「さぁ〜て……聖人は犯したし、今日も今日とて地獄コンプ目指しますか〜っと……」
俺がすべき事は、度重なる盗みと酒を利用した悪事である。一度の盗みではダメなのがミソだ。とりあえず、二回盗んでおけば構わないだろう。あとは、怪盗1412号よろしく持ち主に返却すればいいだけ。簡単なお仕事だ。
問題は、誰に酒を飲ませて悪戯するか……。
「紅魔館……は、ダメだよなー……」
ふと魔理沙のように本を何冊か抜き取ろうかと思ったが、それだとパチュリーの怒りを買うだけなので、即候補から除外した。
となると候補は、鈴奈庵か香霖堂かそこら辺に絞られてくる。あんまり下手に動くと、誰に目をつけられるか分からないので、慎重に動かねば。
◆
「霖之助ェ〜」
「ダル絡みするなら帰ってくれ」
霖之助に絡んでみると、顔を上げるでもなく、本から目を離すことなく、そう吐き捨てる。俺がダル絡みして何の意味があるというのか……。
俺は、そんな無意味なことはしない。
「そりゃ違うぜ。まぁ、何だ、買い物に来たぞ」
「そうか、どんな品物をご所望だい?」
「エロ本。SM系のある?」
「SM系?って何だ?」
「勝手に本棚漁るぜ。……あぁ、あったあった。こういうやつだよ」
見るからにエロ本コーナーのような所があったので、特定のワードを頭に思い浮かべて探すと、案外すぐに見つかった。やはり最近の香霖堂は、エロ本は沢山あるらしい。
表紙を見せると霖之助はチラリとこちらを見たものの、見るからにドン引きして目を逸らした。
「調教?……君はそういう趣味があるんだね……誰に調教されるんだ?」
「お、霖之助もエロ会話するようになったのか。朱鷺子ちゃんのおかげか?童貞は捨てたかい?」
「やめろ、奥にいる彼女に聞こえたらどうする。僕はいつも彼女の誘いを断っているんだ」
「へーっ、そりゃまたどーしてだよ?男女二人がひとつ屋根の下に居りゃ、ヤることは一つだろ」
「決まっているだろう。結婚もまだなのに女性に手を出す訳にはいかない。そもそも、朱鷺子とは別に付き合っていないからな。野良妖怪なのに、住処に困っていたから住まわせているだけだ」
「脳味噌ダイヤモンドか?カタブツめ」
「僕は普通だ。君が異常なだけだ」
「そうかねぇ?人里の人間でも、婚前の性交渉は普通にヤッてると思うがなぁ。ま、そこは個人の価値観によるんかな」
「まぁ、極論を言ってしまえばそうなるのかな。で、それを買うのかい?」
「あー……ちょっと借りてくぜ」
「ん?」
「そんじゃ〜またな」
今来た時のように、俺が通れるだけのスキマを開くと、見るからに焦る霖之助。正面突破して、正々堂々と「借りてくぜ」。勿論これは魔理沙を参考にさせてもらった。
「ッ!!おい、持ってくなッ!近年、春画の本は売上の大部分を占めてるんだッ!!」
「霊夢とか鈴仙とか妖夢とか、エロ本を買ってく客が増えたんだろうなぁ。大丈夫、すぐ返すぜ」
「返すと言われて返された試しが無いんだよッ!こら、逃げるなぁッ!」
「
スキマを乗り越えるなりすぐに閉じた。これで霖之助は俺に追い付けなくなる。一度目の盗みはこれで良い。エロ本を盗むとはなんて低レベルな盗みだろう。色んな意味で。
「新しい本な割に内容はほぼ変わってないのな。フーン、やっぱ時が流れても一定の需要はあるんだなぁ」
小悪魔に渡す用として一冊分複製して、本物はその場で、スキマを通して返却しておいた。彼がその事に気付くのはいつになることやら……。
「次は……華扇のオヤツでも頂くか」
オヤツを食べるであろう時間帯を狙い、卓上にスキマを開くや否や華扇と芳香の目の前で堂々と饅頭を頂戴した。二人の叫び声が聞こえたときは思わずビックリしたが、突然卓上に手だけが出現したとなれば驚くのは無理もない。
「次は酒を飲ませてアレコレ……か。なら……」
美宵ちゃんもミスティアも、酒には強そうだ。それなら、考えがある。ものは「ついで」だし、仕返しをしてやるのも良いだろう。
◆
「てゐ、ちょっと来てくんない?」
「は?何?お前は巫月とヤッてろウサ」
「いーから来いっての。話があんだよ」
「はー、かったるぅ……」
永遠亭に泊まる日、夕食もやることも終えて、フリーとなった俺は、てゐを縁側に呼び出した。満月に近い美しい月からの光を浴びながら、俺は言う。
「酒、飲まねぇか?二人で」
「はぁ?どういう風の吹き回し……?」
「疚しいことは大して考えてない。ただ、てゐを酔わせたらどうなるのかなーって思ってな」
「フフン、あんた私より酒に弱いのにどうやって酔った私を見るつもり?」
「耐えてやるさ。伊達に居酒屋に通ってねぇよ」
「そう?なら呑み比べで勝負ウサ」
「おうよ」
お猪口を二つ用意して、美宵ちゃんから譲ってもらったお酒をトクトク注いでいく。想定通り、てゐは警戒心を露わにしてその様子を見ている。
「お、見ろてゐ、今日も月が綺麗だぞ」
