※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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Cブロック本戦 〜圧倒〜

「じーちゃん!これ勝てば決勝だよなっ!」

 

「このブロックの、じゃな。しかし今度の相手は手強い。儂でも勝てるかどうか分からぬ」

 

「勝てるって!じーちゃん、冥王なんだろ!?」

 

「やめろ妖舞、そう呼ぶでない。小っ恥ずかしくなってきたわい」

 

「えー?何でだよ、カッコイイじゃん!」

 

「そういう問題ではないっ!お前の父親と一緒にするでない!」

 

 曽祖父が大量殺戮を繰り広げたと知っても尚、妖舞の態度は変わらない。彼としては、天狗など心底どうでもよく、しかも己の目指す「強さ」が妖忌にあるからこそ、憧れる気持ちが更に増しただけであった。

 

「お次はこれまたヤバそうだぞ!?圧倒的速さで式神達を屠った親族コンビ!そしてそして、そのお相手は〜っ!?」

 

「見ていてほんわかする魔界ペア!しかも今回は両ペアに従者がいる!これは、プライドを掛けた勝負にもなるかもしれないわね!」

 

「うふふっ……『ほんわかする』ですって、夢子ちゃん。何だか、そういうのも悪くないわね♪」

 

「そう……ですか?よく分かりません。ですが、相手はかなりの手練……そんなことを言っていて油断してはなりませんよ」

 

「やだもう、油断はしてないわよ。ちゃあんと、あの二人のどちらから倒そうかって考えてるわ?ただ、片方は手練、片方はカルちゃんの子だし、どうにも迷ってしまうのよね〜」

 

「……。初撃の防御はお任せを」

 

「……そう?なら任せるわ」

 

「はい!」

 

 どちらに勝ってほしいだのとそういった願望は無いが、先程のような圧倒的で最悪な決着だけは絶対に回避してほしい。

 しかし妖忌があまりにも近距離戦闘が強すぎるので、不安は拭えない。しかも遠距離でも一瞬で詰められる速度が脅威すぎる。妖忌の間合い(リーチ)は、実質「飛ぶ斬撃、または一呼吸で足が届く範囲」みたいなものだ。強すぎる。

 夢子だったら妖舞の攻撃なら防げるだろうとは思うが……妖忌となると、不安しかない。彼女の剣術は数と力。技術と速度の魂魄家とはすこぶる相性が悪いと俺は見た。

 

「始めぇっ!!」

 

「────参る」

 

 また同時に動いた妖忌と妖舞。しかし今回は、先程のように合図と同時に動かなかった。妖忌も夢子を剣の手練と見たのだろうか、一瞬だけ溜めモーションがあったように見える。

 しかも、溜めただけに一刀のパワー……速度は前回よりも格段に跳ね上がっていた。

 

「っ……!?」

 

 夢子の剣は妖忌と刃を合わせた瞬間に砕けた。吸血鬼の俺でもあそこまでのパワーは出せない。半人半霊、しかも老体の妖忌のどこにあんな力があるのか甚だ疑問でしかない。

 

(粗悪、実に粗悪也……!)

 

(なんて力なのッ……老人とは思えない!!)

 

 遅れて、妖忌の陰から妖舞が飛び出してきた。タイミングを見計らった、という様子ではない。というのも、何やら悔しそうな顔をしているからである。

 初速が速すぎて見えなかったが、もしかしたら今回も同時に斬りかかったのかもしれない。だが妖忌が速すぎて、図らずも、攻撃のタイミングにズレが生じてしまったのかもしれない。

 

(見えてるのにっ……防げない!!)

