※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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新章突入。
準最強を目指す為に、エスカルゴ本格始動──!?
霊夢には勝てたないまま世界二を目指す!




第9章:叛逆編
侵略!吸血鬼娘


 その日、幻想郷の平和な日常は突如として終焉を迎えた。博麗大結界に穴を穿った何者かが、多大な軍勢を率いて侵略してきたのだ。

 侵入地点は妖怪の山の山頂。傍から見れば噴煙の中から正体不明の軍勢が現れたように見える。

 妖怪の山でのパニック具合は、言わずもがな。

 河童、山童は住処に閉じ篭り光学迷彩で住処諸共姿を隠し、野良の神もそれに肖っている。守矢神社だけは独立した避難所のようになっていて、その他種族の者達も神社に避難し始めていた。

 第一発見者は犬走椛。天魔の直属の部下となってからも修行の合間に見回りをしているのだが、その最中に、山頂に謎の軍勢を発見したのだった。

 それからの椛の行動は迅速だった。天魔に報告、部下を使って山全体に警備を固めさせて、それから旦那であり同僚であるヒビキや他の同僚にも伝え、今にも山の範囲外へ飛び出そうと蠢く軍勢を、天狗ほぼ総動員で食い止めている。

 それでも、あまりの猛攻に軍勢の一部を逃がしてしまう事もチラホラ……。少しずつではあるものの、確実に山の外に広がり始めていた。

 

 

 ◆

 

 

「ッ……なに?この、妙な気配……」

 

「結界が攻撃されてる……ような?」

 

 博麗神社にて、博麗姉妹が妙な気配を感じ取ったその瞬間、霊夢は、博麗大結界に起きた異常事態を感知した。すぐさま異変と断定し、準備を始めた。

 

「アンタ達!すぐに動け!異変発生よ!」

 

「「……!わかった!」」

 

「アンタ達は里に行って里を守ってなさい!人間は誰一人死なすんじゃないわよッ!!私が動くような事態にはしないように!近付く敵は極力半殺しに、ダメなら殺す!いいわね!」

 

 有無を言わさず霊夢は飛び出す。その頃には謎の軍勢は羽虫のようにワラワラと広がりつつあった。

 自分だけではどうにもならないと悟った霊夢は、その気配から敵を断定し、協力者を探す事にした。

 

「まぁ、レミリアなら気付いてるんでしょうけど!全く、レミリアに頼る事になるなんて……!」

 

 

 ◆

 

 

「……嫌な気配ね……」

 

「あら、パチェも感じた?パチェで気配を感じるのだから、相当なものね」

 

「私、鈍感じゃないのだけれど。……どうするのよ?この気配、悪魔よ」

 

「それも我々の同族……吸血鬼ね」

 

「…………第二次吸血鬼異変ってとこかしら?」

 

「さぁね。にしても、真っ昼間から侵略ですって?気に入らないわね」

 

「何が?」

 

「日光を克服している事が、よ。私やフラン、エスカルゴは、彼の友達の焔くんのペンダントによって日光を克服している。咲夜達はパチェの魔法。他の彼の子供達は確か神綺の能力よね。けれど、日光を克服するような魔法はパチェだからこそのものよ」

 

「どうしたのレミィ、急に褒めるなんて」

 

「外の吸血鬼や魔法使い程度で、種族特有の弱点を克服できるワケがないのよ。だというのに、昼間にこの気配の数……奴らひょっとしてアレかもね?」

 

「まさかッ……そんなの実在するとでも言うの?」

 

「日光を克服せし吸血鬼……デイウォーカー。大方、それが今回の敵ね」

 

「何ですって……ッ!?」

 

「そう考えるしかないわ。……咲夜、弦月姫ちゃん」

 

「「ここに」」

 

 レミリアが手を叩くと、時を止めてメイド母娘が姿を現す。いつもの事なのでパチュリーはもう特に驚きもしなかった。

 2人も異様な気配を感じ取っていたので、今回はそれ関連の呼び出しなのだろうと、言葉を交わさずとも密かに感じ取っていた。

 

「パチェ達は図書館の守備を。美鈴、天子、弦月姫ちゃんには紅魔館の外側を守備してもらう。あとで弦月姫ちゃんは彼女達にそのように指示しなさい。フラン、レイチェルには館の中を守ってもらうわ。そちらも弦月姫ちゃんが指示しなさいね。いちいち私が伝えている時間は無い。咲夜は私と来なさい。そろそろ来るわよ、アイツが。私達を誘いにね」

 

「霊夢、ですか」

 

