勇儀を倒した俺は畜生界に来ていた。勁牙組組長である早鬼の行動範囲や区域は、以前久侘歌ちゃんに訊ねて把握しているので、そちらに直接赴いた。
畜生界とは地獄の隣にある世界。場所によっては地獄とそう変わらない。それにしたってまだ地獄に近くない区域であるにも拘わらず、殺風景が過ぎるだろうと思う。
「……あッ!?エスカルゴの兄貴!」
「!」
つい最近どこかで見た事のある、全身に赤っぽいオーラを纏ったケモ耳の霊体が飛んできた。アレは確か、オオカミ霊だ。組の下っ端なのか早鬼の側近なのかよく分からないアイツだ。
「お久しぶりです兄貴!どうしたんですかいこんな辺鄙な所で!」
「その辺鄙な所が早鬼の行動区域だって聞いたから来てみた。早鬼、居る?」
「驪駒様ですね、分かりましたすぐ連れてきます!ちょっと待っててくだせェ兄貴!!」
「あっ、オイ!…………なんで俺がヤクザの兄貴分になってんだよ、ふざけんなよぉ……」
今後スキマですぐ行けるように、できるなら奴について行きたかったが、突発的に吹いてきた暴風に目を閉じてしまい、奴を見失ってしまった。
仕方なく待つ事にした俺は、オオカミ霊が早鬼を連れてくるまで対暴風の為の結界を張ってひたすら待っていた。
「お待たせしやした兄貴!」
「!……よぉ、早鬼」
「来たぞエスカルゴ!そちらから来てくれるなんて有難いぞ、こっちから行く手間が省けた!」
「来るつもりだったの?沢山の組員連れて??」
「いやいや、1人でだよ」
「え?……偵察じゃあないよな、脳筋の早鬼がそんな吉弔みたいな事するワケないし……」
「お前の元に向かう為に決まってるだろう?」
あっけらかんと言い放つ早鬼に思わずたじろぐ。脳筋とはいえ、一途で、純情な所もあるようだ。
何とも思っていなさそうだがその発言自体がもう可愛らしい。オオカミ霊なんて、それはもういたく喜んでいる様子でニヤニヤしまくっている。策略やそういう事ではなさそうだ。
「おやまぁ嬉しいこと。……何で?」
「そりゃあ勿論、そろそろ子作りする為だが?」
「ッ!?」
「私達が
「いやいや、前も言ったと思うけど別にいいんだよ俺としては!俺としては良いのよ!バッチコイよ!でもちょっと早くない!?大丈夫!?」
「私は一向に構わんッッ!!」
「〜〜〜〜〜ッッ」
こういう奴だ、早鬼は。こんなだから吉弔からはバカ呼ばわりされるものの、脳筋で真っ直ぐすぎるだけで、決してそこまでバカでもない気がする。
でもまぁ、そろそろ良いだろう。これ以上余計に彼女を待たせて、他の男に目を向けられても困る。
「じゃあ……1つだけ頼みがあるんだけどさ、それを聞いてくれたらすぐ子作りするよ。今日にでも」
「おおっ!イイぞ、何でも言ってくれっ!」
「兄貴ィィ!!そこは今すぐにでも驪駒様を抱くんですよーー!!据え膳食わぬは男の恥!!兄貴にゃタマキンついてねーんですかい!?」
「こちとら急ぎの案件なんだ、1時間も掛からねぇ内容なんだから好きにさせてくれオオカミ霊よぉ。てか何で俺がヤクザの兄貴分になってんだコラ」
「組長の男ってんなら俺達は兄貴とお呼びするだけですぜ!」
「……はぁ」
「ハッハッハ!私が組員に命令したんだよ。だから組員に当たらないでくれ」
「そ、そうか。ならいいや……もう……」
「兄貴ー!」
「それで、頼みってのはなんだ?」
「あ、うん。えっとさ、近い将来、物凄く強い奴と戦う事になるんだけど、その予行練習っつーか……?戦闘訓練に付き合ってくれないかなって思ってさ。早鬼くらい強い奴じゃないと練習相手にもならないくらいなんだ」
「ほうほうっ!」
「で、これまで俺が早鬼に勝った時って、死んだり超大怪我してきたじゃん。だから制約として、俺が死なず、致命傷レベルの大怪我もせず早鬼を倒す。これを今回の俺の勝利条件とする」
「なーるほどっ!じゃあ相討ちは有り得ないな!」
「そうなる。それが終わったら子作りしよう?」
「イイぞ!この私と番いなんだから、それくらいの圧倒的な強さが欲しいところだしな!」
「OK組長、じゃあ勝負だ」
「ああ!さぁ、来い!」
番い……別にまだ夫婦ではないのだが……。まぁ、深く考えないでおこう。恋人、という認識でも良いだろう。向こうがどう思っているかは分からないがとりあえずは……。
《頼んだ、袿姫》
《まっかせなさい!》
「神の力を使って戦ってやる。埴輪『杖刀人装備・埴輪兵士型』!!」
「あッ!それ、あの大会の時の……!」
「覚えてたか。これで早鬼の攻撃は通じ────」
顔面に飛んでくる早鬼のドロップキック。回避を狙い顔を背けるも、早鬼の狙いはそれではなかったようだ。
ディオに襲い掛かるダイアーの如く脚を広げて、股で俺の顔を挟み込んだ。汗と体臭の蒸れた匂いは意識しなくても肉棒が膨れ上がってきてしまう。
