※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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この度「東方神竜伝 ~幻想入りした二人の物語~」という作品とコラボする事になりました。
作者の★sophia★さん、ありがとうございます。

実は3年前のコラボです。
アンチ問題があったので、コラボ先への被害を考慮した結果として色々書き直した上で今公開する事になりました。
★sophia★さん、遅くなってすみませんでした。


閑話 〜異世界の彼ら〜

「今晩は満月ですね、旦那様」

 

「!……みたいですね。俺がここに居るの、やっぱり分かっちゃいましたか?」

 

「ええ。図書館にも部屋にもいらっしゃらないのであれば、大抵はここですからね。来てはいけませんでしたか?」

 

「いえ、そんな事は」

 

 紅魔館の屋根の上。ここは、個人的に博麗神社の屋根の上より落ち着く場所だ。そして咲夜さんとの主なデート場所でもある。

 そんな所でボーッと月を見ていると、咲夜さんが音も立てず、しかし時も止めずに現れた。まるで、今からデートしませんかと誘われているようだ。

 

「それなら良いのですが……。シャロンちゃんは?」

 

「1人にしてくれって言って下に置いてきました。少しあの子には悪いですけど、考え事をするんならこういう落ち着く場所で1人が望ましい」

 

「……何を考えていたのですか?」

 

「やっと色々やる事が終わったんで、月を見てただボーッとして妄想してたんです。そろそろあの子とデートしたいなー、どんな服にしようかな、とか。俺、オシャレのセンスが無いって言われますけど、また咲夜さんにコーディネートしてもらうワケにもいかないですし……」

 

「あら。そんなの、気にする必要は無いんですよ?時間を止めてしまえば無限に選べますし、作れるんですから」

 

「それはまぁ……そうなんですけどね」

 

「それに、ここ数年は旦那様もオシャレのセンスがアップしてると思いますよ?ワンポイントとはいえそういうアクセサリーは大事ですからね」

 

「アクセサリー?指輪とペンダント以外にしてないような……」

 

「ほら、そのミサンガですよ。足首の」

 

「あー。だけどここにミサンガ付けててもあんまり女の子に見てもらえないと思いますけどね。事実、これに言及してくれたのは咲夜さんが初めてです」

 

「ふふっ、旦那様の事ですから、デート=エッチ、みたいな所あるでしょう?裸になればそういうのも見られますから。それでも誰にも言われないということは、皆、旦那様に夢中なんですよ♪」

 

「べ、別にそればっかじゃないですよ……ご飯だとか散歩だけのデートも最近はしてますし…………てか、俺に夢中だなんてそんな……えへへ……」

 

「へぇ……ご飯だけ、ですか。意外ですね。因みに、誰とですか?」

 

 その「意外です」は俺のセリフだよ、と心の中でツッコんでみる。デート=エッチだなんて、案外、咲夜さんもズケズケ言ってくれるものだ。

 

「最近だと、久侘歌ちゃんとか静葉とか穣子とか、雛とか……」

 

「えっ?とうとう山の野良神様達にも手を出したんですか……最近やけに見境無くなってません……?」

 

「あ、穣子については静葉には秘密ですよ?なんか静葉、穣子の事は好きだけどコンプ抱えちゃってるみたいで、俺と穣子がとっくに関係持ってるなんて知ったら……俺と静葉のみならず、秋姉妹同士の仲も悪くなりそうなので……」

 

 俺は、静葉に「穣子よりは好き」と言っている。勿論、これは嘘ではない。だが「穣子が嫌い」とか

「穣子については何とも思っていない」とは言っていない。そう、俺にとって「静葉>穣子」なだけで秋姉妹どちらも好きだ。それだけの事だ。

 

「しかし、侍らせる女の子が増えたのなら、尚更、オシャレに気を使った方がいいかもしれませんね。でも付けすぎてもダメですし……。というより、そのミサンガ……どこで買ったんですか?何やら不思議な力を感じなくもないですが。前々から、ちょっぴり気にはなっていたんですよね」

 

「あー、これは買ったんじゃなくて────」

 

 

 ◆

 

 

「ここか!?大ちゃん!?」

 

「はい!ここから変な穴みたいなのが……」

 

「何!?何があったのー!?」

 

 数年前の事だ。例によって霧の湖近くでチルノの特訓の面倒を見ていた俺は、何だかヤバい、得体の知れないモノを発見してしまい、ヤバい音を聞いたらしい大ちゃんに呼ばれ、そちらへ向かった。

 その場所では、普通の空間に割れ目のような穴が空いている。ただし、吸い込まれるだとかそういう現象は無く、ただ本当に穴が空いているだけだ。

 すると穴の中から、背丈は俺と大差ない、普通に見える1人の翼のある男……フランやレミリア程度の身長の1人の女児が現れた。

 ただ、見た目はそんなでも感じられる力はどこかヤバいものがあると俺の勘が告げている。普段ならそこまで頼りにならない「勘」だが、ここはそれに従うしかないと思った。

 しかしヤバい力を持っているのであれば、今すぐ攻撃を仕掛けるワケにもいかない。相手方の出方を見る為にも、警戒心を込めた上で話しかけてみる。

 

「……お前らは誰だ?」

 

「私はサクラ。別の幻想郷からやってきたの」

 

「レイスだ。同じく別の幻想郷からやってきた」

 

 女児に続いて男が言う。この様子を見るに、俺や炎火のように紫さんに頼ったワケではなく……自身の能力で別の幻想郷に来たと考えるのが妥当だろう。

 今すぐにでも追い出したいくらいだが仕方ない。少しは対話の努力というものをしてみよう。もしも戦闘に突入するなら俺も何度か死ぬかもしれない。少なくとも、能力を使った勇儀くらいの戦闘能力はあるように見える。