「そう。自身が悪魔と化しても、悪魔に関する知識なんてものは皆無に等しい。あるとしたらそれは、エスカルゴから聞いただけ。けれどエスカルゴは今何処にいるのか分からない。博麗神社の日ではないからね。となれば霊夢はまず私に協力を仰ぐはず。霊夢の手を煩わせない為にも、さっさと私達も館を出る。早めに合流するわよ」

 

「御意」

 

 図書館の天窓を開いて、ロケットのように2人は飛び出す。その後、直ぐに双子が天窓を閉め、防御結界を何重にも張り巡らす。その外側には更に念を入れてパチュリーが十重二十重に結界を張る事で、図書館は完全なる防御要塞と化した。

 その頃、レミリアと咲夜は飛びながら雑談する。

 

「……天子を雇って本当に正解だったわ」

 

「はい?……まぁ……他のメイドよりは役に立ちますけどね。物覚えも早いですしね。ご主人様……いえ、旦那様の調教の賜物かしら」

 

「天子の《大地を操る程度の能力》、あと《気質を見極める程度の能力》。気質とやらが、日光を克服している吸血鬼に通用するのか知っておきたいし、それでなくともあの能力は気質を操れる。つまりは的確に弱点を突けるワケ。素晴らしい。日光を克服しようとも、確実に弱点はあるはずだからね」

 

「そう仰る割には、天子は留守番なんですね?館に奴らが到達するとお考えなのですか?」

 

「ええ。だって山を見なさいよ。何なの、あれは?あんな人数、どう考えても私、咲夜、霊夢程度では絶対に止められないわよ。魔理沙が居ても難しい。鈴仙、妖夢、早苗……いや、多分無理ね。まず、数が違いすぎる。数年前にクレイが連れてきた配下よりずっと多い。目測だけど、軽く千単位は居るわね。紅魔館も高確率で攻められるわね。奴らの目的次第だけど」

 

「……では、もしやお嬢様は……天子が旦那様と来たあの日から、吸血鬼がこうして幻想郷に攻めてくるという予知をしていたのですが?だからその防衛に的確に弱点を突ける天子を……?」

 

「そんなワケはないわ。それならもっと早く的確な指示を飛ばせるわよ。……とか話してる間に、霊夢が見えてきたわ。やはりこちらに向かっているわね。予知するまでもない……♪」

 

「嬉しそう……ですね?」

 

「そう、嬉しいの。久しぶりに、霊夢と肩を並べて戦える事が……そして大暴れできそうな事がね」

 

「…………」

 

「頼りにしてるわよ、悪魔の従者さん?」

 

「はい」

 

 こうして、レミリアと咲夜ペアと霊夢は上空にて霊夢との合流を果たした。

 しかしその頃になると、吸血鬼の軍勢は天狗ではどうしても止められず、いよいよ以て、山の上空の全域に広がってしまいつつあった。溢れる吸血鬼は更に数を増し、天狗による守備など焼け石に水で、全く意味をなしていなかった。

 

「レミリア……咲夜!アンタ達、どうして……」

 

「目的が同じなだけ。……ねぇ霊夢。奴ら、悪魔よ。しかも殆どは吸血鬼。近付いてやっと気付いた事も多々あるけれど、どうもアレは『吸血鬼を主とした悪魔の軍勢』って感じがするわ」

 

「流石レミリアね、そこまで分かるのね……。後天的だからか、私じゃサッパリ。ただ、幻想郷ではほぼ感じない妖気……いや、邪気を感じるわ」

 

「そう、悪魔だからね。幻想郷に悪魔は少ないわ。紅魔館にはそこそこ悪魔が居るけど、彼の子供達は悪魔の因子を継ぐ者であって悪魔ではないからね。それにしてもあの暴力的なまでの数……どうするの?博麗の巫女の作戦を聞かせてもらおうかしら?」

 

「超範囲攻撃がデキるヤツ……の攻撃でどうにかするしかないわ。何手に別れようとも、あの数の前では無力同然よ」

 

「同意するわ。でも、範囲攻撃と言えばエスカルゴよね。あとフランね。生憎、フランには館の防衛を任せてあるの。そしてエスカルゴは何処にいるのか分からない」

 

「確か今日は衣玖の家から帰ってくる日じゃない?だからそろそろ地上に来ると思うんだけど……」

 

「いいえ、違うわよ霊夢。いつもなら『そろそろ』どころか既に地上にいらっしゃる時間帯よ。普段はパチュリー様と読書か、メイドや小悪魔達と行為に勤しむか、兎に角、紅魔館にいらっしゃるわ」

 

「ふむ……なのにアイツ、今日は居ないのか……」

 

「ねぇ、他に範囲攻撃が得意そうなヤツ居ないの?私も咲夜もそこそこよ?」

 

