※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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真意

 紫さんを倒した俺はすぐさま後戸に移動する。するとそこには里乃と舞と隠岐奈が居て、三人で鼓膜が震えんばかりの拍手をしてくれる。

 

「おめでとう。お前は、私が力を貸すに相応しい戦いをしてくれた」

 

「おめでとうございます、お兄さんっ!ひっそりこっそり応援してました!」

 

「おめでと!すごく激しい戦いだったよね……!僕も嬉しくなってきたよ!」

 

「ありがとな。おかげでまた良い戦いができた」

 

 頭を撫でると、2人は子供らしく頬を緩ませ、俺が頬好きなのを知ってか、背伸びしながら手に頬擦りしてくれる。2人揃ってとてもいじらしく思わず軽く抱き締めてしまう。

 

「あはっ♡ お兄さんってばぁ、お師匠様も見てるのに〜♪」

 

「もー、僕達みたいな子供を抱き締めるなんて、ほんと救いようがないなー♪」

 

「はっはっは、仕方の無いやつだなぁ。……さ、私達はちょっと話したい事があるから、お前達は下がりなさい。お喋りしたいならその後にね」

 

「「はぁ〜い……。また後でねっ!」」

 

「はいよ」

 

 一旦、二童子を扉の中へ見送ると、隠岐奈とは2人きりになってしまう。すると賢者らしい固い雰囲気がふっと消え、パァッと笑顔になった。

 

「勝ったなっ!よく頑張ったよ、お前は……っ!うん、よく頑張ったっ!バッチグー!だぞっ!!ほら、ハイタッチだ!ほらっ!」

 

 何故だかテンションが高めの隠岐奈は、柄にも無くハイタッチを求めてきた。垢抜けた表情で、賢者という感じは全くしない。里乃と舞がそばに居たら、どんな反応をしただろう。

 苦笑しつつもハイタッチに応じると、満足気に何度か頷いている。

 

「色んな神から力を借りて、だけどね。でもま、俺の勝ちって事でいい……かな」

 

「良いんだ、それで良いんだよ。それが、お前の戦い方なんだから」

 

「そっか。……そうだよな」

 

「しかしまぁ、これとは別件で、未だ不安の種は残っているがね」

 

「そうなのか」

 

 突然真顔になって、真面目な雰囲気を醸し出す隠岐奈。切り替えが早すぎる。まるで人格が交代したのかと思うほど……スイッチでも押したかと思うほど、カチリと切り替わった。

 

「ま、賢者ならではの悩みってやつだ。お前には話したくても話せない。……まぁ、紫に加担したお前になら話してもいいかな?」

 

「……加担?したかな、そんなの。いや、何度もしてるな……主に外の世界関連で……」

 

「それとは違うな。……紫は有事の際の為に子を仕込んだろう。だが、それにはもう一つの目的があるんだよ。真の目的……しかし、隠さなくてはならない裏の目的とも言える、黒い理由がね」

 

「え……」

 

「紫は娘をよく教育しているな。己(おの)が娘を将来の賢者とする為に。だがそれは、娘を自らの思想に染め上げる事と何ら変わらないな。そうすると、仮に賢者達の中で多数決する事になった際、紫の賛同者が一人増える事になるんだ。それも、全く同じ思想の者だ。不平等極まりないではないか」

 

「た、確かに……?」

 

「それを防ぐ為と言ってはアレだが、私も一人、子供が欲しいなぁ〜……?」

 

「帰る」

 

「待て待て待て待て!本気で帰ろうとするなっ!頼むよぉ、こんなのお前にしか頼めないんだっ!分かってくれ!なっ!なっ!?」

 

 スキマを開くと隠岐奈は目に見えて狼狽する。どうやら本気のようだ。しかし……。

 

「何で俺が隠岐奈とヤラにゃならねぇんだ、俺はロリコンだぞ。里乃ちゃんと舞ちゃんになら……話は別だけど」

 

