※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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レミリアの愚痴 〜吸血鬼vs大悪魔〜

「夜を支配する王の弾幕に……ひれ伏せ!!夜符『クイーン・オブ・ミッドナイト』!!」

 

 大きな弾幕に続き小さい弾幕を放つレミリア。エリスはそれをよく見て最大限に引き付けてから回避していく。けれども、レミリアもただ弾幕を発射するわけではない。

 速度を変え、大きさを変え、バリエーションに富む攻撃をしていく。

 

「そんなの当たらないわぁ。ちゃんと狙ってる?お子様にはまだ難しいかなぁ?」

 

「フンッ、勝手に言ってろ。夜符『バッドレディスクランブル』ッッ!!」

 

 後方に聳え立つ時計台の壁に飛び付くや否や、そこから、勢いよく錐揉み体当たりを仕掛ける。一旦後方に動くという特異な行動のためなのか、エリスは回避やガードなどが一瞬遅れてしまい、レミリアの体当たりを腹で受け止める事になってしまう。

 

「ガハッ……う、お゙ぇっ……」

 

「まだこんなもんじゃあないよ、大悪魔エリス。夜王『ドラキュラクレイドル』!!」

 

 今度はそれとは反対に、壁に飛びついてからの攻撃ではなく、その場からエリスに体当たりし、斜め上方に急加速する。

 吸血鬼の身体能力を最大限に生かした、まるで紅い弾丸のようなその攻撃は、彼女を痛めつけるのに十分すぎるほどの威力だった。

 面白いほど高く打ち上げられたエリスはやがて落下してくるが、レミリアはまだ手を緩めない。

 

「そこだ!運命『ミゼラブルフェイト』ッ!!」

 

「あぐっ……うぅ……く、何なのよ、これはァ!私を拘束する気ィ!?」

 

「拘束?大悪魔と呼ばれる悪魔を相手に、そんな生ぬるいことを、このレミリア・スカーレットがするとでも思っているの?舐められたものだな!紅魔『スカーレットデビル』ッッ!!!」

 

 レミリアを中心にして巨大な紅く輝く柱が……いや十字架が立ち上った。運命の鎖で雁字搦めにされていたエリスはそこから逃げる事も叶わず、巨大な光線のようなその攻撃を、モロに喰らってしまった。

 鎖はその勢いで壊れてしまい、エリスは空中に投げ出される。もはやエリスには、まともに抵抗するだけの力は残されていないように見える。

 しかしそれでも、レミリアは追撃の手を緩めることはない。

 

「逃がさないよ、エリス……!!悪魔『レミリアストレッチ』!!ハアアアアァァァッ……!!」

 

 紅き妖力がレミリアの手に集う。それを固め、巨大な爪のような形にしたレミリアは、思い切り振りかぶり……落下してきたエリスに、クリーンヒットさせる。

 

「ぐぉえっ……がふっ……!ガハッ…………」

 

 屋根を凹ませ、血に塗れながらピクピクと痙攣している。弾幕ごっことしてならやりすぎだが、エリスがスペルカードルールを適用させていないのは、相対しているレミリア自身がよくわかっていること。なのでレミリアもそれ相応のやり方でお返ししているのである。

 

「フーッ……まだやるかい?」

 

 指をゴキゴキと鳴らし、鮮やかな紅のオーラを立ち登らせながら、未だ屋根で悶えている彼女の前に立つ。するとエリスは少々慌てる様子を見せ後退する。

 

「ま、待って……も、もう、許してぇ……!もう悪い事しないから……」

 

「…………」

 

「……なーんて♡」

 

「!」

 

 エリスの言葉に耳を傾けながら一歩、また一歩近付いていくと、エリスは口を三日月形に歪めて笑い、手に待った短めのステッキにてレミリアの眼孔を刺さんと、悪魔の身体能力を存分に使い、急接近する。

 当然、レミリアはエリスを警戒していたので、少し首を傾げるだけで、奇襲を回避する。

 

「補給ついでに削ってやるよ。私の血肉(チカラ)となれることを喜ぶんだね。『ミレニアムの吸血鬼』!」

 

「ッ……ぐふッ……」

 

 紅くて淡い魔力を纏ったレミリアは、その拳でエリスの腹を殴る。すると、拳を伝ってエリスの体力、魔力……そういった「力」が、レミリアに流れ込んでくる。そして、己の力に変えていく。これこそがレミリアの「ミレニアムの吸血鬼」。相手の生命力を喰らう魔法。膨大な魔力を持った彼女が戦闘中に使う、数少ない魔法の一つだ。

 

「まだまだだよ、もっと『自分』が搾り取られていくのを感じろ……!!」

 

「あ……あッ……あぁっ…………う……ぐぅっ、苦し、い……!!」

 

