ちなみに今回の話は、霊夢が帰宅した少し後……前回端折った部分です。
霊夢が帰宅した後、天子は咲夜さんから色々と注意されたらしくゲンナリとしていた。まだまだ敬語は拙いと思うし、所作も咲夜さんと比べるとかなりアレというか……まだまだだ、という感じだったとは思うが、まだ初日なのだからやんわり注意してやってほしいと思う。
こってり絞られたらしい天子は、説教から解放された後、窓からボーッと外を眺めていた。まだ昼前だというのに、8時間働いた後のような疲れ具合に見える。
「お疲れ。初接客、どうだった?」
「接客は別にいいとして、咲夜の説教がホントにダルいわ……。説教というか練習というか……」
「練習?」
「『ボソボソと喋らないように』とか、『敬語に不慣れである事を表に出すな、今ここで練習よ』ってさ。通りすがりのメイド妖精達にも見られて恥かいたわ。ご尤もだけど、キツイお説教からの敬語練習は色々と辛いものがあるわね」
それに対し「ご尤もだけど」と感じている事に驚きが隠せない。天子のキャラなら逆ギレしそうだが……本当に、随分と成長したらしい。
「咲夜さんも忙しいからな。廊下?とかでの敬語練習になっちまうのは仕方ないのかもな。じゃ、弾幕ごっこで気晴らししようぜ」
「楽しそうだけど、そんな気にもならないくらい疲れちゃった……」
「そんなんでこれからどうするんだよ、近い内に辞めちまうんじゃねぇか?そうなりゃ、今度こそ宿無しだぞ。針妙丸にでも頼るのか?」
「だーかーらー、輝針城だと周囲とのアクセスが悪いからダメだってばー。……だけど、そうね。気晴らしするわ!ご主人様、相手してっ!!」
「ビリビリで感じて、弾幕ごっこにならねぇかもしんないけどな。俺らが初めて会ったときとか、そうだったろ?」
「そ、それは我慢するわ!今の私はちゃんと我慢できるもの!」
「どーだか……」
紅魔館上空に移動し、互いに剣を出して対面。メイド服を着た天子が緋想の剣を持っているのを見ると、何となく口元が緩んできてしまう。戦うメイドが俺の性癖に刺さるからかもしれない。
「こうして戦うのって、ちょっと久しぶりよね。さ、始めましょ!1回でも被弾したら負けね!」
「OK。じゃあ、もう始めさせてもらうぜ」
微弱な電気を帯びる弾幕を発射。天子はそれを剣で斬り裂いて掻き消して、反撃として小さめの要石を投げ付けてくる。
この要石はとりあえず適当に殴り、蹴り、弾幕ではなく物理攻撃で破壊。確かこれも赤い弾幕を発射してくることがあったので、この石は早めに壊した方が良いだろう。
「あっ!……むぅ、読まれてたかー……」
「流石にな。……今回は多角的に攻めてやるよ。愛玩『雷神のお供 ―
姉ちゃんから貰った精巧な自立人形の、上海と蓬莱を召喚する。相変わらず本当に可愛い。この超ミニマムサイズのロリが俺の味方として戦闘に参戦してくれているのだから、ヤル気がムンムン湧いてくるというものだ。
(ッ!?あの人形って確か、アリスが光線撃ってくる時の人形!!)
「身構えたな?避ける準備か。安心しな、アリス姉ちゃんのとまた別なパターンだからな。いけ、2人共ッ!」
分け与えた雷エネルギーを使って、全身に鎧を纏う2人。鎧にて防御を済ませると、次は攻勢に転じる。片手に盾、片手に剣もしくは槍を作り、左右に別れ別々に攻め立てる。姉ちゃんのように魔法の糸で繋がれていない分、新たなエネルギー供給は出来ないのだが、短時間であれば、2人はかなり暴れることができる。
それこそ、弾幕も発射できるし武器などの投擲だって可能だ。
「天子にゃ剣も槍も通じねー、
「「ワカッタ!」」
俺の雷刀ですら天子を斬ろうとするとパキンと折れるのだから、2人が作った剣も槍なんかも、何の意味も為さない。
「色んな方向から来るのはズルいでしょっ……!く、うぅっ……!」
「戦いにも相性ってモンがあんだ。俺と天子じゃ俺が有利なのは、出会ってからのこの数年ずっと変わらないだろ?……つーか、こんなとこで俺が負けるワケにゃいかねーしな!」
俺は幻想郷で二番目を目指しているのだから、天子に負けるワケにはいかない。霊夢を一番に、俺をその下に。いつも公言している事だがこれが俺の勝手な理想だ。だから、絶対に勝つのだ。
「でも……悪いわね、もう使わせてもらうわっ!
