※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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戦闘狂vs……

「ほらほら、もっと気合い入れて掛かってこい。でないとつまらんぞ?」

 

「くっ、ちょこまかと!チルノ、あんたちゃんと狙ってる!?」

 

「狙ってるよ!霊夢こそ狙ってんの!?」

 

「あんたと違ってね!」

 

「なにを〜!?もう怒ったぞ、本気出してアイツ苦しめてやる!!」

 

 電力弾を放ちながら、のらりくらりと回避する建御雷。見るからに余裕綽々という様子で、被弾どころか掠りすらしていない。

 霊夢の弾幕はホーミング性で、チルノの弾幕は直線的。これが組み合わされば追い詰められると彼の中のエスカルゴは考えていたが、実際はそう甘くはないらしい。

 

「カチンカチンにしてやる!覚悟しろッ!『絶対氷帝チルノ様』!!」

 

「名前のセンス、何とかなんないの!?」

 

(もっともっと、もっと溜めてから、バーニングチルノになってやる……ッ!!)

 

 すると彼女を中心に雪や雹、霰のようなものが発生して、竜巻のようにゴゥゴゥと風音を立てて回転し始める。

 雹等は互いにぶつかり合ってランダムな方向に散っていく。触れずともそれなりの冷気を帯びていることが分かるので、建御雷としても、絶対に被弾はしたくないと考えている。

 

「─────ふむ、予想よりは強力だな」

 

「あたいは変身できるんだ!もっと強くなるぞ!お前を倒せるくらい!」

 

「子供が喚くな、耳が痛い」

 

「今のあたいは大人だ!」

 

「見た目だけ、な。────来い、布都御魂剣」

 

 空間を歪ませ、エスカルゴに与えたあの霊剣、布都御魂剣を取り出した。十握剣のひとつであるそれを懐かしむように眺め、真一文字に振り抜くように構える。

 

「……!!夢境『二重大結界』!!」

 

「フッ……異変解決の勘は鈍っても、戦いの勘は変わらないのだな」

 

「チルノ、隠れて!!」

 

「え……」

 

「破ァッッッ!」

 

 一閃、真横に振り抜かれた布都御魂剣。斬撃を飛ばしたわけではない。何が起きたのかと思ったその直後、剣の軌跡が煌めき稲妻のような弾幕が迸る。

 その密度たるや、スターボウブレイクとあまり変わらない程度のものである。二重大結界で漸く防げてはいたが、隠れるのがほんの一瞬だけ間に合わなかったチルノは……。

 

「……あぐ……うっ、う……くっ…………」

 

 腹を押さえて、どうにか浮かんでいるだけだ。腹もそうだが全身の各所の感覚が失われており、逆にどこの感覚が残っているのか、彼女自身にも分からないほどだった。

 

「一撃で終わりだと思ったか?」

 

「「!!」」

 

 霊夢は咄嗟にチルノの手を引き結界の範囲内に連れ込む。二撃目もどうにか防げたものの、見るからに霊夢の霊力は削られてきている。建御雷はそれが分かっていて二人を甚振っているのだ。

 そして五撃目を与えたところで結界は砕けた。霊力が尽きたのではない。霊力を無駄に消耗することをやめたのである。

 

「悪いけど……もう庇ってやれないわ。チルノ、あとは自分でどうにかして」

 

「ククク……そうする他、無いよな。うむ、よくワカッている。そうだ、チルノ。お前は、巫女の足を引っ張っているのだ。乱入さえしなければ、今頃我を倒せていた……かもしれないのになァ。分かるか?お前の介入によりエスカルゴの復活が遅れているのだ」

 

「─────ッ!!」

 

「だがお前は自分の欲求を優先し、無理に介入。その結果がこのザマだ……なまじ他の妖精よりも強い力を手に入れてしまったばっかりに、そんな思い違いをしてしまったのだな。哀れなものよ。一体いつから、自分がエスカルゴ(コイツ)を救えると錯覚していた?」

 

「…………ッ……!!」

 

「妖精の分際で、この我と渡り合えると思うな。殺されぬ事がせめてもの慈悲と思え。分かったらこの場から大人しく去るのだな」

 

 まともに持つのが疲れたのか、剣を肩に乗せ、やれやれといった風に建御雷は言う。そんな彼の様子にチルノは声も出ず、本当に自分はアイツに太刀打ちできないのだと痛感し、泣きそうな顔で場を去ろうとする。

 しかし─────。

 

