母さんから貰った異世界へ行く能力を使い宇宙へ移動。当然無重力空間なワケで、数秒後に死ぬ事を覚悟していたのだが……どうもそんな感じがしない。まるで、呼吸など必要無いとでも言うかのように、心臓は規則正しくリズムを刻んでいる。
《これもへカーティアの加護か》
《あれ、知らなかった?妖怪は呼吸要らないわよ》
《え……?いや待って、首絞めックスで散々苦しんだ経験あるんだけど?》
《それはまぁプラシーボ効果じゃない?いつまでも人間に近い感覚でいるから、そうなっちゃうのよ?人間の心を捨てた後は、感覚を捨てなければね》
《ええ……》
《ほら、ゼウスが来るわよ。戦闘準備!》
「!……霊剣『布都御魂剣』!」
埴輪兵士の鎧を纏ったまま、建御雷の霊剣を手に取り構える。アダマスの鎌を振り上げたのでそれを受け止める為に十拳剣と呼ばれるこの剣を振るい、アダマスの手前で、鎌の柄を斬り飛ばしてしまう。
「ヒュ〜ッ、やるわね。振るわれる最中の鎌を斬るなんて、少しは剣術も成長したのねぇ」
「でもここからが本領発揮なんでしょ?きっと雷霆使いまくるよね、これから────」
雷霆を掲げた瞬間、攻撃が飛んでくると予測した俺達は、それぞれが防御態勢に入る。俺は母さんの結界に身を包み、へカーティアは前面にのみ強固な結界を張っている。しかし防御虚しく、俺達はまたもや貫かれ、即時リスポーンする。へカーティアの死体は宇宙空間をフワフワ漂ってどこかへ行ってしまった。なんだかとてつもなくシュールだ。
それにしても流石は本気になれば宇宙を滅ぼせる雷霆。防御すらできないらしい。あれを止めるには宇宙を超えるなにかで守らなければいけないのかもしれない。
つまり不可能。テュポーンの如く、没収するしかないらしい。けれども俺の雷のように自在に扱えるというワケでもないらしく、ゼウスの攻撃は極めてワンパターンだ。防げなくとも対抗策はある。
《宇宙じゃ神奈子様の能力も諏訪子の能力もろくに使えないけど……
《もういいわ》
《……?へカーティア?》
《殺され、殺され、殺され、こんな繰り返しはもう飽きた。さっさと冷凍してやって、太陽にでも追放しましょうか。ゼウス、こっちを殺す事しか考えてないからワンパターンなのよね。つまらないの極致だわ、こんなの。お疲れ様、エスカルゴくん。先に帰ってていいわよ、私もすぐ帰るから》
《え?》
《大丈夫、ちゃんとご褒美はあげるから。他の神の足止めだけでも大したもんなのよ?》
《いやでも俺まだ戦いたいし……》
《だーめ。本気で冷凍してやるからあなたが居たらダメよ。あなたも冷凍しちゃうから。それじゃあ、カウントダウンよ。……5……4……3……》
《へカーティアッ!?》
「…………0」
直後、へカーティアは無詠唱で「大紅蓮地獄」を発動させる。恒星による一定の煌めきが無くなり、時が止まったのが肌で分かった。
けれども、へカーティアが時を止めたのなら俺がこうして思考できたり……手を動かせるのはヘンだ。どうも何かがおかしい。
「……え?あなた……なんで動けるの?」
「…………わからない。諏訪子達に話し掛けられないから……多分……今動けているのは……」
「私と……あなただけ?」
「た……多分?」
「……アハッ!本っ当にあなたって子は、私の予想の斜め上を行ってくれるわね!」
「褒めてるの?それ……」
「それじゃ、記念にトドメは2人で刺しましょう?大神ゼウスを太陽に追放よ。グーパンでね♡」
ニッコリと微笑んで頷いて見せて、それを了承。へカーティアは全力で身体能力を強化、俺も改めて自己強化。彼女は左拳、俺は右拳を、時が止まったゼウスの胸に渾身の力で叩き付ける。
「「
「────そして時は動き出す。……なんてね☆」
「がッ……!?」
溜まったエネルギーは時間停止解除と同時に放出され、ゼウスはうっかり雷霆を手放し背後の太陽へ目にも留まらぬ早さで吹き飛ばされてしまった。
「おっ。雷霆ゲット♡」
「うわ……鬼に金棒……へカーティアに雷霆だな」
「私はコレ要らないわ。こんなモン無くても、私、強いもの。あなた欲しい?」
「ううん、要らない。暴走してる時にそんなモンをうっかり使ったら、俺が幻想郷を……いいや、世界を滅ぼしちゃうからね」
「そ。なら、これは破壊しましょう。適当にスキマ開いて空間ごと消滅させといて」
「分かったよ」
適当にスキマ空間を開いた後で、へカーティアの目の前でそれを消滅させて見せた。製作者達に少し申し訳なく思うが、俺含め悪しき者の手に渡す訳にいかないので、消滅させるしかないのだ。
もし幻想郷に持ち込んだら、新たな争いの火種になってしまう可能性もある。神の得物に封印なんてしようものならどんな反動があるかも分からない。やはり確実に消すしかないのだ。
ただし、アダマスの鎌の刃部分だけは、記念にと持って帰ることにした。鎌としての機能はほぼ無いようなものだし、魔法金属なら、創造できるように鍛えておいても損は無いと判断したからだ。
「これでよし、と。ありがとうへカーティア、良い思い出ができたよ」
「なら良かったわ。さっ、帰りましょうか。母なる大地、地球へ」
「うん。今すぐご褒美頂戴……もう我慢できないよ」
「うふふ……せっかちさんね♡……いいわ、あなたに処女神としての私を殺させてあげるわ♡」
「…………マジで?」
「んもー、ホントに信じてなかったのねー!?」
「だ、だってそれってへカーティアの能力というか権能を1つ失わせるワケだし本気で相手してくれるなんて考えられないって……」
「なら、ほら……これでどぉ?」
「ッッ!??」
宇宙空間にて可愛らしくピラリと持ち上げられた彼女のスカートの下は、布一枚も存在しない肌色の世界が広がっていた。
どうやら今日合流した時には既にノーパンだったらしい。
虹龍洞を見るに、妖怪(人外)は呼吸の必要が無い気がするんですよ。(種族によるとは思うけど)
そこまで奥深く入ってない自機が酸欠で苦しんでるのに、その奥で活動している子達が元気ですしね。
いやマジで呼吸の必要、無いのかよ!
人間や動物とは「明確に違う存在」、それが妖怪、神なのです。みたいに言われた気分ですね。
い〜い感じだァ……。
神主、出す必要無い情報は出さないタイプなので、やっとここで妖怪についての基本設定が明かされた感じですね。
なので首絞めックスで苦しいのはプラシーボ効果。そう思ってください。もしくは食道を押し潰されて苦しい、みたいな。そうしないと、エスカルゴ達が可哀想に思えてきます。
虹龍洞をプレイした首絞めックス同人誌の作者さんなんかも俺と同じ感想を持っていそうですね。
集まるチカラで時さえ越えて……ってのは、言わずと知れたジョジョ(OP)ネタですね。
へカーティアの時間停止が効かないのは今回限り。ゼウスを2人で倒す為のご都合主義ってヤツです。
ギリシャ神話本編でも「無常の果実」というご都合主義展開になったでしょう?そのパロディです。
だって、既にほぼ最強だったテュポーンがやられるにはこういうご都合展開にするしかないもんね……。わかる気がする。強すぎてどうにもならなくなったからこそのご都合展開。わかる。