「そーねー」
「なんだよ素っ気ねぇな。ま、乾杯といくか」
「……はいはい、乾杯乾杯」
酒の匂いを嗅ぎ、薬の類が混入していないかを確認してから、カチャンとお猪口を当ててきた。そう警戒しなくとも、酒には何も入っていない。俺もてゐも同時に酒に口をつけ、飲み干す。
「スッキリしてて美味しいウサ。果実酒?」
「うん。果実酒には慣れたから、もうそこまでは酔わないんだ。もう一杯飲むか?」
「頂こうかな〜」
二杯目も同時に飲んだ。しかしその直後、頭がボンヤリしてくる。身体も、内側からジワジワと熱くなってきた。
「な……んだ、これ……っ」
「あっははは!バカ丸出しウサ!お猪口に媚薬を塗ってたのは分かってたよ、匂いがしたからね!だから、月がどーのって言った時に、入れ替えておいたウサ!」
「思った、より……強ぇ……」
「やーいやーい、変態は自滅ウサ〜!あははは、こんな愉快な夜も、中々無い……わ……?」
ピョンピョン飛び跳ねていたてゐは、ボテッと鈍い音を立てて縁側に倒れた。そして俺は演技を止めて、今度は逆にてゐを見下ろす。
「クックック……引っかかったな、てゐ」
「お、おかしい……!お猪口、ちゃんと交換したはずなのに……ッ」
「そう。俺が目を逸らせば、てゐはすぐお猪口を入れ替えるな。何年もてゐに騙され続けた俺が、その程度のことを想定してないとでも?」
「まさか……!」
「実は両方のお猪口に媚薬を塗っておいたんだ。こうしておけば、どちらにせよアタリだからな」
「ッ!?でも、匂いがしたのは片方……」
「別な媚薬を使ったからな。一つは小悪魔製の、もう一つは永琳製の。匂いがしたのは、小悪魔が作った方だな」
「じゃあ、私が飲んだのは……ッ!」
「永琳製の媚薬だな。そっちの方が数倍強いぞ。感度3倍くらいにはなるんじゃない?」
「くっ……身体が……っ」
「……懐かしいよなあ、てゐ。覚えてるか?俺が初めて鈴仙とヤッたのぁ、俺がてゐに強い媚薬を打ち込まれたときだったよな」
「────ッ!復讐ってわけ、ね……!悪趣味なヤツ……ッ」
「襲いやしねーよ。てゐにはそのままもどかしい思いをしてもらうぜ」
「なっ……ここまでしといて!?」
「理性がある状態で耐えるのが一番辛いだろう。俺も正直辛いけど、まだ何とか我慢できる……。この後は輝夜にコッテリ搾られる予定なんでな」
「生殺しの仕方が酷い……流石、変態はやる事がエグいウサ……」
「お望みとあらば即ヤるぞ」
「あんたが私とヤリたいだけでしょーが……!」
「それもあるかな。これまで、裸を見てきた子は全員もれなく犯してきたけど……てゐだけだよ、裸を見たのにまだ襲ってない子は。妖精でさえ、裸見た子は全員襲ってるぞ」
「……あー、そういえば私も見られてたか……」
浴場にて俺に媚薬を打ち込む時、てゐは全裸で飛び付いてきた記憶がある。ペッタンだったのはよく覚えている。かなり襲いたい体型だったのは間違いないが、てゐが喰えない奴すぎてあんまりその気にならなかった。
ただし、酒や薬を駆使してしまえば、最低限の理性を残して邪魔な理性を吹っ飛ばせる。
「じゃあそろそろ輝夜んとこ行くわ。なんかもう辛抱ならん。てゐは……ムラムラと戦ってな」
「待って……よぉっ……!!」
ズボンの裾を引っ張るてゐ。顔を真っ赤にして苦しげな息を漏らしている。てゐとは思えぬほど扇情的で、今すぐ犯したくなる。しかし酒を利用しての悪事などここまででも十分だろうと思う。ヤリたいのが本音だが。
「ムラムラする?するだろ、永琳の薬だもんな。俺はいつでもウェルカムだよ、てゐみたいなロリ体型は大好物だから」
「わかったっ……もう、エスカルゴにはイタズラしないからっ……!スッキリさせてぇ……」
「俺へのイタズラを禁止したいワケじゃないが、これでもし次にイタズラしたらどうする?」
「その時、は…………好きにしても、いいウサ……///」
「言ったからな?後で『エスカルゴに無理矢理に犯された〜!!』とか言って騒ぐなよ?」
「わかってるからっ……早くシテぇ……♡」
「自分でスカート持ち上げちゃってまぁ…………因幡のエロ兎め……」
兎だった頃に交尾したようで、てゐ曰く非処女らしかった。しかしそんな事を全く感じさせないキツキツさで、媚薬の効果もあり、数時間かけて10発は発射したと思う。
最後の方はてゐの反応も薄れていたようだが、目的が達成できた上にてゐとヤレたので、まさに一石二鳥であった。
そしてこの日以降は、イタズラが「ヤリたい」という秘密の合図になったのである────。
八熱地獄の罪状コンプリート。
てゐについてはもう、インガオホーだネ。
恐らく知ってる人が多数を占めると思いますが、怪盗1412号というのは怪盗キッドです。
1412を走り書きしたらKIDに見えたことから通称として怪盗キッドと呼ばれるようになります。