※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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新年

 大晦日の夕方、鈴仙との姫納め、夜には巫月との姫納め、姫始めを終えて一眠りした後、博麗神社で行われる新年会に行く準備を始める。

 とはいっても、大晦日の昼間の内に大体の準備は済ませたので、今は娘達の着替えの終わりを、皆で待っている。

 

「いよいよ新年会ね。14人も子供が集まるなんて、さぞ壮観なんでしょうねぇ」

 

「ん……?14人?永琳先生、誰かのこと抜かしてないですか?最近生まれた子のこと忘れてません?」

 

「最近生まれた子というと……十二女の魅玖ちゃん、十三女の緋月ちゃん、次男の霊魔くんでしょう?」

 

「……あーそうでした、何言ってんだろ俺」

 

「ホント、そうね。まるで隠し子でも居るみたいな反応しちゃって。ねぇ、ウドンゲ」

 

「まぁ、隠し子居たって『今更?』みたいなとこはありますけどね。寧ろ居た方が自然というか……」

 

「……あなたも随分エスカルゴに染まったわね……」

 

「いいじゃないの永琳。変に平常な感覚を保って、苦しんでしまうくらいなら……振り切った方がずっと楽しく過ごせるもの♪」

 

「まぁねぇ……そうではあるんでしょうけど」

 

(あれ?もしかして今、暗に『エスカルゴに染まるのは普通じゃない』って言われた?いやまぁ確かにそうなんだけど……)

 

 するとそこに巫月と緋月がやってきた。2人共、鈴仙の衣服としてお馴染みのあの制服を着ていて、ペアルックにしていた。

 可愛すぎる、あまりにも。そして鈴仙も制服だ。親子3人揃ってこの格好は流石に可愛すぎる。

 

「お待たせー。緋月、制服デビューしちゃった♡」

 

「お、おねーちゃん、はずかしーよぉ……///」

 

「大丈夫大丈夫、緋月は可愛いからっ!」

 

「あぅ〜…………えすかるご、どぉ?」

 

「天使。2人並べ、写真撮るぞ」

 

「うんっ、いーよぉ!ぴーすぴーすっ!」

 

「フヘヘ……」

 

「……エスカルゴの親バカっぷりは、いつになったら治るウサ?お師匠様?」

 

「いつになっても治りそうにないわ。ね、サグメ」

 

「同感です」

 

 やがて全員で博麗神社へ赴き宴会の準備をする。巫月はお酒に抵抗があるらしく、いつも通り適当な日本茶を持参している。

 まだ外でやるには寒いが、そこは個人でどうにかするらしい。相変わらずゴリ押しすぎるやり方だ。子供達は少し手伝うと他の姉妹の元へ遊びに行く。それなりに楽しそうに会話しているようだ。

 

「あとは皆来るのを待つだけね。いつものメンツもチラホラ集まってきたし、のんびりしてましょ」

 

「……俺は他の所に行ってくるよ。手伝ったり何だりしてくる。鈴仙はまだゆっくりしてて」

 

「うん」

 

 スキマを開き、後戸の国へ向かう。居住空間では里乃と舞が、おせち料理の匂いがする重箱を五段に積み重ね、風呂敷に包んでいるところだった。

 当の隠岐奈と阿弥は、せかせかと忙しそうに働く2人をただ眺めているだけだ。

 

「あ、お兄さんあけましておめでとうございます!もう来たんですね♪」

 

「あけおめ!今年もいっぱい遊ぼうね!もう少しで準備終わるから、そしたらそっち行くよ!」

 

「お、来たかエスカルゴ。あけましておめでとう、今年も宜しくな。阿弥、一足先にお父さんと神社に行っていなさい」

 

「は〜い。お父さんあけおめ」

 

「お、おう、あけおめ」

 

「ん」

 

「?」

 

「お年玉」

 

「あ、あー、そうだったな、ポチ袋用意してねぇ……そのままでいいか?」

 

「なら後ででいーや」

 

 ……何故だろう、先程の緋月と比べて可愛げが……可愛げが無さすぎではなかろうか。これが姉妹……。腹違いとはいえ、ここまで違いまくりだとは。少し見なかった間に何があったのだろう。

