※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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次の独占者 〜3日目④〜

「さぁ〜て……どうやって料理してやろうかしらね、パチュリー?」

 

「……あんた達、何しにここに来たの?」

 

「ふふっ、従者使って迎撃体勢まで整えちゃって……分かってるくせにさぁ。白々しいなぁ!お父さんを返せ!!」

 

「言っても無駄よ、霊愛。この手のヤツは無理矢理力でわからせないとね」

 

「わかってるわね霊夢、その通りよ。じゃあ、私が力でわからせてあげる。……と、その前に、ルールを設定したいのだけど」

 

「あー?そんな格式ばった戦いするヤツだっけ?」

 

「ええ。魔法使いはこういう流れを大事にするものなのよ。スペルカード3枚、残機0……でどう?」

 

「いいわよ」

 

「お母さんっ!?そんな簡単に……!」

 

「負けるワケないんだからいいでしょ。スペカ何枚だろうと残機が幾つだろうと、ね」

 

「……!そう、だけど……」

 

 トボけてみてもダメらしい。そしてやはり霊夢は勝つ気満々だ。そりゃあそうだ。百戦錬磨の博麗の巫女だ。自信が無い方がおかしい。霊愛ちゃんは、残機0という一発勝負に、反対気味らしい。これを変更したいならそれはそれで構わない。私の余裕が増えるだけだ。

 私は、戦いを早く終わらせたいから残機0に設定したいだけ。その気になれば、今の私なら更に長く戦闘することだって決して不可能ではない。

 

「言っとくけど、勝つのは私だから!」

 

「私達(・)でしょ、霊愛」

 

「これは、異変なんかじゃないわ。つまりそれは、最終的に巫女が勝たなくてもいい(・・・・・・・・・・・・・・・)という事よ……!巫女の勝利以外のエンディングを迎えられる!!」

 

「「────ッ!?」」

 

「それはそうよね、巫女に解決させる(・・・)のが異変なんだから。なら、これは異変というカテゴリかしら?いいえ違う。事件よ。エスカルゴの行方不明という事件でしかない。最終的(さいご)に勝つ(わらう)のは、勝負に勝った方なのよ!」

 

「……言ってくれるじゃん……!だったらさっさと、潰してあげるよッッ!!」

 

「来なさい!月符『サイレントセレナ』!!」

 

「うっ……範囲広め……!?」

 

 ダンッと踏み込んでくる霊愛ちゃんはスレスレのところでサイレントセレナを回避した。霊夢は私の反撃を想定してか、焦らずに御札を投げてくる。

 

「邪魔よ霊愛。夢境『二重大結界』」

 

「ッ!?あっぶな!あっぶなぁ!?なんで巻き込むカタチでやるかなぁ!?」

 

「ちんたらしてんのが悪い」

 

「あーはいはいそうですね!…………ムカつく!夢境『二重大結界』!!」

 

「……は?」

 

 思わず、そんな間抜けな声を漏らすと共に、目を見開いてしまう。先に準備した霊夢の二重大結界の外側に、霊愛ちゃんが更に二重大結界を設置した。これでは、四重大結界だ。単純に密度2倍は酷い。避ける私の身にもなってほしい。

 

「ヤケに回避が上手いわね、単純に密度2倍よね?霊愛、変に狙ってないでしょうね?」

 

「狙ってないから。私は形式通りにやってるだけ。お母さんこそ狙ってんじゃないの?」

 

「は?生意気言うんじゃないわよ」

 

「フン」

 

 確かに何故か全く被弾しない。掠りすらしない。おかしな事もあったものだ。いくら喘息が治って、身体も動くようになったからとは言っても、体力が無いのは依然変わらないはず。しかも、連戦に次ぐ連戦で体力は著しく削られているはず。それなのに被弾しない。

 回避しながらもそのように思考を巡らせているとやがて一つの答えに辿り着いた。レーテのせいだ(・・・・・・・)。

 

「──どうやら、もっと大胆に動いても良さそう」

 

「「ッ!?」」

 

「『今日一度だけ被弾する』……これはつまり、裏を返せば『一度しか被弾しない』ということ。つまり今の私は無敵!安心して動ける……!!」

 