「待ちなさいチルノ。どこへ行くの?一度戦いに足を踏み入れたのなら、途中放棄は認めないわ。エスカルゴを助けるんじゃなかったの?」

 

 と霊夢が声を掛けると、ボロボロと大粒の涙を零しながら振り返って、泣き叫ぶようにチルノは言う。

 

「そうだけどッ…………あたい、弱いから……!助け、られないのっ……!!」

 

「あんたは弱くない。うちの娘を倒したあんたが弱いはずないでしょーが。敵の言うことを素直に聞いてんじゃない。見た目がアレでも中身は別。その分別は付けなさい」

 

(成程?そうやって区別してるからこそ、中身が我だと知った途端に牙を剥いたのか。……いや、中身がエスカルゴでもこの対応はあまり変わらんのではないか?)

 

「でも、エスカルゴ困ってるのに……!あたい、自分のことだけ考えてて……!!あの、なんか、上手く言えないけど……!」

 

「……あぁ、アイツが言った『自分の欲求を優先して』云々って話?それでいいの。エスカルゴのバカは、自分に正直なヤツが好きな悪魔野郎なんだから」

 

「じゃあ……頑張っても良いの……?勝てるか、わかんないけど……」

 

「勝てるか分からないじゃない、勝つの。ただ、それだけよ」

 

 ゴシゴシと強く目元を擦り、今一度、建御雷に真正面から向き合うチルノ。そんな様子に霊夢はフッと笑みを零し、何やら自信ありげな顔付きになる。

 

(……愛されてるのだな、コイツは。何だか少しばかり羨ましいぞ)

 

 遠回しに励ます霊夢と、励まされて元気を出すチルノを見て少々感傷的な気持ちになる建御雷。するとその時、一人の気配が強まり……。

 

「『ベテルギウス落下モデル』!!!」

 

 突如、お空のそんな叫びが響いたかと思えば、建御雷と霊夢、チルノの上がカッと明るくなる。見上げた三人は、思わず目を剥いた。頭上には、複数の巨大な火球がゆっくりと回りながら此方に落下してきていたからだ。

 

「何を考えているんだ、アイツはッ!?」

 

 再び剣を一振りし、そこから発せられる弾幕で全ての火球を破壊した建御雷。焦りの為か思わず味方の攻撃を消してしまったが、別にいいか、と彼は思考を切り替える。

 

「あ、ありがと……」

 

「エスカルゴを乗っ取ってるから礼は言わない!あたい止められたかもしれないし!」

 

「いや無理でしょ」

 

「フ、フン、別にお前達を助けたのではないわ。このまま我が回避すれば人里が焼かれたからな。お前達ではアレを消せまい」

 

「オイオイ武甕槌命、お前、何をしてるんだ?」

 

「こっちのセリフだ、このバカめが!お前今のは本当に危なかったぞ!一体全体お前は何を考えているんだ!?」

 

「あまりに遅いから嫌気が差したんだ。こちらはもう終わったというのに、お前ときたら……」

 

「……魔理沙は?あんたが、魔理沙を倒したって言うわけ?」

 

「あの魔法使いか?ヤツならもう、埴輪共々消え失せてしまったよ。まぁ、仕方ないな。隠岐奈が言うには、不慮の事故で弾幕ごっこで死ぬことがあるとのことだしな。私は悪くない。勝手に死ぬのが悪いのだ」

 

「────って、それ、打ち所が悪くて死んだんじゃないだろ!?お前、火力上げすぎたのか!?だから気を付けろとあれほど!!」

 

「煩いな、いつからお前は私の制御役になった?暴走はしていない。私は八咫烏、肉体の主のお空ではないのだからな」

 

「お、お前……ッ……」

 

「お前は少し役(・)にのめり込みすぎではないのか?このお空をどうのこうのとするのは、エスカルゴとやらの役目だろう。……忘れたか?神の威厳を保つ為なら、私はどのような手段も厭わぬ。全て滅ぼしてくれよう。この地上を灼熱地獄にしても構わんのだぞ」

 

「やめろ!そんな事をしても誰も喜ばぬわッ!」

 

「私が喜ぶ。それ以上の答えは要らない」

 

「……!読めたぞ、お前の考えが!異変に乗じてお空の肉体を乗っ取り、この地上で好きに暴れるつもりだな!?」

 

「ハッハハハハハ!アッハッハッハッ!!遅い、気が付くのが遅いなァ!だがもう遅い!!私は!地上を灼熱地獄に変えるッッ!!!」

 

