ちょっと待ってよ、まさかこれ以上裏があるの?
いやまぁそれもそうか、まだ酔蝶華序盤だしね。
でもどうなんだろう不安だな。
《どうやら、気付けたようね?私があなたに何を求めているのか》
《……うん。俺には魔法に対する真剣さ、それとひたむきさが足りなかったんだ。だからきっと、俺に求められているのは真面目さ……でしょ?》
《そうねぇ。『魔法でも強くなる!!』なーんて豪語しておきながら、やってることは便利魔法の開発ばかり。そこもちょっと気になってたわね》
《……》
《折角魔界と繋がりがあるんだから、そちらにも助けを求めればいいのに。仮にも親子なんだし、たまには神綺さんのことも頼ってあげてね。私、何回か神綺さんに泣きつかれてるんだからね?》
《はい……》
強くなるために母さんに頼るのは、実は抵抗があった。何だか恥ずかしくて、母さんに頼りたいという気持ちを押し殺していた。だからこそ友人であるパチュリーにばっかり頼っていたわけだ。こんなんでは、まるで思春期男子だ。
《じゃ……どうする?私の期待に答えられたってコトで、器くんになっちゃう?昇格しちゃう?》
《もう器じゃなかったっけ?》
《やーねぇ。それは、力を
《……与えられる?ってコトは ……えっと……》
《混乱してるようだし、少し説明してあげるわ。貸すってのは、諏訪子さんとか神奈子さんとか、それから隠岐奈さんとか、そんな感じの加護よ。エスカルゴくんからお願いされてから力を貸す。そう、巫女みたいにね》
《あー、そっか成程》
以前、諏訪子は加護にもいくつか段階があると説明してくれた。つまりそれが、へカーティアが改めて説明してくれた今の内容なのだ。
《それから、建御雷さんみたいな加護は常に力を貸してる、つまり与えているってことね。ほら、あなたのそのオッドアイ。それが、建御雷さんの加護の証よ。左眼に現れてるわね、黄色として。おかげで雷の力は無制限になってるわよね?》
《うん。おかげさまで、いつでもいつまでも戦闘できるようになった。充電とかしなくていいのは便利だし》
《そうよねぇ。だから私は、あなたに地獄の力を与えてあげようと思ったけど、どうしたい?》
《……お願いします》
《OK。決勝戦では私を楽しませてね。鬼達をも死なずに倒し、決勝の舞台に上がってきなさい。そうでないと剥奪するわ》
《わかっ────》
ドクンと一際大きく心臓が高鳴る。その反動で思わずウプッと胃の中のモノを戻しそうになる程妙に大きく、気持ち悪い鼓動だ。
苦しさを維持したまま、次に俺に起きたのは、激しい眼痛だった。眼圧が高まっているのか何か知らないが、ズキンズキンと左眼が激しく痛む。
すると視界の左半分が酷く歪み始めた。流石におかしいと左眼を押さえると、ポロリと外れた。取れた。転がり出てきたのだ。プラモデルの腕を外すよりも呆気なく、簡単に取れた。瞼を重さでこじ開け、飛び出したような感じがする。なのに歪んだ左半分の視界は元に戻っている。
「……何だこりゃ……?」
「どうしたの……って、アレ?エスカルゴ、眼がちょっと変よ?」
「え、ど、どうなってる……?」
「オッドアイが治ってるわよ。いや、治ってる?というより、紅がちょっとだけ薄くなったような色になってるっていうか」
「え」
「というか、何持ってるの……え゙っ!?左眼?抉ったの?なにもこんなとこで……!」
「違う、これにはチャレンジャー海淵よりも深い理由があってだな……!とにかく、帰ったら話すから、ちょっと待ってくれ。俺自身、まだ状況を読み込めてなくて……」
「……?」
《へカーティア?なんか左眼が取れたんだけど、これ、まさか……》
《ええ、そうね。まさか反動で目玉が取れるとは思わなかったけど……ちゃんと受け入れられたのかしら?》
