※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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Dブロック本戦 〜力vs技〜

「いよいよやって来たぞ、異変解決組対決っ!!魔法使いの師弟コンビと紅魔館のメイド母娘は、果たしてどちらが勝つのかな!?」

 

「どちらも全く異なる方向性で『強い』からね、勝負は見えないわね……!」

 

 魔理沙&魅魔vs咲夜さん&弦月姫……。能力はどちらもかなり強力で、とりわけメイド母娘のはチート過ぎて何も言えない。正直、かなりヤバい部類だろう。

 魅魔の力量が不明な分、魔理沙の方に分があるとは思うが……果たしてどうだろうか。

 

「古来より『勝負は時の運』と言うわ。つまり、時を操る私に分がありますわ」

 

「言うぜ、咲夜のヤツ……!いっちょカマすか、思いっきりなッ!!」

 

「う、うーん……?なんか意味が違うような気がするんだけど、気のせいかな……」

 

「なに言ってんだ魅魔様、気にしちゃ負けだ!」

 

「えぇ……」

 

 こんな掛け合いに大した意味は無いだろうし、確かに気にしちゃ負けかもしれない。ただ少し、モヤモヤしなくもないが。

 

「それじゃーいってみよー!!Dブロック2回戦1試合目、始めっ!!」

 

 合図が出された瞬間、カチリと時間が止まる。魔理沙はミニ八卦炉を取り出している中途半端な格好で固まっているし、魅魔は浮いたままで全く動いていない。

 そんな中、二人が何をするかと思えば……。

 

「さて、どうしようかしら」

 

「そうですね……。お母様があの幽霊さんを倒すのはどうですか?」

 

「弦月姫は魔理沙と戦いたいって言いたいのね?負けるわよ」

 

「負けませんよ、種も持ってきたんですから!」

 

「絶対負けるわ。魔理沙は強いから」

 

 まさかの作戦会議ときたもんだ。事前に相手がわかっていたのなら、もっと早く作戦会議をしておけばよかったのに、何故、試合が始まってから話し合うんだか。咲夜さんはたまにド天然要素を発揮するからまだ分かるが、弦月姫からもなにも言わなかったのか。天然まで、そっくりそのまま似なくていいのだが。

 

「とにかく魔理沙を潰しにかかるわよ。あの霊の実力は未知数、リスクが大きいしね。勝利だけを求めるなら、比較的手の内を知っている魔理沙を集中攻撃するのが得策。あとはマスパ系にはよく気を付けること。一撃一撃が強すぎる。腕の一本くらいは持っていかれそうなほどね」

 

「わかりました!」

 

 そして時が動き出す。俺には作戦が筒抜けだがまるで気にしていないようだ。気にする必要も、無いといえば無いのだろうが……。

 

「いくぜ咲夜!恋心『ダブルスパーク』ッ!!」

 

「届(き)かないわよ」

 

 刹那、酷い目眩が起きたときのように目の前の空間が歪み、ダブルス用に拡張されたステージがグンと広くなった。すると相対的に魔理沙と咲夜さんの間の空間も広くなって、ダブルスパークの到達にも遅延が生じる。

 咲夜さんと弦月姫はそのズレを利用して悠々とダブルスパークを回避し、二方向から攻め込む。魅魔は眉間を押さえてギュッと目を瞑っている。目が痛むらしい。魔理沙もだ。

 

「うっ……頭が……っ」

 

「空間の歪みは、あなたの距離感をも狂わせる。そんな状態で私の攻撃が避けられるかしら?」

 

「「幻世『ザ・ワールド』!!」」

 

 目眩に頭痛というデバフに加え、更に時を止めナイフを配置する鬼畜さ。案外容赦ないらしい。時を止めてしまえば、自ら空けた空間なんて何のデバフにもならない。一気に距離を詰め、目元を押さえる魔理沙の傍に大量のナイフを配置する。

 

「────解除」

 

「くッ……!!」

 

 被弾しかけたところでしゃがみ、頭部に飛んできていたナイフを回避。危ない所だった。もしも被弾していたらかなりのダメージになっていた。ナイフは帽子を貫き、彼女から帽子を奪い去る。

 他のナイフは箒で払うなり掠るなどして何とか回避している。ギリギリの所でも身体が動くのは流石魔理沙としか言いようが無い。度重なる異変解決で鍛えられたんだろう。

 

「成程ねぇ、あのメイドは空間まで操れるんだ。時間と空間は密接に関係している、とは言うけどここまでとは思いもよらなかった……。魔理沙、私の助けは必要かい?」

 