「そんなの私に言われても……。あと範囲攻撃とかがデキそうなヤツと言えば紫だけどダメだし……」

 

「えぇ?どうしてよ?こんな非常事態、私や咲夜が動くより、まずは賢者である紫が動くべき案件だと思うのだけど?隠岐奈もだけど」

 

「紫はもう動いてる(・・・・・・・・)。アイツら、博麗大結界に穴を開けて侵入してきているの。それがたまたま山頂に繋がってしまったってだけ。ワープとかスキマならどれだけ良かったことやら……」

 

「何ですって……!?紫が動いて尚、ああやって数を増やし続けているという事は……ッ」

 

「…………紫、藍でも修復できない程の損傷……または維持だけで精一杯。そう考えるのが妥当かもね……。茜ちゃんはまだ実践レベルではないらしいし、この修復作戦には参加させていないか……または後方支援でしょうね」

 

「そんな……参ったわね」

 

「正直、私としてはアイツらの相手より結界の修復作業を手伝いたい。だけど今は、ギリギリとはいえ紫達で事足りてる。それなら私は、目の前の問題を解決するだけよ」

 

「「…………」」

 

「力を貸して。レミリア、咲夜」

 

「当たり前じゃない。じゃあ……手っ取り早く死体の山を築きましょ、咲夜!」

 

「御意」

 

「死体の山って……それしかないか……。博麗の巫女としてできるだけ異変って枠組みで治めたかったんだけどね……。でももうここまでの事態になれば……無理ね」

 

「…………ところで霊夢。結界に穴、との事だけど、博麗大結界が山頂とかいう不自然な場所にあるのは変じゃない?あの先も幻想郷じゃないの」

 

「咲夜にしては良い気付きね。……博麗大結界はね、ドーム状に囲ってるワケじゃないの。魔理沙が少し昔に実験したんだけどね、どこまでもどこまでも、いつまでも飛び続けられるの。でも戻る時は一瞬。つまり、明確な境界なんて無いのよ。それは即ち、どこにでも境界があるとも言えるわ。便宜上で言うなら博麗神社は外との間に建っているそうだけど、裏山にはちゃんと登れるしさ。境界って何なの?と考えさせられる構造になっているのよね。境界なら博麗神社にちゃんと存在してるのに……」

 

「成程。じゃあ、妖怪の山の上に穴が開いたのは、あくまで偶然なのね」

 

「ええ」

 

「ふーん。腑に落ちたわ」

 

 

 ◆

 

 

「そこよエスカルゴくん!私の獄卒埴輪はそんなに甘くないわ!」

 

「クッソ……!マジでクソ硬ェ!!」

 

 その頃の俺は、地上が大変な事になっているとは露知らず、畜生界の霊長園にて、また袿姫の実験に付き合っていた。

 袿姫としても実験の邪魔はされたくないので、神権限により、俺への通信を一時的とはいえ強制的に遮断しているのである。

 電話で言う「電波の届かない所に居る」状態だ。着信拒否とはまた少し違う。

 

「魔剣『妖魔雷霊剣』!!」

 

「ちょっとぉ!スペルカードに頼っちゃうのぉ!?あなたはそんなヤワな吸血鬼じゃないでしょー!」

 

「剣折れるかもって心配になるくらい硬ェんだからしょーがないだろッ!!『魔界断裂斬』!!」

 

「やーん、もー!またそれで壊した!磨弓ちゃん、お仕置きの百叩きの刑よ!やっておしまい!!」

 

「はいっ!エスカルゴさん、覚悟ッ!」

 

「何だよぉおもおおおまたかよぉおぉぉおおおお」

 

 

 ◆

 

 

《えっ……?連絡が付かない?嘘でしょ、そんな事が有り得るの?》

 

《たまにあるんだよねー。どの神様かは分からないけど、誰かの傍に居るのは間違いないよ霊夢。あ、私や早苗、神奈子、建御雷は違うからね?》

 

《ま、アンタがそんな嘘をついても何のメリットも無いものね?》

 

《そーそー。後で無駄にシバかれたくないもん》

 

《よく分かってるわね》

 

《そりゃ伊達にエスカルゴの彼女ヤッてないもん。あと、戦うんなら建御雷の力を借りた方がいいよ。エスカルゴの技は殆どコピーしているはずだしね。しかも強化されてるヤツ。私の能力じゃ地上戦特化だからさー……》

 

《範囲攻撃も可能、か。ありがとう諏訪子、良い事聞けた。でもそうするのは1人で戦えなくなったと私が判断した時にするわ》

 

