エスカルゴSide
「じゃ、行ってきます」
「気を付けてね」
「ああ、もちろん」
「また明日ね」
「おう」
「いってらっしゃいませ」
「はい」
フラン、レミリア、咲夜さんの3人に見送られ紅魔館から飛び立つ。今日は博麗神社にお泊まりする日。
朝から…とのことで、朝9時に紅魔館を出た。
「ふぃ〜…」
さて、神社に着いた訳だが。
やはり木は倒れたままか。
幻想郷なら一晩で木が復活するかも…と密かに期待してたのだが…そんなことは無いようだ。
トントントン
指先で襖を叩くが反応は無い。寝てんのかな。
「退屈……」
あまり待っていないが暇なのは嫌いだ。
「あ、そーだ。実験しよ」
ふと思い立って、ある実験を開始する。
実験という言い方をするのも、元は化学を専攻していた学生故…かもな。
「一閃『Mishap of Thunder』!」
ヴォン…
「……やり直し」
大きいな…もう少し小さく出来ないものかね?
いつも戦闘用として使ってるので、強く意識しないととんでもなく大きくなってしまうのだ。
そう、実験というのは、威力調整…つまり魔法陣のサイズ変更のことだ。
魔法陣は常に正円で、サイズは直径30mはある。
そこから雷を召喚してるのだ。
「よし…出来たぞ…」
今出来る、最小サイズの魔法陣の完成だ。
目測だが、直径5cmほどの魔法陣だ。
「召・喚!」
バチッ
「………」
静電気ほどの雷の召喚に成功。
特訓を重ねれば更に小さく出来るだろう。小さくしてなんの意味があるのか、自分にもわからない。だが、出来ることは少しでも増やしておいた方が良い。
大きくするのは楽なのに、小さくするのは結構難しい。力加減は出来るに越したことはない。
「遅せぇなぁ…」
まだ寝てるのかな?
起こしたくないし…実験第二弾と行きますかね。
「『分身』!!」
昨日は霊夢が待ってくれてたから良かったが、魔理沙みたいなやつが待つとは思えないからな…出来るだけ早く作れるようにしておかなきゃな。
「ふぅぅぅ…」
「ヨウ、俺」
「…よう」
「ナンダソノ間ハ」
「別に」
「ソウカ。…デ、ナンノ用ダ」
え、分身のくせに用とか言っちゃうの!?
「軽く手合わせしよう。お前に拒否権は…」
「構ワン」
「…嫌に上から目線だな?」
「別ニ」
「そうか。なら…混合武器『雷刀&雷銃』!」
ナイフで分身を囲む。
「オッホー、コリャスゲェ(棒)」
「棒読み口調で言われても、何とも思わねぇよ」
「ハハッ、ソリャアソウダヨナ。混合武器『雷刀&雷銃』」
俺も分身のように囲まれる。
「へぇ、出来るのか」
「当タリ前ダ、コレクライハ出来ル」
「へぇ…すまない、少し舐めてた」
「…ソウカソウカ、ツマリ君ハ、ソンナ奴ダッタンダナ」
「…パクリか」
「真似ト言ッテクレ」
「パクリだな」
「オ前、レミリアチャンヤ咲夜チャン、魔理沙チャンノスペルヲ真似…イヤ、パクッテルダロウ?」
レミリアちゃんに咲夜ちゃんに魔理沙ちゃん…か。
「まぁそうだな。よし」
パチン☆
ズブズブと突き刺さるナイフ。
「効カナイ効カナイ」
「知ってる」
なんたって相手は俺の雷エネルギーの塊だ。
雷そのものに、雷が効くはずがない。
「今度ハ俺ノ番ダ」
「…来い」
大人しく受け止めてみよう。
「行ケ」
「!」
ドスドスと突き刺さるナイフ。
もちろん咲夜さんのと違い実体は無いのでダメージは無い。電気への耐性もあるので痺れもしない。
「ところで、指を鳴らすんじゃないのか」
「アア。俺ハオ前ダガ別人ダカラナ。マァ、多少ハ違ウダロ」
「…そのようだな」
「アトナ」
「?」
「俺モ、オ前ノエネルギーデ出来テルカラ、アマリ攻撃スルト自分ガ消エチマウ」
「ああ、自分のエネルギーを形にしてるからか」
「アア」
ふむ。
「あとどれ位なら出来る?」
「サァナ。モットジックリ練ッテクレレバ、ソレナリニ攻撃出来ル」
「なるほど…」
速く練るとそれだけ持続時間が短い…か。
ならばゆっくり練った方が良い様だな。
「トコロデ」
「?」
「ナンデコンナ朝カラ外ニ居ルンダヨ」
「お前俺の中に居たクセにわかんねぇのか?」
「ワカル。ダカラ聞イテル」
「???」
「サッサト中ニ入レ。ソンデ襲ッチマエ」
コイツ何言って…………………ハッ!!
