※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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各地で起こる戦闘②

「フン、我に恐れを為したか、急に逃げ始めたな。腰抜けめが。再生力を鍛えて出直すんだな」

 

「流石は建御雷様ですっ……!」

 

「まぁな。だが早苗は、もっと結界の強さを鍛えるべきだな。結局、結界の外で神奈子がどうにかしてばかりだっただろう。もしここに風神が居なければどう対処していたのだ?」

 

「うぐ〜っ……その通りです……!頑張ります!」

 

「うむ」

 

「早苗、後は私が守りを固めているからお前は少し休んでいなさい。そして次に備えるんだ」

 

「はいっ!」

 

(甘いな、神奈子ってば……)

 

 神奈子が風のバリアを強め、早苗は結界を解除。神となっても、そちら方面に強い神でもないので、現人神の頃とはあまり変わっていない。

 そして一連の攻防を、諏訪子は呑気に欠伸などをしながら眺めていたが、早苗の成長の緩やかさと、建御雷の暴れっぷり、その両方に辟易していた。

 

「はふぅ……疲れました〜……。文さん、まだ外には出れそうにないです……まだ吸血鬼が多すぎます……酷いものですよ、本当に……」

 

「お疲れ様です早苗さん!建御雷様……も、お疲れ様でした。しかしねー早苗さん、出れそうにないとは言われましても、穹が里に行ったのでは私も……」

 

「やめとけ!やめとけ!穹は能力が凄まじいんだ。戦うつもりなら、そう簡単にはやられんだろうさ。ましてやこの異常事態だ、里には霊夢か博麗姉妹が居るはず。奴らの力があれば、幾千人の吸血鬼でも打ち倒せるはずだ」

 

「うーーーん……そう、ですかねぇ……?」

 

「これは、雷神ではなく軍神としての予言だ。信用してもらっても構わんぞ?」

 

「軍神ッ!?……戦いに精通しているのですね……。それならば信じてみます…………が、もしこれで娘に何かあれば、私は何をするか分かりませんよ?最悪神殺しの悪名を背負う事になっても構いませんが。それでも宜しいですね?」

 

「ああ、構わんとも」

 

「ふむ。分かりました。エスカルゴさんはあなたを信用しているようですし……私も、あなたを信用してみます。とりあえずは、ですがね」

 

 警戒心を剥き出しにして建御雷に接する文を見て思わずクスクスと笑ってしまう諏訪子。幾ら「娘を行かせてやれ」と言われたからと、あまりに露骨に警戒し過ぎだと思った為である。

 幾ら娘の為とはいえ「神殺し」とは万死に値する大罪。神代から変わらぬ大罪だ。それを行うと口にしているのだから、神からすれば、激しく怒るか、笑い飛ばす程度の発言なのだ。

 

「オイオイ、文ぁ……あまり滅多な事を言うもんじゃないぞ?ここに居るのはユルい神ばかりだからまだ助かってるものの……。もっとヤバい奴だったら今頃お前の首と胴は泣き別れだったぞ?」

 

「分かっていますよ、神奈子様。ご忠告ありがとうございます。私とて、これ程の力を持つ神々を敵に回そうとは思いませんよ、はっはっは!」

 

「……どうだか」

 

「さて、襲撃が終わるまでのんびりしましょう!!ね、早苗さん!!」

 

「えっ?あー……はい!でも解決に行った方がいいのかもしれません……。諏訪子様、私も────」

 

「ダメだよ早苗じゃ。それにこれは異変ってレベルじゃない。ただの事件だ。というわけで、大人しく霊夢達に任せようねー」

 

「はぁい……」

 

(早苗さんが樹理愛ちゃんに対して過保護なのは、諏訪子さんが早苗さんに対して過保護だからでは?そうとしか考えられないんですけど……)

 

 早苗が過保護である理由を垣間見た気がする、文なのであった。

 

 

 ◆

 

 

「アハハハハァッ!!ザーコ♡ ザーコ♡ お父様よりザコい男なんて目障りなだけよ!はぁああっ!!」

 

 エントランスにて、巨大な紅いバトルアックスを振り回し、次々に敵を切り刻んでいくレイチェル。槍を振り回す母のように、または双剣で暴れる父のように、両手に斧を装備して戦っている。