《はいはい。因みにね、私からじゃ他の神に連絡はつかないよ。何故かっていうと、エスカルゴを中継地点にしてるからなんだ。エスカルゴはきっと認知出来ていないだろうけど、神々がこうして会話するなら、器であるエスカルゴを経由する必要がある。でも今は、私からエスカルゴには繋げられないの。だから、こちらから連絡が行かないなら他の神へも連絡がつかないんだ〜》

 

《成程。それなら他の神から話を聞くにはこうしてまた神降ろししなきゃいけないのね。わかったわ》

 

 エスカルゴの彼女の1人、諏訪子を降ろしていた霊夢は神降ろしを解除する。彼と違い諏訪子からの

「加護」を賜っていない霊夢は、そうしなければ、諏訪子とこういった会話はできないのであった。

 その結果を、レミリアと咲夜が期待を込めた目で訊ねてきた。

 

「で、どうだったの?」

 

「諏訪子さんなら有益な情報を持っていると思うんだけど」

 

「ダメね。連絡がつかないみたい。エスカルゴへの通信が届かない以上、彼を経由しての他の神へ声を飛ばす事もできないみたい」

 

「フーム。それは面倒ね。しかも彼と違って祈祷が必要って……」

 

「エスカルゴが特別なだけ、祈祷するのが普通よ!てか……魔理沙、何でアイツ来ないの!?」

 

「魔理沙は一般人よ?そろそろ恐怖を覚え始めた頃かしら。まぁ仕方ないわね」

 

「いえお嬢様。魔理沙はあそこに……」

 

「魔砲『ファイナルスパーク』ッッ!!!」

 

「あっ……!魔理沙、もうアイツらと戦ってる!?」

 

 咲夜が指を指すと、そちらで魔理沙の極太光線が迸るのが見える。それは大量の悪魔を飲み込んで、殺虫スプレーのように広範囲の敵を駆除していく。ただし決め手にはなり得ず、かなり苦戦している。

 

「ふ、ふーん……まぁ、これまでに数々の異変に首を突っ込んできたのだから、今回だけパスするなんて有り得ないものね」

 

「お嬢様、言われて気付きましたよね……」

 

「ちちち違うしっ!気付いてたし!」

 

「ともかく魔理沙の所に行くわよ、援護しなきゃ!囲まれ始めてる!」

 

「そもそも、あの数相手に単身で飛び込むのは無謀なのよ。我が紅魔館の警備もあの包囲網くらい突破困難だと嬉しいのだけど」

 

「全くですわ」

 

「あなたも警備のザルさに一役買ってるからね?」

 

「あら、心外です」

 

「呑気に会話してんじゃないわよ!てか、あの数、本当にどうすれば……」

 

「待って霊夢。羽虫の群れが道を作った……!」

 

「同族を羽虫言うな。……ボスの登場ってワケね」

 

「しかも2人。ここはお嬢様と私の出番ですわね」

 

「……」

 

 悪魔の群れが左右2つに分離。その中央を2人の悪魔が優雅に飛んできている。レミリア達の存在に気付いた魔理沙は、その2人を追い越すように飛び3人に合流した。

 

「遅いぜお前ら、何ちんたらしてたんだ!?」

 

「ここがアンタの家と近いから、たまたま早かっただけでしょ!」

 

「へへ、バレたか!というかレミリアと咲夜も来たのか。……エスカルゴはどこだよ?」

 

「アイツは居ない。連絡がつかないの。諏訪子でもダメみたいよ」

 

「何だと……?今日どこから帰ってくる日だ?もう、無理矢理にでも私が連れてくるぜ。この数、アイツじゃないと無理だろ?ラブラブ中だろうと邪魔してやらぁ」

 

「衣玖の家から帰ってくる日よ。でも、いつもなら地上に居るはずなのよ、この時間帯には」

 

「どーせ衣玖とヤリ合ってんだろ?とりあえず上に行ってくるぜ!アイツの気配ならすぐ探れる!」

 

「あ、ちょっと魔理沙!」

 

 転送魔法による紫色の光を放ち、彼女は雲の中にあると言われる衣玖の家へと向かった。当然だが、そこにはもうエスカルゴは居ない。

 結局、数分後に気配すらも探れずに帰ってきた。すると3人の様子がどうも変だという事に気付く。とうとう、先程から接近してきていた悪魔とついに対峙したのである。

 

「これで邪魔者は揃ったな」

 

 2人の内の、片方の悪魔が言う。深緑色のロングヘアー、右足は青銅らしき金属で出来ているのか、やけに太陽光線を反射している。更に左足は大きな鉤爪があり、手も鉤爪のある指をしている。そして背には吸血鬼のような蝙蝠に似た翼を持ち、少女のような姿をしている。

