※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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今回と次回の話は、交響アクティブNEETsさんの霊知の太陽信仰がテーマ曲として合いそう(小並)
もしくはWARNING!とか…。



合流、そして開戦

「この異変は次がクライマックスよ。くれぐれも気を付けてね。頑張ってね、応援してるわっ♪」

 

 神綺は笑顔で霊夢達にエールを送る。つい先程まで戦っていた相手に向けられる笑顔ではない。まるで母性の塊、包容力の化身だ。

 

「応援ありがとな!最後まで頑張るぜっ!」

 

「行ってくるわ」

 

 そう言い残して、二人は更に大きさを増す火球へと向かっていく。近付くにつれて、体感温度は増すばかり。幻想郷でもようやく夏も終わり頃に差し掛かったのに、ここだけ真夏のようだ。

 

「え、待って……あのシルエットって……」

 

「まさかお空か……!?」

 

 長身、ロングヘアーにマントとくれば、二人が思い浮かぶ中ではお空こと霊烏路空しかいない。実際は彼女の身体を操っている八咫烏だが、今の二人には知る由もない。今は、気配を感じとれるほど接近してもいないというのもある。

 火球を大きくさせ続けるお空を視認した二人は大急ぎで現場に向かおうとする。しかし、唐突に目の前の空間が歪んで、そこから一人の吸血鬼が二人の前に躍り出た。武甕槌命に体を操られた、エスカルゴである。

 

「よぅ、元気にしていたか?」

 

「エスカルゴ!?……じゃ、ない!!」

 

「まさか本当に、あの時の雷神様……なのか?」

 

「うーむ……流石に分かるか。一度魔界で会ったからなぁ、分からぬ方がおかしいか」

 

 会ったとは言っても、エスカルゴに乗り移った状態での話である。悪魔である器に乗り移ってもなお溢れる神力は、留まる所を知らない。今も、そしてあの時も。

 

「神綺から聞いて、まさかとは思っていたけど、本当に敵に回るなんて……」

 

「まさかと思える程度の勘はあるのだな。まぁ、此度の異変はどの神も黒幕だと言えよう。お前の勘が鈍るのも致し方ない事だ」

 

「あなた、何でエスカルゴの体を奪ってるの?」

 

「決まってるだろう、コイツが我の器だからだ。他に理由などありはしない。魔法は使えないが、我の方がこの肉体を上手く操れ(つかえ)るしな」

 

「あぁん?ふざけてんじゃないよ!そんな理由で旦那の体が乗っ取られてたまるもんですか!」

 

「理由を決めるのは、お前ではない。器に関する決定権を有しているのは、嫁のお前ではなく器の主神たるこの我だ。それが分かったら、さっさと我らと戦うのだな。その為に来たのだろう?」

 

「いいわ、お望み通りぶちのめしてあげる!もう二度とコイツに乗り移れないよう、コテンパンにしてやるわ!!」

 

「クハハッ、面白い事を言うな、博麗の巫女よ。お前も来い、八咫烏ッ!!」

 

 建御雷は、楽しげに遥か後方の八咫烏に向けて声をかける。すると、お空の声の高笑いが響いた直後────。

 

「挨拶代わりだ、喰らうがいいッ!!」

 

 と、二人が神綺と戦う前から大きくさせていたあの火球を二人……いや建御雷も合わせて三人の方へ発射した。建御雷はスキマにて回避するが、強烈な熱線、眩い光が二人を襲い始めた。

 

「私達が避けたら……」

 

「人里が燃えちまう!!」

 

 サァッと一気に顔を青ざめさせる。二人には、里の命運が掛かってると言っても過言ではない。

 まず霊夢は二重結界を展開したものの、火球のあまりの大きさに進行を防ぐ事は叶わなかった。結界を破るだの、破らないとかの次元ではない。サイズ差ゆえ、結界をも飲み込んだのだ。

 

「止められないなら、破壊するしかないか……!変ッ身ッ!!」

 

 魔力を解放して、フランのような翼を生やした魔理沙。白く透明な結晶が、純粋な魔力を示しているように思える。変身の形態は二種類あるが、どちらにしても超火力で強力なので、ここで解放するのがベストだと言える。

 

「アレを破壊する手を思い付いた!だが、魔力の充填に時間がかかる!時間稼ぎ頼んだ!!」

 

「はぁ!?ちょっ、えっ、どうしろっての!?」

 

 御札も卒塔婆も燃える、針では火力に欠ける。弾幕でも圧倒的サイズ差故に押し負けるのは明白である。火力よりは技術タイプである霊夢故に、火球を押し留める為の手段に迷っていた。