 

 剣の創造が間に合わないと悟った夢子は、腕で妖舞の刃を受けようと両腕を突き出す。すると、二人の間に一枚の結界が現れ、妖舞の刃を防ぐ。火花を散らし、妖舞は弾かれるように退いた。

 

「神綺、様……」

 

「……あなたは私の矛。私はあなたの盾。基本を忘れてはならないわ」

 

「神綺様っ……!!申し訳ありませんッ!不覚を取りました!!剣道『魔界の大剣聖』!!」

 

 夢子はナイフ、クナイ弾を放ちながら、妖忌に襲いかかる。よりによって妖忌を狙うとは。この判断が吉と出るか凶と出るか……。

 

「うぇっ!?やべッ!!」

 

「動くな妖舞!!」

 

「動かなきゃダメだろっ!!」

 

 以前聞いた話によれば、確かこのスペルは発動時点の初期位置が安置だったはず。だから、一見超高密度な弾幕でも無視を決め込むことで完全にノーミスで突破が可能なのである。

 妖忌は弾道を読むことでそれを見抜いたのか、全く動かない。妖舞は密度に圧倒されてしまい、回避という茨の道を選んでしまった。

 そして夢子は無視を決め込む道を選んだ妖忌に襲いかかっている。どうにかして、妖忌を安置の外へ追い出すためだろう。

 

「はあああああぁぁっっ……動けえええっ!!」

 

「断じて動かぬッ!!」

 

 安置の真上、ぽっかり空いた道から襲いかかる夢子。空中からの連撃に、妖忌はひたすら耐えるのみではなく反撃しようとしている。

 

「お主も『創造』か、厄介な能力者め……」

 

 妖忌がいくら剣を壊しても、夢子は剣を創造し何度も斬りかかってくる。妖忌には、妖舞が被弾するまでの時間稼ぎに思えてならなかった。

 それならばと、夢子が剣を創造するその一瞬の隙を突し、妖忌は自分から安置の外へ出た。今、妖舞は何とか降り注ぐ弾幕を捌けているものの、それもいつまでもつか分からない。妖忌はそれを補助するために飛び出したようだ。

 

「いでっ……!?ちくしょ、翼……!!」

 

「だから動くなとッ!!」

 

 翼を何本かのナイフで貫かれて、妖舞の動きが鈍る。そこに再び襲いかかる弾幕、しかし妖忌が全て斬り裂いてしまった。

 そこで夢子のスペルカードは終了。場の全員が構えるステージには静寂が戻る。

 

「まだよ!私の力をこの程度だと思うな!!創符『フォーリンソード』!!」

 

 夥しい数の剣を創造して、剣の雨を降らせる。単調なスペルではあるが、当たり判定も大きいし何よりかなりの集中力を必要とされるこの密度。並の実力者ではパターン化させることも困難だ。

 

「い゙ぃっ!?さっきよりキツそ……!!」

 

「まるで雨じゃな。しかしこの魂魄妖忌、一刀で雨を捌けぬほど衰えてはおらん」

 

 目を瞑り、無造作に刀を振る。いや、振る……というよりは、まるで刀で空中に絵を描くようにゆったりと動かしている。鼻歌も歌えそうな程ののらりくらりとした動きで、逆に目を惹かれる。

 

「何故、当たらない!?何故、何故……!!全く移動してないというのに……っ!あんなゆったりして捌けるワケがッ!!嘘だ、こんなの嘘だ……認められるかッ!!私は……私はっ!坊ちゃんの剣術指南役だッッ!!」

 

 更に密度を増す夢子の弾幕。それを見て妖舞も弾幕を放ち始めるが、密度が追い付いていない。それなのに、妖忌の動きは全く変わっていない。目を瞑り、ゆったりと刀を振っている。

 

「加勢するわ、夢子ちゃん」

 

「神綺様!!」

 

 遂にダメ押しとばかりに母さんの弾幕も混ざり始めた。それを受けて妖忌は開眼、ようやく刀をまともに構えた。

 

「ヤバヤバヤバヤバ!!じーちゃあん!!」

 

「喚くな。…………人体の入り込める隙間無し。成程、紫様の仰る不可能弾幕とは、これを指しているのだな。面白いッッ!」

 

 妖忌が口元を釣り上げたその瞬間、虫の大軍のように視界を覆い尽くしていたナイフ、岩石等の弾幕は全て粉塵と化し、パラパラと降ってきた。

 

「……か、はっ……」

 

