※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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次の独占者 〜1日目〜

「ごめんなさいね……エスカルゴ……。あなたのこのハーレムに、亀裂を入れるような事をして……。もしこれで瓦解したら私のせいね。……殺されても文句は言えないわ。レミィ以外には殺されないけれど」

 

「大丈夫……今くらい好きにしてもいいよ」

 

「フフ……そうさせてもらうわ。……私の魅了(チャーム)は幻想郷最強……誰にも解けやしないもの……」

 

「まぁ、俺には効かないけどね」

 

「…………ええ、そうね。……好き……いいえ、あなたを愛してるわ、永遠に……」

 

「俺も永遠に愛してる……パチュリー」

 

 ちょっと虚ろな目でハグを要求するエスカルゴ。彼を抱き締めてやると、心が満たされたような幸せそうな顔で瞼を閉じる。

 これ見よがしに匂いを嗅いでくるのは、やっぱり相変わらずだと思わず苦笑いしてしまった。やがて抱擁を解き、真正面から見据えてやると、あんまり男らしくないその丸い目に、疑問の色を浮かべる。

 

「あと少しよ。待ってて……あと僅かで完成するわ。私とあなたの楽園が……」

 

「楽しみだね、パチュリー。そうなったら、毎日がハレの日だ」

 

「ふふっ、それもそうね。……でもその為には、あの霊夢をどうにかしなくちゃいけないわ」

 

「霊夢……霊夢は……俺、勝てない……」

 

「大丈夫……あなたは何もしなくていいの。全ては、あなたを独占する私がどうにかする事だからね」

 

「そう……なのかな……。でも、俺、パチュリーにも彼らしいことしてやれてない……。だからせめて何か手伝いがしたい……」

 

「そんな事を考えてたの?……やっぱり優しいのね。でも、私が『いい』と言ったら『いい』の。今は、黙って私に従って頂戴」

 

「うん……分かった。パチュリーの言う通りに……」

 

 

 ◆

 

 

 1日目。ローテーションで見ると今日は紅魔館に宿泊する日。確か、一巡の4日目だから、弦月姫と咲夜の日だ。

 どれだけ隠し通せるか……後はそれだけネックだ。敵を騙すには味方から。けれど、私には味方なんて居ない。この紅魔館の何処にも。だから、私だけが気張らなくてはならない。居るとするなら、小悪魔親子くらいか。アテにはならないけれど。

 紅魔館の皆をどうこうできないなら、霊夢なんてどうこうできるはずが無いんだから。

 

「エスカルゴ」

 

「あ、パチュリー。どしたの?」

 

「そろそろお腹空かないかと思ってね。ほら、もう夕飯の時間でしょう?何か食べたいモノある?」

 

「カルボナーラが食べたいなー、粉チーズ無しの」

 

「相変わらず好きねぇ。いいわ、作ったげる」

 

 図書館での読書を中断して、私の部屋へ向かう。そこでは、エスカルゴが魔導書を読み耽っている。食べたいモノと聞かれてカルボナーラと答えるのは読めていた。だからなのか、予想通りすぎて思わず口元が緩んでしまった。

 創造魔法でカルボナーラを作ってやる。温度は、猫舌な彼に合わせてあげて、ほんの少しだけ湯気が立ち上る程度。

 

「いただきまーす!……あれ、咲夜さんのと同じ味。なんで?」

 

「美味しい?」

 

「美味しい。パチュリーくらいになると、完成品をそのままな感じで創造できるんだね……凄いなぁ」

 

「こらこら、褒めても何も出ないわよ?」

 

「おかわりも?」

 

「……ちゃんと噛んで食べてる?早すぎよ」

 

「そぉ?カルボナーラ大好きだからなー俺」

 

「それは昔から変わらないのね。……じゃ、私はまた向こうで読書してるから……食べ終わったらあなたもまた勉強の続きよ。いいわね。分からないところがあったら来なさい。あと、皿とかはそのまま放置でいいから」

 

「はーい」

 

 大盛り3杯分ほど追加で創造してから、それだけ早口気味に言い残し、部屋を出る。後は言葉通り、図書館内で読書をするのみ。

 するとその数分後に、図書館内に弦月姫が時間を止めて入室してきた。正直、目の前に急に現れると心臓が止まりそうな程に驚くので、ここに来るならその登場の仕方は控えてほしいものだ。

 

「読書中に申し訳ありません」

 

「何?」

 

「あの……パチュリー様。お父様の行方をご存知ではないですか?」

 