『全人類の緋想天』!!」
「ッ────!!やべっ……」
より一層飛び上がった天子は、緋想の剣を俺に向け、様々な気質を集める。赤く眩しい光が集い今にも放たれそうになるが、手元にスキマを開き上海と蓬莱を帰らせ、妖魔雷霊剣を取り出して、満面の笑みで見下ろしてくる天子に向けた。
「ハアアァァァァッッ!!」
「イくぜ……!『
彼女に一瞬遅れ、火花を散らしながら迸る極太光線を放つ。コレが俺の奥義に近いものなので、今の俺はほぼ本気に近い力を出している。ただ、気質とやらの事はよく分からないがかなり天子の力が増している気がする。俺が押されている。
神の器として……準最強を目指す者として……決してここで押し負けるワケにはいかない。
「勝てる……!初めてご主人様に勝てるわ!!」
「これ、暫く使いたくなかったんだけどな……!眷属『擬似神化』ッ!!」
与えられた武甕槌命の力を引き出して、神の器としての力を最大限に発揮する。帯電する光臨が頭上に現れ、再び左眼が黄色に輝く。しかし今回からは、へカーティアのお陰でキチンと元の色に戻るはずだ。
「……ッ!?あれ……ご主人様、また眼が……」
「本気っつーことだ、このまま押し負けろ!!」
光線同士をぶつけ合っている余波で、紅魔館の窓ガラスが割れたり、小さな落雷が発生したりと酷いことが起き始めている。いつまでもこうしていないで、さっさと決着をつけなくては。
「やーよ、負けたくないし!負けたら気持ち良くなれないもの!」
「勝っても負けても快楽堕ちエンドにしてやる!いくぜぇぇぇ……!!」
押してきた。このまま半分以上押し切れたなら俺の勝ちは確定する。勝つ為の方法がある。
しかし天子はまだ耐える。押されながらもまだ耐えている。すると、悪足掻きとばかりに、更に出力を上げ始めた。
「地上に住まう人よ、妖怪よ、植物よ!この私に力を貸しなさい!!」
明らかに出力が上がり、再び拮抗した。眼下を見ると、植物がしんなり枯れ始めているのが目に留まる。周囲の生物の、生命力のようなものまで吸い取っているようだ。
「悪足掻きすんじゃあねぇ!コンニャロォッ!」
「ご主人様こそ、もう悪足掻きしないことねっ!」
埒が明かない。それならもうイチかバチかだ。天子とぶつかり合っている光線を透過レーザーに切り替え、彼女を貫く。その際、向こうの光線も俺の光線を貫くことになるので、俺の身は当然、危険に晒されるわけだ。
つまり飛び上がりながらレーザーを切り替える必要がある。そうでなければ、俺が天子の光線を喰らってしまう。
「トドメだッ!!」
「っ!?」
透過レーザーに切り替えた後、剣の向ける先は変えずに飛び上がって回避すると、天子の紅色の光線は俺を貫けずに通り抜け、反対に俺の光線は天子を貫き、全身が甘い痺れに襲われる。
「あぁぁあっ♡ こっ……こ、れぇぇぇ……♡」
「だ〜い好きなビリビリだぜ。どうだ?久しぶりすぎて耐えられないだろ?」
「う、うぅっ……わらひのまけぇ……♡」
「相変わらずだなぁ……」
相変わらず痺れには弱い天子を見て、成長した部分はあっても変わらない部分もあるんだな、とほんの少しだけ嬉しく感じてしまう俺であった。
そしてこの後、副メイド長の弦月姫と勝負して一応は圧勝することになるのだが……あまりにもドヤりすぎて、咲夜さんからお叱りを受ける事になるのはまた別のお話である。
今年最後の更新はサッパリと。という訳で読者の皆さん、良いお年を!来年も本作を宜しくです!
新年1話目はまさかのあの人から。
もう予約投稿設定にしてあるのでお楽しみに!
1月1日0時に更新します。