 博麗神社にスキマを開き、阿弥を連れて来ると、丁度レミリア達が到着した所だった。そういえば、彼女達と阿弥は初対面のはず。どんな反応をするか楽しみだ。

 

「ご主人様ぁぁ〜!!」

 

「天子、ステイ。私の従者として、他所での勝手な行動は許さないわよ」

 

「はっ…………はい、お嬢様……」

 

「あらあら、小さい隠岐奈じゃない。……もしかしてあなたが隠岐奈の娘の阿弥ちゃん?」

 

「摩多羅阿弥ですっ!宜しくお願いしますっ!」

 

 ペコッと勢いよく子供らしい大袈裟な礼をする。それを見て俺は、寒気がした。

 レミリアはそんな子供らしい阿弥を見て、先日の隠岐奈の発言を思い出して緩めかけた心を引き締め阿弥の演技に飲まれないように努める。

 

「私とは初めましてですよね?私は十六夜弦月姫、紅魔館で副メイド長をしています。お父様から見た順番では私は四女です。そしてこちらが────」

 

「レイチェル・スカーレットよ!あなたもお父様の子供なのねっ!私はあなたのお姉様よ、頭を垂れて平伏するといいわ!オホホホホ〜♪」

 

「……漫画の影響です、すみません」

 

「アハハハッ、お姉様おもしろーい!平伏するね!ハハーッ!」

 

「うむっ!くるしゅーないっ!」

 

 舌っ足らずな喋り方ではなくなったレイチェルの前に、阿弥は軽く土下座を披露する。妹を跪かせたレイチェルは腰に両手を当てて胸を反らす。

 阿弥のこの笑顔は、果たして本物なのかどうか。今の俺では、全く見分けがつかない。

 

「もう、他のお姉様方の所には行ったのですか?」

 

「んーん、まだ!阿弥ね、お姉様達に会うの、凄い楽しみにしてたのよ!宜しくね、弦月姫お姉様っ!レイチェルお姉様っ!」

 

「はい♪」

 

「うむっ!」

 

(フーム……。隠岐奈が言うにはこれが演技、らしいけれど……とてもそうは思えない子供っぽさね……。もしこれが演技だとしたら…………怖すぎるわ)

 

 レミリアはレイチェルを見て目を細めているが、彼女も彼女で何を考えているのか分からない。娘のレイチェルではなく阿弥を凝視していることから、あまり良くないことを考えていそうだとは思う。

 

「ね、お父さん!」

 

「っ!あ、ああ、何だ?」

 

「順を追ってお姉様達に挨拶したいのっ!案内してくれる?」

 

「あぁー……うん、まぁ……いいんじゃあないか……?じゃ、ついてきな」

 

「はーいっ!」

 

 我が子ながら、阿弥が怖すぎる。あまり子供達に近付けたくないという想いまで湧き出てきてしまう自分が嫌だ。巫月と霊愛以外はこれまで通り普通に接しなくてはいけないのに。

 

「巫月、緋月、ちょっといいか?」

 

「「はーいっ!」」

 

(わー、制服兎だー……ペアルックって、えぇ……)

 

「この子は、摩多羅阿弥。十二女の阿弥だ。阿弥、こっちは長女の巫月・優曇華院・スカーレットだ。小さい黒髪の方が緋月・優曇華院・スカーレット。阿弥から見たら、姉と妹だな」

 

「この子が阿弥なんだ〜。エスカルゴが好きそうな感じだね」

 

「いや全くそんな事は無いぞ。……ガチで」

 

「……?そうなんだ?」

 

「じゅうにじょ……ねー、おねーちゃん、わたしってなんばんめなの?」

 

「緋月は十三女。今の所は最後の娘だよ」

 

「そーなんだ!じゃ、あみおねーちゃんだね!」

 

「そだね、緋月!宜しくね、巫月お姉ちゃん!」

 

「「よろしくー!」」

 

「じゃっ、他のお姉ちゃん達にも挨拶してくるからまた後でね!」

 