 

「でも男の吸血鬼は居ないねぇ?名前忘れたけど、子供の吸血鬼と一緒に居るって情報は?」

 

 桃色のロングヘアー、どことなく親しみ易そうな物腰柔らかな口調、蝙蝠の翼。レミリアはこちらが吸血鬼のボスだ、と判断した。眼や気配が、まるで古株の吸血鬼そのものだったからだ。

 

「名は……フランドール・スカーレットとレミリア・スカーレットだったはずだ。あそこのガキが、そのどちらかに違いない」

 

「なら、エスカルゴも近くに居るよねっ♪」

 

「大方そのはずだ。奴らの従兄妹、クレイドールの情報が正しければな」

 

 その名を聞いて、レミリアと咲夜はハッとした。霊夢と魔理沙は「新聞で見たな」程度で、そこまで反応を見せることは無かった。霊夢がどこかに反応したとすれば……。

 

「ちょっとレミリアぁ?もしかしてアンタら吸血鬼同士の因縁なんじゃないの?」

 

「知らないわよあんな奴。……ちょっと、そこの緑。あんた、クレイとどんな関係?」

 

「何だガキ、まずは名乗れ」

 

「あら?まずは、敵さんから名乗るのが道理というものではなくて?」

 

「……チッ。私はエンプーサ、誇り高きヘカテー様の配下である!」

 

「元(・)ね」

 

「黙れモルモー、お前は余計な事を言うな」

 

「はァ〜?夢魔風情がうるさいわねー。私こそ真のヘカテー様の配下なのにさー」

 

「お前も元(・)だろうが!」

 

「あんたホントウザイわね何なの!?敵はあっちのガキ共でしょ!?私に突っかかってる暇があるならさっさと適当にボコして、エスカルゴとかいう奴の居場所を聞き出しなさいよ!」

 

「チッ、血統だかなんだか知らんが、顎でこの私を使いやがって……!覚えてろッ!」

 

「忘れてまーす♡」

 

 モルモーと呼ばれた吸血鬼は、エンプーサと仲が悪いらしい。短いながらも、あのやり取りで4人はそう感じ取っていた。しかし、それはそれとして、霊夢は2人に動機などを聞いてみる。

 

「エスカルゴの居場所を聞いてどうすんの?動機はなんなのよ?」

 

「数年前、ヘカテー様は仰った。『幻想郷で面白い吸血鬼を見つけたから、アンタ達とはお別れ』と!訳も分からず突然別れを告げられ困惑していた頃、吸血鬼クレイドールが『幻想郷から戻った』と風の噂で聞いた我々は、遥か異国の地でクレイドールとコンタクトを取り同時にこの世界の事を洗いざらい聞き出した!!」

 

(クレイの奴、余計な事を!聞き出したって事は、エスカルゴに殺される前の話ね。つまり、クレイと奴らが接触したのは二度目の侵略の前か……。やはり一度目の侵略で殺しておくべきだったかしら……)

 

(ヘカテーって確か……へカーティアの、ギリシャ神としての名前なんだっけ。エスカルゴがそんな事を言ってたような気が……)

 

「強大な力を持つと謳われていたクレイドールは、この世界にて無惨にも敗北を喫したようだな!敵は

『エスカルゴ・スカーレット』と名乗ったらしい!そしてクレイドールは言った、復讐すると!!だが奴は戻らなかった!恐らくは、殺されたのだろう!そして我々は確信した!ヘカテー様の仰る吸血鬼がそいつ、エスカルゴなのだとな!!」

 

(エスカルゴとへカーティアが関わるようになったのはその騒動よりも数年後だったはず……。もしや、へカーティアのヤツは数年前からエスカルゴに目をつけてた?……何の為に?)

 

「……でー、私とエンプーサは手を組んでぇ、眷属をある程度増やして、探し出そう(・・・・・)って思ったワケね!穴を探すのダルかったから、テキトーに結界に穴を開けてみたり!てかさー、こっちの吸血鬼の純血は私だけなのよね。ここに居る凡そ……えーと、5000?くらいの吸血鬼はみーんな、このモルモーちゃんが吸血鬼にしたのよ♡」

 

「ッ……なんですって……!?そんな人数、どれだけ時間をかけて…………」

 

 レミリアは驚愕していた。モルモーの話は、到底信じるに値しないほどの膨大な数字だったのだが、それを差し置いても、信じるしかないほどの実力をひしひしと感じていたから。

 モルモーは神話の時代を生きた吸血鬼。見た目は少女でも、レミリアよりもずっと年を取っている。そんなモルモーのやった事だ、己の常識で考えてはいけないとレミリアは考えていた。

