「……エスカルゴがパチュリーと同じ魔法を使う……つまりエスカルゴも、魔力さえ身に付ければ、先日パチュリーが見せてきたような魔法を使ってくるんだろうか……」
魔理沙は先日パチュリーに挑まれた弾幕ごっこを思い返していた。パチュリーが彼と同じ魔法を使い彼もパチュリーと同じ魔法を使えるという、まさにお互いに補強し合う関係らしかった。
それにより、元々とてつもなく強大な力の持ち主だったパチュリーが更に強大となっていて、それに打ち負けた魔理沙は、もう二度と勝てないのではと思い始めていた。
魅魔の指導によってかマスパの火力も目に見えて向上しているのだが、どうもそれだけでは足りないような気がしてきている。
そこで魔理沙は、同じ魔法の森に住まうアリスの元へ相談に行ってみる事にした。
◆
「……でさぁ、パチュリーのヤツ、マスパを尽く私に返してきたり……真似したりしてきてさぁ。しかも、威力は私のより上で…………負けちまったんだ」
「ふぅん、それは大変ねぇ」
「軽いなぁ……他人事だと思ってさぁ」
「他人事だもの」
「そうだけどさ……。そういやアリス、なんか最近、魔法の調子が良くなってないか?」
「そう……?自覚は無いけど……何でそう思うの?」
「だってさ、自律人形を作るのが夢だったんだろ?あと巨大化。最近になって両方叶えたじゃんか」
「ああ、それは────」
アリスは、自律人形を開発できた経緯を話した。魔界に居る母からヒントを得たこと、エスカルゴに手伝ってもらい精液を採取して使用したこと……。
魔理沙は、彼女の魔法が上手くいっている事にもライバル認定しているエスカルゴが関わっていると知り、どこか複雑な気分になってしまった。
「……凄いな、アリス……。いつの間にか凄い成長を遂げてやがる……」
「何よ、それはあなたもじゃない」
「……私なんて全然だ。どうすればもっともっと成長できるのかも分からなくてな……」
「ふぅん……?師匠もいるのに贅沢な悩みだこと」
「贅沢って、お前なぁ……。確かに、魅魔様のお陰で成長はできてる、そこは分かってるんだが……」
「勝てなきゃ意味が無いじゃないか────とでも言うのかしら。エスカルゴにでも頼んでみたら?」
「ハハッ、なんでアイツに……」
第一、エスカルゴだって魔法を教わっている立場じゃないか、と笑い飛ばしたものの、魔理沙だって本当はよく分かっていた。パチュリーが以前よりも強くなり、強大な魔法を使うようになったのもまた彼の影響だということを。
「さぁ、ただの勘よ。あの子と関係でも持てば成長できたりしてね。思えば、私が成長できたのって、あの子と関係を持ってからだったし……」
「かッ、関係を持つってのは……アレか?その……」
「そう、肉体関係ね。まぁエスカルゴが魔理沙と……なんて許さないけどね。お姉ちゃんとして」
「ハハ……ってオイ、アリス、お前までエスカルゴとそういう関係だったのかっ!?義理とはいえ姉と弟なんだろう!?」
「レミリアとエスカルゴも義姉弟よ。あっちなんて子供までいるんだから、私となんて遊びよ、遊び」
「遊びってオイオイ……。だけど『遊び』で成長するなら、儲けもんだよな……」
「……魔理沙?ダメよ?エスカルゴと『遊ぶ』のは。魔理沙にはもっと相応しい人が居るんだから」
「お、おぉ?そ、そうかな……へへっ……」
「そうよっ!そ、そう……例えば私……とかっ……?」
「……あー、その…………アリスは可愛いと思うけど……すまん。女の子は……対象外でな……。友達だったらいいぜ?今まで通りだけど……」
「……フフッ、冗談よ?なに本気顔になってるのよ?可愛い顔しちゃって♪」
「んなっ……!?冗談かよっ、ビビったなぁ。やっぱエスカルゴの姉だなぁ、私をドキドキさせるなんて全くよぉ……」
「えへへ……」
「…………」
魔理沙には、誤魔化してはいるものの、アリスがどさくさに紛れて告白してきたように思えた。でも同性はそういう目で見れないので、少し申し訳なく思いつつ断ってしまったのである。
居心地が悪くなったように感じた魔理沙は、急遽逃げるように帰ってしまった。
「はぁ。アリスのアレ本気だよな。多分だけど……。いやでも同性は無理だよ……すまねぇアリス……」
とか呟きながらベッドでゴロゴロ転がるものの、鬱屈した気分は中々晴れてくれない。気晴らしにと魔法の研究に打ち込むものの、気が散ってしまって仕方ない。
研究以上に打ち込めるものとなると、もはや1つだけだった。
魔理沙は紅魔館に赴き、相変わらず図書館に居たエスカルゴに勝負を挑み……パチュリーの前だからと普段以上にやる気を出したエスカルゴに久しぶりに負けた。
「あークソ、デタラメなヤツめ……そんなにやる気が出るもんなのか……?」
「そうだなぁ。パチュリーも見てるし、これまでの総まとめ……的な?」
「ほーん……」
「終わったら帰りなさいよ。まだ、エスカルゴには教える事があるし」
「ヘヘッ……そうかい。でも今日だけはエスカルゴを借りてくぜ!」
「わっ!?」
「こら、魔理沙ッ!!」
魔理沙は、二度連続で瞬間移動をした。一度目はエスカルゴのそばに行く為、二度目は彼の腕を掴み逃走する為。
行き先は当然自宅。しかし、パチュリーにも思うところがあったのか、何故か追跡して来なかった。こうして魔理沙は、突発的ではあるがエスカルゴを連れ込むことに成功した。
◆