 フランは、その能力にて相手を即死させている。相手が不死身でさえ無ければ、誰にでも問答無用に死を与えられる破壊の力。

 紅魔館の床は、とうに相手の血肉に塗れ、所々に死体の山を作っていた。

 

「キャハハハハハ!壊しても壊しても襲ってくる!これって壊れないのと変わらないわね♪」

 

「だけど、無限じゃないからいつかは終わるよね!せぃやぁああっ!!」

 

「メイド達は大丈夫かな?今頃、みんな1回休みになってないかな?」

 

「えー大丈夫でしょー」

 

「ここの妖精は弱いからね……、中にはエスカルゴのお気に入りもいるみたいだし、変な事だけは絶対に避けないとね……!」

 

「お気に入り?お父様の?……ふーん、なんかそれ、気に入らないなー。そりゃっ!」

 

 レイチェルは、少しの躊躇いも無く同族の肉体を切り飛ばしたり握り潰したりしている。しかし何も感じたりしないワケではない。殺す事の罪深さは、幼いながらも理解している。それでも敵を屠る手は止めない。

 幼いからと言って侮る事なかれ。一度「殺し」を知った妖怪は、気が済むまで殺戮を繰り広げる。

 

「ば、化け物……!」

 

「ガキのクセに戦闘慣れしてやがる!下手すりゃあ俺らよりも!!」

 

「戦闘慣れじゃない、殺し慣れてる!!……クソッ、退け、退けええええ!!」

 

「馬鹿野郎、ここで退けるか!!悪魔の気配が強いのはこの近辺でここだけだ!ここを探しゃあきっと見付か────」

 

「……!ねぇフラン、コイツら何か探してるよー?」

 

「え?ウチの財産じゃないの?世界有数のお金持ちだしぃ?多分」

 

「悪魔の気配が、だってさー」

 

 そう言ってコツンと生首を蹴飛ばすレイチェル。無邪気な彼女を見て恐れる者も居れば仲間を足蹴にされたと怒る者も現れる。しかし彼女達は、あれやこれやと話しながらも、弾幕も武器も掠らない。

 レイチェルの《確率を操る程度の能力》による、運命で定められた結果だった。

 

「アハ、生首!殺しちゃったら聞けないじゃん♪」

 

「そーなんだよね。コイツ喋ってる時に首チョンパしちゃったから……さっ!!」

 

「ふーん?じゃ、1人だけ残して全員殺そっか!」

 

「掃除はメイドに任せて、ね!」

 

「「紅魔符『ブラッディカタストロフ』!!」」

 

 本来はレミリアとフランのスペルである。しかしながら、レミリアの娘のレイチェルとでも、同様のスペルカードを行使する事はできる。威力は幾分か落ちるが、殺す気で使うのなら話は別だ。

 殺意に満ちた弾幕は紅魔館をも一部破壊しながら突き進み、被弾する吸血鬼達の命を刈り取る。幾ら吸血鬼だろうと、心臓を潰せば容易く殺せる。巨大弾幕で胴体を撃ち抜く事すら可能だ。

 

「うん、私と合わせるのも上手くなったと思うよ。後で弦月姫ちゃんにご褒美作ってもらお!」

 

「やった!めんたまやき食べるー!」

 

「ま、その前に尋問だね」

 

「そだね!……尋問・拷問!どれがいーい?」

 

「じ……尋問、で……」

 

「わかった、拷問からの打首獄門ね!」

 

「は!?そ、そんな────ギギャァッ……!!」

 

 レイチェルは、僅かながら再生しかけていた敵の足を事も無げにグシャリと踏み潰す。声にならない声を上げて口をパクパクと動かす敵を見下ろして、口元に垂れる返り血をペロリと舐める。

 

「あのねー?オジサンは私に殺される運命なのね。逃れられる確率は0%だよ」

 

「そ……そんな……」

 

「翼もフランに焼かれて足も手も私に切られて踏み潰されて、逆にどうやって逃げられるつもり?」

 

「……そ、それ、は……」

 

「舌を噛みちぎって死ねば〜?再生力を精密に制御できなきゃどちらにしろ治るけどね〜♡」

 

「ッ……」

 

