「次の準決勝にて戦うのはこの二組だっ!西行寺幽々子&魂魄妖夢ペアとっ!埴安神袿姫&建御雷ペア〜!!冥界組と神様ペアだ!雛、神様として予想しちゃってよ、どっちが勝つと思う!?」
「いや意味わからないわよ、何よ『神様として』って……。でもひとつ言えるのは、あの二人は、私なんかとは比べ物にならないくらいの強い力を持っている……ってことかしら……」
「うんうん、凄まじい力の圧を感じるもんね!!特にあの子供の方!」
「……多分、あの方も諏訪子さんとかと同じ……定形の姿を持たない、自在に姿を変えられる神様だと思う。感じられる力と姿が釣り合ってない。子供じゃないわよ、多分。だから、あまり滅多なことは言わないでおいた方が……」
「ゲッ……。あ、あはは、おこ、怒らないでね、建御雷さん〜……」
「ビビられてるわねぇ、建御雷?」
「まぁな。守矢神社に来てからは気まぐれに山に雷を落としているからな」
「あらやだ、はた迷惑ね。というかこの気配……あの亡霊、まさか初対面の時にエスカルゴくんに取り憑いてた亡霊さんかしら。直接お会いできるなんて、不思議な巡り合わせねぇ」
「ククッ、そうなるように仕向けたのか?」
「まさか。それは無いわよ。そんな能力、私には無いしね。だからこれは、きっと天命よ」
「フン……。で、どうする?負けるのか?」
「何でよ。勝つに決まっているでしょう?」
「ほぅ……それは意外だったな。慈愛に溢れると人霊共から噂されるお前なら、あの子供のために勝利を譲るものと思っていたぞ」
「妖舞くんのために?……成程、もしもあちらが勝てば次の決勝戦は冥界組の衝突……妖舞くんはあの亡霊さんと戦いたがってるってとこかしら」
うむ、と大きく頷いた建御雷だったが、袿姫はそんな彼を見てクスクスと笑いを漏らし始める。どこか邪悪で、けれど神ならではの清いオーラも含まれていて、ちょっぴり不気味だった。
「そうねぇ。エスカルゴくんから聞く限りじゃあ妖舞くんは『俺に似てる』らしいし?それなら、そろそろ彼にも体験させてあげないとでしょう?仇討ちを♪」
「……お前のそういうところが邪悪だと言われる所以ではないのか?」
「ふふ、言わせておけばいいのよ」
「……」
「どうなるんだこの勝負!?激しくて熱い戦いになるのか!?それとも優雅で華やかな戦いになるのかッ!?それじゃ〜始め!!」
「いくぞ!!」
まず先に動いたのは建御雷。向かった先には、優雅に長巻を構える幽々子さんが居る。主を守護しようと妖夢が動きかけるが、従者のその動きを制止するように幽々子さんが前に出る。
「オラァッ!!」
「速いわね。でも……」
柔らかく微笑みながら無造作に突きを見舞った幽々子さん。真っ直ぐに突き進む建御雷とそれを迎え撃つ真っ直ぐな突き。建御雷は貫かれそうになるが、すんでのところでスキマを開き、彼女の真上に拳を構えた状態で現れる。その拳は、少々強めの電撃で覆われている。
しかし幽々子さんはすぐに武器を切り返して、
「グッ……く、ぅ……」
「手掴みですって……?」
「フ、フフッ……死ぬかと思ったぞ……ッ!!」
建御雷が冷や汗を流しているのを初めて見た。長巻を掴む彼の手からは血が流れている。いくら電撃を纏っていると言え、鎧とはまた別なので、手で刃物を掴めば血が出るのも仕方ない。
「感電しないのか。なんだ、お前もエスカルゴの相手で慣れたパターンか?はた迷惑な……」
「いいえ?彼とはあまり弾幕ごっこしないもの、寧ろ電気には弱いわ」
(……成程な、長巻の持ち手か。耐電性の物質を使っているのだな。はてさて、こういう時は一体どうすればいいんだったか。エスカルゴの記憶はアテにならんな、抵抗だの電圧だのぼるとだの、意味不明な単語ばかりだ……)
「その手を離せっ!!」
「ッ────!!」
妖夢が楼観剣にて建御雷の手を斬り飛ばそうと襲いかかるが、建御雷は手を離して難を逃れる。妖夢は追撃しようと彼を追うが、突如地面が揺れ始め、彼女は飛び退き再び構える。
そこから飛び出したのは、上半身のみの巨大な土人形。ステージ中央に陣取っている。しかし、その外見は……。
「巨大な……杖刀偶磨弓……!?」
「ふふふっ、特製の土人形よ!西洋風に言うならゴーレムかしら?」
確かレミリアがゴーレム好きだったはず……と思って彼女の方を見ると、予想通り目を輝かせて身を乗り出してまで見入っている。何せ、アリス姉ちゃんに「ゴーレムは可愛い」と言ったくらいゴーレム好きらしい。レミリア曰く上海人形より可愛いとのことだが……正直、よくわからない。姉ちゃんも困惑していたほどだ。
「どうして埴輪女子の造形にしたのか分からないけれど、まさかこんな所でゴーレムを見れるとは思わなかったわ!テンション上がるわね咲夜!!フラン!弦月姫ちゃん!」
「そうでしょうか……?よくわかりません……」
「仕方ないわ咲夜。お姉様ってなんでかゴーレム好きなのよねー」
(ゴーレム……って角張ってるイメージが……。アレもゴーレムの一種なの?わからない……)
「なっ……!?咲夜、あなたもわからないの!?ゴーレムの魅力が!!」
「そうですねぇ」
「な、な、なんてことなの……!弦月姫ちゃん、あなたなら分かってくれるわよね!?」