「オイオイ魔理沙ぁ……なんだって俺を連れ込んだりするんだよ?帰るぞ?」
「まぁ待て、話がある。お茶淹れてくるから部屋で大人しく待っててくれ」
「ったく……」
突然連れて来られた俺は困惑しかない。一体全体何を思ってこんな行動に出たのか、それこそ、話を聞かなければ納得のしようも無い。パチュリーとの時間を邪魔され、少しイライラが募ってきた。
やがて魔理沙は、お茶とクッキーを持ってきて、早速本題に入った。
「ところでなんだが、お前の義姉……アリスが、私に告白してきてな」
「ッ!?お、おう……遂にか……」
「『遂に』ってことは……お前、知ってたんだな?」
「ああ、まぁね」
「……やっぱ本気、だったんだな」
「……冗談だと思ったのか?姉ちゃん、聞き手に冗談だと思われるような告白の仕方はしないと思うが」
「違うんだ、私も本気だと思ったんだ。でも……私はアイツの事、そういう目で見れなくてな。だから、友達ならってことで…………断ったんだ」
「…………魔理沙に同性愛のケは無い、か」
「当たり前だぜ!……あッ、いや、当たり前ってのは違うな……それじゃまるでアリスが当たり前じゃないみたいだ……スマン忘れてくれ」
「うん。そうだよ。訂正しなかったら殴ってたかもしれない。ウソだけど」
「ハハ……。なぁ、エスカルゴよ」
「ん?」
「私は……どうすれば良かったんだ……?ああやって断った事で、壁が出来てしまったかもしれん。私はこれまで通り接せる自信はあるよ、だけどアリスが私を避けるようになったりとかしたらそれは嫌だ。とは言ってもさ……恋愛的な意味で好きでもない人と付き合うなんて、それはそれで、なんか違うような気がして……」
「難しいトコだよな。姉ちゃんの方は俺がなんとかケアしとくよ。魔理沙は気にすんな。想いのままに言った言葉ならさ、姉ちゃんにも伝わるだろうし、分かってくれるだろうからさ」
「……ああ。ホントにスマン。急にこんな話聞かせて悪いな、今度なんか奢るよ」
「んじゃ里で焼肉定食でも奢ってもらおうかね」
「お前ほど入り浸ってる妖怪も珍しいよなぁ、私や霊夢でさえあまり行かなくなったのに……」
「そうかな。……じゃ、俺はこの辺で────」
早速姉ちゃんの家に行こうと、席を立とうとした俺の手を掴む魔理沙。彼女の顔を見てみると何やら赤い顔をしている。
「話ってのは……もう1つあってな……」
「?」
「その……今だけでもいいからさ、私と……
「タイミング悪っ。酷いタイミングすぎる」
「分かってるよ。分かってるんだけど……」
「で……
「身体だけ……ダメか……?アリスもパチュリーも、お前と……関係を持つようになってから、魔法の精度というか強さというか……なんというかさ、魔法使いとして強くなったんだ。だからきっとお前とヤレば私も強くなれるんじゃないかと……思ってな……?」
「強くなる為に身体を重ねるっての?冗談は程々にしとけよ。第一、俺とヤッてもそんな効果はねぇし孕む危険もある。別に俺は構わないけどな?セフレだろうと性奴隷だろうとヤレればどーでもいーわ。俺からすりゃ、ただ気持ち良くなれるだけだから。けど、魔理沙が大事な何かを失うような気がする。違うか?」
「ッ……」
「処女じゃない。倫理観っつーか価値観っつーか?そういうモンを失いそうでな。好きな人が居りゃ、そいつに頼めば?」
「居ないぜ、そんなの……」
「じゃあこれから好きな人ができるかもな」
「これからって何だよ!じゃあ私はそれまでずっと周りの奴から遅れを取らなきゃいけないのかっ!?そんなの真っ平御免だからな!!」
「だからってさ、今急いでセックスして何になるんだっつー話だ。想い合う奴がヤッてこそ強くなるんじゃねぇかな?パチュリーともそうだし、姉ちゃんとも家族愛的な感じで繋がってると思っているよ、俺は。姉ちゃんも俺のこと『家族として好き』って言ってくれてるし。だから義姉弟でもヤッてる感じだしな」
「でも、お前だって……お前だってさ、天子や衣玖、あとは初めての時のミスティアと響子……想い合ってなくてもそういう事してるじゃないか!同じだよ!だから……頼む!2人でヤリたい!」
「…………避妊はするぞ」
「響子達とヤる時、避妊してるのか。意外だ……」
「してねェな」
「してないんなら、私ともそれでいいよ。孕んだらその時はその時だし」
「……わかった。言っとくけどさ、気に入ったら次は俺から頼むかもしんねーぞ?……ヤリたいって」
「う……わ、わかったよ。私だって、タダでお願いを聞いてもらえるとはハナから思っちゃいないしな。お前、一応悪魔だし。まぁそれくらいの事は喜んで許容するだろうさ」
「なら、いいけど」
「じゃ、シャワー浴びてくるから……待っててくれ。寝室でな」
「俺もシャワー浴びたいからここで待ってるよ」
「じゃ、じゃあさ、一緒に……いや、何でもない!」
ドタバタと走っていく魔理沙。彼女に限って俺を好いているというのは絶対に有り得ないので、ほぼ間違いなく今の誘いは一時の気の迷いだ。とはいえあまり嫌な感じはしない。
「……まぁ、良いってんならヤらせてもらおうかな。断る理由もねェし……急ぎの用事も特に無いもんな。うん、無かった気がする。にしてもあの魔理沙は……気の迷い、だよな……?」
────この時点の俺には、知る由も無かった。まさか魔理沙とあんな関係になってしまうなんて。