※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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次の独占者 〜3日目②〜

 レーテとの地獄の勝負が始まった。レーテはその身体能力をフルに活かした大乱闘が得意。その様はまるで彼女の母、レミィを彷彿とさせる。しかも、レミィがグングニルを、フランがレーヴァテインを扱うように、レーテは紅の斧(バトルアックス)を得物としている。

 吸血鬼の凄まじい身体能力から繰り出されるその激しい連撃を、私は紙一重で回避していく。

 

「アハハッ!ダメよパチェ、そんなに逃げてちゃ!早く終わらせた方がパチェも楽でしょう!?ほら、早くぶつかっちゃええっ!ほら!ほらっ!ほらほらほらほらほら、ほらぁぁぁッッ!!」

 

 速すぎる。息をつく暇もないという表現がまさにピッタリだ。普段から子供のように読み聞かせ等をオネダリしてくるレーテだとは、とてもではないが思えなかった。

 

「デタラメな速さね、誰と訓練したらこんな……」

 

「フランだよぉ!お父様が『強くなるにはフランと遊ぶのが一番だ』って!アハッ、確かにそーかも!お陰で、パチェが逃げの一手だよぉ!」

 

「テンション高すぎ!これだから吸血鬼は……!」

 

 炎の弾幕を放ち、水の弾幕も放ち、金属性の弾幕までも使用する。結晶を創造して落としたり、床に生やしてみたりと様々な攻撃をしてみるが、どれもあの斧で捌かれてしまう。

 紅色の槍より、燃える剣より、帯電する鎚よりも厄介な得物かもしれない。まさか、使う武器だけでここまで攻撃性が変わるとは思いもよらなかった。そもそもレーテがここまで攻撃的だなんて……。

 

「っ……あ……」

 

「トドメだっ♡」

 

 足が絡まってしまい、ズテンと倒れてしまった。斧による連撃から、後退している最中の事だった。それを見たレーテはペロリと舌なめずりして、高く飛び上がると、いつかエスカルゴが見せたように、縦に回転を始めた。

 

「いっくよぉ〜!!『炎獄一振』!!」

 

「なっ!?」

 

 あろう事か、回転の速度を増す毎にレーテの斧は燃え盛る炎を纏い始めた。火の輪くぐりの輪の如く巨大な炎の円盤が形作られる。

 急いで立ち上がろうとするも、長いスカートの裾なんかを踏んでしまい再び尻もちをついてしまう。目の前に回転する炎の斧が迫る。

 もうダメだ、当たる、と覚悟を決めた……その時。

 

「逃げろパチュリーィィィイイイイィイイイッッッ!!!」

 

「エ……」

 

「お父様の声っ!?やだ、止まれな────!」

 

 部屋を飛び出してきたらしいエスカルゴが、私を勢いよく突き飛ばす。その瞬間、レーテの炎の斧がエスカルゴを襲う。

 私を突き飛ばした手、腕、肘、二の腕と頭、首、肩、胴体と左手、両太もも、両膝、両ふくらはぎ、両足首……まるで親の敵のように、レーテによって、これでもかと細切れにされてしまった。

 回転を止められないらしいレーテはそのまま私が座り込んでいた場所に墜落。炎と共に斧も消えた。

 

「嘘、でしょ……何で飛び出してくるのよ……!!」

 

「バラ、バラ……お、お父様っ……」

 

 次の瞬間、見るも無残な遺体は消え失せて、雷の蝙蝠が出現する。まるで何事も無かったかのように復活するエスカルゴは相変わらずだ。

 だがこれで1つ問題が起きてしまった。

 

「あれっ?……今日、博麗神社の日じゃん、ヤベェ」

 

 死んだので、私が掛けた魅了が解けたのだ。だがこんな些細なミスでこれまでの努力を水の泡にする気はサラサラ無い。解けたなら再び掛けるまで。

 

「大丈夫っ!?」

 

「おわっ……ど、どしたパチュリー……甘えん坊か?大丈夫だよ、不死身だし。今更聞くことかよ?」

 

「そう?……大丈夫なのね?」

 

「……うん、大丈夫……大丈夫だよパチュリー、心配しないで」

 

 掛かった。抱き締めて上目遣いすれば簡単に目を合わせられる。エスカルゴには悪いけど、まだまだ監禁を終わらせるつもりは無い。

 すると、その一部始終を見ていたレーテが言う。

 

「あーっ!!私、分かった!多分だけど、パチェがお父様を独り占めしてたのね!」

 

