樹理愛の雨に触発された吸血鬼達が、守矢神社を覆うドーム状の結界に襲いかかってきた。そして、次第に攻撃を仕掛けてくる人数は増えてきて次第に早苗の結界にヒビが入り始めた。
「ひっ、ひぇええええっ!?こ、この吸血鬼達っ、私の結界を破ろうとしてますよぉぉっ!!」
「くっ、なんて野蛮な奴らだ……!早苗さん、結界は破れませんよね?」
「こらこら椛、エスカルゴさんも大体
「あっ……あー、えっと……すみません」
「今は大丈夫ですけど、このまま攻撃され続けたら或いは破れてしまうかも……。でも負傷した椛さんの手を煩わせるような事にはしません!」
「どうか……お願いします」
「任せてくだ……くぅ!?」
早苗に懇願する椛。しかしそんな願いも虚しく、結界を攻撃する吸血鬼の人数は増えていき、そしてその攻撃は激しくなっていくばかり。早苗は早くも限界を感じつつあった。
そんな彼女は、意固地になって1人で堪える事はせず、皆を守る為、躊躇いなく神に助けを求めた。
「諏訪子様、神奈子様、建御雷様!!」
「私は行かないよ、神奈子と建御雷で事足りるし」
「そうだな、諏訪子。ここは私と建御雷に任せろ。おい建御雷、いつまで横になってるんだ?さっさと雑兵を片付けるぞ」
「殺すぞ?殺していいなら我も戦うが?」
「……現状、それしか打つ手は無いだろう。吸血鬼が大勢攻めてきた時はいつも殺しながら神社を守っているからな」
「そうか。ならば……死ねッ!!」
早苗の結界の表面に風のバリアを張った神奈子。それに吹き飛ばされた吸血鬼達を、建御雷が遠隔で威力を上げた弾幕を放ち、再起不能になるほどに、その身体を焦がし尽くす。
おぞましい断末魔が山に響きわたり、肉が焼け、焦げる臭いが結界の内側まで侵入してきてしまう。神奈子が風で対処していなければ、鼻を突くような酷い臭いで神社の敷地の中が酷い事になっているに違いない。
「凄い……」
「早苗。お前は、ある程度とはいえ天気を操れる。鍛えろ。そうすればお前も樹理愛もこの程度の雷は落とせる。今のは、自然界で起こりうる程度のものだからな。その中でも強い方というだけだ」
「でも、あそこまでの威力は危ないですよぉ……」
「それならば有事の際にのみ使えばいい。……ふむ、まだ数は多いが……神奈子よ、風のバリアは無限か?奴らを吹き飛ばすのは楽しそうだなぁオイ」
「まぁ、殆ど無限だが、吸血鬼相手に致命傷になどならないぞ。早くトドメを刺しまくれ」
「トドメを刺しまくれ、ときたもんだ。なんというぱわーわーど?ってヤツだ。もし山火事になったら神奈子が風で火消ししてくれ。……そォら、喰らえ!雷神『龍雷閃』!」
「おー怖……やはり建御雷は敵に回してはならんな。改めてそう思い知らされたよ。それにしても、この吸血鬼は何なんだ…………」
◆
「いくわよ!『全人類の緋想天』ッッ!!!」
「わーぉ、トバしますねぇ天子さん!なら私も!!
