(R-18の為、名前だけではありますが。)
最後のエンドロール?みたいな黒背景の中、
No.173
吸血鬼人間の幻想生活
エスカルゴ・スカーレット
の文字が。これ、凄くテンション上がりましたね。勢いのまま835話を書き上げちゃいました。
「五将の2人、ステージにどーぞ。夢月、袿姫か」
「あ、私か」
「ふぅむ……中々に強そうな悪魔ね」
ヒョイと軽快に壁を越えてステージに立つ夢月、対して神が下界に降臨するようにフワリと降り立つ袿姫。2人の相反する性質が、2人の登場の仕方に明確に現れているかのように俺の目に映った。
土と水があれば無限に埴輪を作る袿姫、山すらも破壊してしまう夢月。果たして先に力が尽きるのはどちらなのだろう。
「五将戦、始め」
まず動き出したのは夢月。前傾姿勢で立ち向かい袿姫を殴り飛ばそうと拳を構える。しかし袿姫も、ただ殴られるだけではない。夢月に殴られる前に、彼女も行動に移る。
「先手必勝、速攻だっ……!」
「速い……けど」
ゴゴゴゴッ……という地鳴りと共に、袿姫の足元の地面が舞台のようにせり上がる。するとパラパラと余分な土が落ちて、盛り上がったのは地面ではなく巨大な磨弓が現れたのだと気付いた。
埴輪の頭の上に、袿姫が立っている。
地鳴りで足を止めた夢月は、黙って再び前進し、その埴輪……巨大な磨弓を、見るからに思い切り殴りつける。すると────。
「ッッ……いったぁ……かったいなぁ〜……」
「フフ……これは悪魔でも破壊できない強度よ。多分本物の鬼じゃないと破壊は無理。
「チッ……厄介な実験してるんじゃないわよ!ホント面倒くさいんだからっ……ハァァッ!!」
「さぁ攻撃よ、獄卒磨弓ちゃん!」
「了解シマシタ。敵ヲ殲滅シマス」
どうやら俺との実験を糧に本気で硬い埴輪を創造したようだ。夢月は山すらも吹き飛ばすらしいが、そんな力の持ち主さえ破壊不可能となると……本当にとてつもない強度を誇っているらしい。
夢月が殴って破壊できないなら、俺だって剣では斬れないだろう。砕けるかも分からない。となると俺がアレと戦うとしたら破壊の力で壊すしかない。
果たして夢月はアレをどう攻略するのか……。
「……ならいーや、もう諦めた。あんたから潰すよ、神様?」
「来なさい。やれるものなら、ね」
「言ったからね。その言葉、忘れるんじゃないよ!ハァッ!」
「ッ……さっきより速────」
獄卒磨弓は、その巨大さ故に動きは鈍重らしい。当然といえば当然の結果ではある。そして、袿姫は磨弓の頭上に居る。夢月はそこに向かい飛翔するがそれでは磨弓は夢月に手出しができない。主を攻撃してしまう恐れがあるからだ。
「くッ……『イドラディアボルス』!!」
「間合いに入ればこっちのモンだよッ!……多少被弾したって関係ないッ……絶対に勝つんだから……!」
「そこまでして神に逆らうなんてね、凄い気概だわあなた!」
「相手が神だろうと関係ない!私はただ、姉さんとお兄さんに勝利を献上したい、それだけ!エリスやモルモーが何を考えてようと関係、ないッ!」
被弾しつつ突き進んだ結果、遂に袿姫の頬に拳を掠らせるまで至った。俺の動きに見慣れているからなのか、袿姫の動きは普通の神とは並外れた動きをしている。
まるで美鈴のような、もしくは建御雷のような。必要最低限の動きで最大限効果を発揮するような、無駄をとにかく省いた鋭い動きを見せてくれた。
まさか袿姫がこんな動きをするなんて。俺の中の彼女のイメージがガラガラと音を立てて崩れた。
「オオオオオオォォォッッ……!!」
「危なっ……あなたね、ゴリ押しが過ぎるでしょっ!自殺願望でもあるの!?磨弓ちゃん!!」
「オ守リ致シマス」
「遅いよ埴輪!」
「「ッ!?」」
姿を消した夢月は瞬時に袿姫の背面へ瞬間移動。振り返った瞬間、夢月の拳が袿姫の顔へ。反対に、袿姫が逆手に持った彫刻刀が夢月の腹へ刺さる。
「っ……」
「う……かはっ……」
しばらくの間、2人はフラフラとしていた。先に倒れ、磨弓の頭から落ちたのは袿姫。腹を押さえて勝ち鬨を上げようと、深く息を吸い込んで拳を天に掲げようとする夢月、しかし…………。
「勝っ…………ゔっ……!?」
「排除シマス、排除シマス」
「ふ、ふふ……ナイスよ磨弓ちゃん……ッ!」
磨弓に掴まれてしまい、夢月は遂に身動きが取れなくなってしまう。磨弓の頭上で2人が直接対決になったのは、袿姫が傍に居るが故に、磨弓が手出し不能になったから。袿姫が彼女の後ろに倒れたなら磨弓もこうして夢月に手出しできるというものだ。
「離せ、土人形がぁっ……!このっ、このォッ!」
「私史上最高硬度の埴輪だもの、そう簡単には破壊できないわ。残念ね。私が倒れたからと言っても、負けたワケではなかったのよ」
「コイツに、こうして私を攻撃させる為に……敢えて身を引いたのか……!まんまと……して、やられた……ごめん……姉、さ…………」
ガクリと項垂れた夢月はそれきり動かなくなり、袿姫がヨシと合図を送ると、静かに気絶した夢月を寝かせた。フリなんかではないらしく、本当に気絶してしまったらしい。
夢月で破壊できないなら、俺にも難しいだろう。巨大な磨弓……獄卒磨弓には絶対に掴まれないように気を付けなければ。
「嘘でしょ……
幻月もそう呟いてしまう程、今の戦いの結果には驚いてしまったようだ。俺としても、まさか袿姫が接近戦にも対応しているなんて思えなかったので、同じような感想を抱いている。
「エスカルゴくん?」
「あ……えっと、五将戦勝者、袿姫。……夢月……ッ」
気絶してしまった夢月を観客席に座らせて、腹の傷は手早く治癒させた。ただ、気絶は怪我ではないからか、傷は治しても目は覚まさなかった。
《それもこれもあなたとの実験の成果ね。吸血鬼のあなたより遅いから、対応に困らなかったわ》
《存分に成果を活かしすぎだよ》
流石は神様と言うべきか、学習能力が高いなんてモノじゃなかった。そこまで回数を重ねたワケでもないのに、本当に凄い。
「次は中堅戦。……2人はステージに来て、どうぞ」
「相手は違うけど、vs神様ってコトで、早速夢月の仇討ちよ!神綺!!」
「あなたが私に勝てるのであれば、あなたよりかは強いであろうカルちゃんでも、私に勝てるって事になるわね。どうなるのか楽しみだわ」
「そーやって余裕こいてられるのも今のうちよっ!目に物見せてやる!」
「ふふふっ、面白い戦いにしましょうね♪」
そう言って笑う母さんに、久しぶりに神様らしい厳かな風格が垣間見えた……そんな気がした。
ラストの神綺ママは、syuri22さんのイラストを拝借しました。名前とURLを併記すれば、との事です。
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