 

「名を聞いていなかったな。そこの吸血鬼のガキ、次はお前が名乗る番だぞ?」

 

「私はレミリア・スカーレット。誇り高き紅魔館の当主、そしてツェペシュの末裔」

 

「嘘ね」

 

「は?」

 

「モルモー?何を……」

 

「ツェペシュの末裔は遥か昔に滅びている。だからあなたは、ツェペシュの末裔を名乗る不届き者よ。吸血鬼は血を重んじるのに、あなたからは虚勢しか感じない。紅魔館?とやらの当主っていうお話は、クレイドールも言っていた事だから信じるけれど、ツェペシュの末裔ってのは嘘ね」

 

「信じるかどうかはお前に任せる。だがそんな事はどうでもいい。我々の楽園を、幻想郷を……お前達にどうこうさせるつもりは無い!」

 

(誤魔化しましたね、お嬢様)

 

(誤魔化したわね)

 

(図星か、レミリアの奴)

 

 すると、好戦的な態度を見せていたエンプーサが顔の前で手をヒラヒラさせ、鼻で笑いながら言う。

 

「まぁ、待て待て。我々の目的は、この世界を手に入れる事ではない。侵略をする気もないしな」

 

「それなら、これだけの吸血鬼を率いてくる意味がわからないのだけど?」

 

「我々の目的はただ1つ。この世界に住まう唯一の男吸血鬼を探し出し、我々の手で始末することだ。後ろに控えている配下はエスカルゴを探す為の駒に過ぎん。殺す時は私の手で……!」

 

「エスカルゴを探している風だったから、まさかと思ったけど……そのまさかとはね。ねぇレミリア?」

 

(成程、奴らは霊魔くんを知らないから、唯一だと断言できるのね。という事はもし霊魔くんが奴らに見付かれば……問答無用で殺される────!?)

 

「────神の器たる悪魔は、この我々でなくてはならない!元人間の吸血鬼など言語道断ッ!!奴を滅ぼし、我々こそヘカテー様の器足り得る存在だとあの方に力で示しッ!今一度、あの方の力を賜りし悪魔に成ってみせるッ!!」

 

「…………狙いが分かった。つまり、へカーティアに気に入られたエスカルゴが疎ましいワケね。それでアイツを始末すればまた自分が気に入られる、と。なんて浅はか……あなた本当に私より長生きしてる?バカみたいよ」

 

「うるさいわよ、ホラ吹きの下等吸血鬼。あんたに私達の何がわかるっての?」

 

「フン。へカーティアの事はよく知らないけれど、お前達程度に下等吸血鬼呼ばわりされるほど、私は弱くない。何なら試してみようか?もしこの私すら倒せないようであれば、彼は絶対に倒せない。無惨にも臓物を撒き散らして死ぬ事になるだろうねェ、クレイドールのように」

 

「言わせておけばこのガキィ……私をバカにした事、死んでも後悔するがいいわ!」

 

「待てモルモー。……私が殺る」

 

「はァ!?エンプーサはすっ込んでなよ、あのガキ生意気すぎて超腹立つんですけどー!?」

 

「まだお前の力を見せるワケにはいかん。これは、私が戦いたいから言っているのではないぞ。お前の力を重要視しているからこそだ」

 

「ふ、フンっ……なら、エンプーサがガキを潰して。私はテキトーにこの世界飛び回って、エスカルゴを探して殺しちゃってるから♡」

 

「……変な事はするなよ?」

 

「わかってる〜。さっ、みんな!エスカルゴ殺しにしゅっぱーつ♡ 手分けして探そーねん♡」

 

「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォーーーーッッッ!!!」」」」

 

 モルモーは吸血鬼を率いて、本格的に幻想郷中に広がり始める。中には蝙蝠化して散る者も出てくる始末。凄まじい速度で飛び出していく吸血鬼を前に霊夢達は戸惑うばかりだった。

 

「ヤバいぜ霊夢、吸血鬼共が……!」

 

「わかってる!でも天狗達も一体何やってんのよ、奴らを止めてたんじゃなかったの!?」

 

「奴らが揃いも揃って、標的を変えて行動し始めたからでしょ。山の外にはあまり出ないでしょうし。とりあえずはモルモーとやらを倒しに行くわよ」

 

「「わかってるぜ(わかってる)!!」」

 

「咲夜。死ぬんじゃないわよ」

 

「お嬢様こそ」

 

「あなたが私の心配なんて500年早いわ。この私も、最近になって色々鍛え始めているんだから」

 

「あらあら」

 

