※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

734 / 1140
決勝トーナメント2試合目 〜日本vsギリシャ〜

「さぁ、準決勝2試合目いってみよーっ!今度も凄いぞっ、また神様対決だ!しかも本当の本当に力が強い神様達だッ!!」

 

「一体どうなるのか、まるで読めないわね……。私なんかとは比較にならないくらい強い神様……世界って広いのね」

 

「Cブロックトップの神様コンビ!畜生界にて、救いを求める人間霊を救っているらしい慈悲深き神様!埴安神袿姫ッ!!相方は、最凶且つ最強の雷神様で英雄の守護神、武甕槌命!!」

 

「武甕槌命の方は守矢神社に分社を置いてるそうだから、参拝してみるのもいいかもしれないわ。彼の加護で落雷の直撃を避けられるかもね!」

 

「我に参拝しても、そんな事はしないぞ」

 

「ええっ!?じゃあ、どうやって信仰を……!?神様って信仰心が必要なんじゃ……」

 

「信仰、其れ即ち畏れ也。どうやら幻想郷では、あのバカが時たま暴れ回っているおかげで、外の世界よりも雷への恐怖が高まっているようだぞ」

 

「あ、あー……誰のことを指してるのか何となく分かっちゃったよ」

 

 きっと俺だろう。散々雷を落とし、爆発させ、その力を存分に奮ってきたのだから、雷そのものへの恐怖が高まっても仕方ない。しかしそれが、建御雷へも有効に働いていたとは思わなかった。そこまで頭が回らなかったが、結果オーライならそれに越したことはない。

 

「ヤツが暴れるのは、回り回って我の力を高めることにも繋がる。実に都合が良いことだ。まぁ、結果的にとはいえ、我の為に働くアイツこそが、我の器に相応しいというもの。クッククク……」

 

「悪い笑いをするねぇ建御雷。エスカルゴくんは私達と彼女とか嫁さん達の共有財産よ?もう少し大事にしてくれないと困るわ」

 

「ハンッ!頼まれた時にしか力を貸さぬお前には奴に口出しする権利は無いぞ?今となっては我と神綺と……気に食わんが、へカーティアがヤツの主な守護神だ。大事にも何もこれが我のやり方。異存あるか?」

 

「……いいえ、何も」

 

「クカカッ……」

 

 財産扱いの所にツッコミはしなかった。そこも大事だろうに、まさかよりによってそこをスルーしてしまうとは。建御雷ならあるいは、と思ったのだが……。

 

「そ、そんな神様コンビの対戦相手はコチラっ!魔法使い組を圧倒的パワーで撃破し、Dブロックトップにのし上がった地獄組!!へカーティア・ラピスラズリと!満月大好き、奇抜な格好をした地獄の妖精!クラウンピース!」

 

「おい運営ー!あたい、別に奇抜な格好じゃないけど!?フツーだけど!?」

 

「ま、まぁご主人に比べたらそうかもね……!」

 

「「は?」」

 

 にとりのその不用意な発言に、二人同時に額に青筋が浮かぶ地獄組。へカーティアなんかは笑顔なのに青筋が出ているのが怖すぎる。

 

「にとりぃ?あなた、地獄に落ちるの確定ね」

 

「ひゅいっ!?地獄はイヤだよ!?」

 

「あなたは私の服をバカにした。ただそれだけの理由だ、死んでも悔しがるがいいわ」

 

「ひぃぃっ!?」

 

 そんなやり取りを聞いている俺は、やれやれと額に手を当てて溜め息をついた。不用意な発言を戒めるための脅しだろうが、へカーティアが言うだけで脅しにすらならないような凄みがあるから恐ろしい。

 

《全くもー、この服の何が奇抜なのかしらねぇ?河童センスは理解できないわー》

 

《そうだねぇ。汎用性もあるし俺は好きだけど》

 

《汎用性はともかく、オシャレでしょう?》

 

《オシャレだと思うよ》

 

 俺にとっては勝負服的な意味合いもあるので、決勝戦前にはアレに着替えるつもりだ。フツーに好きなデザインだし、結構オシャレだとも思う。俺の服装はシンプルなものが殆どだが、へカTを着るその瞬間だけは、唯一俺が自分からオシャレしているなと自覚する瞬間でもある。

 

《やっぱあなた、ワカッてるわね!私が見込んだだけあるッ!!》

 