「バカめ。アイツら孕ませてどうする。というかアイツらは成長が止まってるから、何をしようと孕ませられないからな?排卵誘発剤の類を使ったところで無意味だからな?」

 

「中出しし放題じゃん」

 

「変態め。その分、私に注げと言っている」

 

「だから、なんでだっつーの。神様なら一人でも産めるんだろ?日本神話の中じゃあ、ホンットにちょっとした事でポンポン産まれるじゃないか。古事記にもそう書いてある」

 

「そこは紫と同じ理由だよ。強い遺伝子が欲しいだけだ。……ほら、男で強いのってお前の他には武甕槌命しか居ないじゃないか……」

 

「俺んこと『強い』だなんて……褒め殺しかよ。照れるから、そういうのやめろよなっ」

 

「そんなつもりは無いよ。だが、私はこれからもお前に力を貸したい。代わりといってはアレだがお前も私に力を貸してほしいんだ。ダメかな?」

 

「……」

 

「幻想郷は、賢者一人の力で成り立っているワケではない。複数の賢者、実力者が拮抗していて、パワーバランスを保っている。しかしあろう事か賢者の一人である紫が、『イチ抜け』したんだ。このままでは、バランスが崩れてしまうんだよ。他でもないお前が紫に手を貸したせいで、だ」

 

「っ……!」

 

「では、それを矯正する為にはどうすればいい?今のこの状況は、等式において左辺に1を足したようなものなんだよ。等式に直す為には、右辺に1を足すしかないだろう?」

 

「足した1を引くってのは?」

 

「それはどちらの意味で言っている?茜を殺す?それとも洗脳し直すのか?」

 

「殺すワケないだろう、仮にも俺の娘なんだぜ?俺は、まぁ…………後者のつもりで言ったけど、洗脳し直すとか……無理だな」

 

「そう、無理だ。だから1を足すしかないんだ」

 

「けど、何で俺なんだ……。隠岐奈ならマトモな男とか幾らでも見付けられんだろ……?それこそ神様連中とかがよ」

 

「別な権能の神とは、そもそも相性が悪くてな。イザナミとイザナギが子を成したのも、兄妹ゆえ権能が似通っていたからと言われているほどだ。国産みなど片方の力では無理だろう。だが残念な事に、この私は割と万能な神だな。あらゆる事に通じている神だ」

 

「残念な事に……?」

 

「万能すぎて私に対応できる神が居ないんだよ。残念残念、いやぁ、至極残念だよ、ホントにね。だから、神ではない且つ実力者の男であるお前に頼んでいるんだ」

 

「……けど、それをしたら、隠岐奈陣営にも1が追加されるわけで、紫さんとやってることが同じじゃないか。数年後、俺はまた、他の賢者サマを孕ませなきゃダメなのか?俺は気楽に暮らしたいだけだ、幻想郷の根幹にゃ関わりたくねーぞ?」

 

「そこに気付くとは鋭いねぇ。今日は頭の回転が早いと見える。だが心配は無用だよ。賢者共は、私と紫、二つの派閥に大別できるからだ。だから私の派閥に1を足したなら平等になれるワケだ」

 

「紫さんは、どっからどー見ても保守派だよな。隠岐奈はその反対…………成程ね。言わんとすることは分かったよ」

 

「お、分かってくれたか」

 

「じゃあ、隠岐奈を孕ませるに当たって俺からも条件があるんだけど。それをのんでくれるなら、この件に関しちゃ大人しく隠岐奈に従うよ」

 

「ん……なんだ?とりあえず言ってみてくれ」

 

「ヤリたくなったらヤラせて。1回キリなんて、俺は嫌だよ?」

 