「「わかった!バイバーイ!」」

 

 元気に手を振る優曇華院姉妹に見送られ、永遠亭陣営を離れる。すると、背後から視線を感じるので振り向いてみると、鈴仙が先程のレミリアのように阿弥を凝視している。何となく怪しむような、警戒するような目に見える。今まで子供に対してこんな目をすることは無かったのに……何故だろう。

 俺の視線に気付くと、慌てるように俺に向かって手を振ったので、尚更怪しく思える。

 次に向かったのは、神社の中で準備を続けている博麗姉妹の所。霊魔の姿は無い。

 

「あけましておめでとう、霊夢、霊愛、霊麗。今、ちょっといいか?」

 

「あけおめーお父さん、今年も色々とよろしく」

 

「あけおめことよろ〜♪」

 

「料理中よ、ちょっと待ってなさいよ、バカね」

 

「阿弥の紹介だ。できるだけ、上から順番通り紹介したいんだ」

 

「……!ったくもー……あら、隠岐奈にそっくりね」

 

「わー……そっくりだ……」

 

「ホントだ〜♪」

 

 振り向いた3人は目を丸くさせる。3人は口々にそっくりだと言うが、博麗姉妹と霊夢も目を疑ってしまうほどにそっくりなので、お互い様だ。

 

(この3人もそっくりすぎなんですケド……)

 

「な、そっくりだよな」

 

「摩多羅阿弥ですっ!宜しく!」

 

「よろしくー。私は博麗霊愛。次女で、えーっと、半妖ね。次期博麗の巫女だよ」

 

「霊麗だよー、私は純粋な吸血鬼ね♪……多分、五女だよね?」

 

「ああ、霊麗は五女だな。……多分」

 

「霊麗は五女よ、そんくらい覚えときなさいよね。ほら、アンタらもさっさと料理に戻りなさい」

 

「「はーい」」

 

「……次行こうか、阿弥」

 

「うん!」

 

 やはりこうしていると普通の娘に思える。でも、あれもこれも演技なんだと思うと……阿弥のことが、全く分からなくなってきてしまう。

 次に向かったのは射命丸親子の所。仕事は大丈夫なのかと、毎度の如く気になることは気になるが、スルーしておこう。

 阿弥を見るなり目を輝かせたので、2人共かなり興味津々らしい。

 

「「あけましておめでとうございます父上(エスカルゴさん)!」」

 

「あけましておめでとう、文、穹。新年早々だけどこの子の紹介に来たよ」

 

「摩多羅阿弥ですっ!宜しくお願いしますっ!」

 

「この子が噂の阿弥ちゃんですかぁ〜!えーっと、この子は十二女に当たる子でしたっけ?」

 

「そうそう」

 

「成程〜!私は射命丸文、記者をやっております!そしてこちらが私の娘の……」

 

「射命丸穹!父上の三女です!」

 

「姉上だねっ!宜しく!」

 

「はいっ!!」

 

(帰ったら早速記事を書きましょうか……!賢者殿の娘だなんて、スクープ間違いなしです!きっと穹も同じ事を考えているはず!とはいえ相手は賢者の娘ですし、写真撮影も慎重に行わねば……ッ!!)

 

 次に、俺達より早めに来ていたらしい白玉楼組、妖舞の所へ向かう。幽々子さんはともかく、妖忌も来ているのが意外すぎた。

 

「あけましておめでとうございます、幽々子さん。今年も宜しくお願いします」

 

「あら、エスカルゴくん。あけましておめでとう、随分と久しぶりね♪」

 

「あぐっ……す、すみません、最近色々アレでろくに顔出しもできなくて……すみませんでした……」

 

「ああごめんなさい、嫌味じゃないのよ?いいの、謝ることはないわ。そういう事情も織り込み済みであなたと関係を持ったのだし……ね?」

 

「ッス……。あっ、あけおめ妖夢、妖忌、妖舞」

 

「ちょっとー、私の方なんかテキトーだよー?まぁ別にいいけどさぁ」

 

「新年の挨拶も出来ぬとは、腑抜けめが……」

 

「あけおめー父上〜」

 

「くぉら妖舞ァ!お前もかッ!そこは父に似なくて良いのだ、馬鹿者!!」

 

「ひっ」

 

「……あー、えっと、説教はあとにしてもらって……とりあえず紹介させて。この子は十二女、阿弥だ」

 

「摩多羅阿弥ですっ!宜しくお願いしますっ!」

 

(この子があの阿弥ちゃん、か……。普通に見えるんだけどな……隠岐奈様の考えすぎじゃ?)