「すみません、よくわかりません」
「そんなぁ〜……」
何だかレミリアが、推しを布教するも、誰にも理解してもらえずに苦悩しているオタクに見えてしまった。その気持ちは分かるような気がするがゴーレムを推す気持ちは依然としてわからない。
「うふふ、やっぱり居たわね、ゴーレム好きが。彼女とは美味しいお酒が飲めそうよ」
「ならば、ここで華々しく勝って、勝利の美酒に酔うとしよう。やるぞ、袿姫」
「言われなくても」
袿姫が軽快に指を鳴らすと、ゴゴゴと地響きが鳴り、ゴーレムが動き始めた。上半身だけだが、巨大さ故にステージ全体に腕が届きそうだ。その対策に空を飛ぼうとする冥界組だったが……。
「そう簡単に逃がすわけがないだろう?」
「あ、あぁっ……幽々子様……!」
「これは……ちょっとまずいわね」
二人が逃げ出すより前に、ゴーレムの腕が届く範囲でステージを覆うように、建御雷が電撃にてドームを作ってしまった。
「ヘェ、力押しばかりのあなたらしくないナイスプレイね!幻想郷に来て、頭を使うということを覚えたのかしら?磨弓、トドメよ!」
そう指示を送ると両手でそれぞれ二人を同時に襲い始めたゴーレム。幽々子さんは避け、妖夢は左腕を斬り捨てて攻撃を回避するが、袿姫は更に弾幕を発射することで二人を追い詰めていく。
「甘いわね!その程度じゃあ、この磨弓ちゃんは倒せないわ!」
「!?」
「どうしてこんなに、造るのに時間が掛かったかわかる?機能搭載するのが大変だったからよ!」
得意げに言い放つ袿姫。その時は何の事なのか分からなかったが、次の瞬間その意味を理解することになってしまう。斬り落としたはずの腕が、ズボッと音を立てて再生してしまったのだ。
「これは……キリがないッ!!」
「私を倒すまで磨弓ちゃんにも終わりはないわ!線形『リニアクリーチャー』!!」
「しまった……幽々子様っ!!」
前後左右から細いレーザーが数多く飛んできて幽々子さんと妖夢を分断してしまう。そこに再びゴーレムの腕が伸びてきて妖夢を殴ろうとする。
白楼剣も抜き二振りの刀で受けようとするも、圧倒的質量の巨大ゴーレムの前では無力だった。一瞬だけ耐えたものの拳を振り抜かれてしまい、吹き飛ばされた妖夢は袿姫のレーザーに触れて、弾き飛ばされてしまった。
「さァ、トドメよ建御雷!」
「やれやれ、こんな勝ち方は不毛と言う他無いが次の為だ……!身勝手だろうが、赦せよ、妖夢!一閃『Mishap of Thunder』!!」
「こんな、ところで…………ッ!!」
魔法陣が現れ、雷のドームを貫きながら一筋の落雷が妖夢を襲う。雷を斬る技術は今の妖夢には無い。回避しようとするも、健闘虚しく、彼女は落雷に貫かれ────。
「ッ……あ、れ……?」
妖夢は落雷を喰らわなかった。代わりに彼女の両脇に二つのクレーターがあった。この落ち方は妖忌が俺の攻撃を防いだのと同じ……雷を斬ったあの時のものだ。
そんな状況を怪しみ周囲を見渡した妖夢が見た光景……それは、幽々子さんが長巻を取り落とし仰向けに倒れている様だった。
「幽々子様!?一体、何を……!」
「……ダメね、腕が痺れて動けそうにない……。首から下がやられたわ……妖忌じゃないけれど、鈍りって……怖い、もの……ね…………」
弱々しく呟き、そのまま目を閉じて気を失ってしまった。状況を見るに、幽々子さんがあの雷を斬ったんだろう。しかし思ったより強かった為に気を失ってしまった、と。……何だか、この先が気になる勝負だった。
「ゴーレム、ドーム、弾幕、落雷……!凄い戦いだったね!だけど最後は、速すぎて幽々子さんの動きが見えなかったよ……?」
「彼女も冥王に剣術を習っていた過去があるからかしら……落雷のときの光を抜きにしても、目で追えなかったわね……」
「というわけで神様ペアの勝利だ〜っ!!よって次は、冥王&曾孫ペアvs神様ペアの戦いになる!乞うご期待!だね!!」
(とか言ってて一瞬で決着ついたらどうするのよにとり……)
◆
「不覚……ッ、一生の不覚です……!私が未熟なばかりに、幽々子様に怪我を……」
「主に守られているのでは従者とは言えぬ。よく精進するのだな」
「はいっ……」
「帰ったら説教と稽古じゃ」
「はい……!」
◆
「うむむ……奴まで落雷を着るのか、意味不明な奴らめ……!次は、復讐劇を演じるんだったか?圧倒的力で捻り潰した方が面白いと思うがなぁ。お前のその楽しみ方には疑問しかないぞ、袿姫」
「そんな事より、何故あなたが人霊達から噂話を聞いていたのか疑問なのだけど?さっきポロッと言ってたわよね?」
「む。覚えていたか」
「覚えてるに決まってるでしょ?あなたまさか、畜生界に……」
狼狽し、詮索する袿姫の喉元に、雷刀のような小型のナイフを突きつけ、無理矢理言葉を遮る。こうされては袿姫も黙る他ない。
「おっと、詮索はそこまでにしておけ。答える気なんてサラサラ無いが、どうする?今から地上で我と殺り合うか?それなら力押ししてやろうか」
「……はいはい、やめておくわ。けど、せいぜい私達の邪魔をしないことね」
「了解した」
1000年以上亡霊やってて、しかも妖忌の頓悟まで彼に剣術を教わってた彼女なら、これくらいの事できちゃうんじゃないの感ある。