「苦しいって?ヘェ、それは良かったねぇ。昔、ヴィナの住人も今のお前と同じように苦しんだんだろうねぇ。可哀想に……」

 

「あんたッ……どこで、それを……ッ」

 

「エスカルゴから聞いたよ。あぁ、大丈夫、別にそこを滅ぼしたことを責めるつもりは無いから。悪魔だものねぇ、人を苦しめてこそだよねぇ」

 

「そ、そうよ!悪魔の本能に従っただけ!だから私は悪くない!あなたも食事で人を食うでしょ!私とあなたは同じなの!私欲を満たす為に他者を喰い漁る……!あなたは腹を、私は欲を満たす!同じなのよ!私達って!」

 

「…………」

 

「だからさ、早くその手を退けて、私を離して!このままじゃ、本当に死んじゃうっ……」

 

「……。いいよ。離してあげても」

 

 生命力が減り、傷の再生が遅れてきたのを見たレミリアは、余裕を見せつける為なのか、屋根に彼女を押し付けていた拳を離してしまう。

 するとすぐにエリスは飛び上がり……。

 

「ふっ……アハハハ!あんた、大バカよ!そこで手ェ離すヤツが……」

 

「─────とでも言うと思ったか?」

 

「え」

 

「必殺『ハートブレイク』!!」

 

 レミリアは、手を離す前に数秒先の未来を予知していた。だから手を離した後のエリスの行動、その時の体勢や高さなどを事前に把握していた。

 そこにこのスペルだ。グングニルよりは威力、速度、貫通力などが劣っているが、その分連射が可能となっている。言わば生成途中の中途半端なグングニルである。

 それをエリスの両手、腹部の合計三ヶ所を少々貫通させるように投擲し、背後の時計台の文字盤の真下に磔にする。

 

「ぐぶぁっ……あが……ぐ、あ゙……ゔっ……」

 

 手と腹からは血を吹き出して、ビクビクと痙攣するエリス。もう、顔を上げる気力も無いのか、時々呻きながら血を吐き、項垂れているだけだ。

 

「私とお前が同じだと?バカも休み休み言いな。私はお前と違い、他の誰かの逆鱗に触れるようなことをして喜ばない。笑わない。娯楽としない。私とお前は根本的に違うんだよ。私が怒っているのは、かつてヴィナを滅ぼした事でも、彼の頭を悩ませている事でもない」

 

「……ッ!?」

 

「お前は私の家族に手を出した。それだけだ」

 

「まさか……この、私が、こんなに……追い詰められる、なんてね……」

 

「……ククッ。ククク……フフフフフッ……」

 

「何を……笑ってんのよ……」

 

 先程のエリスのように、口元に手を当てて笑うレミリアを見て、できる限り睨みながらエリスは問い詰める。するとレミリアは、ことも無げに、拒むことなくすんなり答えた。

 

「─────その昔、両手を広げるポーズをした誰かがこう言ったそうだよ。『「聖者は十字架に磔られました」って言っているように見える?』ってね」

 

「?」

 

「急に何の話?とでも言いたげな顔ね」

 

「と、当然でしょ……何なのよ、その意味不明な話は」

 

「今のあなたのその見た目の話をしているのよ。ククッ……神ぶった悪魔が磔にされたって感じで良いオブジェになりそうだわ。ま、悪魔の館には少し似つかわしくないかもしれないけれど、処刑しましたって感じで、逆に合うかもねぇ」

 

「この私を……磔に、してッ……さぞかし、良い気分なんで……しょうね……っ!」

 

「ええ、良い気分だわ。調子に乗ってる大悪魔をこの手で潰せて」

 

「でも、残念……ね。私を潰した、あなたは……次は、自分の…………が……潰れ……る……」

 

「何が潰れるって?」

 

 虚ろな目でそう呟いたエリスは、気絶したのかガクリと項垂れる。するとそれに伴って、ずっと屋根にビリビリと振動が伝わってきていたのも、収まった。フランとくるみの騒動も漸く終わりを告げたようだ。

 

(下の騒ぎが終わったって事は、コイツの能力が解除された……ってことなのかしら。なんか……思ってたのと全然違うわね。こんなヤツのどこが大悪魔だと─────!)