「あっ、そうだっ。ねぇ、知ってる?幻想郷で一番再生力に優れてるのはね、私のお父様なんだよ」

 

「────ッ!!もしかしてエ……」

 

「ビンゴ♪」

 

 舌なめずりしたレイチェルは、バトルアックスを振り下ろし、床を割る程の勢いで胴体もとい心臓を真っ二つにしてしまった。当然、聞き出せてないと思ったフランは目を丸くさせた。

 

「ちょっとレーテ、まだ聞き出せてない!」

 

「んーん、もう十分だよ。コイツらが探してるのは紅魔館の財産でも何でもない。お父様だったんだ」

 

「えっ……エスカルゴを?」

 

「そ。私の能力は確率を操る事だけど『視る』事もできるのはフランも知ってるでしょ?」

 

「うん、確かそんな事も言ってたね」

 

「そこでね、お父様に関する情報をチラつかせて、コイツがお父様……『エスカルゴ』とほんの少しでも心の中で結び付けられたら、それはもう私の術中にハマってる。そこで私が『探してるのはお父様?』みたいに問い掛ければ、コイツの中では『確率』が動く。『はい、エスカルゴを探してます』ってね」

 

「えっと〜……つまり『確率』を通して擬似的に心を読んだってコト?その為に『エスカルゴ』を匂わす情報をチラつかせた……ってコトだよね?」

 

「そうそう」

 

「それなら『エスカルゴを探してる?』って聞けばすぐに100%が表示されたんじゃ?」

 

「んーん、それじゃダメ。こっちからはできるだけ情報を出したくないの。ましてや、どこで誰が話を盗み聞きしてるか分からないし……ね」

 

「それもそっか。だから、その為にコイツに名前を言わせるよう仕向けたんだ」

 

「そうそう。だからさっきの再生力のくだりは別に何でも良かったんだ。結び付けられそうならね」

 

「成程〜……。さーて、他に侵入者が居ないか見回りしたらおやつタイムだね♡」

 

「うん!」

 

 尚、モルモーの眷属達は一定レベル以上の悪魔の気配を探して手当り次第に襲い掛かっているので、紅魔館にはもう1人も敵の吸血鬼は居なかった。

 近くにならチラホラと敵の吸血鬼は存在したが、この頃になると天子、美鈴、弦月姫の3人によって完全に掃討が完了してしまっていた。

 かくして、紅魔館は守矢神社に続いて完全防衛に成功したのである。

 

 

 ◆

 

 

 同時刻、人里。穹と合流してからの博麗姉妹は、4桁は居そうな大量の吸血鬼を相手に、勇猛果敢に戦っていた。現状、一番消耗しているのは霊愛だ。

 彼女は半妖。人間と比べたら圧倒的に体力がある彼女でも、妖怪である2人と比べてしまえば、先に消耗してしまうのは仕方ないものがあった。

 霊愛は、次女であるにも関わらず妹達よりも早く疲労してしまった事に苛立ち、次第に攻撃が粗雑になってきてしまっていた。

 

「はぁ……はぁっ……クソッ、減ってんのこれ……!?減ってるようには思えないんだけど!!」

 

「コラコラ〜、うら若き乙女が『クソッ』だなんて言っちゃダメだよ、お姉ちゃん。大丈夫だよ、数は減ってるし、攻撃してくる命知らずも減ってるし。逃げ出してるね、皆して。お姉ちゃんは休んでて」

 

「ダメだよ霊麗……私は、次期博麗の巫女として……戦わなきゃ、ダメなんだから……!疲れただなんて、弱音は吐いてらんないから…………!!」

 

「程々にしておきませんと、いつかはその使命感で身を滅ぼしてしまいますよ姉上。大丈夫です、今は私達がいますから。安心して休んでてくださいな。何も戦線離脱しろと言ってるワケじゃないんです。少し休むのもまた戦略というものですよ?霊夢さんだって、魔理沙さんに頼る事も多少はあったのではないですか?」

 

「……そういう話は聞いた事ないけど……まぁ……全く有り得ないとは言えない、か。じゃ、2分だけ休むから。その間はお願い」

 

「合点承知ッ!!」

 

「任せて♪」

 