 エンプーサを前に咲夜とそんな会話をレミリア。獰猛だが仲間想いではあるのか、3人がこの場所を離れるまで、エンプーサは黙って仁王立ちの格好で浮いたまま待っていた。

 やがてあの3人がモルモーを追って遠くに行き、彼女がエンプーサに向き直ってから声をかけた。

 

「フン、仲間ならば逃がせばいいものを」

 

「逃がす?バカを言っちゃいけないわ。咲夜達ならやってくれると信じてるの」

 

「あの銀髪はお前の従者だな?ならばお前は惜しい事をしたな。生憎だが、並大抵……いや並大抵よりも強い吸血鬼でも、モルモーには勝てん」

 

「そう思うでしょう?勝つのよ、咲夜は」

 

「せいぜい、そう現実逃避をしていろ。奴は強い。神代を生きた者は皆、並外れた強さ、生き抜く術を会得している。私もだ。500歳やそこらのお前如きで適う相手ではない。それでも戦うと言うのならば、まずは私が相手してやろう」

 

「御託はもういいよ。殺し合おうじゃない」

 

「ほう……!ならば死ねッ!我が爪の前に己(おの)が血潮を晒すがいい!」

 

 

 ◆

 

 

「〜♪」

 

「モルモー様、先程から何をニヤニヤしておられるので?」

 

「……は?何?てかあんた誰?私の顔色伺ってんの?キモッ。黙れば?」

 

「ッ!?わ、私はただ……」

 

「うるさいなぁ。うるさい奴は嫌い。死んじゃえ」

 

「ギッ!?ブギッ、ビギャアアァアァァァ!!」

 

 モルモーが眷属達に掛けた呪いを発動させると、彼女に話し掛けた吸血鬼が瞬時に蒸発した。同時に彼女に追従していた吸血鬼達は恐れ戦き、叫び声を上げる者も現れ始めた。

 先頭を飛ぶモルモーは舌打ちをして、自らに追従している者達にのみ聞こえるようにある程度声量を抑えつつ、号令をかける。

 

「ぜんたーい、止まれーい」

 

「「「ッッ!?」」」

 

「あんた達がデイウォーカーなのはぁ、あんた達が曲がりなりにもモルモーちゃんの眷属だからだよ?もしあんた達が私に余計な事を言おうものならぁ、デイウォーカー補正、即解除しちゃうからねん♡♡私くらいになれば、そんなのチョロいしぃ?」

 

「「「────ッ!!」」」

 

「……わかったら、黙ってエスカルゴ探しな?いい?黙って(・・・)、ね?あんた達の声なんて聞きたくないし。もし奴を見つけたら、その時は大声で報告しな?」

 

「「「ハッ、ハイッ!!!」」」

 

「分かればよろしい〜。ぜんたーい、進めぇ〜♡」

 

 眼下に広がる自然を眺めて優雅に飛行しながら、モルモーは、同志であるはずのエンプーサとはまた違う事を考えていた。

 それは、幻想郷を手に入れる事でもなく、支配をすることでもなく、はたまたエスカルゴを抹殺する事でもない。ただし、エンプーサが聞けば激怒する事間違いなしな内容だった。

 

(さ〜てさてぇ、エスカルゴくん(・・)は幻想郷の何処にいるのかにゃ〜?ムフフフッ……身も心もバキバキにして、この私に従順になるよう躾けちゃおっかな?その後で嬲り殺しにしてやる……)




モルモー(吸血鬼)

ピンクのロングヘアーの、少女の姿をした吸血鬼。
長く生きていく内、日光を克服した吸血鬼(デイウォーカー)に進化。
パッチリした目で吸血鬼によく見られる紅い瞳孔。ありとあらゆる吸血鬼の特技や特性を使いこなし、殆どの弱点を克服しつつある。
腐れ縁のエンプーサと共に激動の神代を生き抜いた世界でもトップクラスに長生きしている吸血鬼。
眷属にした吸血鬼については特性を自由に操れる。例えば吸血鬼の弱点を付与・剥奪なども自由自在。ただしそれが可能なのは、あくまで「己の眷属」に対してのみである。悪魔だけに。
自分が可愛い事を知っていて、それを利用する事も多々ある。ブリッ子な所があるが実際に可愛いので文句を言う者はまず居ない。吸血鬼の軍勢の中ではオタサーの姫に近い存在になっている。
鏡に映らず、写真にも写らないので、彼女は自分の顔を知らない。周りがチヤホヤしてくれたり、甘く接してくれる事から、自分が可愛い事に気付いた。
神代を生き抜いただけあって、時折、とてつもない威圧感を放つ事がある。その時の態度と普段の緩い態度では、二重人格を疑われそうな程に差がある。
というのは彼女の眷属目線であって、実際はただの恐怖政治だったりする。
威圧感というよりウザいと思った者をすぐ殺すので恐れられやすいだけ。そしてその恐れが彼女を妖怪として更に強くしている。故に結果的に彼女の力が増長する事態になっているのは、ある意味では負のスパイラル。それについては彼女も無自覚。

