「……霊麗、ちょっといい?」
「ん〜?どしたのお姉ちゃん」
「今度の大晦日近くにさ、お父さん、掃除手伝いに昼間から来るじゃん?」
「来るね〜」
「その時に……さ……」
「ついに襲うんだ?」
「ッ……///」
霊愛お姉ちゃんは孤独だ。頼れる人なんて人は、殆ど居ない。だから、私という一番身近な妹、あと巫月お姉ちゃんにしか本心を明かしてくれない。
でも、それももう限界みたい。霊愛お姉ちゃんは所謂「思春期」というもので、本によると精神的に不安定になる時期らしい。
己の本心を打ち明けられる相手が2人だけというこの現状が、今のお姉ちゃんにとってかなりキツイらしい。だから、次にお父さんが来る時を狙って、遂に「本心を打ち明ける」……らしい。
私はお姉ちゃんの協力者。お姉ちゃんには苦しい想いをしてもらいたくない。だから、できる事ならトコトン手伝いたい。
「……そっか。わかった、私は何をすればいい?」
「お母さんと霊魔を……近付けさせないでほしい」
「ん、いーよぉ。でもさ、お母さんが私達にどこを担当させるかわからないよ?」
「だけどお母さんの性格的に、私とお父さんに広い範囲をやらせると思うんだ。後は隙を見て……かな」
「んっん〜……じゃ〜トイレから離れた部屋が理想的だよね。『トイレ行ってくる』を止めるのは不自然すぎるもん」
「子供部屋使わせてもらうから大丈夫。トイレからそれなりに離れてるしね」
「え〜〜〜〜、本気ぃ?私達三姉弟の部屋じゃん、お姉ちゃんのヤリ部屋になっちゃうの?」
「だ、大丈夫だよ、すぐ終わらせるから……!」
「じゃあさ、今度お父さんを襲うのが成功してさ?気軽にエッチするような関係になるとしたらどこでヤるの?お父さんの部屋は、まず有り得ないよね。お母さんにバレそうだもんね。子供部屋しかない?よね?2人揃って風呂入ってたら怪しすぎるもん」
「うっ……」
「紅魔館の部屋でも借りてセックスするの?」
「怪しさ満点すぎる」
ぶっちゃけ、セックス後は色んな匂いが混ざってキツイ。特に、鼻が利く私にはキツイものがある。
事後は、本当に何とも言えない変な匂いがする。子供部屋をセックスの為の部屋に使われるのは絶対避けたい。だけど、今回は初逢瀬だし、仕方ない。そう割り切るしかない。用心深いお父さんの事だ、事後処理は完璧にしてくれるはず。もうお父さんの手腕に期待するしかない。
「もー、計画性が無いなぁ〜」
「うぎぎ……霊麗にそれを言われるとは……」
「まだまだ、巫月お姉ちゃんには程遠いね♪」
「うー……」
「ま、ガンバっ!応援してるからね♪」
「ん……頼んだよ、霊麗……」
「じゃ、お姉ちゃんとお父さんがアツいセックスに至るまでのストーリーを考えないとだね〜♡」
「『アツい』は余計っ!でも、ストーリーだったら考えてあるから大丈夫だよ」
「えー?計画性が無いお姉ちゃんのストーリーじゃ不安だな〜。私が考えてあげるから大丈夫だよ♪」
「……お願い……」
事前や事後の雰囲気、流れは、いつもお父さんとお母さんのをお姉ちゃんと一緒に覗いていたから、一通りの事は見て覚えた。
出会う瞬間からセックスに誘い込む流れなんて、ルートは一瞬で幾つも思い付いた。お姉ちゃんならどれでも容易にこなせるんだろうけど、その中でも一番実行しやすくて、お父さんも引っ掛かりやすいような都合の良い方法は────。
◆
霊愛お姉ちゃんに頼まれた数日後。お父さんが、昼間から博麗神社に来て、
お父さんなら、そう言うと思った。
「じゃエスカルゴは神社ん中ね。私は本堂、霊愛は境内と神社周り。霊麗と霊魔は納屋ね」
(ゲッ、本堂って子供部屋と近めじゃん……!霊麗、どーしよ……)
「禁忌『エスカルゴ・カルテット』」
「霊符『夢想封印』」
「「「ギャース!!」」」
「おい霊夢!?作ったそばから分身消すな!てか、1発で消える強度じゃないだろあの分身はよっ!」
