※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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レミリアの愚痴 〜悪魔達の邂逅〜

「急にこっちから行ったら、お兄さん、ビックリするかなぁ?」

 

「さぁ……するんじゃない?でも、会うなら早くしてよね?幻月と夢月に見つかったら、また文句言われちゃうんだから」

 

「分かってるよ、しつこいわねー。少しくらい、門番抜け出したってイイでしょ。私達より幻月と夢月の方が強いんだし」

 

(そういう問題じゃない気がする……)

 

 

◆

 

 

 ある日、紅魔館の門番・紅美鈴は、奇怪な気を探知した。幻想郷では比較的珍しい部類に入る、邪悪な気。そう、悪魔と呼ばれる種族の気だ。

 ウトウトしていた美鈴だったが、東の空からの気に気付くや否や、まだ相手の姿が見えないにも関わらず臨戦態勢に入る。

 やがて二人の少女が美鈴の視界に入る。一人は丸くて刃が外向きの妙な鎌を持つ金髪ショートの少女で、もう一人は館の主と似た翼を持った金髪ロングの少女。

 美鈴は、彼女達をひと目見て察した。彼女達が並大抵の強さではないことを。

 

「やほー。お兄さんいるぅ?」

 

(お兄さん……?)

 

 ヒラヒラと手を振りつつ、まるで友達と接するかのように美鈴に話しかける悪魔の少女。二人が話すのは初めてだ。しかし幻想郷において初対面でもこんな会話をするのはあまり珍しいことでも無いため、そこに不審感を抱くことは無かった。

 

「あなたがここの門番?」

 

「ええ、そうです。なので、訪問予定のない人は通しませんよ?」

 

「じゃあ、力ずくで通らせてもらうよ?二人なら勝てるんだから。ね、エリー!」

 

「なんだろう、勝てる気がしないんだけど……。中に入るのはやめておこう?呼んでもらおうよ」

 

 相手の力量をしっかり見極められるエリーは、美鈴には二人がかりでも倒せない事を予見する。

 

「えー!?外で話すのはやだよ!私の日光避けの魔法、そんな長持ちしないし!」

 

「まぁ、それは何とかするとして……。お兄さんだけ、ちょっと呼んでもらえない?」

 

「いやぁ……それが、エスカルゴさんってばまだ来てなくて……」

 

「「えーっ!?」」

 

 まさかの返答に、少女達は同時に声を上げる。計算違いだったのもそうだが、折角幻月と夢月を欺いて抜け出したのにそれが無駄になったという絶望感のような感情の方が大きかった。

 

「……あーもう、分かりました、お嬢様に許可を取ってきます」

 

「早くして、私蒸発しちゃうー!」

 

(あの翼……やっぱりあの子は吸血鬼なんだ)

 

 やがて美鈴は、レミリアの指示を受けて、再び二人の前に現れた。主人曰く、「通せ、館の中で待たせておけ。私が会う」とのことだった。

 厨房にいる咲夜に代わり、弦月姫が二人を主の元に案内する。その間、二人は館の中を見渡し、赤々とした内装に目、頭を痛めていた。

 

「どうぞ、お入り下さい」

 

「失礼しまー……って、応接室とかじゃないの?無機質な部屋ねぇ」

 

 レミリアは、二人を戦闘用に特別空間を広げた部屋に二人を呼んだのだ。相手は悪魔だ、ただのお喋りで時間を潰せないことは読めていた。

 そしてエリーだけが気付いていた。この空間の巨大さに。そして、異質さに。

 

「待って……何、この部屋?外から見た館よりも大きくない?地下に来た訳でもないし……」

 

「そっちの悪魔は察しがいいのね。そうよ、この部屋は私の眷属である咲夜が空間を拡張したの。私達吸血鬼は、昼間は外に出られないでしょう?でも、昼間でも暴れたいの。ま、今は彼の友人のおかげで昼でも出られるのだけど……どっちみち雨の日は籠らざるを得ないからねぇ」

 

「何でわざわざそんな部屋に私達を……?まさか戦いたいなんて言うつもり?」

 

「そうよ、どうせ大人しく待ってくれそうにないじゃないの。そういう運命(みらい)だったし。……って、あなた達、どこかで見たと思ったら。あの地底のトーナメントの参加者ね?予選でボロ負けした」

 

「ボロ負けって……随分ストレートに言うのね。まぁ、私の相手は幻月だったし……」

 

「私の相手はお兄さんだったんだもーん。勝てるわけないよね」

 

 ぶすっとあからさまにむくれる二人。しかし、レミリアはくるみの方はあまり相手にはせずに、エリーとばかり話している。

 