『
「「「ぎゃああああぁあぁぁぁっっ……」」」
「何よ美鈴、そのオーラ!凄いわね……!太陽の気質かしら?イチ妖怪にしちゃあ、並外れた力ね!」
「いえいえ!でも何か変なんです、コイツらに私の波紋が通じていない気が……!」
「波紋?」
「なので、仕方なく心臓を破壊して殺してるんですけど……エスカルゴさんみたいに特別なアイテムでもゲットしているんでしょうかね?」
「いいや……そういう魔道具的な力は感じないわよ。本当に素で日光を克服しているみたいね。ところで弦月姫はどこに行ったのよ?まさかアイツ、雑魚に殺されてないでしょうね?」
「ああ、弦月姫ちゃんでしたら今頃────」
その時、弦月姫の能力により時間が停止。彼女は紅魔館周辺のあちこちに大量のナイフを設置すると時間停止を解除する。
すると解除と同時に、吸血鬼達の両目にナイフが深々と突き刺さる。停止中の彼女の行動は、天子や美鈴は愚か、この吸血鬼達にも認知できないので、誰よりも自由に動けていた。
迷惑を被るとしたらモルモーを追っている咲夜、そしてどこか居るエスカルゴの両名のみである。
「ぴぎぃいいやああぁぁああ!!グガアァアッッ、目がぁあ!目がああああ!!」
「おのれ、おのれェェェエエエエ!!!」
「……ね?弦月姫ちゃんは、弱点を突くのが得意なんですよ」
「え、えぇ……。思ったよりエゲツナイ攻撃ね……。でもまァ、子供にしちゃ的確でいい援護よ、褒めてあげる!でも弦月姫も多少は殺しなさいよね!どうなっても知らないから!剣技『気炎万丈の剣』!」
目潰しされてのたうち回る者、墜落してきた者を天子が滅多切りにしてやる。弦月姫は紅魔館周囲を広く守護しているらしく、両目などの弱点を的確に突いているようだった。
「フーム。エスカルゴさんのお陰で再生する相手は見慣れていますが、吸血鬼の割に遅いですねぇ」
「ご主人様が規格外に早いだけ。これでも十分早い再生力だわ。……でも、コイツら、間違いなく痛みに慣れていない。ご主人様と違ってね」
「ほほう……!」
「つまり、一撃で仕留めなくても焦る必要は無い。痛さに耐えかねてギャーギャー騒いでくれるから、即再生して襲ってくるって事は無いわね」
「成程、それは素晴らし────」
「隙ありィィイイイイイ!!!」
「隙など無い!『
剣を振るってくる吸血鬼には、その剣を掴み取り波紋を流して、ついでに心臓をその拳で抉りとる。ロクに鍛えられていないのかその肉体は脆く、美鈴としても手応えが無いように思えた。
「こうなったら覚悟を決めろ!特攻だーーッ!!」
「「「全てはモルモー様の為にッッッ!!」」」
するとモルモーの眷属達は更に数でゴリ押す集団戦法に切りかえ、100も200も超える数で一気に館を襲い始めたのだ。これでは、弦月姫のナイフの数は足りなくなってしまい、そのせいで反撃もできずにかなりの数を打ち漏らしてしまう。
「こうなったら!薔薇符『棘蔓地獄締め』!!」
品種改良を施した薔薇の種を投げ、彼女の妖力で発芽・急成長させる。蔓のように伸びるその茎には薔薇のような鋭い棘が何本も生えていて、それらが吸血鬼達を一挙に縛り上げた。
「ダメ、これでもまだ数が足りない……!!『タイムパラドックス』!!」
弦月姫は、非スペルのとある技を発動。別時間の自分を連れてきて、戦闘に参加させるのである。
連れてきたのは1日後の自分。この頃であれば、戦闘は終えているであろうと予測しての事だった。その目論見は確かに当たっていたが1日後の彼女はある事をボヤく。
「……防衛するにも、力が無ければ何もできないわ」
「…………え?」
「そうでしょ、1日前の私。非力では何も出来ないものよ。攻めるも守るも、力が無くてはダメなの」
「何を言って……きゃああっ!」
「ガキがァァァ!!俺らをぉ……モルモー様の眷属と知っての狼藉かァァァ!!!」