 

「摩多羅……あらあら、そうなのね〜。あなたってばまた賢者を虜にしてしまったのね?イケナイ人♪」

 

「────!」

 

 妖舞の前であるにも関わらず、俺の鼻先にツンと人差し指を当てる幽々子さん。間違いない、完全に俺を堕としにきている。こんなの、ドキッとしないはずがない。

 それを見た妖舞は密かに下唇を噛み、こちらから目を逸らしている。幽々子さん、悪い人だ。

 

「父上。その子、その……俺の妹、なんだよね?」

 

「おう」

 

「フーン……そっ……か。……てかあと1人、妹と弟が居るって母上から聞いたけど……紹介は無いの?」

 

「お前な、永遠亭に会いに来ないからだろ?緋月に関しちゃ色んな子が会いに来てるぜ、茜以外はな。お前だけだよそうやってんの。積極的になれよな。修行だって四六時中してるワケじゃねぇだろう」

 

「…………」

 

「ま、霊魔に関しちゃあ唯一の弟だ。何とか仲良くしてやってくれ。後で霊夢が紹介するだろう」

 

「うん」

 

 次は茜の所にと思ったが、そうだった。八雲家はろくに家族間の行事に参加しないんだった。折角の新年なのだから、参加しても良さそうだが。

 

《うむ、そうだな。今からでもいいなら、紫と茜も呼んでおくよ》

 

《じゃあ頼むわ、よろしくー》

 

《任せておけ》

 

 八雲家2人については隠岐奈に任せ、次に俺達は守矢神社組に向かう。それなりにワチャワチャして騒々しかったが、こちらの存在に気付くなり東風谷親子が走り寄って来た。

 

「へーっ、この子が隠岐奈さんの娘さんですか!」

 

「お父さん、この子が私の妹なのっ!?カワイー♡私、東風谷樹理愛!よろしくっ♪」

 

「摩多羅阿弥ですっ!よろしくねお姉ちゃん!」

 

「きゃーカワイーっ♡ ねー、お母さん!私も金髪にしたい!」

 

「だーーーめッッ!!!」

 

「ぶーぶーっ」

 

《この子ある意味凄いねぇ、エスカルゴ?心の中がまるで空っぽじゃない?》

 

《やっぱそーなのか……諏訪子が言うんなら、きっとそうなんだろうな》

 

《ですがそうとは思えないくらい明るい子ですね。何て言えば良いんでしょうね、仏教で言う『悟りを開いた状態』みたいな感じですかね?いや、まぁ、悟りを開いた人を見たことはないんですが。とてもサイコパスやソシオパスとは思えません》

 

《早苗の言うことも一理ある……と思ったけど、少し違う気もするなぁ〜。なんだろう、不気味だよね。とりあえず経過観察ってところかねぇ?神奈子ならどーする?》

 

《そうだな、経過観察だな。一先ず、どうにかして私の観察下に置きたいものだが……相手が摩多羅神の娘なのではな……》

 

《いいや神奈子、それでいい。娘の事は任せたい。他者であれば、私には見えない部分もきっと見えてくるだろう。そう信じている。……なに、先日は共に異変を起こした仲じゃないか。頼んだよ神奈子》

 

《……仕方がない。貸し一つだからな》

 

《うむ》

 

 ここあ&シガレット姉妹は留守番らしい。なのでまたの機会にするとして最後に魅玖の元へ向かう。ここではどうやら、レミリアから解放されたらしい天子が永江親子にメイド服を披露しているようだ。目を輝かせている魅玖が、とても可愛らしい。

 

「あっ……お父様ぁっ!」

 

「うぎゃっ!?」

 