 

 磔にしたエリスを見上げたレミリアは、自分の目を疑った。気絶したと思っていた彼女の口元が何やら動いているからだ。

 ただ開いたり閉じたりしているわけではない。声として発されているわけでもない。それでも、レミリアには分かった。エリスは、魔法の詠唱をしているのだと。

 

「クソ……ッ!抜かった!」

 

 能力を使い数秒先の未来を知ったレミリアは、その未来を変えるべくエリスを殴ろうとするが、それには数瞬遅かったようで……。

 

「じゃ〜ねぇ〜♡ また今度遊びましょう、お子様レミリアちゃん♡」

 

「待てッ!!」

 

 妖しく光る魔法陣を出現させたエリス、それを追うレミリア。しかし一歩遅れたか、彼女に手が触れた瞬間、エリスの姿はフッと消えてしまう。

 

「くッ……なんであと一歩、動けなかったの……私は……ッ!!」

 

 見たことのない術式だったが、何やら移動系の魔法を使い、磔にしていた槍を残して、エリスは姿を消してしまった。あとに残ったのはエリスの大量の血、彼女を逃がしてしまったことを悔やむレミリアのみであった。

 

 

◆

 

 

「─────って事があったのよッ!今日!!」

 

「お、おう……」

 

 話し終えたレミリアは、思い出した怒りに肩を震わせながら、ピンッと伸ばした人差し指を俺の顔の前に突きつける。

 パチュリーか誰かが魔法で直したか、俺が館に来た時は何ともなかったが、今の話を聞くに相当ヤバい事になっていたに違いない。それにしてもくるみとエリーがまた幻想郷に来るなんて……。そんなのは想像もしていなかったことだ。

 

「今思えばエリスの奴、最初の方しか弾幕で抵抗しなかったわ……。私の攻めが強すぎたから抵抗できなかったんじゃないかって、戦ってるときは思っていたけど……遊ばれてただけだったのかもしれない……」

 

「そんなことは……無いと思うけどなぁ。俺から見りゃ、贔屓目なしにレミリアが強いと思うし。逃げるタイミングがナイスだったんだろう」

 

「くっ……、そう言われたら言い返せないわね。とにかく、幻想郷も奴のテリトリー内のようだし警戒することね。近くで喧嘩が起きたら、周囲を探してみること!もし奴が犯人なら、絶対近くで見て笑ってるんだから!!」

 

「う、うぅむ……それもそう、か……」

 

「付け入る隙を与えてはダメ!いいわね!」

 

「はぁい……」

 

 言葉だけ聞けばそうでもなさそうだが、これは相当怒っている。レミリアともあろう者が、滲み出す妖気を抑えられていない。

 

「あと!」

 

「まだ何かあるのかよぉ……」

 

「あのくるみっていう吸血鬼のことよ!あの子、素でも生意気すぎじゃないの?」

 

「まーそこは大目に見てくれよ、俺からもあんま強く言えねぇんだ」

 

「何でよ、あなたの方が強いでしょうに」

 

「惚れた弱み……ってやつかな」

 

「カッコつけてんじゃないわ、あなたのそういうふしだらな所からきたトラブルでしょーが」

 

「う〜ん……。でも、レミリアも分かってくれるだろ?『惚れた弱み』ってやつさー……。な?」

 

「〜〜〜〜〜〜ッッ……///」

 

 そっち側(・・・・)であるレミリアだからこそ、この言葉にはグラつくものがあるのだろう。何も言い返せないのか、下唇を噛みつつわざとらしくギロリと睨んでくる。痛い所を突かれるとこうなるのだ。

 

「あーん、もうっ!わかった、わかったわよっ!ただし、これだけはあの子に言っておいてよね!

『エスカルゴ抜きで紅魔館に来てはならない!』って!エリーだけじゃくるみを止められないの!当然、あなたを探しにここに来るのも禁止よっ!どこでエリスが見てるか分からないんだからね!巻き込まれるのは二度とゴメンだから!」

 

「はーい……わかったよ」

 

「ヤツには気を付けることね!!」

 

「わかった、わかったから落ち着いて……」

 

 レミリアにはこうなるのがわかっていたのか、まさにこの数日後、エリスが俺に泣きついてくる事になるのであった────。




レミリアは、自分達吸血鬼が全ての悪魔の頂点と思っているので、大悪魔の存在自体気に食わないようです。機会を見てボコすつもりでした。
そしてエリスが逃亡に成功したことにより、見事良い気になっていたレミリアの面目は丸潰れに。年の功と言うべきかエリスが一枚上手だったようです。
自他共に認める大悪魔さんだけあって、「上げて落とす」のが得意な様子。イヤらしいですね。
本作のエリスなら、アカデミー賞主演女優賞とか狙えそうです。


エリスとエスカルゴが会ったお話で「レミリアが愚痴ってた」と彼が発言していましたが、そこでもう、レミリアvsエリスがレミリアの負けなのは確定してましたね。
愚痴、つまり悪い意味の話なので。
エリスの勝ち逃げ…いや逃げ勝ちです。


これを書くにあたって非想天則アーケードモードルナティック・レミリアルートを5周くらいして何の技を使うか決めたんですけど、流石非想天則ですね。楽しすぎて書く時間も忘れてやり込んでしまいました。
普段はお空と萃香ばかり使ってるので、癖の強いレミリアに慣れるまでかなり時間かかりました。でも、慣れると凄く使い易いですね。
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