※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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妖怪の山で捕まえて

 ある日、俺は頭を悩ませていた。強くなるには、これ以上俺はどうすればいいのかと。そこでハッと思い付いた。

 月で依姫と戦った時、それからレミリア達が月で依姫と戦った時。どちらも、依姫は神の力を借りて戦った。しかも八百万の神全ての力を使えるとか。それは、それだけ神々との繋がりがあるから可能な芸当だ。

 そして依姫は圧倒的な強さを誇っている。それは俺が能力で兎にも角にもゴリ押さなければどうにもならないレベルの強さだった。

 そこで俺は思い付いた。俺も更に神々と繋がりを持てば良いのではないかと。

 ただし、諏訪子や建御雷からの紹介は受けない。劉備が諸葛亮を軍師に迎える際には、彼の住む庵へ自ら赴き、三顧の礼を以て迎えたと言われている。つまり端的に言うと「スカウトしたいなら自分から動こう」という事だ。俺から向かった方が、相手もこちらの誠意を感じ取ってくれるだろう。

 そして次に考えたのは、誰を迎えるか?である。静葉や穣子はこの季節どこに居るのか分からない。他にも野良神と言える神は居るそうだが、やはり、迎えるならそれなりに面識のある神がいいだろう。

 そうなってくると、次第に標的は絞られてくる。大会でも顔を合わせ、実戦では色々とトリッキーな能力の使い方が出来そうな、あの神様────。

 

「よう、雛」

 

「あら英雄さん、こんにちは」

 

「せめて名前で呼んでくれ。……今、ちょっといい?時間ある?」

 

「ええ、いつでも。どうしたの?」

 

「雛はさ……俺ん事、どう思ってる?」

 

「え……?」

 

「いや、変な意味じゃなくてフツーのな?フツーの意味だから!」

 

「そうね、特別悪い感情も良い感情も無いけれど。それがどうかした?……まさか遂に私へのアプローチ開始とか?」

 

「違うって!なんでそーなんのかなぁ……いやまぁ、勘違いされるような事をしてきたからか。えーと、なんて言えば良いのか分からないが……雛、俺に力を貸してくれないか?俺がもっと強くなるには、他の誰かから力を借りないとダメだと思うんだ」

 

「えぇっ!?無理無理、私なんかじゃあなたの役に立てないわよ……寧ろ、足を引っ張っちゃうと思う。それじゃあダメだわ……」

 

「雛が力を貸してくれるってんなら、俺が雛の力を最大限有効活用してみせる。応用も効かせてやる。頼むよ、俺には雛が必要なんだ……っ!」

 

「うん、とりあえず最後の一文は各方面から誤解を招くからやめた方がいいわね」

 

「え、そうなの……?」

 

「……でも……そうねぇ……。じゃあ、鬼ごっこで私を捕まえてみて♪」

 

「へ?」

 

「ステージはこの妖怪の山よ。空を飛んだり、地面とかに潜ったり、何かの施設に入るのは禁止。外を歩く、走るだけ。それで、私を捕まえてみて♪」

 

「……その意図は?」

 

「私は厄を振り撒いて逃げるわ。あなたが私の厄に耐えられないのなら、私の事は捕まえられないし、力も貸してあげない。言わば、これは試練よ。私の力を貸すに値するか……いや、なんか違うわね。私の力を貸しても大丈夫かを見定める為の試験!そう、これよ!」

 

「成程……でもどうして試練なんて?」

 

「だって、あなたの言う『力を貸す』っていうのは諏訪子さんや神奈子さん、建御雷さんと同じような関係になる事なんでしょう?この前の大会で霊夢が私の力を欲したのとはワケが違うじゃないの」

 

「言わずとも察してくれたのか」

 

「これでも神だもの、それくらい出来なきゃね」

 

「まぁね。因みに……制限時間は?俺が動くまで何分数えればいい?」

 

「制限時間は日没まで。何分……うーん、3分かな?でも相手は吸血鬼だものねぇ……5分でどうかしら」

 

「OK、把握。それじゃ、300秒数えるよ。さっさと捕まえてみせる」

 

「うん、できるだけそうしてね。この山で私が厄を振り撒くという事は、山全体が厄塗れになるって事だからね。天狗や河童、他の種族にも迷惑がかかるだろうから」

 

「ウゲッ、思ったよりキツイ……のか?」

 

「フフッ、気付くのが遅いわ♪……捕まえられたら、私を好きにしても良いかもしれないから、頑張って捕まえてね♡」

 

「!?」

 

「よーい、スタート!私を捕まえてみなさい♪」

 

【挿絵表示】

 

 

「い、いーち、にーぃ……」

 

 スタートの合図をするなり、雛は軽く走って山のどこかへ紛れてしまう。突出して強いとは言えない彼女の気配は、そこそこ接近しなくては探れない。それなりに長丁場になる事を覚悟しなくては。

 

「……よォし、動くかな」

 

