「ギギャアァアアア……!?ゆ、ゆるひへ、ぐえ……だのむ゙がら…………かッ、かね、は、いくらでもッ、あるがらぁぁ……」
「うるさいなぁ、殺さないでおいてやってんだから黙ってろ。金だって俺の方が持ってるし。……さて、魔理沙。どう殺そうか?」
腕の骨も念入りに折る。治癒させてはへし折り、治癒させてはへし折るという拷問紛いな遊びをする中で、魔理沙にそう問うてみる。
すると魔理沙は、トーンを落としたまま、静かに呟く。
「……やっぱり私がケリを付けたい……。お前の手を汚させるワケには……」
「ま〜だそんな事を言ってるぅ。そりゃ他人の俺を巻き込みたくはないだろうが、親殺しはダメだぞ。他人だからこそ始末をつけられるんだからさー」
「じゃあ…………最も苦しむ方法で……ッ」
「ア……ガ、ギ……ゥ…………やめ゙、で……ぐれ゙……」
「黙れ、クソ親父!魔法は私の人生だ!魔法や私をバカにするに飽き足らず、汚点だの何だのと、散々バカにしてくれたな!?許さない……ッ!!」
「ゆるひて……ひぃいいいっ……」
「オメー50代だよなぁ?……魔理沙の年齢も考えると60代くらいの可能性もあるか。年齢の割には、結構若い顔してんだなぁ。しかもこの筋肉、まさか身体鍛えてんの?それも、もしかして娘を殺す為?アホくせ〜なぁ、テメェみてぇな屑野郎は大人しく死に支度でもして死に場所探してろっつーんだよ」
「あ……は、はひ……ごべんなざい……も、もぉ、何もしません……からぁ……ゆ、赦じで……」
バキバキ砕けた四肢で何とか起き上がろうとする親父、しかしピクピクと動くだけで、芋虫のように地面を這うことしかできていない。
「あ、そういやあと1発くらい弾丸残ってるんじゃないか?あん時のお前、そんな顔してたよな?」
「!!……やっ、やめろっ……俺に、触るなぁ!!」
「あー、見つけた。ちゃっかり懐に隠してやんの。ふんふん、安全装置を外して、撃鉄を起こす……と。こうなのか?な、お手本で撃って見せろよ、右腕は治してやっからよ」
「「え」」
「おいエスカルゴ、なんで銃をッ……」
「ほら撃ってみろよ、目ェ瞑っててやるから」
「ば、バカがぁ!!マジで撃つぞおらぁぁ!目から脳天撃ち抜いてやる゙ぁぁ!!」
「寝転んだままで撃てるなら撃てよ、さっさとよ」
「へ、へへへへっ、バカなヤツだ!死ねぇぇ!!」
ドンッと凄まじい音が荒野に響く。しかしそんな音よりも先に弾丸が迫ってくる。なんて事はない、首を傾げるだけで目を瞑っていても回避は可能だ。
右耳に掠ってしまったが、少し血が流れる程度で直ぐに治癒した。
「は、な、何でっ……」
「バーカ。射線から逃れるくらい余裕だっつーの。でもお前ホントバカだよなぁ、俺は目を瞑ってたんだから、残り1発で魔理沙を撃てばよかったのに。ま、だとしても手で止められるんだけどね、多分」
「あ……あぁあっ…………」
「ったく……危ないじゃないか、エスカルゴめ……。私を撃たせるつもりだったのか?」
「フツー、この状況なら魔理沙の方を撃つと思うんだけどなぁ。目の前の事で頭がいっぱいになったんだよな、仕方ない仕方ない♪」
「して……ころして……くれ…………」
「まだ死なせない。もっと
「ゆ、ゆゆ、赦して……」
「ヒヒッ、いい歳した大人がゲロクソ塗れでさぁ。情けねぇと思わねぇの?」
「うぅ……」
「それにしてもお前、よくもまぁ娘への憎悪だけでそこまで頑張れたよな。ある意味尊敬に値するよ。そのドス黒い執念だけな」
「……」
「何、その顔?生きる希望を失ったみてーなさぁ、クソダサいマヌケヅラ晒しやがって。殺されるより自警団に突き出された方がマシだったか?」
「……!あ、ああ……裁かれるなら人間の手で……」
「バカか?人間のテメーが妖怪の魔理沙を裁こうとしたんだろ?そんなら妖怪の俺らが人間のテメーを裁こうともどうでもいいだろが。裁いていいのは、裁かれる覚悟がある奴だけなんだよ、ヌケサクが。ほら、よく言うだろう?『撃っていいのは撃たれる覚悟のあるヤツだけだ』ってよ。それと同じ事さ」
「……」
「魔理沙、何か良い処刑方法は思い付いた?」
「いや……」
「なら、スカフィズムにしよう。こんな所で無駄に時間使ってらんねーわ。遊びはここまでにしよう」
「すか……?なんだ、それは……」