「「……!?」」

 

 レーテの能力は殆ど誰も逆らえない絶対の能力。可能性という不確定なモノを操り、間接的に事象を確定させるのがあの子の能力。

 例えば、今日レーテは霊夢に敗北した。けれどもそれは、レーテでは霊夢に絶対に勝てないからだ。元々0%か100%であるなら、レーテですら可能性を操れないのである。それがあの子の能力。

 

「私はさっき妖夢とも戦ったけれど、その時に被弾した!だからもう、私は被弾しない!即ち無敵!」

 

「チッ……じゃあアレしかないね。ねぇパチュリー、これならどう対処するのかな?お母さん力貸して!霊麗みたいに!!」

 

「──!……全く、あれ(・・)くらい1人でどうにかできるようにしなさいよね!今度修行よ!」

 

「はいはい!」

 

「「宝具『超特大陰陽玉』!!」」

 

「?」

 

 直径5m……いや、7mはありそうな陰陽玉を、私ではなく上に放った博麗親子。おかしな事をする。弾道や霊力の流れ等から察するに、私の視界の死角から再び襲ってくるという事は無さそうだ。つまりアレは天井に向かい続ける。

 

「フフ、どこを狙って────」

 

 いや待て。おかしい。博麗の巫女ともあろう者があんな無意味な事をするはずが無い。ましてや霊愛ちゃんなんかは今の攻撃にほぼ全ての霊力を使ってしまっている。狙いを外して悔しがる素振りすらも無い。……ウソだから?

 もし────もし仮に、あのまま陰陽玉が天井にぶつかればどうなるだろうか。強化してあるので、普通なら弾幕の方が弾けてそれでオシマイ。けれどあの弾幕は霊愛ちゃんの全身全霊に加えて、霊夢の霊力まで合わさっている。きっと凄まじい破壊力になっていることだろう。

 そんな破壊力の弾幕が天井に触れると、どうなるだろう。また崩落か……いや、その瓦礫で私のことを潰す腹積もりかもしれない。

 とはいえそんな攻撃をして霊夢達が満足するハズ無いだろう。つまり、真の狙いはその先にある。

 天井が壊れて瓦礫が降ってくる────それだけだろうか?もっと他に彼女達の利になる「何か」があの行動に潜んでいるはずだ。

 

「────天井、天窓、崩落、地下、修復、霊力、博麗の巫女、吸血鬼、御札、待機行動、回復、夜、憤怒、嫉妬、月光、魔法、封魔針、陰陽玉、破壊、魔力の無い吸血鬼…………まさか!?」

 

「「!!」」

 

「今夜の月齢は……!!」

 

 彼女達の狙いに気付いた時には、もう遅かった。超巨大な陰陽玉が天井を破壊すると、眩いばかりの月光が図書館内に降り注いできた。

 

「……参ったわね……まんまとしてやられた」

 

「天井を破壊して月光を直接浴びる……霊愛にしてはナイスな作戦ね」

 

「でしょ。もっと褒めてもいいんだよ?」

 

「バカ言わないの」

 

 霊愛ちゃんは半妖。月光を浴びている間だけは、完全な吸血鬼に変身する事が可能。そして、地下にあるこの図書館からロケットを発射するという芸当が可能なのも、図書館の天井が地表からそう離れていないから。それなら破壊力を高めた陰陽玉で地表諸共天井を吹き飛ばし、月光が差し込むように……。

 なんてゴリ押しな作戦だろうか。一歩間違えれば自分達も瓦礫に埋もれるかもしれないのに。いや、瓦礫なんてモノは微塵も残さないほど木っ端微塵に吹き飛ばす自信しか持ち合わせていなかったのか。事実、私の上にも彼女達の上にも瓦礫なんて無い。

 

「さ、第2ラウンド開始だよパチュリー。さっさとお父さんを返してもらうよ」

 

「アイツは私のモノよ」

 

 本気の2人に動かれてしまっては困ってしまう。息もピッタリな親子なら可能性の壁を超える事すら有り得てしまうかもしれない。そんなの、あってはならない事だ。

 