 律儀にもキチンと300秒を数えた俺は、満を持して動き出す。鬼ごっこで鬼から逃げるという時は、どのようにして逃げるだろう?きっと鬼の反対側に逃げるのが定石だ。

 それに当て嵌めて考えるなら、雛は山の裏手へと向かったと考えるのが自然だろう。

 俺は木に登って、木の上を跳んで探す事にした。飛べないのなら跳ぶまでである。身体能力に優れたこの肉体だからこそ、多少の無理も利く。

 するとそんな俺の近くを、哨戒中と思われる白狼天狗が通りかかった。さっさと終わらせる為ならと俺はそいつを呼び止め、聞き込みを開始した。

 

「なぁオイ、この近くで雛ちゃん見なかったか?」

 

「……厄神様でしょうか?彼女でしたら、山の裏手へ向かっていくのを見ましたが……」

 

「そっか、ならいい。サンキュ」

 

「いえ。お気を付けて」

 

「そっちこそな」

 

 軽く手を挙げて再び木の上を跳躍して進む。と、そんな俺にも遂に厄が降り掛かってきた。太い所に着地したはずなのだが、それがバッキリと折れた。まさか折れるとは思っていなかった俺は、呆気なく地面に落ちてしまった。

 土埃を払い立ち上がったはいいが、次の瞬間には泥濘にハマってしまっていた。生暖かくてヌルヌルしている気持ちの悪い感覚が、足を包んでいく。

 転がるようにそれから脱した後は、玄武の沢へと猛ダッシュ。滝行でもするかのように滝に飛び込み全身を綺麗にした後は、小さな焚き火で全身を乾燥させ、数分置いてリスタートする。

 日没まで8時間程度はある。余裕すぎる。

 

「気配も探れない上、空も飛べないし、鼻もろくに働かねェ。厄介なことこの上ない状況だな、オイ。女子1人探すのがこんなに大変だなんてな……。風邪引いたらどうしよう……」

 

 鼻が利かないというのは、哨戒中と思われる白狼天狗の獣っぽい匂いが周囲にチラホラあるからだ。認めたくない事だが、匂いの強さで見れば、女子の匂いより獣の匂いの方が強い。遠距離なら尚更だ。だから、ステージがこの山である限り、雛を匂いで探すのも不可能だという事だ。

 

「…………おっ!」

 

 相変わらず枝を伝い跳んで移動していると、裏でとうとう雛を発見した。俺が作ったクレーターは、数年という時間をかけて湖となっていて、雛はその湖の畔に座り込んでいた。

 まるで「見つかるワケがない」と思っていそうな様子だが、流石に何の警戒もしていないなんて事は無く、俺が近付くなりパッと立ち上がると、何やらしたり顔で言う。

 

「来たわね。ここからが本番よ、捕まえてみて♪」

 

「言われなくてもッ!」

 

 一度地面を蹴れば追いつける。それだけで良い。俺の身体能力なら全力を出さずとも捕まえられる。たったの1秒も掛からない。

 そのはず、だったのに。

 

「うあっ……!?」

 

「あら♪」

 

 足元の雪で足を滑らせ、顔面から地面に衝突してしまった。俺が半袖になるほど暑いのに、どうしてこんな所に雪が────。

 俺は年中スニーカーを履いている。スニーカーで固まった雪を強く、しかも前傾姿勢で踏めば、転倒してしまうのは明々白々だ。

 

「不運だったわね。その辺は山の陰になってるから雪も解けにくいのよ。やっと解けたかと思えば夜にまた凍ってしまうから、さぞ滑るでしょうねー♡」

 

「くっ、痛ェ……鼻血出た……」

 

 今の俺は、さながらナイフを避けて顔面から岩に飛び込んでしまったドッピオみたいな顔面になっているだろう。鼻血は出てくるし、この痛みからしてきっと鼻の骨も折れている。酷いものだ。

 

「降参するなら今のうちよ?」

 

「誰が降参するかっての……ますますその力、欲しくなったよ!捕まえてやるァッ!」

 

「ふふっ、鬼さんこちら、手の鳴る方へ♪」

 

「余裕こいてられンのも今のうち……ウボァーッ!?う、目に砂がッ……うぎぎ……」

 

 突如発生した激しい天狗風。よりによって、ピンポイントで今立っている地点に吹き降ろしてきた。ふざけている。こんなに雛にとって都合のいい事があるというのか。まるで、自分を幸運にしまくってレミリアと戦った時のてゐみたいだ。

 目が開いた時には、雛はもう姿を消していた。

 

「くっそぉ〜……山ん中じゃあ反響定位もロクに機能しねぇからな……スキマ使いまくって探すしか方法は無いのか……?鬼ごっこがこんな難しいなんてなぁ、もう既に負けた気分だっての……」

 

 しかし決して負けはしない。絶対に雛を捕まえ、勝ってみせる。そして好きにして(・・・・・)みせる。その方が絶対に色々と面白いだろうし、彼女から力も貸してもらいやすくなるはずだ。

 神との繋がりが強くなればなるほどより強い力が使える。今はへカーティアに上書きされたとはいえ建御雷からは目の色が変わるほどに強い力を借りているし、今ではへカーティアからもそれくらい強い力を借りている。

