「平和だねぇ」
「平和ねぇ」
夫婦揃って縁側で茶を飲んでいると、不意に俺の鼻が何かを嗅ぎつける。良い匂いと、嗅ぎたくない臭いが混ざりあって不快な気持ちになってしまう。
「……と、そんな平和な日常に割り込む1匹の害獣」
「何よその不穏なモノローグ」
「何か来たぜ。血の匂いだ。……男の匂いがする」
「あー?……血の匂いまでしか分からないわね」
「霊夢は鼻が利かないからな」
「アンタが利きすぎるだけよ」
「……ご丁寧に階段から来やがる。いっちょ殺すか」
「まぁどうせ人間じゃないでしょうし、どんな奴か見ておきましょ」
「ヘェヘェ、わかりましたよ」
やがて、軽快な足取りで階段を登ってきたのは、1人の侍。帯刀しているので、そう判断した。紫のロングヘアーは、どこか依姫を彷彿とさせる。男の匂いがしたというのもあながち間違っていないようだが、何故だか男とも思いにくい。あまりにキレイすぎる風貌だからだろうか。外の世界風に言うなら読モをやっていそうなイケメンだ。羨ましい。
そして、霊夢がソイツを見て呟いた言葉を聞き、一気にのんびりした気分は吹き飛んでしまった。
「……カッコイイ」
「…………………………あ?」
「ん?……あぁ、アイツがってことね」
「お世辞でもいいから俺って言ってほしかったな、そこは」
「は?バカ言ってんじゃないわよ娘襲う奴のどこがカッコイイのよ」
「それは言わないお約束。OK?」
「NO」
「チッ」
すると境内の真ん中辺りまで来たその侍は、刀を抜いて声高々に叫ぶ。強そうな雰囲気だ。かなりの手練と見た。……妖忌に比べたらまだまだだろうが。
「博麗の巫女よ、再戦に来たぞ!私と戦え!」
「あー?私ぃ?てか誰よあんた」
「そうか、博麗の巫女は人間故、代替わりしているのだな。……私は明羅。博麗は、私がもらう!!」
「悪いわね。私、人妻なの」
「お前もか!今代の巫女!お前も
「は?」
「とにかく勝負だ!私が勝ったらお前は私の物だ、わかったな!」
それを聞いた瞬間、イライラを通り越して怒りの感情が湧いてきた。無意識の内に奥歯を噛み締め、手に持っていた湯呑みを握り潰す。
妖魔雷霊剣を取り出して、縁側を破壊するほどに強く蹴飛ばして飛び出し、奇襲する。
「ッオ゙オ゙オ゙アアァァッッ!!」
「うッ……!?」
すれ違いざまに剣を振り抜いて襲い掛かったが、両剣による首跳ね攻撃は防がれてしまった。空中で身体の向きを変え、鳥居の柱に着地して、跳ね返るスーパーボールのようにもう一度攻撃を仕掛ける。
しかし今回も見切られて、剣で防がれてしまう。そればかりか今度は鞘も使われてしまい、ガッチリ組み合わさってしまった。
「くっそ、何なんだテメェはよぉ……!!」
「そう言う貴様こそ何なんだ、急に!私が用があるのは博麗の巫女だけだというのに!」
「アイツは俺のだ、テメェなんぞに手出しさせるかボケがァ……!!」
「私が欲しいのは博麗の力だっ!巫女本体には特に用は無い、貴様も巫女も話を聞け!」
「殺す」
「え?」
「やっぱ顔が良いヤツは殺さなきゃダメだなァッ!キモチよく新年を迎える為にもよぉ!!」
「いやいやいやいや何を言って────」
「霊夢がよう……面食いなのは分かるんだよぉ、俺もそうだからよぉぉぉ……!!理解もできるし、納得もいくんだがよぉぉぉ……!!」
(まずい、力で押されて……!)