「はぁ!?何言ってんだよ!?」
「大声デガナルナヨ。響クダロ」
「霊夢を襲っ…はぁぁあ!?」
「何ヲソンナニ驚イテル?俺ハオ前ダ。オ前ノ考エナンカ全テオ見通シダ」
「いやいやいや…そんな事考えてないから!」
「心ノ奥底ハソウイウ欲求デイッパイダッタゾ」
「………」
俺の中にいたから深層心理までお見通しってか?
俺自身自覚していない感情…思考…。
「オーケー、またなんかあったら教えてくれや」
「ン?ソレハドーユー…」
「解除」
「ダカラ待テッテ…」
シュンッ…
「はぁ、やっと静かになったぜ…」
ただの分身のつもりがそうじゃなく…考えを…しかも、深層心理までお見通しとはな。味な真似をしてくれるぜ全く。
カララッ…
「!」
襖が開いた。霊夢が居た。
「よ、よう霊夢!来たぜ!」
「見てたわよ」
「!?」
「まぁ入りなさい」
「…はい…」
どこから見てたんだ…?
「お邪魔しまーす…」
「来てるならそう言ってよね」
「襖叩いたんだが反応が無くて。寝てるのかと思ったんだ。邪魔しちゃ悪いし…」
「別にイイわよ、次からは起こしてよね」
「ん、わかった」
……次から?
「荷物は?」
「このカバンに入ってるのだけ」
背負ってるリュックを見せる。
「小さいカバンね。何が入ってるの?」
「パジャマと充電器」
「……それだけ?」
「それだけだが?」
「泊まりに来るってのに、随分と少ないのね」
「長期の旅行って訳じゃないだろう?一晩だけならこれで事足りるさ」
「なるほどね」
「そんで、どこから見てたんだ?」
唐突過ぎたかな?
「んーと…私を襲う…とかどうのこうの話してたところから…かしら」
うあああああ最悪じゃねぇかああああああ!!
「安心しろ、襲いはしない」キッパリ
「えっ?」
「…えっ?」
えっ?って何よ?
「い…いや、何でもないわ」
「そっか…」
「そ、掃除手伝ってよ」
「オッケ」
霊夢から箒を渡され掃除中。
掃除…か。
1人じゃ退屈な掃除も、霊夢とだと退屈はしないな。そういえば、大掃除の時はフランとやったっけ。
「ちょっとぉ!」
「!?」ビクッ
な、なんだ?
「…なに?」
「今他の女の事考えた?」
「!?!?!?」
お前はさとりかァァァァ!!
「な、なんで?」
「なんとなくそう感じただけよ」
「へ、へぇ〜…」
勘良すぎだろ。
「いい?今、あなたと私は2人きりなの。他の女の事は考えないで。私だけを見て私のことだけを考えなさい。あんたの考えなんて丸わかりなんだから。良いわね!?」
…そうだよな。女子と居るのに他の女子の事考えるなんてな。うん、霊夢の言う通りだ。
「わかった」
「よろしい」
気持ち切り替えていかなきゃな。
にしても…“私だけを見て私のことだけを考えなさい”…なんて言われるなんてなぁ…。
「ほら手が止まってるわよ!」
!!!
「はっ、ひゃい!!」
だっせー返事…。
しばらくやったな…こんなもんか。
「なぁ霊夢、こんなもんか?」
「ええ、お疲れ様。箒は私片付けとくから先入ってて」
「はーい」
いつもなら“俺がやる”と言うところだが片付け場所がわからないので大人しく従う。
さて、手を洗うか。
蛇口をひねる。
ジャー…
「…っ」
ゴクリ…
やはり流水は苦手だ…。
前に皿を洗った時も、数時間かけて洗ったのだ。かなり無理をしないとダメなんだ…。いつもは除菌ウエットティッシュで拭いてるのに置いてきてしまった。俺としたことが…!
ちょんっ
「っぽうっ!!」
あーだめだ…水勢弱めよ…。
チャー……
よし、これなら…。
ちょんっ
「うぅぅにゃああ⤴⤴⤴⤴」
やっぱ夜じゃないと気持ちも乗らねぇな…。
「…何変な声出してんのよ」
「うわぁっ!」
ドタッ
「いてて…」
尻もちついてしまった。
「どいてくれる?手洗えないんだけど」
「ああ…ごめん…」
「ったく…」
ちっ…結局手洗えなかった…。
このままの手で過ごすのはなんか嫌だな。
「ほら、こたつ入りましょ」
霊夢は既にこたつの中だ。───そうだ!