「あ、娘がすみません天子様……」

 

「あんニャロめ〜、ホントお転婆なんだからっ……!って、ご主人様ぁ!」

 

「魅玖に行かせてください、大人気ないですよ……」

 

「はーなーせー、いーくーっ!」

 

「はーなーしーまーせーんーっ!」

 

 魅玖は、天子を軽く突き飛ばしてまで、俺に突進するように飛び出してきた。かと思うと、俺の3mほど手前でトンッと踏み切り、頭から突っ込む様に飛びついてきた。

 思わず押し倒されそうになるが、格闘の特訓にて鍛えた体幹でどうにか堪え、だいしゅきホールドの如く足を絡ませて抱きついてくる魅玖を、強く強く抱き締める。

 

「おっととと……。久しぶりだな魅玖ちゃん、元気にしてたか?」

 

「しばらくぶりですー!私は元気ですー!お母様も元気ですよッ!!」

 

「そかそか、それはよかったぁ。……そろそろ降りてくれんかね、魅玖ちゃん?」

 

「もうちょっとくらい良いじゃないですかぁ♡」

 

「……。最近どう?何か楽しい事とかあったか?」

 

「はいっ!少し前に、巫月お姉様から弾幕の指導をして頂きました!……私じゃ全く歯が立たなかったんですけど……」

 

「巫月は俺の子の中で最強だからな。仕方ないさ。んで、この子の紹介に来たんだが……」

 

「へっ?……あっ……!」

 

 俺しか見えていなかったらしい魅玖は、隣に立つ阿弥の存在に気付くなり慌てて俺から降りた。更に姉らしく振る舞おうとでもしているのか、腰に手を当ててエッヘンという格好をするが……時既に遅し。阿弥は無表情のまま魅玖を見る。

 

「な、永江魅玖よ!えっと、えっと……よろしく!」

 

「摩多羅阿弥です!宜しくね、お姉様っ!」

 

「……お姉様……!私、お姉様!ね、ね、お父様っ、お母様っ!私、お姉様!お姉様です!」

 

「ふふっ、そうね」

 

「ああ、良かったな魅玖ちゃん。あー、あと、弟と妹が1人ずつ居るから、後で紹介するよ。楽しみにしててな」

 

「はーいっ!」

 

 茜、ここあ達が居ないならこれで全員だ。一先ず案内を終えたことを阿弥に伝えようとすると……そのタイミングで、隠岐奈達3人組が、後戸にて境内に現れた。

 

「皆、ご機嫌よう!摩多羅隠岐奈が来たぞ!!」

 

「……ちょっと隠岐奈ぁ?そんな事言ってもシラケるだけでしょう、止めておきなさい」

 

「おやおや、紫は遅れて登場か。準備も手伝わにゃならないぞ。さァ里乃、舞!皆の手伝いだ!」

 

「「はいっ!」」

 

「……って、部下にやらせるだけじゃないの……」

 

「ハッハッハッハッハ!」

 

 隠岐奈の存在に気付くと、阿弥は黙ってそっちに向かう。案内した俺に何も言わないとは……やはり、他の子とは何か違う。

 別に、娘に対して礼を求めているワケではない。だがしかし、こうも違いすぎるとどこか変に思えるものなのである。

 その次の瞬間、背後から聞き慣れない少女の声が聞こえてくる。

 

「お……お父さん……」

 

「ッ!?……だ、誰だっ…………!?」

 

「えー……」

 

 背後に居たのは、高校生〜大学生ほどの背丈の、金髪のショートヘア……いやセミロングほどの髪で、レミリアにも似たこの世界特有の謎帽子を被って、外の世界風の服を着た謎の少女。鮮やかなその紅い瞳は、人外であることを暗にアピールしているかのようだ。

 それにしても、彼女のこの気配……。いつか感じたことがあるものではあるのだが、気配の発信者が、全く思い出せない。

 

「覚えてない……かな……?最近会ってないもんね……でも、ちょっとショック、だな…………」

 

「────ッ!もしかしなくても茜かっ……!?」

 

「そうだよ、遅いなぁ……全くもうっ……」

 