「やっぱ目の前で言われちゃ殺意メラメラだよなぁ畜生!!ブッ殺してやらァァァ!!」
「傍で喚くな鬱陶しい!」
「ッ……!?」
鞘で腹部を突かれた。危ない、もう少しで鳩尾に当たってしまう所だった。しかしそれによって剣が組み合わさっていたのが解けたので、距離を取って乱れかけた息を僅かな回数の呼吸で整える。
「相も変わらず、此方の話を聞く気は無し、か……!ならまずは貴様から倒してやる!」
「
暗黒斬月剣の方はスキマに仕舞い、妖魔雷霊剣の力を引き出す。本気も本気の……全力で。
俺自身が持つ霊力で本体そのものを強化しつつ、剣に込めた妖力、魔力、電力、霊力を引き出した。4色の光が混ざり合い、白い光を放つ。
「ハァァァァ……!!」
「来るか!ならば来い、受け止めてやる!!」
「いくぜ!『魔界断裂斬』ッッ!!!」
飛び上がり、真上から剣を振り下ろさんと急降下する。明羅は横に剣を構えて攻撃を受け止めようとしているようだが……そんなもの、この攻撃には通用するはずもない。
刃と刃がぶつかり合うその瞬間、光纏う剣身から全力の「力」を解放。明羅の剣は折れて、俺の剣は奴の鼻を掠め地面と搗ち合う。
刹那、途方もなく大きな地震が発生。更に地面と剣がぶつかった地点より前方に、幅が広い地割れが発生する。やがて、俺の剣圧に押し負けた明羅は、後方に吹き飛ぶと地割れに落ちていってしまった。
「なッ……何だとッ……!?お、落ち……うわああああああああぁぁぁ…………」
「ゴートゥーヘル!だぜ!!」
「なん、の……これしきィィ……!!」
途中で折れた剣を構えて、速度を上げて地割れの中を飛んでくる。諦めの悪いヤツだ。ムカついたら最悪殺すというのに、全く死を恐れていない。死を恐れないのはバカだ。俺のようなバカのやる事だ。
「上ってくんじゃあねぇーよこのダボがァ!!重符『グラビティ6』!!」
「ぐぁっ!?な、なんだ……身体が……重い…………!」
「アーッハァ♫」
「────!!」
地割れに飛び込み、追加の一撃を浴びせ、明羅を地割れの底へ突き落とした。幸か不幸か、真っ二つにはできなかった。
斬撃から一瞬遅れて鮮血が舞う。降下中、勝手に口の中に血が入ってしまってその味でわかったが、この明羅という侍、どうやら女らしい。男装をして男らしい生活をしているようで、男の匂いがしたのだが……。とにかく脳がバグりそうな気がした。
「これで明日の大晦日も平和に過ごせるなっ♪」
やがて、地割れから出ると、霊夢は割れていない部分にヘタリ込んでいて、博麗姉妹も神社の中から出てきて地割れを眺めていた。
「お父さん!?何があったの!?」
「おぅ霊愛。……ま、クソ野郎を撃退しただけだ」
「酷い地震だったけど、まさか……」
「それは俺のせいだな、お茶とか零しちゃってたらスマン」
「お茶どころじゃないよー、神社やばいよー?」
「……あ」
屋根瓦が崩れ落ちていて、しかも脆かった部分は崩れている。一部損壊というヤツだ。
慌てて魔法で修復し、また平謝りに平謝りを重ねどうにか許してもらえた。参道も階段も滅茶苦茶に崩壊していたので、この地割れについては母さんに頼んで修復してもらうことになった。まさに困ったときの神頼みというヤツで、流石に苦笑いされた。
その時にわかったことだが、間に落ちた明羅は、未だ行方不明らしい。奴が男だろうと女だろうと、博麗の力とやらを狙っているのは変わらないので、いつか完膚なきまでに叩きのめしてやろうと思う。
明羅って種族不明だったよね?しかも、靈夢からは
「動かなく」なるほどボコされて、埋められそうになると靈夢から逃げ出せる……。
人間判定じゃなくていいよねコレ。
それとも、「動かなくなった」のは演技なのかな。でも靈夢は容赦ないし……。
え?出オチ感ヤバい?だって2ボスだもの。
こいしの話だと思った?残念でした。