まだ戦闘中だと自分に言い聞かせ、彼女の両脚のホールドを解こうと、彼女の太ももに手を添える。凄まじい脚力であるにも拘わらずフニッと柔らかな脚で、酷いギャップを感じた。
それから更に数秒経ち、早鬼が脚で俺をホールドしてきた理由が分かった。頸動脈を押さえ、意識をオトすつもりらしい。視界が少しずつ白んできた。
「!」
「おっと、気付いたな?動きが止まったのは流石に予想外だったが……もう遅い、抜け出せないぞ!」
「〜〜〜〜ッ!!」
「兄貴ィ!そんなんじゃあ組長は渡せませんぜ!!ファイトです!!」
「お前はどっちの応援をしてるんだ!」
「あ、すんません!頑張ってください驪駒様!!」
薄水色のパンツが、顔面に押し付けられている。今すぐ舌を伸ばしてパンツの上からでも舐めたい。
そんな欲求をほんの少しだけでも満たすように、狭まっていく視界と薄れる意識の中で、パンツの上辺りに舌を伸ばし、舌先で下腹部を舐めてやった。
「ひゃうっ!?」
「く、驪駒様……?どうされたので?」
「いやっ、何でもな……ひあぁっ♡」
「……まさか、兄貴!!やっぱあんたは漢だァ!!」
「こ、このォッ……オチ、ろぉっ……んひぃっ♡」
ホールドが緩んできた。下腹部だけでこんなにも緩くなってくれるとは思わなかった。
下腹部を舐めた後は、そこを軽く吸ってやった。ちゅぷちゅぷと妙な音がスカートの中の狭い空間に響き、今すぐベッドインしたい気分になってくる。
その欲望もまた何とか理性で押さえ、早鬼の力が抜けるまで、舐めては吸い、舐めては吸いをずっと繰り返した。力が抜けた後は、早鬼が俺の頭に手を乗せて乗っている状態になったので、ヘドバンして半強制的に下ろしてやる。
「っ……中々、やるな……くすぐったかったぞ!」
「イイ声を聞かせてもらった。こりゃあ、この後が楽しみだよ。でも今は戦闘中だからね」
「そうだな。なら次は……本気だぞ!!」
「ッ!!」
助走をつけてドロップキック。今度は……どうやら本当にキックらしい。
装備による篭手でそれを防ぐものの……怪我こそはしなかったが、その衝撃で俺は後方に吹き飛ばされそれに伴う着地の瞬間、臓器に肋骨が刺さった。
「ぐ、ぶっ……い゙ぎゃあっ……!!」
人間ならきっと致命傷だろうが、俺なら致命傷にならない。土煙を晴らして飛んでくる早鬼の蹴りを手で逸らして回避し、地面にしゃがみ込んだままで防衛を始める。
「一気に攻める!うおおおっ……!!」
「それなら……これだッ……!」
袿姫から更に力を借り、先日の団体戦にて袿姫が見せたような巨大な埴輪……獄卒磨弓を創造した。
これなら早鬼の攻撃は防ぎつつ、向こうの攻撃は俺に効かないようになり、戦闘を有利に進める事が可能になる。どんな経験も己の糧とし、利用する。それが俺だ。
「ヤれ、磨弓ィッ!」
「フン、見た目だけだな!動きが鈍重だ!」
磨弓の頭上で回復待ちしていると、待ってましたとばかりに、高く飛び上がった早鬼が、急降下してキックを仕掛けてくる。
そのまま俺は回避せずに迎え撃つ。先日の袿姫が夢月にやったように磨弓に掴んでもらおうと考えたのである。けれども早鬼は、俺の計算を嘲笑うかのように、磨弓の動きをも超える速さで、俺の胴体を踏み付けにした。
「ぎゃあっ……」
「よし、致命傷レベルだな!残念だったな、今回は私の勝ちだぞっ!」
「…………くっそぉ……負け、た……」
圧倒的速度の前に神の力を行使する余裕があまり無かった。というより頭の処理が追い付かなかったお陰で、誰の力を使えば有効打となるのか?という戦術などがあまり思い付けなかった。
袿姫以外の能力でも、早鬼に対して有効打となる能力なんかは幾らでもありそうなものなのだが……。地獄の力以外だと、今でも対策は思い付かない。
「よーしっ、次は子作りだな!おい、オオカミ霊。お前は先に帰ってろ!」
「へ、へいっ、分かりやしたっ!エスカルゴ兄貴、ソッチも頑張ってくだせェ!んじゃまたっ!」
頭だけのオオカミ霊は、ペコペコしたと思うと、ピューッとあっという間に飛んでいってしまった。その方向に勁牙組本拠地があるのかもしれないが、回復に手一杯で分身などを飛ばす余裕は無かった。
「あー……クソォ、油断した……」
「うんうん、私相手なら仕方ないなっ!」
「ちぇ〜っ……」
「さて、回復したな。どこで子作りする?こんなに風が強い、ましてや野外で交尾はごめんだぞ?」
「場所のアテならあるよ。ついてきてくれる?」
「勿論!お前が行く所なら喜んでついて行くさ!」
「ありがとう、早鬼。……好きだよ」
「私も好きだっ!ふふっ……」
「へへ……」
スキマを開き手を繋ぎ、いつものヤリ部屋の前へ早鬼をエスコート。孕ませられるかは殆ど運だが、ヤレるだけヤッてヤろうと思う。
吸血鬼と
エスカルゴの頭の回転より早鬼の方が速い(確信)