「……さぁ?」

 

「だって、パチェの魔力がお父様に移動してた!!やり方も名前も分かんないけど、何かの技術だよねそれって!それでお父様を操っていたとか……色々、有り得るよ!つまり、お父様行方不明事件の犯人はパチェ!あなただっ!!」

 

「…………だったら?」

 

「倒して取り返すだけ!やぁぁっ!!」

 

「やめろレイチェ……」

 

「あなたは戻ってなさいっ!」

 

「パチュ────」

 

 再び斧を出して襲いかかってくるレーテ、そしてそれを止めようとするエスカルゴ。私は何とか回避行動をとりながら彼を眠らせた上で部屋に瞬間移動させて、彼女の一撃を回避。忙しい戦いだ。

 

「これ以上あなたの好きにはさせないわよ!」

 

「『炎獄一振』っっ!!」

 

「またそれ……!またそう来るのであれば、私は……月符『サイレントセレナ』!!」

 

 再び炎を纏わせ、回転しながら迫ってくる。私は床に魔法陣を広げて、レーテは回転中だと真っ直ぐにしか動けない事を確認した上で、真下から彼女を撃墜してしまった。

 

「キャッ…………!」

 

「勝負アリ!勝負アリよ、レーテ!」

 

「……ちぇ〜っ……仕方ないかぁ……。次までにもっと技考えておこ〜っと」

 

「……」

 

「……お父様については……何も言わないでおくね。何となく、パチェの考えてること分かったし」

 

「……ッ!?」

 

「頑張ってね!じゃ、私はフランと弾幕ごっこしてこようかなーっと」

 

 よく分からないが、何故かスキップで帰っていくレーテ。相変わらず、何を考えているか分からない子だ。けれどおかげさまで懸念材料が1つ減った。この紅魔館における最後の問題はやはりフランだ。フランさえどうにかしてしまえば、紅魔館は安全な要塞と化す。フランさえ────。

 

「断迷剣『迷津慈航斬』!!」

 

「?」

 

 その時、どこからともなく妖夢の声が響いてきた気がした。すると次の瞬間、天井の一角にて大きな爆発が起きた。

 それはかつて住吉ロケットを飛ばした天窓のある部分。瓦礫などが落ちてきてもうもうと立ち込める白煙の中、勝ち誇るような声が聞こえてきた。

 

「当たりだ!エスカルゴの気配が残ってる!きっとまだこの近くに……図書館に居るッ!!」

 

 妖夢だ。まさか……昨日来なかったのにどうして。いや、昨日来なかったからこそか。丸1日掛けて、私という犯人を特定したと見える。これは、非常にまずいことになった。

 

「居たパチュリー!エスカルゴを返せ!さもなくばたたっ斬るッ!」

 

「断るわ!」

 

「なら力ずくで奪うまでよ!いざ尋常に勝負!!」

 

「スペルカード3枚、残機1(・・・)で勝負よ!」

 

「承知!瞬(・)で終わらせるッ……!」

 

 私は、この一連の監禁騒動において初めて残機を1以上に設定した。これは、先程のレーテの言葉を危惧してのもの。「今日一度だけ被弾する」というレーテのあの言葉は、これから確実に起きる未来。ならば、一度被弾しても私が負けないルールに設定すればいいだけのこと。それが残機1。一度の被弾までは許容されるのだ。

 

「剣伎『桜花閃々』!!」

 

「────ッ!!」

 

 ギリギリ目視できるかできないかくらいの絶妙な速度で突進してくる。それ自体は風魔法で私自身を浮かび上がらせ回避したものの、剣閃を描いた場所からは桜の花びらのような弾幕を放ってくる。

 これは初見だ。まさか弾幕の追撃があるなんて、ほぼ想定外。真下から迫る弾幕を回避しようと体を動かすも、その中の1つが背中に被弾してしまう。

 

「グッ……!?」

 

「トドメだ!天上剣『天人の五衰』!!」

 

 私が不安定になったところに斬撃ではなく大量の弾幕を放ってくる。五色の弾幕が綺麗だとか、軌道呼んでみたりだとかそんな事をしている暇は無い。

 目の前のことでいっぱいで、何も考えられない。反撃の手立てはあるにはあるが、隙を作らなければ何もできやしない。

 

(フワフワして動きが読みにくい……まるで幽々子様みたいな……。洒落臭い!!)

