4日目。意外にも、早苗や諏訪子は来なかった。彼曰く、諏訪子は「今のうちはパチュリーに貸してやるよ〜」で、早苗は「今だけですから」とのことだった。どちらも、私の楽園が長続きしないことを願っているかのようだった。
そして迎えた5日目。エスカルゴが来ないと知るなり、真面目な衣玖は河童製のトランシーバーにてエスカルゴに連絡を入れた。そこで彼が、帰れないという旨を伝えると、残念そうにはしていたが了承してくれたようだ。スピーカーの向こう側で、娘が駄々を捏ねているのがよく聞こえてきた。彼の娘、魅玖ちゃんには悪い事をした。できるだけ、早めに会わせてあげよう。
運命の6日目。やはりと言うべきか、鈴仙が来たらしい。レミィ含む紅魔館の皆は、彼女を迎え撃つことはしなかった。私の味方をするのをやめたワケではない。それほどまでに、鈴仙の隠密行動が完璧だったのだ。
突然の討ち入りには対応できず、双子と小悪魔は容易く捕縛された上、鈴仙は丁度彼とイチャイチャしていた私の部屋の前までやってきた。
「パチュリー!ここ開けなさい!中にエスカルゴと居るのは分かってるの!今だったら軽いお仕置きで済ませてあげるから、早く開けて!」
ドンドンと扉を叩きながら叫ぶ。普通の縄なら、人外の力で容易く千切れそうなものだが、彼女達がそうしないとなると、
こうなったら私が出て戦うしかない。下手に籠城なんかして、鈴仙の帰りを心配した巫月ちゃんまで攻めてきたら大変なことになる。勝てない。
「エスカルゴ。鈴仙が来たわ。待ってて」
「……わかった」
「会いたいって顔してるわね?」
「っ……」
「いいわ、会わせてあげる。夢の中でね」
眠らせた。とりあえずエスカルゴはこれでいい。
意を決して、部屋を出ることにした。当然だが、バカ正直に扉から出るのではなく、瞬間移動で出るのである。扉から出たら侵入されるだろうし、まずエスカルゴを見られるので論外だ。
「さっさと出てきなさ────」
「私はここよ」
「……ええ、わかってる。扉の向こうの波長が、1つ消えたもの。ねぇ、パチュリー。こんな事をして、あなたは何がしたいの?彼のハーレムの邪魔をして楽しい?」
「楽しくはないわね、全く。正直、申し訳ないとも思い始めた。でももう少しだけ彼と居ても、バチは当たらないでしょ?」
「ええ、そうね。バチは当たらないかもしれない。でも、ほぼ確実に皆の怒りを買ってるわよ。霊夢と霊愛ちゃんを負かしたパチュリーに私が勝てるとは思えないけど……、でも、私がやるしかないからね。覚悟しなさい!」
「……昨日と一昨日は戦いも無く平和だったから……魔力も満タンよ」
「!」
3日目の戦いによる消費は、丸一日で補うことは叶わなかった。でも、早苗と諏訪子、衣玖がここに攻めてこなかったお陰で、今の私が在る。皮肉にもその3人のお陰で今もこの場に立てている。
「戦いを持ち込むあなたは私にとって平和を脅かす障害よ。退治してあげる」
「どの口が言うの?ハーレムの平和を脅かしているあなたの方が私達全員にとって障害よ。そこ勘違いしないことね」
「……そうね。でも私は我が強い方だから……欲望、貫き通させてもらうわ。それと、最後にこれだけは言っておくわ。……何かを、誰かを賭けての勝負は、ソレを強く欲した方が勝つのよ」
「言っとくけど、私達の方がエスカルゴを欲してるから」
「そう?ま、それはこれから分かることよ。スペルカードは3枚、残機は0で構わないわね?」
「短期決戦ってワケね。それで良いわ!」
「そう、なら良かった……!」
弾幕を発射していく。とりあえず、ガッツリとは狙わず、動きを牽制するように、徐々に徐々にと、焦らずじっくりと攻めていく。霊夢ほどの突破力は鈴仙には無い。負けない為には、緊張は禁物だ。
別に勝とうとしたり当てようとしたりしなくてもイイんだ。先に当たった方が負け。ただそれだけ。
「さっさとキメる!『
「……波状攻撃の方か!離れるが吉、ね」
「──掛かったわね?」
「?」
「今よ!!」
「なッ!?」
背後にスキマが開いた。紫のような形ではなく、まるでエスカルゴのような、綺麗な正円のスキマ。
中から飛び出してきたのは巫月ちゃん……いいや、あと2人居る。魅玖ちゃんと、それからもう1人。私の記憶には居ない子だ。黒髪、垂れたウサ耳娘……アレが緋月ちゃんか。