「幻月?あぁ、天使みたいな翼の。アイツとは、一度戦ってみたいわね。それなりに強そうだし。見た目に反して、色々と悪魔らしかったし。見たところ、あなた達も悪魔のようだけど……?」

 

「私はエリー。お察しの通り、悪魔よ」

 

「私はくるみ。あなた達と同じ、吸血鬼よ」

 

「吸血鬼?フフフッ、同族とは思えないほど私とあなたには力の差があるように見えるけれど?」

 

「あら、なぁにぃ?ちょ〜っとだけ私よりも強いかもしれないくらいでその上から目線!なーんか腹立つわねー」

 

「あらあら、腹が立ったのなら発散しないとね。どうせエスカルゴがここに来るのは数時間後よ。ずっと待つのは暇でしょ?この私が相手するわ。戦ってみましょう?」

 

「フフン、望むところよ!」

 

「ちょっとくるみ……!やめといた方が───」

 

 戦闘の誘いに乗ろうとするくるみを止めようと焦るエリーだったが、そんな彼女を止めるようなタイミングで、これまた戦う(あそぶ)ことが好きな人物が部屋に飛び込んできた。

 

「お姉様〜、お客さんでも来たのー?」

 

「ええ、そうよ。フラン」

 

 レミリアの妹、フランドールだ。意外な人物の登場に、エリーは更に戦闘を避けようと考えた。彼女のヤバさは、予選を見ただけでも十分すぎるほどに伝わってきたから………。

 

「ここに来てるってことはぁ……戦うんだよね?私も混ぜて混ぜてっ♪」

 

「なら、人数も2対2で丁度いいわね。くるみ、エリー?さっさと戦闘準備しなさい。こちらから攻めるわよ?」

 

「かかってきなさい……!!」

 

 密度の濃い弾幕を展開するレミリア、フラン、くるみ。こうなってしまっては、くるみを止める手段などもうありはしない。エリーはぐにゃりと曲がった鎌を構えながら、嘆きの言葉を漏らす。

 

「あぁもうっ……なんでこうなっちゃうの……」

 

「ちょっと弱そうだけど、悪魔だもん、簡単には死なないもんね?いっぱい遊びましょ!」

 

「ッッ……!?」

 

 どこからともなく取り出したのは、スペードのようなものがついたレーヴァテインだ。姉であるレミリアにとっては見慣れている物体だが、今日初めて紅魔館に訪れた二人は、それを見た途端に顔から血の気が引いていく。

 中でもくるみは、足を震わせ、展開した弾幕を消してしまうほどに動揺している。

 

「ウソよ……そんな、まさか……!?」

 

「どうしたの?まさか、私にビビっちゃったわけじゃない……よね?」

 

「あなたにビビったんじゃなくて、それ……!」

 

 震える手でフランのレーヴァテインを指さし、ついには後退り始めた。エリーは警戒の色を顕にしており、戦闘に反対だったはずの彼女は、既に臨戦態勢である。

 

「ウソウソウソウソウソッ!!な、な、なんで、なんでレーヴァテインが……こんなヌルい世界にあるのよぉっ……!?」

 

「……?私のレーヴァテインが何よ?」

 

「あ、あんた知らないでソレ使ってるわけ!?」

 

「知らなーい」

 

「レーヴァテインは神が生み出した剣、神代から存在する神器で……伝説の魔剣なのよ……ッ!?知らないわけが無いでしょ!?」

 

「あぁ……そういえばエスカルゴから聞いたことあるわー。えぇと、確か、北欧神話の悪神ロキが作ったんだっけ。でもそれお話の中の事でしょ?私のコレは違うと思うけど」

 

「お話!?神話は現実!昔の話ってだけ!しかもそのレーヴァテイン、ただならぬ力を放ってる!それには気付いてるでしょ!?」

 

「まぁ、それはね。でもこれは私の持つ力が呼び起こした現象?ってパチュリーが昔言ってたわ」

 

「違う違う違う違う!元々よ!」

 

「へー。というかコレ、魔法の杖だと思ってた」

 

「杖?何でよ?確かに剣とは程遠い造形(カタチ)だけど」

 

「私、魔法少女だもん☆」

 

 きゅるんっ、と可愛らしく微笑むフラン。もしここに彼がいれば鼻血を噴き出していただろう。

 

「そしてコレが、私のレーヴァテインよ!!禁忌『レーヴァテイン』!!」

 

「うわわわっ!いきなりはやめてよぉ!!」

 

 フランが炎のレーヴァテインを出した事により戦闘が開始した。くるみは弾幕で、エリーは鎌で応戦。フランはレーヴァテインでそれを捌くが、レミリアは─────。

 