 不気味な高笑いが人里の上空に響く。お空改め八咫烏の気迫と、狂ったような笑いに押されて、霊夢は汗が止まらなかった。まだ火球が現れた訳でもないのに、滝のような汗が流れる。

 

「……一時休戦だ、博麗の巫女。奴を止めるまで手を貸せ。八咫烏の力を抑えられれば元のお空に戻るだろう。封印の心得はあるか?」

 

「勿論。……チルノ、あんたは休んでて。相性が悪すぎるわ」

 

「う……うん……わかった!今回の獲物は霊夢に譲ってやるっ!」

 

 冷や汗か溶けた水か分からない水を流しつつ、チルノは遠くに避難。しかし魔理沙を探そうともしているのか、周囲をキョロキョロしたり名前を呼んだりしている。

 

「それにしてもなんだ、お前が奴を封印できそうには思えんのだが。夢想封印では、奴を封印するには足りないだろう」

 

「他の技術もあるわ。巫女……だからね」

 

「ならいい。我が隙を作るから、お前がトドメを封印を施せ。殺すなよ。神殺しは、大量殺人にも勝る大罪だ。死後は地獄へ行くことすら叶わん」

 

「地獄にならもう行ったわ。それ以外の結末も、良いかもしれないわね」

 

「バカを言うな。貴様が地獄に行けぬともなればこのバカはどうなると思っているんだ?」

 

「まず病むわね。そして次に暴れるでしょうね。閻魔の元に乗り込むかも。私、愛されてるから」

 

「自分で言うことか」

 

 冷静なツッコミを受け、霊夢はフッと笑った。先程までの建御雷への警戒心は一体どこへやら。すっかり、話せる奴だと安心したようだ。

 

「……あんた、思ったより悪い神じゃないのね。チルノを泣かせたりしたのも演技だったり?」

 

「さァ……どうだか。我は神代(むかし)から、強き者との戦いを望んでいる。それだけだ」

 

「ふぅん。じゃあ手っ取り早く、強者(わたし)との戦いを邪魔されないように、アイツ止めましょうか!」

 

「あぁ。……魔理沙は、どうなったんだろうな?死んだとは思えんのだが」

 

「あいつが死ぬわけないわ。瞬間移動でもして、避難したんだわ。魔力の気配がゼロになるなんて有り得ないからね」

 

「ふむ、そういうものなのか。よく分からんが、それを聞いて安心したぞ。信頼しているのだな」

 

「あんたと八咫烏の関係よりは良い関係よ」

 

「フンッ。別に我と奴は仲良しこよしではない。力ある神として、対等な関係にあるだけだ」

 

「ふーん……?」

 

「そら、行くぞお前達!せいぜい死なぬ事だな!次から次に死なれたらつまらんッッ!!」

 

「戦いの邪魔ァすんじゃないわ!あんたみたいな危険な神は、今ここで封印してやるわ!!」

 

「ハァーッハハハァ!!やれるものならなァ!!武甕槌命、お前は私に封印されてみるか!?私はできるぞ(・・・・)!?あの世に送って封印してやる!」

 

「弱き者ほどよく吠えるものだ。醜いカラスめ」

 

「ならば試してみろ!私の力を!この世の全てを焼き尽くす程度の力はあるぞ……!!」

 

 こうして、霊夢と建御雷は共同戦線を張る事にしたのである。真の目的を見せた八咫烏の破壊行動を、未然に防ぐために……。




泣くチルノ、可愛くないですか?
やっぱり一番は笑顔ですけど。

神奈子:理性も常識もある良い神
へカーティア:理性も常識もある良い戦闘マニア
諏訪子:理性も常識もある上で常識外れな行動もする祟り神
隠岐奈:理性も常識もある上で強い上に良い神
神綺:母性の塊で色んな意味で強すぎる良い神
武甕槌命:理性も常識もまぁまぁな戦闘狂
八咫烏:理性はあるけど常識に欠ける戦闘狂
みたいなイメージで考えてます。
みんな違ってみんないい(白目)

ちなみに八咫烏の「地上を灼熱地獄にする」は、地霊殿当時のお空の思想そのままですね。
地霊殿当時、八咫烏はお空の中でその思想に賛同していたので、自分が表に出られた暁にはお空の代わりにそれを実現してやろう、と画策していたようです。

R18のタグがついている本作ですが、R-18G書いてみていいですか?

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