 数瞬遅れて、夢子が腹を押さえて膝をついた。母さんはというと、目をカッと開いて、歯を食い縛っているようだ。

 

「何、が……起こったと、いうの……?」

 

「────“時”を斬った。過程を消せば結果のみ残る。弾幕を全て斬り、奴を峰打ちしたという、結果がな」

 

「参っ……たわ、ね……。私の、魔法よりも……速い、なんて……」

 

「魔法……?」

 

「ふ、ふふ……不思議、でしょう……?なんで、峰打ちされてない私が……ダメージを受けているのか……!!」

 

「ッ……構えろ妖舞ァ!!」

 

「え…………うっ」

 

「小癪な!!」

 

 刹那、地面に膝をついていたはずの夢子の姿がフッと消えた。そして小さな呻き声と共に妖舞が膝をつき……前のめりに倒れ込んだ。

 それとほぼ同時に、妖忌は妖舞を襲った夢子にトドメの一撃を浴びせた。結果、夢子と妖舞は、同時ノックダウンという判定になり、1対1での勝負が続行となった。

 

「貴様、何をした……!」

 

「なんて事はないわ。夢子ちゃんのダメージを、全部私が引き受けようとしたのよ。そうしたら、まだ魔法が不十分だったばっかりに、私が受けたダメージはたったの半分。夢子ちゃんも半分だけ喰らっちゃったわ……痛かったでしょうに……」

 

「そうか……流石は神と言うべきか、理解し難い能力を有している……」

 

「理解し難いのはあなたの方だと思うけれど……まぁいいわ。……決着を。魂魄妖忌さん?」

 

「決着ならばもうついている」

 

「……え……」

 

 妖忌がカキン、と納刀すると、母さんは力なく背中から倒れてしまった。何が起こったのか全く理解が及ばず、観客席で戦いを見ている俺の頭の中はクエスチョンマークで埋め尽くされている。

 

「な、ななっ……何が起こったあぁぁぁぁっ!?斬撃か!?いや、飛ぶ斬撃は見えなかったぞっ!しかし居合斬りでもなかった!!今の攻撃は一体なんだァァァ!?」

 

「実に愚問。“空気”を斬った。それだけの事だ」

 

 サラリと奇っ怪なことを言う妖忌。けれども、妖夢によれば、空気は時間よりは楽に斬れるとのことだった。ならば時間も空間も斬れる彼なら、空気を斬るなど朝飯前なのだろう。

 

「極端に薄い空気を吸うと人は瞬時に気を失う。儂のは薄い空気ではなく真空じゃがな。どうやら神にも通用するようだ」

 

「お、おおお恐ろしいっ……これが冥王の力……これが『本物』かッ……!凄い強さだっ!!!」

 

「ここ、こ、怖いわねっ……また震えが……っ」

 

「此度の一戦、良き勉強になったぞ。礼を言う」

 

 そう言って、実況席の二人へ向けて恭しく頭を下げた。二人が縮こまったのは言うまでもない。

 そして妖舞を揺すり起こし、主の待つ観客席へ戻っていく。

 

「すまぬ妖舞。儂の動きが遅れたばかりに……。言い訳をするつもりは無い、が……やはり、歳はとりたくないものだな……」

 

「いーって!勝てたんならさ!」

 

「……うむ……」

 

「次って幽々子様だよな!つーことは、決勝戦は俺達四人の戦いじゃん!」

 

「そうなると……面白いのだがな……」

 

「なるって!なるなる!」

 

「…………」

 

 そして、彼らと入れ替わるように幽々子さんと妖夢が入場していった──────。




時(空気)を斬るっていうのは原作にもある概念だけど、それを実行するとどうなるんだろう。
そんな疑問から生まれた今回の話。

時を斬った時の効果、まんまキング・クリムゾンやないかい!妖忌、東方のディアボロだった!?

「またつまらぬ時を斬ってしまった」ってセリフ入れようと思ったけど、妖忌は多分こんな感じのセリフは言わないよね、という解釈違いが起きたために没となった。
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