「「「殺せ!八つ裂きだ!!殺せッ!!惨殺だ!!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せッ!!」」」
「ひっ……!?」
「……これだから私は私が嫌いなのよ、1日前の私。せいぜい自殺なんてバカな事は考えないようにね」
眼球を潰す、仲間を縛り上げるという攻撃をただひたすら繰り返してきた弦月姫は、敵の吸血鬼達の恨みの的になってしまったらしかった。そのせいで天子、美鈴へ向かった数人を除く数百人が、一斉に弦月姫に剣戟を、そして弾幕を浴びせた。
「弦月姫!!」
「弦月姫ちゃん!!」
「た、助けてっ……」
「チッ……だからあんたは甘いのよ!サポートばっかじゃなくてねェ、殺せる時はキッチリ殺しなさい!気符『無念無想の境地』!!」
天子は自分の身体能力を超強化させて、あらゆる攻撃に怯まなくなる。そして適当に敵を薙ぎ払い、弦月姫の救出に向かう。
「退け雑魚共ッッ!退けっつってんのよぉぉッ!!そいつに手出しするのは許さないわよッ!この私、比那名居天子の名に懸けてッッ!」
元々、天子はナイフなどの刃物が通らない特殊な肉体だ。それを利用し、更にそれらの攻撃等も全く気にしないよう精神的にも強化し、袋叩きにされている弦月姫を何とか助け出す。
両翼は切り落とされ、四肢も切り落とされかけている上に、夥しい血を流して、青い顔をしている。衣服も肉体もズタボロにされてしまっている。
「弦月姫!生きてる!?弦月姫ッ!返事しろっ!」
「っ……て……ん、し…………さ………………」
「返事できるなら上等!生きてりゃ何とかなるわ!ほら、片腕でもいいから私に掴まりなさい!!」
「は……ぃ…………」
「美鈴!門ごとぶっ潰すから逃げなさいッッ!もう形振り構ってらんない!!」
「……!ハイッ!!」
天子が顎をクイッとやると、それを見た美鈴は、自分が「逃げるべき場所」を悟り、吸血鬼の囲みを破り、2人が既に避難していた上空に逃げた。
逃げる3人を吸血鬼達が放置する筈も無く、当然ながら、猛スピードで追跡してくる。天子は黙って弦月姫を美鈴に託すと、緋想の剣を構え────。
「これで終わりよ!要石『天地開闢プレス』!!」
「「「な、なにィィィィッッ!?」」」
「私史上最高のサイズよ!案外、ぶっつけ本番でも出来るものなのね!流石は私ね……ご主人様の為ならどこまでもヤれる!これは愛の勝利よッッ!!」
天子の生み出した巨大要石は、彼女の合図と共に地面に落下。その瞬間、紅魔館を中心とした巨大な地震が発生。そして、要石によって紅魔館の門及び塀などは崩れてしまうが、これにより紅魔館を襲う吸血鬼の半数近くの侵入は防ぐ事ができた。
しかし、残りは天子や美鈴が必死に応戦していた時点で、侵入を果たしてしまっていた。いつまでも外で戦っていたのは、大所帯な囮だったのである。
◆
「姉上〜っ!霊麗ーっ!」
「あっ、穹じゃん」
「ホントだ。なんで里に?」
2人はお祓い棒で空間を裂いて、穹が待っている結界のすぐ上へと転移する。短距離専用とはいえ、こうして擬似的なスキマを使えるのは羨ましいなと穹は見ていて感じていた。
「どしたの?山、ヤバい事になってんじゃん」
「ええ、ですが里がそうなるのも時間の問題です!その報告に来ました!」
「いやもう既にヤバい事になってるよ、上空……」
「いえ、これからもっと多くの吸血鬼が来ますっ!だから迎え撃たないと……!あの人数相手では2人の結界も壊されて里が蹂躙されるかもしれない!!」
「嘘でしょ!?今より多いって!?」
「いや……というか、敵は悪魔の中でも吸血鬼なの?私と同じ種族で……再生力は妖怪随一。お姉ちゃん、これもう戦うしかないよ」
「チッ、メンドーな事になったなぁ〜もう〜っ……!ねぇ穹、お父さんはどこなの!?」