「あなたを脅迫罪とテロ準備罪で訴えます!理由はもちろんお分かりですね?あなたが人間共を脅して恐怖で縛り付け、己の子供を殺しかけたからです!覚悟の準備をしておいて下さい。ちかいうちに訴えます。裁判も起こします。自警団の本拠地にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい!貴方は犯罪者です!世界一汚い土地にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!いいですね!てな感じで裁けると楽なんだがなー……」
「ヒィッ!?」
「……なんだそれ?」
「ワザップジョルノ。知ってる?……ワケないよな」
「スカフィズムもワザップジョルノも知らん」
「ワザップはいいとして、スカフィズムってのは、手足を固定させて、下痢させるくらい蜂蜜や牛乳を飲ませ、手足に塗り込む。あとは汚い場所に放置。そうすりゃあ虫が寄ってくるし、ウジが湧く。腹に溜まってる分だけ餓死もしにくい。虫に食われて、もしくは餓死するまで続く苦しみさ。最長で17日は苦しんだ記録があるそうだぜ。ホントかウソかは知らんが」
「へへっ……そうなのか……!」
「はい蜂蜜。ほれ、牛乳。あと漏斗な。これを口に突っ込んで飲ませるんだ。とりあえずボートを2つ創造して……あーあ、男の血に触れたくねェな……」
手袋を装着し、ボートに親父を乗せ簡単に拘束。手足は通せるようにその太さに合わせて淵を凹ませボート同士も固定する。
「口開けろクソ親父!」
(ふざけんな!虫に食われて死ぬだと!?この俺がそんな惨めな最期を迎えるなんてッ……)
「口を開かないなら歯をへし折ればいいよな!そらくらえ!!」
「〜〜〜〜〜〜ッ!?ングググギギグゲ……モガ……ボガ、グ……ング……」
案外容赦無い魔理沙は、歯をへし折りつつ漏斗を口の中にブチ込む。それから俺が渡した蜂蜜、牛乳などの瓶を真っ逆さまに漏斗に向ける。ドボドボと酷い音を立てて牛乳が流れ込んでいく中、蜂蜜は、ジワジワと漏斗の中でかさを増していく。
合計2L程度飲ませると、流石の親父でも抵抗が殆ど無くなった。死刑執行の時だ。
「さぁ、あとはボートをスキマの向こうに……」
「ウゲッ……何だこの臭いは……凄まじい臭いだ……」
スキマを開くと、ボートのすぐ前に形容しがたい凄まじい臭いを放つ沼地が現れた。水は濁っていて底が見えず、少しでも飲めば……いや触れただけでも病気になりそうな程に汚れていた。
「恐らく、世界一汚い沼地だ。さぁて、誰が親父を送り出そうか?俺で良いよな?」
「私がやる……!トドメは私が!!」
「ヒッ……や、やめろ!やめろ魔理沙!そ、そうだ、魔理沙、店にマジックアイテムを置こう!それを、欲しがっていたよな!?それが無いから家を出たんだよな!な、なぁ魔理沙、戻ってこいっ……!もう、妖怪だろうと何だろうとどうでもいい!た、頼む!命だけはぁ……た、たす、助けてくれえええ……」
「マジックアイテムを置いていなかった?……ああ、確かにそれも一因だ。でも、それだけで家を出て、ましてや、絶縁なんて受け入れるはずが無いだろ。あんなガキの頃に家を追い出されてさ、普通じゃあ生きていけるはずもない環境に、追いやられてさ。私は昔から……魔法に否定的だったアンタが心底嫌いだったよ!」
「た、頼む!!お前しか居ないんだ!俺が死ねば、店はどうなる!?俺の財産目当ての親族ぱかりだ、どうせすぐに店は潰れるぞ!?お前の実家がだ!!それでも良いのか!?」
「何言ってんだ、アンタ。私の実家は霧雨魔法店、ただ1つだぜ」
「──────……」
「もう全てが遅いんだよ。……さらば、私の因縁」
「やめろっ……ま、魔理沙あああああぁぁぁ!!!」
「ショック死で逝けるといいな、魔理沙の親父♪」
「じゃあな、クソ野郎ッ!」
ボートを蹴飛ばして、水面に落とした魔理沙は、これを以て父親と真に決別したのであった。追加で蜂蜜や牛乳を飲ませたりはしない。遠くない未来、きっと虫に食われ病気に蝕まれながら、苦しみつつ餓死するのだろう。
そう思うと、魔理沙も俺も、何故か勝手に笑いが漏れてきてしまうのだった。
◆
魔理沙邸に帰宅後、吐き気を催した彼女の背中を摩りながら、臭いや血の着いた身体を洗う為、2人揃って浴室に居た。
俺としてもエロ目的抜きに風呂に入りたかった。あの臭いは、すぐに洗い流してしまいたかった。
「昨日は本当にごめん……エスカルゴ……。あれだけ必死に私を止めようとしてくれたのに……」
「……」