「掃除に分身なんて使うなっ!!アンタの速さならできんでしょーが!」
「あー、まぁ、頑張る……!!」
何この……何?夫婦漫才というか、茶番というか。まぁ、仲が良いならそれに越したことはないけど。くれぐれもその夫婦仲に亀裂が入る事にならなきゃ良いなと願う。
それからお父さんとお姉ちゃんが持ち場についてお母さんも本堂に向かおうとするけど、私はそんなお母さんを引き止める。
「お母さんっ、本堂は私がやるよ」
「アンタは納屋やってなさい。あそこは特別人手が必要だから」
「でもでも、イジっちゃダメな物とかあるでしょ?お母さん居ないと、私が居ても危ないと思うのね」
「そこまでアンタ未熟じゃないでしょ?」
「何に何が封じられてるかもわかんないじゃんっ!本とか開いたら飛び出してくるなんて嫌だよー」
「そんな事…………いや、有り得なくはないかもね、あそこは……。前に新聞が動き回った事もあるし」
「ねっ?」
「……ええ。じゃ、霊麗が本堂、私と霊魔が納屋ね。さっさと終わらせて、
「はーいっ!」
とりあえずお母さんを子供部屋から遠ざける事に成功した。これで一先ず安心できる。後はさっさと本堂の掃除を終わらせて、お母さんの監視をする。
早すぎて疑われたけど、2人で確認しに行って、掃除が完了している事を認めてもらった上で3人で納屋の掃除を進める。
「ちょっとトイレ行ってくるわ。サボらずしっかり掃除してなさいよ」
「「はーい!」」
大丈夫……だよね。今頃、お姉ちゃんはお父さんを手筈通りレイプしてるはず。お父さんの事だ、もしお姉ちゃんが御札を貼るのをミスっても本気の抵抗なんてしないはず。結局、合意も非合意も関係なくされるがままになってくれているはずだ。
お父さんにはタブーを犯してもらうことになって申し訳ないけど、そこまでが私のシナリオだ。多分謝っても許してもらえないレベルの大罪。だけど、私はお姉ちゃんを助けるだけ……。
「霊魔、ちょっと外見てくるね」
「はーいっ!」
お祓い棒で空間に裂いて擬似的なスキマを開く。私達三姉弟の使っている子供部屋と繋げてみると、お姉ちゃんがお父さんのふにゃふにゃのちんちんを必死に舐めているところだった。
ちょっと想定外の事が起きているみたい。まさかこんな工程を挟まなくちゃいけないなんて、完全に想定外だった。
あそこまで進んでいるということは、お父さんにオナバレする所まではちゃんと計画通り進んだようだけど……まさかお父さんがお姉ちゃんのオナニーを見ても勃起しなかったなんて……。
お姉ちゃんのオナニー、妹の私ですら濡れるほどエロいと思うんだけど。余計な手間を掛けさせて、本当にお父さんは……。本当に、本当に……一筋縄でいかない人だ。いつかは、お父さんを私の手の上で踊らせたい。
私のお姉ちゃんを奪った泥棒蝙蝠…………大嫌いで大好き、大好きで大嫌いな、私のお父さん……♡
◆
「はぁ……」
長〜いトイレから戻ってきたお母さんは、縁側に腰を下ろして頬杖をついて、溜め息をついている。重たい生理でも来たのかもしれない。それにしては表情が暗すぎる気もするけれど。
嫌な予感がする。……少し、探りを入れてみよう。
「どしたの、お母さん」
「……ん?何でもないわ?」
「何でもなくないでしょ、縁側で溜め息なんてさ。トイレから戻ってきてから変だよ?もしかして生理来なかったの?次も弟かな、それとも妹かな?」
「違うわよ、もうっ。…………霊愛の事よ」
「お姉ちゃん……が、どうかしたの?」
「……んーん、なんでもない。……と言いたいけど……ま、アンタももう6歳だしね。言ってもいいかな」
「?」
嫌な予感が的中してしまったかもしれない。何故バレたんだろう。お姉ちゃんの方を見た時は、まだ舐めてる時で……それ以降は覗いてないけれど……。まさかあの後にお母さんが子供部屋に?