 母さんは強すぎる能力であるが故に頼んだ時のみ借りるようにしているが、雛なら彼女さえ良ければ常時でも問題は無いだろう。

 

「山を荒らす(弾幕を使う)のは最終手段だな。よし……!」

 

 

 ◆

 

 

 適当に山を疾走していると、数分かけて漸く雛を発見した。もっと、気を引き締めなくては。彼女を見つけてからが「厄」本番だ。

 

「クッソォォォ、全然追い付けねええええあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」

 

「アハハハッ、まだまだね♪」

 

「飛びたいっ……飛ばせてくれええええ……」

 

「だ〜め♡」

 

 山の裾にて、軽快にスキップする雛を全力疾走で追いかける俺。足元は雪解け水のせいでドロドロで足が取られ、全力疾走のつもりでも全力で走れない上に、この辺は木もまばらなので、木を伝って移動する事すらも叶わない。

 もしジャンプしようものなら、踏ん張った瞬間に足が滑り、跳ぼうとした瞬間に顔面から転倒する。これは確定事項だ。さっきもそれで怪我をした。

 

「クソォ、人間程度の速力じゃあねぇかッ!逃げるルート変えろよおおおお!!」

 

「それはイヤよー♡」

 

「……こうなったら…………『紅蓮地獄(ハドマ)』ッッ!!」

 

「地面が凍っていく……!?血迷ったのかしら……?これじゃあなたも……って、えええええっ!?」

 

「アッハッハッハァ!やっぱ滑るのは速いよなぁ!これならすぐにでも追い付けるぞ……!幻想郷最速のスピードスケーターは俺だぁ!!」

 

「──なら森の中、ね」

 

「!」

 

「あなたが能力を使う事なんて、私は予測済みよ。気付かなかった?私がどこに向かっているか……」

 

「いやいや、魔法の森は反則だろォ!?山の範囲外じゃあないか!」

 

「森の一角は『山の裾』に入ってる!つまり森でも一部は範囲内なのよ!じゃあねぇ〜♡」

 

 毎冬、霧の湖に張った氷でスケート遊びをしてるからこそ、急に追跡方法を切り替えても対応が可能である。凸凹な地面で不意に滑るのではなく、整地した上で意図的に滑るのであれば、スニーカーでもスケート靴でも好きに滑れる。ただし、スケート靴ならばより速度が出せるというだけで。

 

「森に入る前に捕まえるさ……あと5秒でな……」

 

(私を痺れさせない辺り、彼も楽しんでるのねぇ。でも、それももう終わり。森に入れば更なる厄災があなたを襲う事になる……!むしろ山に入ってからが鬼ごっこのクライマックス!)

 

 滑りながら強く羽ばたく。地に足をつけていれば飛翔判定にはならない。あくまで速く滑るだけだ。プールで泳ぐときも、伏し浮きをして羽ばたけば、超高速で泳げるのと同じ事である。

 前のめりに倒れそうになったが、どうにか身体を起こして耐える。すると目の前には、彼女の背中が迫っている。この手を伸ばせば、直ぐに触れる事ができた。

 

「えっ────」

 

「つーかまぁえた♡」

 

「……なぁんだ、もう捕まっ……きゃあっ!」

 

 減速した彼女に触れれば、減速無しで滑りまくる俺が彼女に衝突してしまうのは自明の理だ。そしてそのまま目の前の木にぶつかりそうになるが、俺は滑りながら彼女を抱き上げ、衝突寸前で飛翔する。彼女を捕まえたのであればもう飛んでも大丈夫だ。

 

「ふぅ……。あぶねーなぁ、もう少しで俺と木で雛のサンドイッチが作られちゃうところだったな」

 

「ふふ、そうね。あーあ、捕まっちゃった〜……」

 

「嫌だってんなら別にイイんだぜ?断っても。強制なんかじゃないし、ただの『お願い』だからさ」

 

「ううん、いいの。サポートさせて。誰かに必要とされるのって……やっぱり悪い気はしないしね♪」

 

「……そっか。それじゃ……捕まえたことだし、雛を好きにしてもいいんだよな?」

 

「………………あっ」

 

「忘れたとは言わせねぇぜ?」

 

「う、うーん……何するの……?」

 

「ヤろうよ、雛。セックス」

 

「えっ……えええええええええっっ!?」

 

 雛にとっては意外なセリフだったのか、性交渉を持ちかけてみると一気に顔を赤くさせて可愛らしく驚いた。俺としては、雛が「好きにしてもいい」と言ったその瞬間から期待していたので、寧ろ彼女が性行為を想定していなかったのが少し意外だった。

 けれども俺は、何としても彼女とヤッてみせる。身体でも繋がれば、より強い繋がりを持てるから。




サクラメさん(@ahirusakuretu)の雛ちゃんです。
あの方のイラストについてはpixivのプロフにて二次使用を許可されていますね。
いやぁ可愛い……身体のラインがガチですこ……。
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