「ったく、あなたはいつもいきなりなんだから!神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

 

 神の槍(グングニル)を出し、エリーの投げた鎌を弾き返す。フランは弾幕を消しつつ接近して、くるみの頭上から剣を振りおろそうとするが……。

 

「そんなの当たんないしィ!」

 

 弾幕の発射をやめて、舌を出しながらポンッと蝙蝠に変身し、緊急回避をする。素早さはやはりフランの方が上で、普通の方法では回避不能だと判断したのだ。

 

「蝙蝠になっても斬れるよ?誰かさんと違って、ダラダラ過ごしてるわけじゃないし……ねッ!」

 

「キッ……!い、いったぁああい!!ちょっと、本気で斬る奴が居る!?しかも傷口焼けてるし!サイアクよ、もうっ!!」

 

 右翼を切り落とされたくるみは、蝙蝠形態から人型形態に戻って、中途半端に斬られた翼を手で押さえる。他の吸血鬼よりも少々大きな翼故に、攻撃を受けてしまう範囲は少し広い。それが仇となってしまったようだ。

 

「ナマイキ〜なこと言っちゃう奴には、やっぱりオシオキしないとね♡」

 

「ナマイキなのはどっちよ!どーみても、私達の方が歳上なんですけどぉ!?」

 

 翼の再生を後回しにして、一時的に手に魔力を込め尖った爪を伸ばし、フランに接近戦を挑む。力強く地面を蹴り大きく手を振りかざす。

 

「年の功より経験の差よ、おバカさん。歳だけを重ねたんなら、アンタはただの年増女(・・・)よ!」

 

「なッ……なな、なっ……何ですってぇぇっ!?もう怒った、プッツンしたわよ!!」

 

「アハハハハハハハッ!そのまま頭の血管切れて死んじゃえ♡」

 

「言ってろ!子供のくせにいいいいっ!!」

 

 弾幕を放ちながら爪を伸ばし接近するくるみ、剣を振り弾幕を放つフラン。中々決着がつかないその激しい戦いを、レミリアは少し離れた場所でエリーと戦いながら眺めている。

 

「あーあー……フランってば、どうしてあんなに興奮してるのかしら。スイッチの入るポイントが分からないわ。ねぇ、エリー?」

 

「ええ、そう……ねッ!!」

 

 適当に会話に乗って、彼女が振り向いた直後、懇親の力で鎌を投げる。レミリアは、空を切って進む鎌を振り向きざまに槍で受け、そのまま跳ね返す。

 

「危ないわねぇ。まぁ、あれくらいなら素手でも捌けたかしら」

 

「うぐ……ッ」

 

「次は私の番─────…」

 

「ごめんなさいぃぃっ!」

 

 槍を投げようと構えるレミリアの前で思い切り土下座をするエリー。弾き返された鎌はもう己のそばにあり、いつでも攻撃できる状態にあるが、エリーはそれすらも放り出し、レミリアに許しを乞う。

 

「私は戦いたくて来たんじゃないのよ!というかどの道そうなる運命だったかもしれないけどっ!戦いたがってるのはあの子だけで、巻き込まれただけなのよ、私は!」

 

「はあ……まさか私に土下座するなんて。悪魔のプライドってモンが無いのかしら……」

 

「命より惜しいものはないわ!」

 

「……萎えた。私は見物に回るわ」

 

「……ホッ……」

 

 部屋の入口に戻り、観戦していた弦月姫と話すレミリアを見て、助かったとへたり込むエリー。くるみには悪いと思いつつも、紅魔館まで一緒に来ただけマシだと思ってもらいたい、とも彼女は考えていた。

 そもそもエリーは、くるみについてくる意味がまるで無いのだ。エリーにとってエスカルゴは、打倒幽香の手助けをしてくれた悪魔、という認識でしかない。そいつに会う友についてくるために夢幻館の門番という仕事を放り出しているのだ、命の危険がある事は言うまでもない。叶うなら、さっさと帰りたいくらいだ。

 それなのに、こんな戦いにも巻き込まれ……。エリーは、徐々にくるみに振り回されるのが嫌になってきていた。

 

 

◆

 

 

 戦いは、フランの圧勝で終わった。決まり手はスターボウブレイク。そのあまりの密度の前に、くるみは為す術もなく敗北した。単純な弾幕でも密度というのは大きな武器である事を体感した。

 そしてスカーレット姉妹……主にレミリアは、今度こそ応接室にて二人の相手をしている。

 