《そりゃあどーも。……建御雷も袿姫も強いよ。どんな戦いをするのか、対策がてらよく観察することにするよ。どちらもね》

 

《ええ、そうしなさい♪》

 

 へカーティアの本分はきっと、地獄というよりギリシャ神であること。つまりこの戦いは、実質日本vsギリシャのようなものだ。

 建御雷も袿姫も凄い力を持っている神様だが、へカーティアも凄まじい。果たしてどんな勝負になることやら。それにしても、神徳の数やら戦闘への有効さを考えると、何故か彼女は少々戦闘に特化しすぎているような気がしてならない。

 

「どうしましょうね、私じゃあの女神に敵う気がしないわ。何を出そうとも凍らされるし、相性はすこぶる悪いわよね」

 

「袿姫、徒手の心得はあるか?」

 

「そんなの無いわよ。そもそも、戦闘に特化した神じゃないもの、私」

 

「それもそうだな。なら……仕方ないな、二人でへカーティアを攻めるのは無理そうだ。袿姫にはあの妖精の方を任せる」

 

「OK。負けるんじゃないわよ?」

 

「フッ……負けたくはないな。器によると、奴は地獄である前に異国の神らしい。つまり我らは、日本代表のようなものらしいぞ。小さき大会ではあるが、曲がりなりにも八百万の神の代表だ……胸が躍るな」

 

「ヘェ……あなたにもそんな感情があったのね。というより……最近になって感情が芽生えたの?神代の頃と全然違うんだけど。ホントにあなた、武甕槌命なの?」

 

「何をワケの分からん事を。我は元からこうだ」

 

「ふ〜ん?ま、どっちでもいいわ。とりあえず、目の前の戦いに集中しましょっか」

 

「ああ」

 

 軽口を言い合っているのを見ると、あの二人は仲良しに見える。最近知り合ったというワケでもなさそうだし、神の人脈ならぬ神脈は思ったより複雑に広がっているようだ。

 

「それじゃあそろそろいってみよー!神様対決!荒れまくること間違い無し!避難する時は河童が案内するから、できるだけ案内に従ってね!」

 

「決勝トーナメント2試合目、始めっ!!」

 

 合図が出た瞬間、建御雷の姿は居合切りをする妖忌のように消えた。彼が相手しようとしていたへカーティアの方を見ると、素手で殴りかかっているのが見えた。

 

「行くぞへカーティアッ!!」

 

「もう来てるで……しょっ!」

 

「ッ!!」

 

 拳を向ける建御雷に鎖に繋がれた地球を投げ、拳の到達を、僅かながらに遅らせた。手練同士の勝負においてはこういった須臾ほどの隙が大事になってくるのは分かるが……まさかアレを投げるとは思わなかった。

 

「私の拳、よーく味わいなさい……ッ!!」

 

 頭上の赤い球体を、月と交換した。すると髪は根元からジワジワと綺麗な金髪へ変色した。彼女はギュッと拳を握り、再び向かってきた建御雷と拳をぶつけた。

 

「ウオオオオォォォッッ!!」

 

「ハァァァァッ……!!」

 

 二人の拳の下では、ドカンドカンと音を立ててクレーターが形成されていく。拳の激しい衝突が生み出したちょっとした衝撃波か何かだろうか。まるで、某宇宙人系の格闘漫画だ。

 

「甘い甘い♪」

 

「うおッ……」

 

 かち合わせていた拳を急に引かれ、体重を前に預けていた建御雷はよろめく。へカーティアは、前のめりに倒れていく建御雷に、その長い脚で、勢いよく蹴りを見舞った。

 

「月『ルナティックインパクト』!!」

 

「クッ……!!」

 

 ピースのような巨大な満月が、へカーティアの蹴りによって打ち上がる建御雷に向かっていく。弾幕やレーザーを放って月を破壊しようとするも彼女の月は壊れない。

 それにより彼は回避すら叶わず月に直撃して、そのまま月は落下し、建御雷の身体は地面と月に挟まれてしまった。

 

「フフッ、まだまだこんなモンじゃないわ」

 

 続いて、青く小さな星弾幕が降り注いでくる。それらは月を透過して、押し潰されたままの彼に次々に当たっていく。

 

「クソ、何なんだこれは、何故相殺しない……?厄介な……ッ」

 

「ピースちゃんはまだ未熟だけど、私は弾幕同士ぶつけても消えやしないわよん。そうしないと、密度が余計に薄くなってしまうもの♡」

 