「いいや、要らない!コイツ……いや、弦月姫の相手には特別(・・)慣れてるからな!」

 

「たはは……最近になってまた館に侵入し始めたものなぁ……」

 

「そうですよ、魔理沙さんってば!おかげで私の仕事が余計に増えるんですからッ!!もう二度と無理に侵入しないでほしいですね!!」

 

「いいぜ、私がここで勝ったらもう侵入しないでおいてやるよ!また侵入するようになったのは、パチュリーの本を盗むためじゃあない!全ては、弦月姫と戦うため!時間停止の後の動きに慣れるためだったんだからなッ!!」

 

「ゆッ、弦月姫!?魔理沙の侵入って、そんなの初耳なんだけど!?侵入者は適宜報告しなさいとあれほど……!!」

 

 思わず俺まで、観客席で咲夜さんと似た反応をしそうになった。魔理沙がまた侵入を始めたとは聞いたことがない。大会までの一週間は、かなり頻繁に図書館に通っていたが、気付かなかった。

 

「だ、だってすぐ追い返してますしッ……!美鈴さんも、全部は報告しなくていいって!」

 

「それは、自分が魔理沙に負けて突破されたのを私やお嬢様に隠すための方便よ!帰ったら、美鈴共々お仕置きよ!!」

 

「ひぇぇっ……」

 

「こんな時に仲間割れとは、余裕じゃないか!」

 

「違いますっ!それもこれも、魔理沙さんのせいなんですから!!」

 

「ハハッ、まぁそうだな!だが、おかげで対策を練ることができた。感謝してもしきれない!その成果を、今ここで、本人達にぶつけてやるぜ!」

 

「チッ……面倒なことになったわね……っ!」

 

 咲夜さんが舌打ちをするなんて、珍しすぎる。しかし、このハプニングさえ無ければ勝てたかもしれない勝負だったのだ。舌打ちしたくなるのも仕方ないのかもしれない。

 

「時間系の魔法はまだまだ私には手が出せない!対策もロクに思い付かなかったけど!時間停止も関係無くなるくらいの超火力でぶっ飛ばせばいいという結論に至ったッ!!!」

 

「全く魔理沙は、魔梨沙に似て無茶ばかりするんだから……。これも血筋ってヤツなのかねェ」

 

 魅魔はバリアを張った。自分を包み込むような球体のバリアだ。自分だけを守って、他者は誰も守らないという意志を明確に感じられる。

 そんな魅魔を見た魔理沙は高く飛び上がって、ミニ八卦炉を真下に構える。

 

「吹き飛べ!星符『ドラゴンメテオ』ッッ!!」

 

 カッと一閃、そして極めて太いレーザーが降り注いでくる。へカーティアなら凍らせただろうが咲夜さん達にそんな力は無いし、時間停止しても避けられるだけの隙間が無ければ、どの道回避は無理だ。

 

「……はぁ……」

 

 これまた珍しく、溜め息をついた咲夜さんは、ナイフを持つ手を下ろして、そのままレーザーに身を委ねた。敗北を確信した弦月姫もまた、母に倣ってこれ以上の余計な抵抗はしなかった。

 

 

◆

 

 

「あちゃー……。やっぱ魔理沙の方が地味に一枚上手だったか。次は永琳先生達っすね……って、アレ?二人揃って消えてやんの」

 

「お師匠様達なら、勝負がつきそうになった頃に席を立ったわ。お手洗いじゃない?」

 

「ふーん……?」

 

 鈴仙のこの読みは外れていて、あの二人は現在コロシアム外の人気の無いところで、次の戦いについて話し合っていた。

 というのも、お次の対戦相手はへカーティアとクラウンピース……つまり月の都を攻めた本人達だからだ。月側である永琳達には、それについて少し思う所があるらしい。

 

「……次は私と輝夜ね。さて、どうするか……」

 

「相手はへカーティアとクラウンピース。一応、私と永琳なら勝てはするんでしょうけど……」

 

「圧勝とはいかないわね。私達が彼女達に勝てるなら、まず確実に接戦になる。それも、手抜きのへカーティアが相手なのにね。とはいえ、わざと負けるのも癪ね」

 

「接戦になればこちらの手の内を晒す事になる。永琳はそれを危惧してるのよね?」

 