「いやいや私に言われても困ります!父上、今日は魅玖の所から帰ってくるはずです……!それも、普段通りなら地上にも来ているはずなのですよ、時間帯から考えるに!なのにまだ地上にすら来ていない!行方知れずなのです!」
「はぁ!?お父さんっ……こんな時に……!」
「今来ているのは数百人程度でしょうが、これから千人単位で襲撃が来ると思われます!!ですから、今の内に、少しでも敵の数を減らしておくべきかと存じます!姉上ッ!!」
「……最ッ悪。数百人でも意味不明なのに数千人って何なの?雑魚妖怪でさえその数は意味不明なのに、吸血鬼が数千人って何なの…………ふざけないでよ、本当にさ……お姉ちゃんが居れば対処もできるけど、このメンツでどうしろっての…………!?」
「大丈夫です姉上、私もサポートします!封印でも何でも、ちょちょいっと!」
「違うの、穹!私と霊麗はね……結界の強化の為に、御札を使い果たしたの!だから御札使っての封印ができない!力を消費しまくる弾幕でしか……!」
「!?」
「こんな規模の結界、お母さんは余裕かもだけど、私達にはいっぱいいっぱい!御札でも使わなきゃ、不安定すぎていつ崩れるかも分からないの!封印の効果があるような弾幕も使えるっちゃ使えるけど、霊力の消費が激しすぎて長期戦はまず無理!私も、霊麗も!」
「そんなっ……」
「霊麗は吸血鬼だから、霊力が無くなっても戦えるかもしれない。でも私は半妖だからっ……突出した力とかも無いし……霊力が無きゃ人間と変わらない……ただのガキなのっ……!」
歯軋りしながらお祓い棒を握る霊愛。憎々しげに見上げる空には、点々と吸血鬼達が飛んでいるのが見える。
吸血鬼達の向かう先は……永遠亭のある方だ。何故永遠亭方面に向かっているのかは全く分からないが何やら嫌な予感がしてきていた。
ましてやそこにも家族がいるとなれば、霊愛も、やるしかないと思い始めていた。
「でも、やらなきゃ……。お姉ちゃん、博麗の巫女になるんでしょ。『戦わなければ勝てない』って巨人騒動のときに進撃の巨人で学んだでしょ?」
「……フンッ。まさか、漫画の言葉に背中を押されるなんてね。力の限り殺るよ霊麗、穹!奴らを……殲滅する!」
「「はいっ!!」」
晴れ渡る青空の中、黒い塊のように纏まって蠢く吸血鬼達に向かってくる。確かに千人規模の集団が永遠亭方面に飛んでいくように見えた。
霊愛はそれを見て決心した。人里手前、もしくは最悪でも人里周辺で殲滅しなければと。お祓い棒に霊力を込め、霊愛は飛び込むように立ち向かう。
「行くよ……霊麗!
「超ロングレンジだけど……封印の
「「姉妹符『緋想封印』ッッ!!」」
紅白の弾幕が溢れ出して、ホーミング性を帯びた数多の弾幕が吸血鬼達に向かっていく。もし弾幕に触れると、即座に封印される。丁度、霊愛が父親を襲った時のように。
「よしっ……バラバラ落ちてる!」
「やったねお姉ちゃん!」
「でもまだ数多いな……まぁいいか、やるよ!」
(ひっ……触れただけで即封印ですか……!?しかもあれを見るに、剣で切ろうとして剣で触れただけでアウトなんですか……!?あな恐ろしや……)
「ッ!穹お姉ちゃん、ブチギレたアイツらが攻めてくるよ!」
「え、ええっ!?」
「『ガキがァァァ!!』って!めっちゃキレてる、ヤバイヤバイ!」
「ひぃええぇぇっ!?……あっ、そっか……!霊麗は純吸血鬼だから私より耳が良いんですよね……!」
そう。霊麗は耳が良く、遠くの音も聞こえるし、地獄耳なので小さな音もよく聞こえる。だが穹には聞こえなかったので、吸血鬼が怒り狂っている事が恐ろしく、思わず間抜けな声を漏らしてしまった。
「じゃ、じゃあ……えっと……殺します!!私の風の刃で!父上でも無ければ全身を斬れば死んでくれるはずですからね……ッ!」
「そっちは無限なんだよね、穹!?」
