※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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神の力を使いこなせ

「────というワケで、勇儀。相手してほしい。今回は俺が1回死んだ時点で負けでいい」

 

「どういうワケだっ!?」

 

「世界最強レベルに強いヤツと戦う事になったんで勇儀と模擬戦がしたいんだ。……どうかな?」

 

「世界最強レベルって、オイオイ……。そんなヤツと戦うってのに……模擬戦の相手が私で良いのか?」

 

「うん。俺ん中で『圧倒的パワー』と言えばやっぱ勇儀だしな。勇儀が嫌なら他をあたるよ?」

 

「いやいやっ、嫌なんて事はないさ!……分かった、お前の気が済むまで相手してやるッ!!」

 

「良かった。────行くぜッ!!」

 

 神との相談を終えた俺は早速地底にやってきた。そこで街中を闊歩する勇儀を捕まえ、上記の通りのやり取りを経て、出会って一分も経たず戦闘開始に至った。

 これまでの人生で一番早く戦闘開始したと思う。しかしこれくらいでないと、次がつっかえてしまうだろう。仕方なかった。

 

「オオオオオオォォッッ……!!」

 

「さぁて、アレをどう受けるか……」

 

 勇儀の拳は重い。いいや、重いという言葉で表すことすら烏滸がましく思える。

 格闘技なら去なす。弾幕なら掠り(グレイズ)か回避だろう。だが勇儀の拳はそうもいかない。あまりの破壊力で衝撃波が発生し、腕で受け止めようものなら、俺の肉体でさえ吹き飛ぶ威力だ。

 だから俺は勇儀との戦いで毎回死んでいるのだ。

 この現実をどうにかしなければ今以上のステップアップは望めない。──早速だが、使うしかない。出し惜しみ、それ即ち死あるのみである。

 

「『雷神拳』!!」

 

 四肢に雷を纏い一時的に攻撃力、防御力をアップさせる。だがこれだけでは勇儀のパンチなど防げるはずがない。今よりも更に防御力を高めるには──鎧なんかより圧倒的に強い何かでなければ無理だ。

 

「電力上げてくれ建御雷ィッ!うおおおっ……」

 

「突き破ってやるッ!喰らえ!!」

 

 雷を纏った手でガードしている所に、勇儀が全く小細工無しで拳を振るう。ガードとぶつかった瞬間凄まじいスパークが迸って、一時的に勇儀の視覚を奪う事に成功する。

 

「くっ、目がやられたかっ……。だが勘違いするな、目など見えなくともお前の位置くらい掴めるぞ!」

 

 恐らくそれは気配のせいだろう。俺はまだ自分の気配を隠す為に集中しなくてはいけない。そして、戦いながらそちらに集中するのはまだ苦手だ。故に俺の気配はダダ漏れになっている。目に頼らずとも俺の位置が分かってしまうのは、そういう事だ。

 だが、目が見えないのならまた別な手も使える。例えば、こんな方法は通じるだろうか────。

 

「来い勇儀、〝不運(ハードラック)〟と踊(ダンス)〟っちまえ!」

 

「何をワケの分からん事を!……ウオァァッ!?」

 

 俺の気配に真っ直ぐに突っ込んでくる勇儀。もしそんな彼女の足元に障害物があれば彼女はどうなるだろう?そう、コケるのだ。

 諏訪子の能力で地面を微妙ながらも盛り上がらせそこに雛の不運を上乗せしてやった。

 何故上乗せしたのかと言うと、少しばかり地面が盛り上がっていても、勇儀なら蹴り壊せるからだ。しかしそこは厄神の不運、ただのアンラッキーとはワケが違う。

 圧倒的パワーを持つ勇儀でも、運には勝てない。躓き、ドシャッと顔面から転んでしまった。

 

「もーらいっ♡」

 

「ッ!!」

 

 頑丈な鬼なら殺す気で攻撃しなくてはならない。だから俺は雷を纏ったライダーキックで勇儀を強く踏みつけ……ようとする俺だったが。

 

「フン、そんな大胆な攻撃を喰らう私じゃない!」

 

「────だろうね」

 

 彼女の腕の間合いに入った途端、ガッシリと足を掴んでくる。握り潰されそうになってしまったが、神奈子様の能力を発動させて、握り潰される寸前で彼女の真下から間欠泉を噴出させた。