「魔符『マスタースパーク』」

 

「「……は?」」

 

 目をパチクリさせた2人は、一瞬だが回避行動が遅れてしまう。しかしやはり、流石は博麗親子だ。驚愕しても尚、どこも掠ることなく、余裕をもって回避している。

 ……惜しむらくは、マスパの行く末を見ておくべきだったことだ。

 

「ッ────避けて霊愛ッ!!」

 

「わッ……!?」

 

 霊夢は霊愛ちゃんを突き飛ばした。数多の異変を解決してきて培った戦闘経験や直感などが、霊夢にこうさせたのだろう。

 私のマスパは遥か後方、壁に当たるなり、適当に角度をつけて跳ね返ってきたのである。これが先程床にも仕掛けておいた「地雷よりも有効な手段」。無限反射壁。同調した魔力にのみ反応する。これをどうにかしたいなら、その部分の壁なり床なり破壊しなくてはならない。

 

「お母さん……!?」

 

「やっぱアンタ、未熟だわ……後ろから迫ってんのに気付かないなんて……」

 

 瞬間、マスパは霊夢を飲み込み、光線の行く先へ吹っ飛ばされた。これにて霊夢は脱落。残る敵は、霊愛ちゃんだけだ。

 

「あーもう、足引っ張るなんて最ッ悪!八つ当たりしてやるッ!!」

 

「悪いけれど、1人になったあなたは、私の脅威に成り得ないわ」

 

 マスパ飛び交う中、私は静かに告げる。

 吸血鬼になったから速度にはよく注意すべきだと思っていたが、案外そうでもないらしい。まだまだ余裕で目でも終える程度の速さしかない。レミィやレーテの方が速い。まだ吸血鬼化の練度が浅いからかもしれない。

 

「日符『ロイヤルフレア』!!」

 

「────!!」

 

 終わりだ。真っ直ぐに向かってきたなら、回避はもう不可能。反射するマスパで動ける範囲を搾って畳み掛けるように範囲攻撃を仕掛けてやるだけで、吸血鬼霊愛ちゃんだろうと倒せる。

 一度の被弾もアウトというルールにしたからこそゴリ押し戦法も使えない。私の勝ちだ。

 

 

 ◆

 

 

「はぁ……今日は厄日ね……」

 

 天井を修復させて、私は部屋に戻る。博麗親子については、叩き起こした小悪魔に「博麗神社に転移させて」と命じたので問題無い。とりあえず問題は解決した。山場であろう霊夢を攻略できた。もう、いいだろう。

 楽園の完成だと言っていい頃合いのはずだ。私達2人だけの。

 

「……あとは早苗、衣玖、鈴仙の3人かしらね」

 

 大丈夫、この中の何者も霊夢に劣るはずだ。次に懸念すべきは神である早苗、エスカルゴ同様に雷を扱う衣玖、幻覚を使ってくる鈴仙…………いややはり霊夢と同レベルに厄介な3人の可能性がある。

 ひとまず、レーテの能力による加護は明日からは無い。より気を引き締めてコトに臨まねばならないだろう。




話数を空ければ、レイチェルのあのセリフを忘れる人が殆どだろうなと思ったので、3日目はそろそろ終わらせておきます。
結局この日であれば、懸念していた霊夢に対しても他の誰に対しても、パチェの勝ち確だったんです。
もしへカーティアが来ても「遊んであげるわよん」みたいになり、パチュリーもへカーティアに勝てるような展開になります。

あと念を押しておきますが、レイチェルの可能性を操る能力、チートなんですけどそこまでクソチートではありません。パチェの独白にあるように、絶対可能もしくは絶対不可能なら操れないので。
エスカルゴや妹紅達は死なないので、本当の意味で死ぬ可能性は100%にできません。
パチェの魔法が暴走する可能性は0ではないにしろそれによって宇宙が崩壊することは有り得ないので0%です。紅魔館が大爆発する可能性はあるので、レイチェルが遊び半分で『パチェの魔法が暴走して紅魔館が爆発する』と設定すればそうなります。
ギャグもシリアスもイけるレイチェル……。
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