「霊愛ねぇ、お父さんが好きみたいでねぇ」
「ふ、ふーん……?お姉ちゃんがね……。お父さんをウザがってるようにしか見えないけど……?」
「ツンデレってヤツだったのかな。漫画とかで見たことない?」
「漫画だけの存在だと思ってたよ、そんなの……」
「そうよね。でもまさか、霊愛がねぇ…………」
「…………」
「……………………」
……しくった。もっとしっかりしておくべきだったかもしれない。いや、もし私がしくじらなくても、長い時間2人が姿を消していればいずれ疑われる。だから「さっさと終わらせる」約束だったのに。
まさかお姉ちゃん、快感に負けて何度も何度も?いや、そんな事は無い、私のお姉ちゃんはそんなに弱くない。きっとすぐに終わらせたはずだ。……ならお母さんは、本当にタイミング良く突撃したのか。
なんて幸運……なんて間の良さ。こういう、不意の幸運をも味方につける…………これが博麗の巫女か。ダメだ、勝てない。私じゃ、お母さんに勝てない。
「!……そうか……霊麗、私を本堂から遠ざけたのは霊愛に加担してたからなのね?」
「えっ?や、やだなお母さん……何でそうなるの?意味わかんないな、もう……。さ、掃除しよ?」
「だってアンタ、モロに動揺してるでしょ」
「え?」
「いっつも、のんびりしてる喋り方なのに、やけに普通に喋ってるわよね。2人のことについて、何か知ってるでしょ?」
「……」
まさか、話し方一つでバレるとは思わなかった。そんなの意識してるワケがない。お母さんはまだ、お姉ちゃんとお父さんの問題ばかりを考えていて、私の話なんてそんな注意深く聞いてるなんて、思うワケが無い。
「バレたら暴露してもイイ……よね。……そうだよ、お母さん。私とお姉ちゃんグルだよ。お姉ちゃんも言ったと思うけど、お父さんは悪くないよ」
「……そう……」
「説教するなら今のうちにしてね」
「ううん、もういいの。もう……」
「え」
「あの子が1人で悩み、1人で行動を起こしたワケじゃなかったのね。霊麗、アンタは霊愛から全貌を聞かされてるの?」
聞かされてるも何も、一緒に立てた計画だけど、お母さんはそこに気が付いていないらしい。なら、お姉ちゃんもそこをバラさなかったようだ。
「──うん。お姉ちゃん、実はお父さんが好きで……手助けしたいなって思って……。色々屁理屈つけて、お母さんに本堂から納屋に移ってもらったの」
「そう……。1人で悩んでたんじゃないなら、もう、それでいいわ。……本当は、ダメなんだけどさ」
「!……じゃあ、お姉ちゃんは……」
「エスカルゴと交際中……って感じかしらね。でも、せめて、私の前では普通の親子を演じてほしいわ。なんか、嫌になりそうなの…………あのバカの事も、霊愛の事も……霊愛の変化や気持ちに気付けなかった
「お母さん……。わかった。お母さんの前では普通の親子で居てねって、お姉ちゃんとお父さんに言ってくるね。勿論、お母さんの伝言とは言わないから」
「そう?……悪いわね、アンタに気を使わせて」
「んーん、こんなのどうって事ないよ」
私は、どこまでもお姉ちゃんの味方なんだから。