一人称:私、モルモーちゃん
二人称:あんた



エンプーサ(夢魔)

深緑色のロングヘアー、右足は青銅で出来ていて、左足は大きな鉤爪のある素足。両手に巨大な鉤爪がある。本人の意によって大きさは可変。背に吸血鬼らしい翼があるが紛れもなく夢魔(悪魔の一種)。キツい性格だからか、ちょっぴり目付きが悪い。
とても長生きしているせいか、夢魔の割にはかなり戦闘に特化している。
己の強さに自信満々。獰猛で取っ付きにくい性格。
モルモーと同等(もしくは少し上)っぽい雰囲気を醸し出しているが、実はモルモーの方が悪魔として圧倒的に格上だったりする。
エンプーサとモルモーの性格が性格故、モルモーの眷属の吸血鬼からはエンプーサの方がずっと格上に思われていたりするが、本人はモヤモヤしている。しかしプライドが高い為、言い出す事はできない。一方のモルモーは、エンプーサがその件でモヤモヤしているのを知っている上で、敢えて黙っている。プライドの高いエンプーサがモヤモヤしているのが面白いらしい。
モルモーとは違って、たった1つだけとてつもなく大きな弱点がある。

一人称:私
二人称:お前、貴様



モルモー&エンプーサ

大悪魔と相違ない強さを持つ悪魔。というか今では大悪魔である。神代のギリシャではへカーティアの配下(本作では器とする)として大暴れしていた。現代の外の世界でも一部界隈で猛威を奮っていた。あまり仲は良くないものの、腐れ縁だからと言って手を組む事が多い。
神代〜割と最近まで、へカーティアの配下だった。彼女に力を一部与えられるほど認められて、それに誇りを持っていた(特にエンプーサ)が、数年前に突如へカーティア(ヘカテー)に捨てられた。
へカーティアの言葉にある「幻想郷」「吸血鬼」を頼りにその者を特定・始末し、再び彼女の器にしてもらおうと渋々ながら腐れ縁として2人&他数名は手を組む事にした。
たまたまその頃、レミリア達の従兄妹(クレイドール)が「幻想郷」という異世界から帰還した、と一部で話題になり、2人は急遽クレイドールにコンタクトを取る。
レミリアが去ってからの外の世界は、クレイドール一派のみが吸血鬼界隈にて猛威を奮っていたので、話題になるのも早く、2人がコンタクトを取るのもかなり容易だった。
クレイドールは、2人に幻想郷の情報を伝えた上で
「エスカルゴに復讐する」という旨の宣言をした。その時点で、2人は「クレイドールを負かしたそのエスカルゴこそへカーティアが言った吸血鬼だ」と察したものの、外の世界ではかなりの実力者と有名だった彼に真っ向から反抗するのはダメだと判断。彼の復讐について行く事はしなかった。
そもそもクレイドールはへカーティアの件とは全く関係ないというのもあり、誇りもあるが協力などを頼む気もサラサラ無かった。
やがて、クレイドールが帰還しない事で彼の死亡を確信した2人は、本腰を入れてエスカルゴへの復讐計画を始動させ、今に至る。
ほんの一時期だけクラウンピースと交流もあったりしたが全く反りが合わず、仲はあまり宜しくない。寧ろ仲はかなり悪い方。
2人はクラウンピースに対して「ご主人様ご主人様うるさい!」と思っている。その点に関してのみ、モルモーもエンプーサも意見が合致している。
余談だが、クラウンピースに与えられているへカーティアの力は、見た者を狂気に陥らせる地獄の炎。つまり、彼女が持つあの松明(炎)である。



モルモーの眷属

大半は男。モルモーの美貌に惚れた者達。吸血鬼になって数年程度の者が殆どで、特技等は「使える」だけで「使いこなす」には至っていない。
モルモーに良い様に使われたり彼女の八つ当たりの的になったり、かなり散々な扱いを受けている。
でも反抗はしない。すれば即座に殺される。誰しも命は惜しいもの。
現在、「エスカルゴという男吸血鬼を探せ」という命令を受けて行動しているが、彼らはこれに対して内心焦りまくっている。
周囲にモルモーの眷属ばかりで探しにくい上に、男ばかりだからである。かなり可哀想な奴ら。
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