「ええ。へカーティアほどの実力者なら、私達の力をギリギリまで引き出すような、負けそうにも見える戦い方を演じることも可能でしょうから。ただの脳筋の方がまだ良かったわね。どうして、私でも厄介に思えるほどの頭と強さを持ってるのかしら……」

 

 その「頭脳」と「強さ」の両方を持ってる奴がそれを言うか、と輝夜は内心ツッコミを入れる。今のセリフは、まんま永琳にも当てはまっているように、輝夜には思えた。

 いや、寧ろ、へカーティアと同じような思考をしているからこそ、そこまで読めるのではないかとまで考えるようになった。

 

「一応、へカーティアとコンタクトを取れるエスカルゴは永遠亭側に居るけど……へカーティアと純狐の月への侵攻をエスカルゴが食い止めるのはまず不可能。寧ろ手を貸す可能性があるくらい。というか、もう手を貸してたわね。全く、肝心な時に頼りにならない男ね」

 

「フフッ……彼も彼でそれなりに難儀な立場ね。誰かに頼ってもらいたいのに、己の立場のせいで誰にも頼られなくなっている……」

 

「彼がそこに気付くには、それこそ1000年くらい掛かりそうね。もっと先の事かもしれないけど」

 

「そうねぇ……可哀想に。……話を戻すけれど、次はどうするの?負けるのは癪だけど、手の内を晒さず勝つのは不可能。かと言って、永琳と私がこれ以上手の内を晒すのは今後の月の都を危険に晒す事になるかもしれない……八方塞がりだわ」

 

「……棄権、しかないわね。まさかこんな序盤でへカーティアと対峙することになるなんて、私も予想してなかったもの……。こればかりは、運が悪かったとしか言えないわね」

 

「うーん、もっと遊びたかったんだけどね……。だけど仕方ないわね。永琳は、地上に来た今でも月の都防衛の要なんですもの、わざわざ敵の前で手の内を明かすことは無いわ」

 

「そう言ってくれると、少しは心が軽くなるわ。残念だけど、今回ばかりは棄権しましょう」

す

「じゃあ、運営には私が伝えてくるわね。アレの注文のときに知り合った子が居るし。……あと、永琳。あなたに言っておきたいことがあるの」

 

「何?」

 

「エスカルゴはスパイとかできる奴じゃないわ。だから、あまり虐めないであげてね」

 

「……やっぱり、あなたには筒抜けだったのね。私が彼を怪しんでること」

 

「だって、この大会が始まってから露骨に態度が変だったもの」

 

「あらら……そこまでかしら?」

 

 うんうんっ!と輝夜が大きく頷いて見せると、永琳は柄にもなくシュンとしてしまった。珍しい光景だと思ったがそんな永琳で遊ぶことはせず、更に言葉を付け加える。

 

「あ・と!あんなでも彼は私の玩具なんだから、大事に扱うこと!もしあなたのせいで彼の勃ちが悪くなったらどうするの?」

 

「その時は薬でも飲ませればいいのよ」

 

「だーめー、素じゃないと意味が無いもの」

 

「それならもっと追い詰めようかしら、これ以上輝夜に手を出されたらイラつくもの」

 

「んもーっ!そんなんだから、何億年も彼氏とかできないままなのよー?」

 

「要らないわ、そんなモノ。邪魔になるだけよ。それに、難題と称して男のそういう純粋な想いを利用して遊んでたのはどこのお姫様かしら?」

 

「昔は昔、私は今の話をしてるのよ」

 

「今でも同じでしょ、エスカルゴのことパシリに使ったりして。その度に、サグメはモヤモヤして機嫌を悪くするのよ?」

 

「てへっ☆」

 

「はぁ……」

 

 ペロリと舌を出して、パチンとウインクをする輝夜を見て、永琳はもうこれ以上何かを言う気になれず、もうスルーすることに決めた。

 こうして永琳と輝夜は棄権し、へカーティアとピースの不戦勝となり……次の決勝戦では、魔法使いペアvs地獄組となったのである。




弦月姫も咲夜さん同様、家事などの仕事に時間を停止させているので、弦月姫が戦闘中に時間停止させていても咲夜さんは全く気にしていません。
魔理沙も魔理沙で、時間停止に慣れるためだけに来ているので弦月姫に抵抗はしないです。「弾幕ごっこ」にすらなっておらず、弦月姫がひたすら攻撃しているだけ。なので、咲夜さんもそこまで強く弦月姫のことは責められないですね。時間停止の意図を尋ねればよかったわけです。
弦月姫の時間停止を認知できるのは、紅魔館では咲夜さんだけですから。
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