「エスカルゴ?……どうして?」

 

「もう夕食のお時間なのですが、紅魔館のどこにもいらっしゃらないようでして……。この図書館に来たところまでしかお父様の足跡(そくせき)を辿れませんでした」

 

「それで?」

 

「え、と……パチュリー様でしたら、何かご存知ではないかと……」

 

「賢者ならまだしも、私じゃあ何もかもお見通し!なんていかないわ。エスカルゴがここに来た後の事なんて、私は何も知らない」

 

「で、ですがお父様はいつもパチュリー様に魔法のご指導を賜っていました……。今日もその予定だと、お父様から伺っております」

 

「……それで?」

 

「ですから……パチュリー様がお父様をどこかに……飛ばした?とか……無い、ですか……?」

 

「意味不明よ。そんなの有り得ないわ。……どこかでメイドとヤッてんじゃないの?……エッチ」

 

「はっ……!な、成程……ありがとうございます!」

 

「……」

 

 更にその数分後。今度は弦月姫の母親、メイド長である咲夜が、娘と同じように時間を止めて登場。またか、と内心ドキリとした。全く、この親子は。

 

「今度は何」

 

「メイド妖精の緊急点呼を取りました。結果、誰も欠けておりません。そればかりか、本日もメイドと旦那様が交わったという事実はありませんでした」

 

「……で?」

 

「単刀直入に言わせて頂きますわ。パチュリー様、旦那様について何か隠していますね?」

 

「…………」

 

「お話し下さい。魔法薬の失敗ですか?それとも、魔法の失敗ですか?」

 

「私の魔法は完璧よ。あなたに失敗かと問われる程ヤワではない」

 

「では何をそんなに隠しているのでしょう?随分とおかしいですわ、あの人が姿を消すなんて。何か、私の見えないところで何かが起きているはず……」

 

「それが私だと?面白い事を言うわね」

 

「『面白い』?果たしてそうでしょうか?お嬢様も憤っていらっしゃいます。妹様は癇癪を起こされる一歩手前でした。……さぁ、パチュリー様?」

 

「うるさい」

 

 また、溜め息が漏れてしまった。溜め息をすると幸せが逃げると言うけれど、どうしても、今だけは抑えようもなかった。

 まさか、初日から誰かと戦うことになってしまうなんて、流石に予想外だった。やはりエスカルゴをここに留めるのは別の日からにすべきだった。

 どうやら、私が思っていたよりもずっとリスクが大きかったらしい。でも、後悔しても遅い。それに咲夜が相手なら私の魔法でどうとでも対処できる。口封じしてしまえば良いというだけのこと。

 

「確かに私は、エスカルゴについて1つ知っていることがある。だけど教えない。教えたくないから、教えない。ただそれだけよ」

 

「……なら、力ずくで聞き出すまでです」

 

「この私と戦(や)るって言うのね?なら、私が勝ったらこの件に関しては完全黙秘を貫いてもらうわ。当然レミィに真実を報告する事も許さない」

 

「いいでしょう。スペルカードは3枚まで」

 

「残機0ね」

 

「!……1被弾でアウトですか。ならば速攻を……!幻世『ザ・ワールド』」

 

 赤い弾幕に青と緑のナイフが出現。これは咲夜の十八番。つまり私にとって見慣れたスペルカード。いくら得意のスペルだからと言っても私が被弾するはずがない。

 それなら、先日模倣したばかりのあのスペルで、意表を突いてやるのも面白いかもしれない。

 

「魔符『マスタースパーク』」

 

「え────」

 

 鈴仙がやるように手を銃の形にしてみる。そして人差し指からファイナルスパーク並の太さのマスパを発射してやると、突然の事に驚きを隠せないらしい咲夜は、時間を止める間もなく被弾してしまった。

 

「な……何故、パチュリー様が、それを……」

 

「さぁね。さ、私の勝ちだから、あなたは大人しく下がりなさい」

 

「ッッ……分かり、ました……失礼します…………」

 

 下唇を噛んだ咲夜は、時間を止めて姿を消した。相変わらず、能力を無駄遣いするヤツだ。ちなみに私の部屋には、私の魔力を流さないと開けられない特殊な施錠が施してある。だから壁や扉を破壊でもしなければ突破は無理だ。

 

「ふぅ」

 

 椅子に腰かけた私は一息ついた。まずは1日目。問題はこれからだ。




独占を企む者がチラホラ……。危険だなぁ。
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