「いやいやいやいや……俺の中の『八雲茜』は金髪のロリなんだが!?少女じゃあなかったんだがッ!?な、何が、何が起きてんだ…………!?」

 

「……成長期ってやつ、かな……もう6歳だから……」

 

「6歳は普通なら立派な幼女だからっ!その3倍は成長してるんだが!?なっ……何が、あった……!?紫さぁん!!茜はどうしちまったんですかッ!?」

 

「うるさいわねぇ。成長期なの、ただそれだけよ。よく育ってくれたわ、流石私達の娘よね♪」

 

「えぇ……見た目で言うなら俺と同年代じゃないすか今の茜……!俺、昔のまま老けてねぇんだけど……」

 

「人間的に見たら、今の私とお父さんの年、あまり変わらないかもねっ……」

 

「……子供っぽい話し方まで失って……あぁああぁ……マジか茜……茜ぇぇぇ……うぐおおおおぉぉ…………」

 

(こんな状態じゃ流石に言えないよね……外に留学に行くよって……。仕方ない、か。また今度だね)

 

 やがてメンバーが揃い準備が整ったとのことで、霊夢が新年会スタートの音頭をとることになった。皆の前に立ち新年の挨拶と共に色々と説明をする。

 一方俺は、永遠亭陣営に戻り緋月を膝に乗せつつ未だに茜についての衝撃が抜けきっていなかった。あんな変化は、完璧に予想外すぎたからだ。

 

「────とまぁ、エスカルゴの子供は遂に15人を突破したわ!一応2人同時に紹介しとくわね、まずこの子よ!エスカルゴから見て十三女、鈴仙からは次女!緋月・優曇華院・スカーレットちゃん!」

 

「よっ……よろしくっ……!」

 

 すっかりロングヘアーになった黒髪を風に靡かせながら、緋月はその場に立って一礼する。すると、会場には割れんばかりの拍手が起こる。父親として鼻高々である。

 

「最後に末っ子よっ!遂に生まれた2人目の男子!私の後ろに隠れているこのちびっ子が、博麗霊魔!妖舞くん、人見知りだけど仲良くしてやって!」

 

 急に名指しで呼ばれテンパる妖舞。しかし妖夢に諭され、コクコクと首を大きく何度も縦に振った。急な展開に対応が遅れてしまうのは、奇しくも俺に似たのかもしれない。

 

「それと、宴会が終わったら子供達はエスカルゴの所に行くように!何か渡されるかもだからね!」

 

「え待って聞いてな……」

 

「「「やったあああぁぁ〜ッ!!」」」

 

「……まぁいいか」

 

 そして始まった新年会。皆、あちこち飛び回って追いかけっこしたり、弾幕ごっこしたりと……各々、宴会を楽しんでいるようだ。俺はとりあえず飲酒は控えておく。今酔ったら何かやらかす自信がある。皆の前で巫月……霊愛を押し倒しそうだ。数時間前の姫始めで散々イッたはずなのに……。

 

「あれ、エスカルゴ飲まないの?」

 

「うん、お茶とかで我慢しとくよ。……色々、なんか耐えられるか分からなくてさ」

 

 肩を擦り合わせるように距離を詰めてくる鈴仙。その甘い体臭に、ピクッと息子が反応しかける。

 

「……相手しよっか?あなたのスキマなら、すぐ往来できるし……ねっ?」

 

「ムラムラしてるの?鈴仙」

 

「っ……ま、まぁね……夜通しあんな声聞かされちゃ嫌でも濡れるっていうかさ……」

 

「じゃ、相手してもらっちゃおっかな。2人きりでゆっくり……ね」

 

「♡」

 

 ムクリと、息子が起き上がったのを感じた。キスついでに、スキマではなく瞬間移動で永遠亭に直行してしまい、すぐベッドインならぬ布団イン。少々蒸れて汗臭いのも厭わず、しばしの間、この静かな空間での行為を楽しむことにした。

 

 

 ◆

 

 

「ねー魅玖ぅ、ちょっといーい?」

 

「はいっ、巫月お姉様っ!」

 