「面倒な事を考えつくものだな。地獄の女神は、伊達ではないようだな…………ぐあぁっ!?」

 

 月がもう一つ、追加で降ってきた。それは月に潰される建御雷の上に降り、重りを追加するかのように重なった。そして青い弾幕も追加される。今回は先程と比べて倍ほどの密度だ。

 

「く、そ……仕方、ない……な…………!」

 

「あっ」

 

 建御雷は自らの真下にスキマを広げ、その中に落ち、どこかへ移動する。するとへカーティアも弾幕が降り注ぐ中で姿を消した。

 

「なっ……消え……」

 

「後ろよ、う・し・ろ♪」

 

「ッ────!??は、離せ、このッ!!」

 

 建御雷は、先程へカーティアが居た地点のすぐ後ろに現れ、踵落としを狙っていた。それなのにへカーティアはさらにその後ろに現れ、建御雷の首根っこを掴んだ。

 

「すっかり忘れてたわよ、あなたがスキマ使えること。時を止めてしまえば関係ないけど」

 

「へカーティア、お前もか……ッ!!本当に……時なんてものを……止め、られるのか……!!」

 

「まぁねん♪」

 

「『体内電気』……ッ!!」

 

「ッ……く、うっ……く、ふ、ふふっ……」

 

 彼の首を掴むへカーティアが、ビクビクと震えている。電撃は有効らしい。ただし、彼の電撃は現在の本気の俺と同レベルである事を考えると、有効であるとは言いきれない気もする。

 そして、電撃を喰らいながら────。

 

「……ほぉら、弾幕の雨よ♡」

 

 建御雷を真上に投げる。そこには三つ目の月が迫っていて、前回や前々回よりも遥かに高密度な青弾幕が月を追うように降ってきていた。

 

「ぐあぁあぁぁっ!?ガッ……く、かふっ……」

 

「潰れなさい♪」

 

 再び月に押され落下していき、二つ積み重なる月と挟まれてしまう。それを見たへカーティアはクスクスと笑いながら追加で青い弾幕を降らす。

 

「うふふっ、月が三つ繋がるとまるでお団子ね♪あとで出店に食べに行こうかしら」

 

「時間、停止ィ……ここまで、とはな……ッ!!魔理沙が、対策したがるのも……頷ける……!」

 

「お団子なら串も必要よね。それっ♪」

 

「あぐぁっ……!!クソッ、動けん……」

 

 月三つを貫くようにして青白く細いレーザーを放つ。確かに団子のように見えるが、そんな事を考えている場合ではない。

 

「さて……建御雷さんはこれでいいとして、と。ピースちゃあん?そっちは大丈夫かしらぁ?」

 

「だ、ダメですご主人様ぁ!た、助けてっ……」

 

 ピースは殆ど全方向を埴輪兵に囲まれていて、クナイ弾などを放たれて苦しんでいた。一応月や弾幕で埴輪を破壊したりしているものの、何度も地面から復活するようで、攻めあぐねていた。

 

「埴輪は土から生まれ、破壊され土に還る……。ステージに私が居る限り、埴輪は生まれ続ける。終わりは無いわ」

 

「くぅぅぅっ、無限発射だぁぁ……!!」

 

 大きく動かず、小さく動いてグレイズしているのに、ピースはジワジワと追い詰められている。建御雷とへカーティアが激しく戦っている間も、あのように追い詰められ続けていたに違いない。

 

「わーお……恐ろしく早い連続攻撃、私でなきゃ止められないわね。『紅蓮地獄(ハドマ)』」

 

「ッッ────!?」

 

 地面が凍り付いた。よってピースに破壊された埴輪は土に還らず、更に新たな埴輪の誕生も阻止してしまった。袿姫を相手に、能力面で完封したらしい。土と水から埴輪を生み出す袿姫は、土が封じられては埴輪を生み出せない。

 

「さっすがご主人様!ステージをスケートリンクみたいにしちゃったぜー!なんッてパワーだ!」

 

「それならそれでやりようもあるんだから……!