「湿ってる…これか」
霊夢が手を拭いたタオルと思われるタオルで手を拭く。流水がダメなら湿ってるタオルで拭けばいいのだ。
そしてあることに気付く。
「これ…霊夢の匂いだ…」ボソッ
「きっ…気持ち悪い事言わないでよ!私が使ってるんだから当たり前でしょう!?」
聞こえたのか。
「そ、そうだな」
イイ匂いでしたゾ…(心中合掌)
「こたつ入るぞ」
「どーぞ」
「よっこら…ん?」
グニィ…
足伸ばしてないのに何やら柔らかいのに触れた。
「………私の足よ」
「そ、そか…」
「いやどかしなさいよ」
「足伸ばしてないんだが…」
エスカルゴあぐらなう。
「え…あんた足長すぎよ…」
「ぶつかるのが嫌なら俺こたつから出るぞ」
「いやっ…」
「ん?」
今の高い声…霊夢?
「べ、別にいいわよこのままで…」
「お、おう…」
自分が足曲げようとか、伸ばす方向変えようとはしないのね…。それにしても柔らかい足だなぁ…。
あー…いかん、寝てしまいそうだ。
やはりね、コタツというものは、夏以外ずっと出してていいと私は思うのだよ、ワトソンくん。
……いや何言ってんだ俺。
気が緩むとスグ眠ってしまいそうになる。
これは人間の時から変わらんなぁ…。
「……グスンッ……」
…ん??
「霊夢…?」
「…なによ」
キッとあげたその顔は、何故か涙で濡れていた。
「えっ…霊夢、なんで泣いて…」
「泣いてないから!」
「いや泣いてるだろ」
俺なんかしたっけか?
「これはその、ホコリが入っただけよ!」
「ホコリ?俺は何ともないが」
「吸血鬼は目の構造も違うんでしょっ!」
「そんな変わらんよ…」
「ああもううるさいな!ほっといて!」
グサッ……
なんか、心にグングニルが刺さったような…。
でもこのまま引き下がるほど俺は甘くないぞ。
「ほっとけるかよ。霊夢が泣いてんだぞ?余程のことに決まってら」
「あんたのせいでしょ!?」
「はぁ!?」
俺のせいたァ驚いたな。
理由を聞かせてもらおうじゃないか。
「どういうこと?」
「どーゆーこともこーゆーことも、こうしてる間にもあんたはレミリアたちの事考えてるんでしょ!?良いわよ、帰りなさいよ!帰してあげるから!」
泣きながら大声でまくし立てる霊夢。
「あのー…ちょっと誤解してるようだg…」
「何が誤解よ!あんたってばここに来てから全然楽しそうじゃないじゃないのよ!こたつに入ってからはほとんど黙っちゃって!!あいつらの事考えてるんならそっち行けば!?」
「…そう思わせたんなら謝る。すまない」
「口だけならなんとでも言えるわよ!」
「確かにそうだ。だが、嘘は言ってない。黙ってたってのも、フランたちの事じゃなくこたつの事考えてた訳で…。それに、さっき霊夢に“私だけを見て”って…言われたばかりだしな」
「…全然楽しそうじゃないのは?」
「これはその…内心大騒ぎしてるのを隠してるというか…」
コタツの中で足が触れ合ったり…目の前で霊夢の顔拝めるなんてさ、まさに至高だぜ?しかもそのまま寝れるんだ、最高だろう。
「…はぁ?何でそんなことするのよ」
「その…普段以上に騒いでるとさ、霊夢に変に思われるだろ?」
「ふっ…何よそれ」
わ、笑った?泣き止んでくれた?
「あんたはいつも騒いでんだから、ここでもいつも通りにしてればいいのよ」
「…おう」
「でも…霊夢もいつも通りにしろよな」
近くにあったティッシュ箱を投げながら言う。
「私はいつも通りよ」
箱をキャッチし、涙を拭きながら答える。
「いーや、それは嘘だな。前に咲夜さんから聞いたぜ?コタツ入ったら手ェ広げてダラーンと伸びてるってな」
「あのメイド…余計なことを…」
と言いつつ後ろに倒れ、手を広げ伸びる霊夢。
なるほど、咲夜さんが言ってたのはこれか。
「俺も伸びたいな…そっち行ってもいい?」
このままだと色々アブないからだ。
頭ぶつけたりなんだりと。
霊夢側しか広くないのだ。
「はぁ?狭いわよ?」
「大丈夫大丈夫」
「あんた良くても私良くないんだけど…」
「ちぇ…」
立ち上がりかけたのを辞める。
「冗談よ。来なさい」
の言葉を聞き再び立ち上がり霊夢の隣に滑り込む。
「あったけぇ」
いや、暑い。
「そんなにくっつかないでよ…」
逆方向を向いてるとは言え、背中合わせの状態だ。
「狭いからね」
「だからそう言ったじゃないのよ」
「だな」
これからは何するのかねぇ?
いや、お昼ご飯はどうするんだ?
…まぁいいか、なるようになるさ。
午前はそのままピッタリくっついて過ごした。