 

「こうなったらもう、一か八か……!夢境『二重大結界』!!」

 

 強化拡大させた結界を張るが、すぐにバキバキ音を立ててヒビ割れてしまう。霊夢の結界が弱い訳ではない。決して、そんなことはない。しかし真の神の力というのは巫女の力を超えるものだ。

 元より、vs神において巫女である霊夢は相性が悪かったりするので、仕方ないことではある。

 すると、二人の傍に一人の兵士が現れた。

 

「ここは私が引き受けます!!」

 

「あっ……磨弓っ!?あんた、さっきからどこに行ってたのよ!?」

 

「風の神に飛ばされて、やっと戻ってきました!間に合ってよかったです!」

 

「間に合ってない気もするけど……まぁいいわ」

 

「何となく事情は把握できました。魔理沙さんが魔力を溜めきるまで、アレを止めるんですよね。ここは、埴輪兵士達にお任せあれ!!」

 

「達って……あんた一人でしょ」

 

「私は袿姫様の部下。故に袿姫様の神徳も幾分か賜っているのです。私の巨大な埴輪で、あの燃え盛る火の玉を止めてみせましょう!!埴輪『巨人騎馬兵団』!!」

 

 するとどこからともなく巨大な騎馬兵が現れ、集団で火球を受け止める。ある埴輪は剣で、またある埴輪は盾で。中には体当たりに行く者も。

 仮に、埴輪だから熱や火に強いとは言っても、やはり完全なノーダメージではない。ましてや、相手は神の火。埴輪とて長時間は耐えられない。

 

「ちょっと強化させてもらうわよ」

 

 霊力を込めた御札を埴輪に投げつけ、霊力にて強度を上げる。相対するなら神の力と相性は悪いものの、力を合わせるならばその限りではない。寧ろ相乗効果で通常より大きく効果が強まるかもしれない。

 

「す、すごい……!ヒビ割れが直った!」

 

「悪いわね、こんな援護しかできなくて……」

 

「止められてるので十分です!あとは魔理沙さん次第ですが─────…」

 

「……待たせたな……!!」

 

 力の篭もった彼女の声に、霊夢と磨弓は揃って振り返る。背後にいる魔理沙は、溢れんばかりの魔力をミニ八卦炉に充填していて、あの火球へと狙いを定めていた。

 

「巨大な弾幕は真ん中を貫くのがお決まりだぜ!人里はこの私、霧雨魔理沙様が守ってみせる!!魔砲『ファイナルマスタースパーク』ッッ!!」

 

 カッと虹色の光を発しながら、樹齢数千年もの巨木かと思うほどの極太光線が放たれる。かなり時間をかけて魔力を溜めた甲斐もあって、光線は火球を見事貫き、上空で爆散させた。

 

「おおっ……凄いわ魔理沙!」

 

「へっ!綺麗な花火だぜ!」

 

 爆発に伴って埴輪も壊れてしまったが、磨弓は人里を守る為には必要な犠牲だった、と仕方なく思っている。磨弓が袿姫の力を使うのは、やはり上限はあるので、無駄にできないなと自戒する。

 肉体を持っていれば、神の力を受け止められるのだが、がらんどうな埴輪にはそれが叶わない。だから、袿姫の神徳を賜ってもなお、使える力に上限が発生してしまうのである。こればかりは、忠誠心でどうこうできる問題でもない。

 

「にしても、真ん中を貫くのがお決まりって……そんなのあった?」

 

「研究中に気付いたんだ。中心が核なんだから、そこに強い力を加えてやりゃ、あとはあんな風に爆散するだけだってな。問題は、中心部まで到達できるだけの貫通力・火力があるかどうか。ま、結果はご覧の通りだぜ」

 

「は〜、なるほどねぇ。末恐ろしいわ」

 

「今の私だったら本物の太陽でも破壊できる気がするぜ」

 

「やっぱり、アリスの言う通り弾幕はブレイン、頭脳なのかもね?」

 

 弾幕はパワーを信条とする魔理沙が頭を使って攻撃を斥けた。それを皮肉るためにアリスのそのセリフを引用する霊夢だったが、魔理沙はほんの少しだけ考えた後、こう言ってのけた。

 

「いやぁ、やっぱパワーだろ。最終的にパワーが無きゃ意味が無いんだから。もし、中心部を攻撃すればいいと気付いてたとしても、霊夢に今のが破壊できたか?」

 

「うぐっ……そう言われると痛いわね……」

 