 ニヤリと口元を歪める霊麗。すると彼女の霊力がドッと溢れ出し、全身に満ち満ちていく。まるで、今の今まで消費を抑えていたかのように……魔理沙が変身をする為に魔力を溜め込んでいたのを解放したように、霊愛には感じられた。

 

「いくよぉぉ……ハァァッ!!」

 

「霊麗!?あんた何考えて──」

 

 お祓い棒に絶大な霊力を込めて、霊麗は吸血鬼の群れに飛び込んでいく。当然、返り討ちにしようと一斉に襲い掛かる吸血鬼だったが、お祓い棒に少し触れただけで、その部位が爆発するように呆気なく弾けてしまった。

 棒を頭から振り下ろせば、大量の血を吹き出して肉体が真っ二つに裂けてしまう。妖怪、特に悪魔は霊力に対して弱いので、少しも再生もできず死んでしまうのである。

 

「アハハッ!凄いね、やっぱり弱い!こんな強さで吸血鬼を名乗るなんて、吸血鬼の名折れだね!雑魚吸血鬼は死んじゃいなよ♡ 恥知らずの雑魚吸血鬼♡死んじゃえっ♡ 女の子1人に勝てないとか、ほんと恥ずかしいよぉ、オジサン♡」

 

「霊麗……!?」

 

 霊麗は明らかに楽しんでいる。殺戮を。勢いよく吹き上がる血潮を見て、興奮しているようだ。顔を赤く火照らせ、ウットリとした顔でお祓い棒を強く振るっている。それはまるで────。

 

「吸血鬼の本能でも目覚めたんですかね……?」

 

「なのかな……まぁ敵だけ殲滅するなら、今はそれに縋ってもいいよね……」

 

「それにしても……何というか、吸血鬼達がここまで弱いとは思えないのですが……?死んだフリでもしているのでは?」

 

「それは無いよ。私達は的確に心臓を潰してるし。お父さんの再生力が異常なだけでこれが普通だよ。それに加えて私と霊麗の力……」

 

「力?」

 

「霊力は悪魔系に効きやすいって、お父さんが前に言ってた。妖怪に効きやすいのは勿論、悪魔系なら尚更だってさ。再生の阻害もできるんだって。強い霊力なら更に効果抜群なんだって」

 

「はぁ〜……なるほど……」

 

(だから博麗霊夢が最強なんだ……って、お父さんが言ってたっけ。…………私、こんなんで博麗の巫女になれるのかなぁ……)

 

 吸血鬼達が妖怪の山方面に逃げ出したり、霊麗や穹に殺されて数を減らし初めてから、結構経った。ようやく戦線に復帰できそうだ、と霊愛が思った、その時。その妖怪の山方面から、追加の吸血鬼達が飛んでくるのが見えてきた。

 

「あははぁっ♡ まだ遊べるね♡」

 

「まずいですよ姉上、どうしますか!?あんな数、到底無理ですよ!今まで私達が相手をしていたのはただの先鋒……もしそうならアレこそが本隊ですよ、恐らく!!」

 

「嘘……でしょ……?」

 

「あれれ?ねーお姉ちゃん、先頭に変なのいるよ?もしかしてアレがボスかなぁ……?」

 

「えっ?……何が見えるの?」

 

「女の子。私達幼女と違って、少女って感じかな?ピンク髪の……吸血鬼だね」

 

「……ここからじゃ黒い塊が飛んできてるようにしか見えないんだけどな……先頭にピンク髪、かぁ」

 

「あ……待って、お母さんも来た!魔理沙、咲夜も!あのピンクを追いかけてきたのかな。…………なら、ラストスパートだね……ッ!!」

 

「へ?ラストスパートって何を……」

 

「霊符『夢想封印』ッッ!!」

 

 お祓い棒に使っていた霊力をも放出して、霊麗は自身最強の夢想封印を使う。たった1人で高密度な紅白の弾幕を放って、被弾した吸血鬼、刀剣などで触れた吸血鬼も撃ち落とし、地面に墜落させる。

 一切の反撃も許さない。近付こうものならすぐにお祓い棒で頭を……身体を割られるのを、吸血鬼達は散々見てきていたから。

 すると、霊愛もモルモーの姿が視認できるような距離まで近付くなり、モルモーが言う。

 