「それでねぇ、お兄さんってば、私に魅了(チャーム)掛けて襲おうとしたのよ〜?もうねー、あの人ってば、ホントにヘンタイさんで困っちゃうぅ〜♡」

 

「魅了掛けないとウブなあなたとエッチなことができないからじゃないの〜?そうまでされても、まだシテないみたいだけど」

 

「あら、お兄さんはウブな女の子が好きなのよ?ウブといえば、幻月とかもそうかも!夢月の方はウブさが無いように見えるし」

 

「違うしー!エスカルゴはエッチな女の子が好きなんだしー!最近知り合ったばっかりのくせに、知った風な口利かないでくれるぅ?ぶっ殺(こわ)すよ?再生できないくらいバラッバラにするよ?」

 

「キャーコワーイ、殺されちゃ〜う♪」

 

「お姉様ぁ、エスカルゴ来る前にコイツ殺してもいーい?お掃除、私がやるならいーよね?」

 

「それはやめておきなさい。流石にエスカルゴに怒られちゃうわよ」

 

「でもでも、知った風な口利いてくんのがすごくウザイんだけど」

 

「ムカつくならエスカルゴに文句を言いなさい。私は外に行ってくるわ。無闇に喧嘩しないこと。いいわね」

 

「外?お出かけするの?」

 

「風に当たってくるだけよ。すぐに戻るわ」

 

「ふーん……?」

 

 

◆

 

 

「まさかここに、もう1人悪魔が来ていたなんてねぇ。今日は悪魔の日かしら?」

 

 レミリアは、自身の館の屋根に立っていた赤い星のマークが頬にある悪魔の少女に話しかける。警戒心を露わにして……怒りを滲ませながら。

 

「へー……この短時間でよくここが分かったね?レミリア・スカーレット」

 

「誰かを喧嘩させて当の本人は笑ってるなんて、随分と腐った根性してるわね」

 

「ありゃ、バレちゃった?」

 

 口元に手を当てながら、ケラケラ、くすくすと笑うエリス。その様子にレミリアはもはや怒りを通り越して呆れのような感情が湧いてきた。

 

「バレバレ。気配も犯人も、隠す気無いでしょ」

 

「そこまででもないけどねぇ。くるみって、門番として優秀ではあるけど、感情の起伏は激しめの子だから、私にとっちゃ格好の標的なのよね〜」

 

 感情の起伏が激しめだと格好の標的、つまりは彼女の妹・フランも、それに当てはまる。それに気付いた彼女の頬を、嫌な汗が一筋流れ落ちる。コイツに目を付けられたら面倒な事になる、と。

 すると屋根がビリビリと地響きのように細かく振動するのが足に伝わってくる。どうやら、下で再びちょっとした騒ぎが起きたようだ。

 

「……聞いてないわよ、そんなの。というより、格好の標的だからってわざわざ私の館の中で喧嘩させるなんて酷いわ。館を壊したいのかしら?」

 

「さーね、それはどうだろ?じゃあ、予定はもう済んだから、私は帰るわねー。じゃーねー」

 

「……行かせるか……!」

 

「ッ!?」

 

 背中を向けたエリスの顔の真横を、レミリアのグングニルが通り過ぎる。そのあまりの速さに、エリスは思わず飛び立つのも忘れて立ち尽くす。

 

「妹を無駄に怒らせたまま、帰れると思うなよ。それに、お前が笑ったままでは絶対に帰さない。最後に笑うのはいつだってお前ではなくこの私、レミリア・スカーレットだ。神の力を持つ悪魔、大悪魔エリス」

 

「へぇ……♪」

 

 ニタリと醜く口元を歪めたエリスは、わざわざレミリアの挑発に乗り、彼女と戦う事に決めた。レミリアがここに居るなら下の騒ぎはどうせ暫く収まらない。なら、できるだけ長く引き止めて、より滅茶苦茶にしてやろうと、そう思ったのだ。




というわけでレミリアvsエリスです。



紅魔郷のBGMにはWavとMidiの2種類がありますけど、皆さんはどちらの音源が好きですか?
一通り聞きましたが、これは甲乙つけ難いです。差流石神主ですね。



レーヴァ:災厄など
テイン:杖、枝
レーヴァテイン:害をなす魔杖(などと訳される
レミリアのグングニルもですが、北欧神話って、紅魔郷の元ネタになってそうな事項がそれなりに多いんですよね。
虹、門番。これ東方で言えば美鈴で、北欧神話で言えばモロにヘイムダルなんですよね。
霧の湖(霧)とチルノ(氷)って組み合わせは、ほとんどニブルヘイムの要素ですし。
北欧神話の神様も登場しないかなぁ。
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