「今度から、魅玖との特訓に緋月も参加するから。把握ヨロ〜」

 

「わかりましたっ!」

 

「え、と……よろしく、みくおねーちゃんっ……!」

 

「一緒に頑張ろっ!」

 

「うんっ!」

 

「で、特訓のメニューだけど────」

 

 俺と鈴仙が一旦宴から抜けても、新年会は続く。ある所では、電撃姉妹が特訓について話している。そしてまたある所では、2人きりの兄弟が、やっと話し始めた所であった。

 

「よっ、よぉっ!えと……俺、妖舞!弟、だよな!?父上の子供、男が殆ど居ないからさっ……おっ、俺達くらいは仲良くしよーぜっ!ほら、握手!」

 

「…………ぴゃあぁっ!てがつめたいぃ!」

 

「妖舞くんは半人半霊の血が流れてるからね。ほら握手くらいしなさいよ。ずっとベッタリしてると、悪いように思われるかもよ?」

 

「やーだーぁっ!!」

 

「今すぐ仲良くなれとは言わないけど、何か、会話するとかしなさいよね。子供だからっていつまでも甘えてんじゃないわよ?ほらっ、お兄ちゃんって。妖舞くんはアンタのお兄ちゃんよ」

 

「……………………お…………おにー……ちゃん…………?」

 

「おうっ!お兄ちゃんだぞ!!」

 

「おにー、ちゃん……けんだま、できる……?」

 

「けん玉……?何それ……」

 

「……」

 

「あっ!ドヤ顔した!」

 

「うひひ……おにーちゃん、けんだまできない……!おれ、けんだまできる……!」

 

「ぐぬぬぬっ……な、なんか悔しい……!霊夢さん、けん玉ってどこで買うんですかっ!?」

 

「さぁ?里で売ってるんじゃないかしら?もしくはエスカルゴに創造してもらうのがいいわね」

 

「父上……あれ、父上が居ない……」

 

「えっ?……あら、ほんと。確か、霊魔が壊しかけたけん玉なら仕舞っておいたはず……取ってくるわね。霊魔、けん玉振り回しちゃダメだからね。それと、お兄ちゃんと仲良くね」

 

「あ、おかーさ……。…………おにーちゃん、おれね、もしかめできる……!みて!」

 

「?」

 

「もし、もし、かめ、よ……かめ、さん、よっ……」

 

(皿に玉を乗っけるのか……?簡単っしょ。でもまー数ヶ月でコレって凄いのかな?)

 

 それから数分後、霊夢が持ってきたけん玉を使いもしかめにチャレンジする妖舞だったが、そもそも皿に玉を乗せることすら叶わず、霊魔からけん玉を教わることになってしまった。

 

「ねーね、茜お姉ちゃん!ホントに私と同い歳?」

 

「ええ、間違いなく樹理愛と同い年よ。背だけ少し伸びすぎてしまったんだけど……」

 

「凄いじゃん!里で言う結婚テキレイキ?くらいの身体の大きさだよ?」

 

「結婚適齢期なんて難しい言葉を知ってるのね……」

 

「えっへん!……早く成長しすぎて死なないでね……そうなったら寂しいし……パパ狂っちゃうもん……」

 

「大丈夫、これ以上はきっと成長しないから。私の場合は、皆よりちょっと遅めに成長がストップしただけ。心配は要らないわ」

 

「そっか!良かったぁ!」

 

「心配ありがとうね」

 

「えへへ……♪」

 

 かなり年の離れた姉妹に見えてしまうほど外見の年齢が離れている2人。しかし天然な樹理愛と少し不思議ちゃんな茜の相性の良さは、未だ健在…………なのかもしれない。




阿弥、「お姉様、兄上、姉上、お姉ちゃん」という感じで、呼び方を全て使い分けています。
他の子は、各家庭で普段使っているような呼び方で呼んでいるんですけどね。個々人で呼び分けるのは阿弥ただ1人だけです。

裏表があるタイプは、エスカルゴでも苦手というか嫌いな部類なので、エスカルゴは阿弥に対して少し複雑な想いを抱いているようです。
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