《あ、あぁ……多分大丈夫だよ。最初は痛かったけどね……。だけどこれで、へカーティアの力をより強く、沢山借りられるって事なんでしょ?》
《そーね。今は建御雷さんと同じくらい加護してあげてるから、魔法を介さなくても、地獄の力を使える状態よ》
《おお……!》
《でもまぁ今のあなたは地獄について無知だし、もっと知ってからにしなさいね。あとそれから、
『
《えー》
《弾幕を凍らせるだけなら『
《はい。……それにしてもなんで魔理沙より俺を選んでくれたの?いや、ありがたいんだけどさ、ちょっとそこが気になって……》
《まぁ……私の地獄を勁牙組に侵略される手前で救ってくれた恩義もあるっちゃあるけど、魔理沙よりも期待値がちょ〜っとだけ高いからかしら。私の中ではね》
《そう……なんだ》
《それに、魔理沙より神話に触れて、
へカーティアにしてはどこかフワッとしていてよく分からない。神は気まぐれで行動することが多いが……もしやへカーティアのこれも、まさかその一端なのだろうか。
つまり、俺と魔理沙は、へカーティアから見て互いに良い面もイマイチな面もあった、という事なんだろう。まさか、かねてより頭に入れていた神話知識が俺を救うことになるとは。
《私はね、あなたのその向上心に惚れてるのよ。強くなる為ならプライドもかなぐり捨てて誰かに教えを乞うことができる所とか……何回死んでも強くなってやるっていう執念とか。けど、もしもバカにされた事の恨みで私との戦いより魅魔への復讐を選んでいたら、もうあなたとバイバイするつもりだったわ♪》
《え》
《そうね、言わば私の器に足るかどうかの試験、みたいな?そんな感じだったわね〜》
《てことは……》
《危なかったけど何とか合格かしら?とりあえず及第点ってところね》
《よ……よかった……》
《魔力無制限は……まぁ、大事なことに気付いたばかりのあなたはダメよね。まだ早すぎるわ》
《うん……それは自分でも分かってる》
《そう?それならいいけど。あとね、魅魔からのアドバイスに気付けたのも、それなりにポイント高いわね。普段のあなただったら気付けなかったでしょうね〜。私があなたに、よく考えるように促したからこそ気付けたようなものだけど》
《そう、だね……》
それに関しては俺はなんとも言えない。まさにその通りだからだ。ヒント無しだと自分一人ではきっと気付けなかっただろう。
《あなたにだけ今から予告しておくけど、明日の決勝戦では5割で戦ってあげるわ。凄いわよぉ、神話レベルの荒い戦いになっちゃうかもね?》
《ちょっと待って殺す気?》
《そうね、殺す気で相手するわ。だから、この前開発したあの魔法を使わないときっと死ぬわよ。
《……わかった。死ぬ気で抵抗するよ》
《その意気で頑張って。あとルーミアちゃんにも伝えておいてね。2対2だけど、1対1と1対1みたいになるだろうから》
《了解》
俺vsへカーティア、ルーミアvsピースみたいな感じだろう。ルーミアならきっとノッてくれる。問題はピース相手に彼女がどう立ち回るかだが、ルーミアなら何とかしてくれそうな感じもする。彼女に委ねようと思う。
《それじゃ、明日の決勝戦を楽しみにしてるわ》
そう言うと、プツンと通信が切れた。明日は、地獄のような苦しみを味わうことになるだろう。しかし、へカーティアに見限られないためにも、全身全霊、全力で相手しようと思う。
俺の手の内は知られている。しかし、それならまた別な対応のしようがあるはずだ。全ては明日決まる。たとえ負けることになろうとも、彼女を心から満足させなければ。
そんな決意を胸に秘め、手の中の左眼を一息に飲み込み、腹に納めた。
ロスワの大ちゃんは少女感があっていいですね。
それはそれとして、ロリな大ちゃんが好きです。
ところで「自分の目玉を飲み込む」という行為に覚えはありますか?