 やっぱ最終的にはパワーがモノを言うんだ、と魔理沙は誇らしげに胸を張っている。実際、今の攻撃を斥けられたのは魔理沙の超火力あってこそだったのもあって、霊夢は彼女の言葉を大人しく飲み込むしかなかった。

 

「まぁアレだ。持ち堪えてくれてたからこそ破壊できたからな。助かったぜ磨弓、ありがとな」

 

「は、はいっ!」

 

 魔理沙にストレートに感謝された磨弓は、少々照れながら顔を綻ばす。こうして見ていると到底埴輪だとは思えない。

 創り出された感情なのか、それとも本物の感情なのか……魔理沙達には分からなかった。

 そんなことを思っていると、三人の前に大きなスキマが開き、武甕槌命と八咫烏が現れた。

 武甕槌命が乗り移ったエスカルゴは相変わらず酷く帯電している上、八咫烏が乗り移ったお空の輪郭は、真夏の地面のように、陽炎がユラユラと揺らめいている。

 

「来たぜ霊夢!」

 

「……!」

 

「相変わらず危ないな、お前は。我はともかく、巫女共が死んだらどうする」

 

「なァに、ほんの小手調べよ。死ねばそれまで。さぁ、どうだ、お前達。この私と、血湧き肉躍る熱き戦いをしようではないか!敗北すれば全てが消し炭と化すがな!ハッハッハッハ!」

 

「異変の解決者だと先程教えただろうが。鳥頭になるんじゃない。殺すな。せめて半殺しまでだ」

 

「つまらんなァ。まぁ、今回は表に出てこられただけで良しとするか」

 

「おうそうしろ、お前は度が過ぎる」

 

「お前にだけは言われたくないがな、建御雷」

 

「フンッ」

 

 人里の上空にて睨み合う二柱と三人。溢れ出す神の力、気配は器という枷があってなお圧倒的な密度だった。見るからに全力ではないのは明らかだが、それでも実力は五分と五分に思える。

 するとそこに、一人の幼女少女が飛んできた。こちらを見るや方向転換し、睨み合う彼らの中に割って入る。

 

「あー!ゴロゴロ鳴ってると思ったら、やっぱりエスカルゴ居たー!」

 

 フヨフヨと飛んできたのは、寒色系の愛らしい服がトレードマークのあの妖精。チルノである。こんな所を通りかかるなんて、珍しい。どこかへ遊びにでも行くのだろうか。

 

「おう、チルノ!どうしたんだ?ん?」

 

「……あれっ?おかしーな……なんかエスカルゴじゃないっぽい……?」

 

「「「ッッ!??」」」

 

 チルノのその予想外な発言に、解決組は勿論、神々も驚きを隠せなかった。何故、神等には一切関係なく、神々とは接点もない彼女がそう感じることができたのか。

 

「な、何を言っているんだ?わ……じゃなくて、俺は俺だぜ?」

 

「だってなんかおかしいよ!エスカルゴは『何を言っているんだ?』なんて、そんな文字数が多い喋り方しないし!『何言ってんだ?』だよ!」

 

(確かにそれもそうだけど、他に気付くべき点があるでしょうに……。あんなに帯電してんのに、そこはノータッチ?そんなんで、よくエスカルゴじゃないって分かったわね……)

 

(喋り方か、成程な。チルノの奴、案外ちゃんと物事を観察できるんだなぁ)

 

「いちいち細かいな。お前といい、へカーティアといい、一体コイツの何だ?それに、どのような姿をしていようと我は我だ、それでいいだろう。この肉体は間違いなくエスカルゴのものだぞ?」

 

「……!やっぱお前、エスカルゴじゃないな!!エスカルゴを返せ!!」

 

「コイツを倒すのは私の仕事よ。あんたは帰って特訓でもするのね」

 

「ヤダよ、あたいもやる!よく分かんないけど、エスカルゴ、悪い奴に乗っ取られたんでしょ!?だったらあたいも助ける!」

 

「悪い奴っていうか、アイツは……」

 

「まぁ待て、霊夢。別にいいじゃないか。心ゆくまで戦ってもらって」

 

「でも……」

 

 彼女を巻き込みたくないと考えている霊夢は、少々不満気味だ。しかし魔理沙とて、ただ彼女を受け入れるつもりではない。条件はある。

 

「だが、私らの邪魔はするな。あと何があっても私らは助けないからな。わかったな?」

 

「上等だっ!」

 

「それでよし!」

 

「クカカカカッ……まさかお前達、我を前にして万策尽きたのか?妖精如きを戦力として投入するとは、いやはやここまでとは思いもよらなんだ。酷いものだな、博麗霊夢。霧雨魔理沙。チルノ。杖刀偶磨弓」

 