「ナイス鈴仙!行くよ、2人共!!」
「「うんっ!!」」
「この一撃でキメるよ!!」
「「「姉妹符『電光雷光カーニバル』!!」」」
3人が声を揃えてスペルを発動。まるでプリズムリバー三姉妹みたいなピッタリさだ。
大量の落雷、大量の細いレーザー、そして大量のホーミング弾────雷三姉妹が力を合わせると、こんなにも……こんなにも厄介な攻撃になるのか。
鈴仙の波状攻撃と三姉妹の攻撃……鈴仙が弾幕より波状攻撃を選んだのは、挟み撃ちをする為なのだとやっと気付いた。鈴仙の弾幕は特殊だ。ブレた瞬間だけは当たり判定が無くなる。つまり、逃げる隙が生まれるワケだ。挟み撃ちには向かないと言える。だから、広範囲に壁のように広がる波状攻撃を選択したのだ。
「これは……マズイ!月符『サイレントセレナ』!」
「ここだよ2人共、押し切って!」
「「は……はい!!」」
「緋月、レーザー弱めちゃダメだよ!魅玖、もっと精密に操って!あんな隙間を縫うくらいできなきゃ誰にも勝てないよ!!」
「「はいッ!!」」
「トドメは巫月よ!サポートはするからッ……上から狙えるあなたがトドメを刺して!」
「わかってるよ鈴仙!これくらい突破できなくちゃエスカルゴのお嫁さんにはなれないからね!ラストスパート、イクよぉぉ…………!!ハアアァッ!!」
数秒のチャージを経て、落雷の密度が増す。この落雷、どうやら巫月ちゃんの担当らしい。威力は、私のサイレントセレナとほぼ同等……いや、一方的に押し切れる程度の威力。
防ぐことも敵わない。障壁は一度に一方向のみ、クラッシュでも一度しか防げない。度々襲いかかる落雷を防ぐには心許ない。
前方は魅玖ちゃん、緋月ちゃんの弾幕で、後方は鈴仙の波状攻撃。挟み撃ち故にほぼ動けやしない。そして上からは巫月ちゃんの落雷。……詰みだ。
「……あぐッ……」
「よし……当たった!!」
一度でも被弾してしまうと、まるで荒れる大河に引き摺り込まれるように立て続けに被弾する。酷く痺れてしまう。巫月ちゃんはともかく、残り2人はロクに手加減が出来ていない。まだ力が弱いことが幸いしたか。
「……!2人共、やめ!」
巫月ちゃんの指示で妹2人、そして鈴仙も攻撃を中断する。雷撃に被弾してしまった私の身体はもう動かない。
「えっ?待って鈴仙……パチュリーが消える……」
「ええっ!?ちょっ……巫月!?殺したの!?」
「殺すワケない!エスカルゴに嫌われちゃうもん!言っとくけど魅玖と緋月も違うからね!そもそも、私はともかく2人はそんな威力出せないし!」
「私だって違うわよ!?……一体何が……」
部外者に図書館を詮索されても困る。仕方ない。本当は不意討ちしたかったのだが、4人バラバラに動かれる前に私が彼女達の前に出るしかない。
挟み撃ちにならないように、鈴仙の背後に立つ。こうしておけば私達の前には鈴仙、その遥か前方に三姉妹という形になる。
「私はここよ」
「パチュリー!?でもさっきのは…………巫月が使うような幻覚、なの?それにしてはリアルすぎだとは思うけど……」
「……使い勝手がイイわね、全てを隠匿するシェイドの力は」
「シェイド……?」
「忘れた?私は
「────ッ!!」
再度戦闘体勢になる4人。しかし私は、先日床に仕掛けておいた魔法を起動。一斉掃射にて、一息に全員を始末した。
巫月ちゃんも鈴仙も偽物ではないかと疑っていたのだが、どうやら本物らしかった。あそこで偽物を用意しなかったのが、4人の敗因だ。体力の無い私だからと油断していたのだろうが……そんなの、私は対策済みだ。レミィのような圧倒的速度や攻撃力が無くとも、私は私で、ある程度は戦える。
「……ごめんなさい、エスカルゴ……あなたの最愛の娘、巫月ちゃんを傷付けてしまった……。今日はもうあなたを起こさず、このまま寝ることにするわ」
4人をまとめて永遠亭に転移させて、小悪魔達はとりあえず一晩放置しておくとして、疲れた私は、眠りこけるエスカルゴの横で丸くなりながら、深い眠りに堕ちていった。
レイチェルの能力の由来はご存知レミリアの運命を操る程度の能力ですが、元ネタはデスノートです。
デスノートは物理的に不可能な死因や行動は実現が不可能となり、普通の心臓麻痺で死にます。
可能な範囲でなら可能、不可能なら不可能な所から想を得ました。
元ネタはもう1つありますが、そこはいずれ。