「ちょっとちょっとぉ!モルモーちゃんの眷属くんめっちゃ減ってるんだけど!?ガキ共のせいっ!?ムカつくんですけど!!」

 

「わー……お父さんが好きそうな人……」

 

「なになにィ?わー、あの巫女?とそっくりねー、あんた。クローン……とかではなさそう。娘?てか、奥にもう1人そっくり居るわね。あっちは半妖(ハーフ)?」

 

「そーだよ?」

 

「ふーん。それじゃ〜、追い付かれる前にサクッと殺しておき…………うッ!?」

 

 その瞬間、モルモーの目の前にナイフが現れた。全身を囲むようなナイフの配置、しかしモルモーはそれを殆ど回避してしまう。被弾したといえば翼に2本程度刺さったくらいのものである。

 

「フム。回避はそこそこお上手のようね」

 

「あんたか……メイド……!」

 

「やっと追い付いたぜ!」

 

「これ以上は進ませないわよ!」

 

「魔理沙?こうして追い付けたのは私が時を止めてあなた達を運んだからなのだけど?」

 

「わ、わかってるぜ!ありがとな咲夜!」

 

「ふふ、それでいいの。……さてモルモー、さっさと退治してあげるわ?」

 

「ちっ、時を止めるだなんて、なんてバカな事を!まずはあのガキを殺らせなさいよ、眷属くんが大勢殺られてムカつくんですけど!!」

 

(下の死体を見るに霊麗だけじゃないと思うけど、まぁいいか。あの斬れ具合、穹ちゃんの攻撃よね?加速の能力ではあんな風にはならない。風の能力による攻撃のはず。てことは文もどこかで戦ってるのかしら?)

 

(霊麗、大人しそうな見掛けによらず派手に暴れていたな……恐ろしいもんだな、霊夢の娘達は。霊魔もこうなったら、まさにエスカルゴJrだぞ?)

 

「お生憎様ね。アイツらはあんたとは戦わせない!私達がここであんたを止める!……霊愛、霊麗、あと穹ちゃん!結界の中に避難してなさい!!」

 

「「「はいっ!!」」」

 

 霊夢が声を掛けると、霊愛が特大の擬似スキマを展開。霊麗、続いて穹がその中に入り、真下にある里の地上に出る。そこで上の戦いを見守るつもりのようだ。

 そして、戦いが始まるとなれば、博麗姉妹は更に警戒しなくてはならない。流れ弾で里に被害が及ぶ事態だけは避けなければならないからだ。

 

「あっ……!私の獲物をよくも……!あんたから先に潰してあげるわァ、紅白巫女!」

 

「案外すぐに目移りしてくれるのね。エスカルゴが嫌いそうな奴だわ」

 

「────ッ!?」

 

「ハハッ、確かにそーだな!エスカルゴならきっとこう言うだろうぜ!『見た目は俺の好みなんだけど性格がな〜……』ってな!」

 

「あー、言いそう。って、なんで魔理沙がアイツの言いたい事を言い当てられてんの……?」

 

「へへっ、アイツとももう20年近い付き合いだぜ?それくらい分かるっての♪」

 

「……それもそうね」

 

(何、この妙な違和感……。ヤケに表情が明るい……成程、魔理沙も旦那様と…………)

 

「気に食わないわねェ……!こうなったら、さっさとあんたら潰してやるわ!…………あーん、眷属達ぃ、ササッとアイツら殺しちゃって!モルモーちゃん、襲われちゃう〜♡♡」

 

「「「ウオオオオオオオオオォォォォオオオオオオオオオオオッッッッ!」」」

 

「じゃあねん♡ 私はエスカルゴ探しに行くわ♡」

 

「あっ……!こら待てモルモー!……おい霊夢!奴を追わないのか!?」

 

「ええ」

 

「アイツは放置でいいと思うわ。私達でも旦那様の居所が掴めないのにアイツに掴めるとは思えない。そして何より、この膨大な数の吸血鬼を、これ以上野放しにはできないわ。それに……幼い子供達の手をこれ以上汚させたくはない」

 

「ッ……!」

 

「流石咲夜、その通りよ」

 

 

 ◆

 

 

 その頃の博麗神社では、僅かながらも、吸血鬼が攻め寄せてきていた。しかし、神社はもぬけの殻。すぐに引き返そうとする吸血鬼達だったが……そこで1つの微かな気配を感じ取る者が現れ始める。