「うるさいうるさい、もうお前は喋るな!気持ち悪い!エスカルゴの顔で喋るな!気持ち悪すぎて鳥肌立つ!!」

 

「全く、酷い物言いだな。コイツから我に肉体を差し出したというのに。ほら、我の中でコイツも嘆いているぞ。『まさか、チルノがここまでバカだとは思わなかった』とな」

 

「ッ……!?う、ウソだっ……ウソだ!そんな事言わないもん!!絶対、信じないもんっ……!!そんな、ことっ……うっ、ううう……、ひっく、うぇぇぇん!」

 

 発言者の姿が姿だけに、その言葉に傷を負ったチルノは思わず泣き出してしまった。この程度で泣き出す者の心情など、武甕槌命には理解できるはずもなく、ただ軽く困惑しただけだった。

 すると霊夢は、わんわん泣くチルノの頭を軽くお祓い棒で叩き、声をかける。

 

「信じないって言ってんなら泣くんじゃないの。乗っ取られたアイツを助ける、それだけでしょ。ここで泣き喚くなら邪魔よ、退きなさい」

 

「あーあー、チルノ泣かせちまったなぁ神サマ。こりゃあ、エスカルゴも大層ご立腹だろうなぁ」

 

「……フン、器の気持ちなぞ今はどうでもいい。お前達は我を止めに来たのだろ?ならばさっさと掛かってくるがいい、お喋りはもう終わりだ」

 

「お前はもう、絶対許さない!もう二度と、エスカルゴのフリして喋れないようにしてやる!!」

 

 目尻を赤くさせたチルノが叫ぶ。建御雷の中のエスカルゴは、そんなチルノの言葉に焦りを感じていた。しかしそれと同時に、期待もしていた。今のチルノなら一矢報いるくらいはできるのではないだろうか、と。

 

「……だそうだ、建御雷。面白そうだなァ」

 

「八咫烏、お前は誰を狙う」

 

「私は……そうだなァ。魔法使いと埴輪がいい。うん、そうしよう。よし、ヤツらは私の獲物だ、横取りしてくれるなよ?」

 

 自分の攻撃を防がれた上、破壊までされた事を根に持っているのか、よりにもよってその二人を選び出す八咫烏。彼も存外戦闘狂なのか、二人を選んだ八咫烏……お空の端正な顔が、醜い笑顔に蝕まれる。

 

「そうか。では、巫女と妖精を片付けた後は我もそちらに参戦させてもらう。せいぜい倒されないことだな」

 

「ほざけ」

 

 建御雷は八咫烏からゆっくりと距離を取って、霊夢とチルノに「こっちに来い」と呼びかける。それを見て八咫烏も、同じように建御雷から離れ魔理沙と磨弓を呼び寄せる。

 

「待たせたな、魔法使い、埴輪。お前達の相手はこの八咫烏だ。せいぜい死なぬことだな」

 

「そうか、私達の相手はお前だな!いいぜ、何度でも破壊してみせる!磨弓、力を貸せ!」

 

「もちろんです!」

 

 

◆

 

 

「八咫烏は巫女など眼中に無い、か。まぁ、我に因縁がある二人だ。お前達にとっても、我の方が都合がいいだろう?」

 

 したり顔で二人にそう告げる建御雷。二人は、誰が見てもわかるほど見るからにイライラとしており、受け答えも粗雑になってきている。

 

「ええそうね、とっっっても都合がいいわね!!だから今回はボコボコにしてやるわ!!」

 

「あたいは……えっと、えーっと……とにかく、お前を倒してエスカルゴを返してもらう!」

 

「妖精如きが我を相手に何ができるのか?せめて我を楽しませろ、さもなくば半殺しにするぞ」

 

「やれるもんならやってみなさい!!やるわよ、チルノ!惜しみなく全力を出しなさい、コイツをブッ飛ばす!!」

 

「わかったっ!!」

 

 かくして、八咫烏vs魔理沙&磨弓、武甕槌命vs霊夢&チルノの戦いの火蓋が切って落とされた。最後に笑うのは、果たして神か否か。

 全ての命運は、彼女達に委ねられたのである。




エスカルゴから肉体を差し出した→ウソ
エスカルゴがチルノにガッカリした→ウソ
ブラフばかりです、建御雷

磨弓が居なかったら人里の一部が消し飛んでいたという事実
がらんどうって事で神奈子様に吹っ飛ばされてた磨弓にも出番が作れてよかったです(あの火球を止めるためだけに磨弓を自機組に入れたとは口が裂けても(ry)

R18のタグがついている本作ですが、R-18G書いてみていいですか?

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