「勿論ですとも、姉上!風とは即ち、空気の動き!空気がある限り、私は無限に力を使えるッ!!」
「……なら、いいや。私達が撃ち漏らした奴を、穹がぶった斬って!!それまでは私達がアイツらを始末してるから」
「と……言われても……ホーミングですから、標的になっていない『的』は沢山飛んでますが……ねッ!」
空気が揺らぎ、ヒュッともシュッとも聞こえる、妙な音が繰り返し響く。その度にどこかで血飛沫が舞い、景色が赤く染まっていく。
霊愛も穹も苦い顔をしている中、唯一霊麗だけ、弾幕を放ちながらも恍惚とした表情になっていた。
「……お姉ちゃん達。もっともっと殺らないと、数が減らないよ。距離も詰められてるし、早く……もっと早く殺……倒さないと……」
「そう、ですけど……やはり何というか……仕方ないとはいえ、誰かを殺す、というのは……気持ちのいいものではありませんよね……っ……」
「そう…………だけど……こればっかりは仕方ないよ、お姉ちゃん。生きる為、守る為なんだもん」
「ええ、分かっていますとも。生きる為、幻想郷を守る為……私も、奴らを殺しますよ。というか霊麗、あなた……何をそんな、笑っているんです…………?」
「え…………?」
「霊麗……?あんた、どうしたの……?」
「や、やだなーお姉ちゃん……戦いの最中だよ……?笑うワケないじゃん……」
「いえ……さっきからずっと────」
「そ、それよりっ!早くしないと距離詰められるよお姉ちゃん、早くしないと……ね?早く殺さないと、あの集団まで人里の上空に到達するよ……?」
「…………そのよう、ですね」
◆
「────そうそう、お上手よヒヅキちゃん♪」
「えへへっ、そぉかなぁ?もっかいやるね?〜♪」
「フフ、教えたらすぐ上手くなっちゃうんだもの、私の出番はあまり無いわね」
「そんなことないよぉ?らみあ、おしえるのうまいからだよ!」
「そうかしら?ありがとうね、ヒヅキちゃん」
「どーいたしたしてっ!」
各地で命の奪い合いが始まっている中、竹林内の某所では、敵であるラミアが緋月に口笛のコーチをしていた。
緋月はラミアの蛇の肉体に座り、ラミアは自分の子供を抱くように後ろから優しく緋月を抱き、頭をフワフワと何度も何度も撫でていた……その時。
「ッ……う……ぁ…………っ……」
「?……どしたの?」
「逃げ……てっ…………ヒヅキちゃん……!」
「え?えっ?」
突然、ラミアが頭を押さえながら呻き出した。
尾の先をビタンビタンと地面に叩き付け、竹林を薙ぎ払うように振り回す。次第に緋月が座っていた部位をも動かすようになり、緋月はバランスを崩し放り出されてしまう。
「きゃあっ!どーしたの、らみあ!?」
「逃げて、逃げて、逃げて、逃げてぇえええっ!!お願いだからあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
竹に掴まり体勢を整える緋月。ラミアは、未だに頭を押さえてのたうち回っている。それもやがて、両眼に僅かな光を込めて、フラフラよろめきつつも身体を起こした。
「ウマそうな……肉……に、く……ヒヒヒヒヒ……!!」
「ッ……!?」
「グアア、ガァァアアアアッッ!!」
「すごいはやい……らみあ、つよいひと……?」
ツルツルした竹を蹴って、ピョンピョンピョンと連続して飛び移っていく。その度にラミアは緋月の居る方に向かって
次第に緋月の移動法や速度に目が慣れてきたか、ある瞬間、ラミアは緋月を先回りした。それに驚き足を滑らせた緋月は、上手く着地できず、足を絡め取られて宙ぶらりん状態になってしまう。
「やぁだ!らみあ!はなしてよぉ!なんでわたしをつかまえるの!こんなことしないで!やめて!!」
「かわいい兎サン……食べル……オイシイ、お肉……!いタダきまぁァアアス!!」