 

「ハズレかァ。痕跡しかねぇな。さーて、次だ次」

 

「おい待て、戻るな!……気配がする!これはァ……吸血鬼の気配だ、エスカルゴかもしれない!!」

 

「野郎、こんな所に隠れてやがったのかッ!!」

 

「だがヤケに気配が小さいな、まるで子供だぞ?」

 

「それだけ気配を隠すのが上手いんじゃないのか?かのクレイドールを殺すような奴だしなぁ……」

 

「ははは、それもそーだ。気配なんざ大してアテにならねーのかもな。んじゃ、行くか」

 

「おい後続のヤツら!モルモー様だ!モルモー様を呼んでこい!」

 

「待て。ここで、俺達で袋叩きにしてしまえば……!どうなる!?モルモー様から、ご褒美をもらえるんじゃあないか!?」

 

「……それもそうだな!やるぞ野郎共ォーーッ!!」

 

「「「オオオォオオオオオ…!!」」」

 

 博麗神社を壊す勢いで一斉に襲い掛かる吸血鬼。しかし当然の如く結界に弾かれ、しかも強すぎるが故に中々結界を突破できないでいる。

 博麗母娘による三重の結界が張られているので、神社に触れる事は愚か、中の空気を感じる事すらも叶わない。博麗の者が張る結界は並大抵ではない。現人神は勿論の事、そこらの神々ですらも凌駕する強度である。

 吸血鬼達が結界の外でギャアギャアと騒いでいる最中、神社の一室、子供部屋では、末っ子の霊魔がフラフラと立ち上がり、能力を発動させ、ボソリと誰にも聞こえないながらも、律儀にスペルカードの宣言をする。

 

「拳玉『稲妻落とし・無限』」

 

 境内の上空に1つの大きな電気の玉を生み出す。そして室内でけん玉を振り回すと、電気の玉が玉の動きに連動し、あちこちに動き回る。

 1つの玉では動ける範囲が限られている。なのでもう1つ、もう1つと幾つも追加し、遂に博麗神社上空は、電気の玉が一定距離を挟み沢山配置されるようになってしまう。

 

「結構、上手くなったでしょ。……見せる相手は……ここには居ないけど」

 

 稲妻落としを加速させる。それに伴い上空の玉もギュルギュルと空を駆け巡り、吸血鬼達を焦がす。痺れさせるレベルまで威力を落とすという手加減がまだできない霊魔だが、今回に限ってはそれが逆に功を奏した。

 

「顔も見せないで倒してあげる。生まれ育った博麗神社でなら、僕でも多分勝てる……と思うし」

 

 子供部屋でけん玉で遊んでいる霊魔は幾度となくある技を繰り返す。稲妻落とし────狭い部屋でやるには少々危険だが、物心つく頃から遊んでいるこの玩具、この部屋でなら、多少は狭くとも、目を奪われる程に美しくけん玉を操れるようになった。

 

「お母さんもお姉ちゃん達も過保護すぎだよ。幾ら僕が子供だからってさ。……実際、弾幕とかまだ殆ど使えないし……仕方ないけど……!」

 

 ヒュンヒュンッと、糸で風を切る音が出るような速さでけんを振り回す霊魔。稲妻落としを繰り返し繰り出すのは、もはや流れ作業と化していた。

 

「皆が留守にしてる間、博麗神社は僕が守る。僕は僕の《玉を操る程度の能力(やりかた)》で────」




ぼっちの霊魔、決意を固める────!!


少し前に書いた、「レイチェルの能力のもう1つの元ネタ」、今回の話で察した人は居るでしょうか?
確率を通して心を読めるというのはジョジョ3部のテレンス・T・ダービーのスタンド「アトゥム神」を元にしています。
YESかNOでなら心を読めるアレです。100% or 0%というのはYESかNOと同じようなものですからね。

前回出てきた彼岸島要素は「ありがとう○○!嫌だ死なないで!」のセリフです。先生ェのセリフ選び独特すぎない?
状況的にはどちらも間違ってないんだけども、合体すると違和感の塊に見える謎。

霊魔は巫月に続いて2人目の「エスカルゴに似てる子供」というコンセプトです。
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