「少し考えれば分かることだったのに……。あれだけ必死に私を止めたってことは、昨日のアレは確証があっての発言だったんだろ?里によく通うお前だ、どこかでそういう情報を仕入れてもおかしくない。そんなの、少し考えるだけで分かったのにっ……」
「……ああ」
「なのに私は、そんな事すらも考えやしないで酷い事を言ってしまった……。フラれても仕方ない仕打ちだと、自分でも思うよ。……本当に、申し訳ない」
「フるワケないよ。俺は、
「……色々、背負わせちまったな。私の親父は、殆どお前に殺させたようなもんだ……」
「殺してないよ。奴を殺すのはあくまで虫であり、菌であり、自然現象だ。俺も魔理沙も、奴は殺していないんだ。手は綺麗なままだよ。魔理沙はね」
「そ……う、かもな。そう思う事に……しておくよ。お前と私は共犯者みたいなものだがな……」
「ふふ……そうだな。それなりには重いものを背負うことになったかもしれないな。後悔してるか?」
「するワケない。……でも、こんな重いものを一緒に背負ってくれて…………ありがとう……。変わりなんかにはならないけれど……いっぱい、いっぱい、お前を愛するからっ……!これが私、霧雨魔理沙の、一生をかけての恩返しだぜっ……!」
「ありがとう……魔理沙。嬉しい」
「……!」
ぎこちなく笑った魔理沙を抱き締めると、まるで罪の意識から逃げるかのように俺の胸に顔を埋め、強く強く抱き締め返してきた。
俺は内心、あの父親に感謝した。これでやっと、魔理沙が俺のモノになったのだと確信したからだ。こうなるには、あの父親の下衆さが不可欠だった。
「何だか……まるでずっと前から好きだったみたいに惚れちまったよ。……何でだろうな……?」
「さぁ?共通の秘密でも持ってるから、かな?」
「共通の秘密か……。ふふっ、内容がクソでも、案外そんなのは関係無いのかもしれないなっ……♪」
「もう、後戻りができねーとこまで来ちまったぜ。ポイントオブノーリターンってヤツだな。これから長いこと生きていくだろうが、今日のことはマジで後悔すんなよ?俺についてきたこともな」
「もちろん!ずっとついて行ってやるぜっ!」
ギュウウッ……と込められる力を感じて、魔理沙が素直な良い子で良かったと、心の底から強く思った俺であった。
嫌ってはいても殺人によって吐き気を催す魔理沙、可愛いよ……
霧雨の親父さん
幼い頃に母(魔梨沙)を失う。若くして死んだのは魔法を使った代償と考え、魔法やそれ関連の物品、事象、存在を酷く毛嫌いするようになる。
数十年後、娘(魔理沙)が母(魔梨沙)の遺品を、物置部屋から発見。魔法に対し強い興味を示す娘を見て危機感を覚え、以降は厳しく接するように。
(父が厳しい故に、魔理沙は母に懐くようになる)
最愛の妻(魔理沙の母)が死亡。以降、心の拠り所だった母を亡くした魔理沙との衝突が増え、絶縁を言い渡す。
数年前に行われた魔女狩りの後、大幅な人口減少に伴うトラブルを危惧したエスカルゴによって、霧雨魔理沙に関する記憶を消された状態で蘇生される。
その後、年齢を考えて不要な物品は売りに出すなどして、身辺整理を経営と並行して行うように。
その際、嘗ての娘「霧雨魔理沙」の写る写真を発見してしまい、消されたはずの記憶が蘇った。
元々彼が持っていた魔法や妖怪への憎悪は「なんでこれを忘れていたんだ?」という自分への苛立ちや怒りによって増幅され、以前より比べ物にならないほどの憎悪となってしまった。
そんなある日、魔理沙を里で見掛けてしまう。長年変わらぬその姿を見て、魔理沙が、とうとう人間をやめたと察してしまった。
それからは魔理沙を殺す事を人生の目標とし、その憎悪を糧に身体を鍛え始めた。当然、人生の目標が出来たら死後の準備などするはずも無く、金集めや道具の開発、身体を鍛えることにのみ、心血を注ぐようになる。
集めた金で
ある程度の道具や人数を集めたあとで、協力者達に魔理沙の写真を見せ、 見掛けたら教えろと命令。
ホームレス達を協力者にしなかったのは、一般人とホームレスでは腕っぷしに大きな違いがある筈、と考えたから。
そして、家族という「失う物」が有る者の方が駒として色々と使い易く、裏切りの心配も少ないから。
失う物が無い無敵のホームレス達では「裏切らない確信」が無いので、いざという時の家族殺しの為、刃物を持たせ各協力者の家の近くに行かせる程度の扱いに留めておいた。
因みに、妖怪は嫌いだが霖之助は気に入っている。
人の血が流れる妖怪、つまり「半妖」だから。