「いやあああああああっ!!」
「「緋月ィィィーーーッッ!!!」」
大口を開け、今にも噛み付きそうになるラミア。するとそこに炎を纏う少女、雷を纏う幼女が空から現れ、ラミアの頭を思い切り蹴飛ばして、食われる寸前だった緋月を救った。
「わっ……」
「っととと……大丈夫かい緋月?」
「ナイス妹紅っ!」
「もこーおねーちゃぁん!」
駆け付けたのは妹紅と巫月。たまたま竹林内にて会っていた2人は、竹が薙ぎ倒される妙な音を聞き駆け付けたのであった。
妹紅は蹴りと同時に浮いた緋月をキャッチして、巫月と同時に着地。今の緋月には輝いて見えた。
「オイオイ……なんだァ、あの蛇人間は。幻想郷に、あんな妖怪が居たか……?いや……」
「多分、侵入者達の仲間だと思う」
「だろうな。こんな異形は私も見た試しが無いよ。そう考えるのが妥当だな」
「私の赤ちゃあぁあァァアン!!寄越せええええええええェェェェ!!!」
「こいつぁお前の子供じゃないぞ!あの馬鹿野郎と鈴仙ちゃんの子供だ!そんな子供に手を出した事、焼かれて後悔するがいい!蓬莱『凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-』!!」
「幻雷『
「ギィヤァアアアアアアッッ!!ギイィィィ、ガアアアア、ギャアアアアッッ!!」
怒りの炎の弾幕、爆発を引き起こす無数の落雷が一斉にラミアを襲う。相手が命を取りにきたなら、妹紅も巫月も容赦はしない。弾幕ごっこではなく、生命を刈り取る、殺意を込めて弾幕を撃ち込む。
しかし、焼かれ悶え苦しむラミアを見た緋月は、弾幕を放つのを阻むように本気の殺意を放つ妹紅の前に立ちはだかる。
「やめてぇ!もこーおねーちゃん、やめて!もう、らみあやかないで!!」
「なっ……!?何言ってんだ!?」
「緋月は食べられそうになったんだよ!?」
「わかってる!でも、でもっ……!らみあ、わたしにくちぶえ、おしえてくれた!ほんとは、ほんとは、いいひとなの!」
「……吸血鬼特有の狂気にでも目覚めたってんなら、まだ分かるんだけど……それは違うよね?一体、何が起こってるの……?」
「緋月。コイツは恐らく幻想郷を襲ってる侵入者の仲間だぞ。そんな感じの事を言ってなかったか?」
「えっと…………えっとね、なかまは、きいてない。でも、ともだちが、どーのって……」
「なら間違いないな。緋月、よく聞け。コイツは、幻想郷に攻め入っている悪魔共の仲間だ」
「えっ……?」
「お前に口笛を教えたってのもアレだ、時間潰しの為か、騙して捕食しようとしたか。恐らく後者だ。喰おうとしてたろ?」
「で、でも!そのまえに、らみあ、くるしんでた!あたまおさえて、くるしんでたよ!たぶんだけど、こんなの、したくないんだとおもう!」
「だから何だってんだ、演技だったらどうする!?それが本当だとして、本能か何かに飲み込まれて、今お前が喰われかけていた事は事実だ!何故そうも庇う、お前が死んでいたかもしれないんだぞ!?」
「ッ……」
「緋月は甘いからね。てゐへのお仕置きすら庇う、凄い甘ちゃんだよ。……でもね緋月。お姉ちゃんね、それでも妹のピンチは見逃せないの」
「……そんなぁ……」
「お、の、れええぇぇえええ!ヨくモォオオオおおおおおおおおおぉぉ!!」
「だから……ごめん、緋月。倒さなきゃ。殺さなきゃいけないの」
「まって────」
「畳み掛けるぞ巫月!不死『凱風快晴飛翔蹴』!」
「『
妹紅が炎を纏った蹴りをラミアの顔に見舞って、地面に押し付けるのと同時に大爆発を起こす。更にダメ押しとばかりに巫月も畳み掛ける。
巫月は自身の持てる全ての雷エネルギーを落雷に変換。全身の力が抜けてへたり込む直前まで、妹を襲った敵に対して憎しみの雷を叩き続けた。
「よーしっ……これで…………あぅ……」
「おっと。……大丈夫か、巫月?」