「……お前、自分が何を言っているのか理解しているのか?いや、理解していて言ってるんだな。流石、誰が相手でも物怖じしないだけあるな……うん、うん……予想の範囲内ではある、うん……いや、まさかそこまでストレートに言われるとは思ってなかったんだけどな……お前から見て私は性的対象になるのか?よくわからないヤツだな、お前は本当に……。嘗て『殺す』と息巻いていた女に『ヤラせて』とは、思考回路がまるで謎だ。謎すぎるな……。私の頭の方がパンク寸前だぞ?この浮気男めが……紫にバレたらどうなるのか、理解してないワケでもあるまい」

 

「紫さんとはたまにヤる。だから、問題は無いと思うよ。普段は紫さんから『久しぶりにどう?』みたいに誘われるんだ」

 

「……ふむ。厄介な関係になったものだな。奴が男根にハマるとは思えないんだが。じゃ、じゃあもう一つ条件だっ!」

 

「またか」

 

「もし、だ。もしお前がこの私を絶頂させられた暁には、お前の要求通りに、たまにならヤラせてやってもいい!ただしそれが叶わなかった場合、肉体関係はこの一度のみにしてもらう!」

 

「ノッた。いいよ、それで。1回でもイカせりゃOKなんだな?約束を違えるなよ、隠岐奈?」

 

「無論だ!では行こう、我が寝床へ!」

 

 シャワー浴びる気はサラサラ無いのか、と声に出してツッコミそうになった。俺が好きなのは、あくまでも幼女〜少女の匂いだ。隠岐奈のような大人はちょっと……流石に許容範囲外の可能性がある。

 しかし、その時はその時だ、どうせなら新たな扉を開いてやろうと思い直し、隠岐奈が手招きをする扉へ入っていった。

 

(初めての性行為で私がイクのはまず有り得ないだろう。不感症というワケじゃないがセックスは未経験だからな。……あー、痛いの嫌だな……。だが、紫の過保護さにはもう辟易しているんだ。多少の痛みなど我慢して見せよう)

 

 

◆

 

 

「映姫、ちょっといい?」

 

「せめて、私の部屋に入る際はノックくらいしてほしいですね。八雲紫」

 

「急用なの。あなた、最近地獄に出入りしている者とかに心当たり無い?」

 

「ありますよ」

 

「それは誰?」

 

「エスカルゴ・スカーレット、ただ一人です」

 

「……!さっき、彼と戦ってみたのだけど、彼が地獄の力と思われる力を扱っていたのよ。でも、そんなことが、一介の妖怪にできると思う?力を盗んだ……とか?その気になったらできそう?」

 

「はい?……ノックもせずに入室したくせに何を言うかと思えば、実に意味不明な。地獄の力は、地獄の神の権能によるもの。神の許可が無ければ力を求めた時点で永遠に殺されますよ。あまりに大それた願望だ、と」

 

「そうなのよねぇ。かといって、地獄の神共が彼みたいな危うい奴に力を貸すわけがないわ。一体何が何やら……」

 

「地獄の力を盗むなど、彼や彼の周りの者の能力ではまず不可能でしょう。大体、最近(・・)地獄に来たというのも、私の元で働いている稗田阿求と話す為だったようですよ?」

 

「阿求と?……そういえば阿求、死ぬ少し前まで縁起の編纂をしてたわね。特に、彼の項目が結構書き換えられていた……。成程……」

 

「大方、あなたの予想通りでしょう。会話内容も縁起についてでした。これ以上はプライバシーに関わるので言えませんが」

 

「ううん、それだけ分かればいいわ。じゃあね。邪魔したわね」

 

 胡散臭い賢者の気配が完全に消え去って、一人残った映姫は小さく溜め息をついた。どうにか、面倒で厄介な者を、当たり障りの無い言葉で追い返せた、と。

 

(そう。最近は……ね。見学にも来ましたけど、どうやら、それは言わない方が良さそうですね。ですよね、へカーティア様?……あなたを庇ったこと、この私に後悔させるんじゃありませんよ、エスカルゴさん……)

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