ハァッ……ハァッ……ハッ……ハァ…………。やっと、戻った……」
「長すぎだわ……!!死ぬかと思った……」
二人共、肩で大きく息をしている。運動後の比ではない。しかも、掻き消すなり防ぐなりしたのだろう、二人共魔力や霊力が著しく削れていた。
「死んだら自然とコンティニューされるだけよ。よかったじゃないの、神奈子さんからやり直しにならなくて」
「コンティニューってそういう……!?」
「けれど、耐えられたなら私の負けね。大丈夫、あの修羅場を潜り抜けたあなた達なら勝てるわ」
「自分のスペルを修羅場呼びか……。いやまぁ、確かに修羅場……というより地獄そのものだったけどな……。弾幕地獄だよ、あんなの」
「本当に、よく耐えられたわね。凄いわよ。確か夢子ちゃんは、何回かコンティニューしていたと思うけれど……」
「え゙っ……」
「あっ、試し打ちの実験台を強制した訳じゃないのよ!?あの子がね、夢子ちゃんが自分から志願して、それで……」
「いや、そうなのは何とな〜く読めるけど……。あの夢子が死ぬほどって……」
「やっぱ私達は最強だなっ!な、霊夢っ!」
「……///」
魔理沙が笑顔で拳を突き出すと、霊夢はそれに応えるように拳をコツンと軽くぶつける。神綺はそんな二人を、ニコニコと微笑ましそうに見つめていた。
5面:神綺でした。
それにしても、あの子は今どこに……(汗)
R18のタグがついている本作ですが、R-18G書いてみていいですか?
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おk
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アカン