「ん……ありがと、妹紅」
フラつく巫月を支える妹紅。しかしその視線は、全身が焼け焦げて殆ど動けなくなっているラミアに走り寄る緋月に向いていた。巫月もだ。
「らみあ!らみあぁっ!おきて!めを…………あっ……らみあっ!おきた!だいじょぶだねっ!?もうけがなおっちゃうんでしょっ!?」
「ううん……もうダメみたい…………手も足も、もう、動いてくれないの……」
「そんなっ……!あ……まってて、えーりんせんせーつれてくる!」
駆け出して行く緋月を、黙って抱き留める巫月。しかし永琳を呼びに行く気満々の緋月は、姉からの捕縛から逃れようともがく。
「おねーちゃん!はなしてっ!おねーちゃぁんっ!らみあが、らみあが!たおれちゃうの!!」
「…………」
「おねーちゃんってばぁ!!」
「これで、いいのよ……ヒヅキ、ちゃん………………。私は……あな、たを……食べ、て……しまう、ところ、だった……のだ、から…………」
「らみあっ……らみあぁっ!だいじょぶ……わたし、つよいから!しなないもん!たべられてもしなないくらい、わたし、つよいもん!すこしくらいなら、たべてよかったのにぃっ……!!」
「うふ、ふ…………本当に……あなたは、優しい子……。お母様、お父様が……羨ましくなってしまうわ……」
「らみあ……?」
「ミヅキちゃん…………で、いい……?」
「……ん」
「私の事……止めてくれて、ありがとう……ね…………」
((『ありがとう』という事は……緋月を騙してたんじゃなく……本当に自我を失っていたのか……))
「らみあ!しんじゃだめ!!」
「泣かないの……。ほら……あなたの綺麗な口笛で……見送って……?」
「ありがとうらみあ!いやだしなないで!」
「……」
「らみあ!」
「私の子はね、ヒヅキちゃん……。お世辞にも、良い子だとは、言えなかった……。ヤンチャばかりでね、悪い事もしたけれど…………私にとって、それはもう可愛い子達だったの……」
「かわいい、こたち……?」
「幸せだった……。愛して、愛されて…………あの頃の私は、幸せな……ただの女だった。私は、それだけで良かった…………良かったというのにッ……」
「……?」
「私の『幸せ』を奪った…………ヘラ……ッ!アイツ、だけは…………絶対、許さない…………!例え、私が……死んで、も……呪って…………や、る…………ッ!!」
ギチギチと強く握っていた拳が解けたその時……。ラミアは静かに目を閉じ、涙を流しながら、神々に狂わされた永い人生に幕を下ろした。
「らみあ……」
「……後でラミアのお墓、作ろっか」
「……うん。…………ねぇ、おねーちゃん」
「ん?」
「かわいーこたち、うばわれた……だってさ」
「……うん」
「へら、わるいやつ……なんだよね。しらないひと、だけどさ……」
「…………うん」
「わたし、らみあのかわりに……へらをたおせば……らみあ、よろこんでくれるかな…………?」
「……。そうだね。でもそういうのは、エスカルゴにお願いした方が良いよ、きっと」
「でも……」
「ラミアも緋月が危ない目に遭うのは望んでない。私は、そう思うけどな。な、巫月?」
「そうそうっ!」
「ん…………わかった。えすかるごに、おねがいしてみるね」
「それがいいよ」
(やれやれ……よく分からんが、どうやら厄介な事に巻き込まれたな、幻想郷。私はもう何もしないぞ、後は霊夢達に任せるだけだ……)
「さ、帰ろ、緋月。お墓作るにも、準備しなきゃ。作り方とか、調べないとね」
「うん、そーだね。……またね、らみあ」
「もう送らなくていいな?またな、お前ら」
「うん、ありがと!」
「ばいばい、もこーおねーちゃん!」
スキマを開き、永遠亭に繋ぐ巫月。2人は妹紅に手を振り、その向こう側に身を投じた。
また彼岸島要素を入れてしまった。先生ェのセンス見習いたいものですな。