 

「!」

 

 空中でフワフワ曖昧な回避を続けていると、遂に焦れったくなったか、真っ直ぐに突っ込んできた。これぞ私が狙っていたこと。

 以前、エスカルゴから聞いたことがある。妖夢の剣術は直線的だと。確かに、これは正しいと思う。だから、動きの読みやすい直線的な行動にまで奴を追い詰めれば、分かりやすい動きに堕ちてくれると予想した。この技の為に。

 

「────魔符『アタッククラッシュ』!!」

 

「斬れな……うわっ!?」

 

「形勢逆転ね!火符『リングオブアグニ』!!」

 

 一度きりのカウンターであるアタッククラッシュなら、他の防御やカウンター技と違ってマニュアル解除する必要は無い。オート解除されると、“次”に繋げやすいのだ。

 そしてこの技は火球が輪のように複数個繋がって回転しながら向かっていくスペル。つまり一度被弾すれば連続で被弾しやすいということ。

 まず体勢を崩し、連撃を与える──こんな流れを作る為だけに3枚のうち2枚を消費したのだから、勝てなくてどうする。

 

「うっ、ぐっ……うぉおおおあぁああああっっ!!」

 

「1つだけだと思わない事ね!まだまだあるわよ、妖夢!!」

 

「くっ────!!」

 

 楼観剣で1つ目を受け止めているところに追加で2つ一緒に飛ばしてやる。すると両側から挟み込むように輪が動き、やがて1つ目の対処にいっぱいいっぱいだった妖夢を挟み込み、連撃を叩き込む。

 

「被弾、しちゃった…………何でっ……」

 

「コケたからでしょ」

 

「くっ!エスカルゴを返せッ!!」

 

「返すつもりは無いわ。大丈夫、いずれはそちらに行かせてやれるから」

 

「行かせてやれるですって……!?許さないッ!」

 

「もう勝負はついてるでしょ。面倒臭いわね。魔符『マスタースパーク』」

 

「それは魔理沙の────!!」

 

 五行の五属性全ての力をこの一撃に込めて、遂に3枚目のスペルを発動。五行のマスパにより妖夢は遥か後方に吹き飛ばされ、壁に頭をぶつけ気絶。

 まさか、決着後も問答無用で襲ってくるとは思わなかった。しかしそれも彼を愛するが故の行動だと思うと、妖夢を責める気は微塵も起きなかった。

 転移魔法にて妖夢を冥界の適当な所に転移(トバ)して、やっとの思いで自室に戻る。どうやらエスカルゴは扉を破壊してまで私の所に飛び出したらしかった。扉を修復し、ベッドで眠らせておいたエスカルゴを起こしてみる。

 

「あれ……レイチェルは…………」

 

「勝ったわよ。……バカね、飛び出してくるなんて。別に回避できなくもなかったのに……」

 

「ダメだよ……あの子は加減が下手なんだ……。一撃一撃が人によっては即死レベルだしね……」

 

「……ありがと。助かったわ」

 

「……!へへ……ひひひっ、良かった……!」

 

 頭を撫でてやると、やはり子供のように柔らかく顔を綻ばせながら照れる。監禁してみて良かった。こういう一面も見れるなら、いつまでも彼をここに留めていたい────。

 

「ね、エスカルゴ……。戦って疲れたから……少し、一緒に寝ましょう……?」

 

「んー……俺、今起きたばっかなんだけどな…………。まぁいいか、寝よ寝よ。パチュリーとなら、永遠に眠れそうだし♡」

 

「こらこら。死ぬんじゃないわよ?」

 

「分かってるって♪」

 

 手を引いて、私をベッドに連れ込むエスカルゴ。そのまま、流れに身を委ねようとする私だったが、そんなフワフワした気分は、不躾なノック音により吹き飛ばされてしまった。

 

「ん?」

 

「チッ……誰よこんな時に。見てくるから待ってて、エスカルゴ。…………ハイハイ、誰?」

 

 ドンドンと扉を叩いていたのは、ここあだった。かなり顔色が悪い上に酷い汗をかいている。そして私が扉を開けるなり、唇を震わせカチカチと奥歯を鳴らしながら、何が起こっているのか告げる。

 

「ぱ、パチュリー様っ!緊急事態!超超超緊急事態発生ですぅぅっ!!」

 

「うるさいわよ。何が起きたっての?」

 

「霊夢さん、霊愛お姉様が攻めて来ました!!あ、えっと、霊夢さんは確定で霊愛お姉様は未確定ですけども、多分居ます!十中八九!!」

 