 博麗神社近くの温泉は地底由来のものだ。つまり地底には水脈が走っていると言える。その通りなら水神である神奈子様の能力を使えば、俺にも温泉を掘り当てられるのだ。

 

「くッ……なんだってこんな時に吹き出すんだ!?」

 

「……からの……一閃『Mishap of Thunder』!!」

 

「!」

 

 間欠泉で打ち上がった俺達。足がつかなくなり、不安定な空中に吹き飛ばしてからの、極太の落雷。俺諸共勇儀を貫いた落雷は間欠泉をも貫いて、折角吹き出した間欠泉を埋めてしまった。

 

「ぐっ……痺れるな……いつもより強気じゃないか!いいねェ、やっぱり勝負はこうでないと!!」

 

「まだ倒れないかッ……それならこうだ!練習相手になってもらうぞ!『紅蓮地獄(ハドマ)』!!」

 

「ん、なんか寒(さぶ)い……うッ!?」

 

 間欠泉のお湯で濡れたのを利用して、勇儀の脚を地面に固定させた。突破されるだろうが、僅かでも時間が稼げて良かった。

 

「喰らえ!合掌『だいだらぼっちの参拝』ッ!!」

 

 小気味よい音を響かせて胸の前で手を合わせる。すると、俺のその動きに呼応してか地面から巨人の手が出てきて、脚が固定された勇儀は回避が遅れ、呆気なく潰され……たかと思ったが、結局そう上手く事が運んでくれるはずもなく……。

 

「デタラメすぎんだろ鬼の肉体はよォ!?俺でさえ潰れたっつーのに……!!」

 

 勇儀にぶつかるなり巨人の手が砕けたのである。あまりにギャグ漫画のような光景で、思わず口元が引き攣ってしまった。

 吸血鬼は、妖怪の中でも特別頑丈な肉体を持つ。そんな俺で潰れたこの攻撃を、勇儀は身じろぎ一つせずに堂々と受け止めるのみならず、手の破壊までしてしまった。レベルが違いすぎる。

 

「おお、ついでに脚の氷が砕けたぞ。ありがとな!どうやら裏目に出たようだな、お前の攻撃!」

 

「うっわ、勇儀とは思えねぇくらい嫌味クセェ!!これでトドメだ!絶技『天翔雷霆零槍』!!」

 

「そんなの避けてやるまで……」

 

「っだるぁぁぁぁ!!!」

 

「えっ……溜めは────」

 

 溜め攻撃だと勘違いした勇儀は反応が遅れ、少し久しぶりに放ったコレに貫かれ、全身に超高電圧の雷撃を喰らいその場に倒れ込んでしまった。

 

「うっしゃあストライクァ!!」

 

「……ッ……あーあ、油断したなぁ……。そうだった、神様の力を使えるんなら……いちいち溜める必要……無いよねェ……」

 

「うんにゃ、これは自前。雷神の力は借りてない。結構前からだけどさ、電力に底が無くなったお陰で溜めの必要が無くなったんだ」

 

「……未だ進化中か、やれやれ羨ましいな……」

 

「昔は一発撃つだけで力が枯渇してたっつーのに、今は何ともねー。もっと進化してやるさ。神の力を借りなくても強者とマトモに戦えるくらいに、な」

 

「もしそうなれたなら、正真正銘、自分の力で私に勝ってみな。死なずにね」

 

「おーよ、角洗って待っとけ。俺はすぐに成長するからな」

 

「首(・)洗って待ってるよ」

 

 俺の言葉をそう訂正すると、ドサッと座り直し、星熊盃で酒を飲み始めた。

 簡単に彼女に別れを告げ、いつか自分の力だけで本気の勇儀に勝つ事を夢想しながらスキマを開き……アイツの居るあの世界へ身を投じた。俺が目指すは幻想郷での二番目。現在よりも圧倒的に上の上の、遥か上────。




ハードラックとダンスっちまったの踊の所の〝〟は前の点々が無いんです。本当なら〝踊〟だと思うんですけど、元ネタは踊〟なんです。
なので、敢えて前の点々は省いています。俺の脱字ではないです。(念の為)
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