『イドラディアボルス』!最初から全開よ!!」

 

「無駄無駄無駄無駄!私の前には無力よ!全てが凍り付く!!宇宙の無限の冷気に晒され、やがて無に還るのみよッ!!」

 

 へカーティアに向かうカラフルな数多の弾幕。しかしそれらは、彼女に触れる前に凍りついて、パキンパキンと音を立てて砕けてしまった。

 

「なっ……!?一体、何が……」

 

「今の私は絶対の冷気(・・)を纏っているわ。ま、弾は当たる前に凍ってしまうわよねぇ」

 

「……!?」

 

「これでジ・エンドよ!宇宙『アブソリュート・ゼロ』ッッ!!」

 

 へカーティアを中心に、白い靄のようなものが静かにステージ全体に広がった。それはステージ外、つまり観客席の方まで溢れそうになったが、母さんのドーム状の結界がそれを阻んだ。

 靄のせいでよく見えないが、それが晴れると、そこには目を疑う光景が広がっていた。なんと、へカーティア以外の全てが凍りついていたのだ。味方であるはずのピース、袿姫や団子状になった月に挟まれている建御雷も……。

 

「……ざっとこんなモンかしら?」

 

 頭上の球体を月から異界の赤に戻し、満足気に周囲を見回す。何も言わないが、果たして彼女は何を思って氷像と化した二柱+一人を見ているのだろうか。

 

「こッッ……凍ったッ……!?い、一体何が……あったの……??」

 

「全方位に、触れた物を凍らせる光線を放った。靄のせいで見えにくくなった中で、ね。ただそれだけの事よ」

 

「み、味方も凍らせてるよ!?」

 

「大丈夫、外から衝撃を与えれば壊れるから」

 

 そう言うと、へカーティアはピンッとピースにデコピンしてやる。するとそこを起点にして氷がバキバキと割れて、中から寒さに震えるピースが出てきた。

 

「さささささぶいぶぶいいぃぃ……!!」

 

「そんなに寒いかしら?半袖にスカートだけど、よく分からないわねぇ」

 

「ひえっ……埴輪の神が固まってる……!!」

 

「ピースちゃんもあんな感じだったわよ?」

 

「し、死んで……」

 

「ないわよ。もしそうなら、ピースちゃんは今頃1回休みでしょう」

 

「あ、そっか」

 

 レベルが違いすぎる。どうしてこうも強すぎる力を持っているのか。もはやへカーティアはほぼ全能の神なのではないかと思えてくるほどだ。

 

「じゃ、じゃあ……この戦い、地獄組の勝利……だよねっ…………!!」

 

「お、おめでとうございまーす……!」

 

 雛もにとりも、声を震わせてアナウンスする。こんな絶対的な力を見せつけられて正気を保てるヤツが居るだろうか。彼女の信者でもなければ、きっとキツイだろう。

 

《どうもね、月の私はテンションが高めで好戦的なのよねぇ。負けなければ何でもいいんだけど》

 

《…………》

 

《どぉ?決勝戦、私に勝てる見込みはある?》

 

《…………》

 

《ふふっ、悩んでるわねぇ。楽しませてくれたら文句は無いわ、気軽に戦いましょう?》

 

《……そう……だね》

 

 無理だ、あんなものを見て勝てる見込みなんて思い付くはずが無い。建御雷なんて、まさに手も足も出せなかった。それに加えて、埴輪も弾幕もそれ以外の全ても凍らせてしまうのに。

 

《因みに、アブソリュートゼロの意味はわかる?あなたなら分かると思うけれど》

 

《それはまぁ、わかるよ。宇宙なら俺の得意分野だからね。……アブソリュートゼロ、絶対零度。まさに『宇宙』の名に相応しいスペルだったよ》

 

《そうでしょ?あーあ、あなたと戦うのが今から楽しみだわ♡》

 

《…………》

 

《それと、今のは多分4.5割くらいよ。0.5割毎に新技を見せたいとこだけど、あなたは5割の私に対してどう戦ってくれるかしら》

 

 今の戦いで見せたスペル・非スペルに加えて、あと一枚追加されるわけだ。鬼畜すぎる。下手をすれば五分も戦えないのでは……。

 

《あ、今の戦闘を見て、ある程度の対策は練れるでしょ?どんな対策してくれるのか楽しみだし、思考を覗くのは戦闘後まで止めておくわね♪》

 

 そう言って通信を切るへカーティアだったが、何をどう考えても、俺が彼女に勝てるビジョンは浮かばず……どうしようもなく湧いてくる無力感から、ただ歯軋りをして順番が来るのを待つしか無かった。




原作キャラ(へカーティア)にはどれだけ盛っても許される定期


紺珠伝時:3割
vs魅魔&魔理沙:3.5割
vs袿姫&建御雷:4.5割
vsエスカルゴ:5割

殺す気かな?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。