「…………は?」

 

「その、お手洗いに行こうと上に行ったんですが、突如、門外にて戦闘が発生したらしく……美鈴さんはやられてしまって、次に迎え撃った弦月姫お姉様、レイチェルお姉様の両名も御札で完封され……!」

 

「……霊夢、エスカルゴの子には手を出したくないと言っていたそうだからね……。だからって御札程度で抑えられるとは思えないけれど……」

 

「奥にいた天子さんも遅れて参戦こそしたものの、ムソウテンセイ?なるもので瞬殺されてしまい……!現在は咲夜さん、お嬢様、妹様の御三方で、やっとまともな戦闘に持ち込めたところです……!!」

 

「姿は見た?」

 

「いいえ、煙の向こう側なので、よく……。ですが、霊力の気配からしてあの2人だと推測しました!」

 

「……なら、最悪の事態を想定して、霊麗ちゃんまでついてきてると考えるべきね。2人だと仮定してもかなり強大すぎる敵ではあるんだけれどね……」

 

「い、如何なさいますかっ!?鬼のような猛攻で、壁もエントランスも吹き飛んでしまう程で……」

 

「決まってるでしょ、迎え撃つわよッ!レミィ達が頑張ってくれている間に迎撃体勢を整える!!」

 

「迎撃……って、図書館(ここ)で、ですか!?」

 

「霊夢達が相手では、レミィ達では相性が最悪よ!向かいながらでは迎撃体勢は整えられない!だからここでやるしかないのよ!!小悪魔とシガレットをここに連れてきなさい、大至急!!」

 

「わッ、わかりました!!」

 

 困った困った困った困った困った困った。美鈴、レーテに続いて妖夢の相手もして、こっちは消耗に消耗を重ねているというのに。

 魔力の消費は問題では無い。たかが三連戦、別に支障は無い。けれど体力がそろそろまずい。HPの体力ではなく、スタミナという意味の体力だ。

 霊夢が来るのは予期していた。それについては、あまり文句は無い。けれど、美鈴〜妖夢はそこそこ想定外だった。おかげでここまで体力が削られた。霊夢が来るとしてもだ、よりによってこんな最悪な状況下での襲撃だなんて、万全な状態で対応できるわけがない。

 

「……エスカルゴ」

 

「パチュリー……霊夢が来たって聞こえたけど……」

 

「動かないで。見つかってもいいように、気配探知されてもいいように……あなたに魔法を重ね掛けするから。あとは、あなたがしっかりと黙っていれば、全てが上手くいくんだから……頼んだわよ?」

 

「……分かった」

 

「私の魔力もあまり無駄にできないから……その辺の魔道具も使いましょう。そこら辺に私のリボンとか落ちてない?それ持ってなさい」

 

「あっ、あったよ、パチュリーのリボン!赤の!」

 

「でかしたわ。後はそれを補助道具として相手への妨害を発生させる魔法を何重にも掛けて、掛けて、ひたすら掛けまくる!!──────」

 

 一先ず大きく分けて五重に魔法をかけておいた。隠匿、遮断、同化、睡眠、反撃の五つだ。

 隠匿はそのまま、彼自身を見えなくさせる魔法。遮断は気配を含む生命反応を認識させなくさせる。同化は遮断の補助役。彼の気配を、周囲の魔道具と同化させた。こうしておけば、もし霊夢達が部屋に入っても魔道具の気配ばかりを感じ取る事になる。睡眠は、エスカルゴを眠らせる為のもの。また私を助けに来るなどして姿を見せたら、全てが水の泡となってしまうからだ。

 レミィ達が戦ってくれたのはきっと私を庇う為。ここでアッサリ負けたりエスカルゴを奪還されたら会わせる顔が無いというもの。

 そして最後の反撃とは、霊夢達がエスカルゴ及び部屋中に弾幕を浴びせてもいいように、部屋全体とエスカルゴに、アタッククラッシュを十重二十重に重ね掛けした。アタックカンタは障壁タイプなので使えないからだ。それなら纏うタイプのを使うまでである。

 

「全員揃いました、パチュリー様!」

 

「よし……。来たわね、小悪魔、シガレット。3人共よく聞きなさい。博麗親子迎撃作戦を説明するわ」

 

 ────これからが正真正銘の山場だ。




隠れ彼岸島要素……わかった人、感想欄で教えてネ。
正解は次回。
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