 

「良ければそっちの名を教えてくれないか?」

 

 攻撃の意思は無さそうだ。それなら対話で全てを円滑に進め、帰るように促してみよう。

 

「……別の幻想郷……そうか。俺はエスカルゴ・スカーレット。吸血鬼だ。なんで二人はこの幻想郷に来たんだ?」

 

「それは私の能力でこの世界に空間を繋げたからだよ。こんな風に」

 

 ビギッ、バギギッと酷く耳障りな音を鳴らしつつあの穴をもう一度開いてみせるサクラ。黒板を爪で引っ掻く音くらい不快な気持ちになってきた。

 できるだけその不快感を顔に出さずに、2人との会話を続ける。

 

「成程、大ちゃんが聞いたのはその音か。……紫さんは関係無いのか?」

 

「無いね。私個人の能力だし」

 

「ふむ……なら何故ここに来たんだ?」

 

「私が繋げられる範囲の世界がここくらいしか無くてね。ここに来たのは単なる旅行だよ。色んなとこを見て回ろうと思ってね」

 

「そうか……」

 

 旅行感覚で別次元の幻想郷に来るなんて、やはり高位の奴の考える事は分からない。

 頭が痛くなってくるのを感じながら

 

「まぁ、ここで話すのも疲れるし、一旦移動しても良いか?」

 

「ああ、そうしてくれると助かる。……そこの二人はどうするんだ?」

 

「アタイは帰る!またね!エスカルゴ!」

 

「あっ、待ってチルノちゃん……さようならエスカルゴさん!」

 

「おう、またな〜」

 

 帰らせるつもりだったので、チルノ達が自分から帰ってくれたのは正直助かる。得体の知れない奴と大事な子達を一緒に居させたくないのが本音だ。

 炎火のような奴なら、警戒もここまで高めたりはしないのだが……なまじ旅行で別次元に来る奴らだ、警戒するなと言う方が無理がある。

 自分のテリトリーに誘い込んで、いつでも彼らを迎撃出来るようにしておきたい。

 

「……意外とフレンドリーな所もあるんだね?」

 

(明るいけど闇が多いな……)

 

 サクラは怪しむような目で俺を見る。何を考えているのかは、サトリ妖怪ではない俺に悟れるはずも無し。とりあえずはスルーしておこう。怪しむのはお互い様だ。

 

「んー、取り敢えずは紅魔館?いやでもあそこは……いやでも、ここから一番近いのは紅魔館だしなぁ……よし、紅魔館に行くか」

 

「移動先は紅魔館で良いの?」

 

「あぁ。取り敢えず向かいながら話そう」

 

「おk。……『龍化』」バサッ

 

「っ!?」

 

 レイスは変身しパッと見でヒトではないと分かる何かになった。俺も見た事がない種族だ。

 するとレイスはそんな俺の考えを読んだように、自らの種族を名乗った。 

 

「俺の種族は竜人。人と龍を継ぐ者だ」

 

「人間では無いと分かってはいたが、まさか龍とはな……」

 

「あ、そう言えばさっきスカーレットって名乗ってたけどもしかしてスカーレット姉妹と関わりがあるのか?」

 

「……あの二人は、俺の彼女だよ。……姉弟でもあるけどな」

 

「そうなんだ。まぁ分かってたけど」

 

 レイスではなくサクラがそう答える。言わずとも分かるなんて、まさかこの女の子は……賢者かそれに類する者なのではなかろうか。

 

「なんで分かるんだ?」

 

「この姿で分かる?」

 

「っ!?その姿……覚り妖怪なのか?」

 

 ボンッと音を立て、サクラも変身。サードアイ、あの血管のような管。パッと見でサトリ妖怪だなと分かった。

 しかしそれなら良かった。賢者とかなら、少し、いやとんでもなく不都合だったが。

 

「ご名答。でも私が読むのは心じゃないよ。私が読むのは精神。記憶とかも含まれるかな」

 

「パネェな……」

 

 そういえば、さとりも記憶は読めるんだったか。ならさとりとあまりスペックは変わらなさそうだ。強い能力はあれども、読心能力自体は既知の範囲。底知れないがある程度は安心できた。

 

「あれ?エスカルゴさん、お客様ですか?」

 

「んー、まぁ、そんなもんかな。多分害は無いから通してもいいでしょ?」

 

「多分ってなんだ多分って」

 

「分かりました。どうぞ〜」

 

「ありがとな。そんじゃまた後で」

 

 美鈴とて、完全に安心したワケではなさそうだ。彼女の目に宿った静かな警戒心、俺は見逃さない。有事の際は駆け付けます、と目で訴えかけてきた。

 それに対しても「ありがとう」と答え、レイスとサクラを俺のテリトリーでもある紅魔館へ通した。嫁も彼女達も娘も居る、迎撃体勢はバッチリだ。

 

「……納得できねー……」

 

(しょうがないとは思うけどね)

 

 納得できないだなんて、異な事を言うものだ。

 あんな現れ方をしておいて警戒するなと言うのは無理がある。誰だって警戒(そー)する。俺もそーする。

 

 

 ◆

 

 

「あら、旦那様。お客様ですか?」

 

「ええ。テラスで少し話そうかと思うんで、お茶お願いできますか?」

 

「承知致しました。……おやつもお付けしておきますね♪」

 

「すみません、お願いします」

 

「おやつとか子供みたいだな」

 

「うっせ。いつまでも中身は子供(ガキ)でいたいんだよ」

 

「ふーん……よくわかんないヤツだな」

 

「そうか?」

 

 中身は子供で居たいなんて、女性が「いつまでも美しくありたい」と願うのと変わらないような気がするのだが。

 

(この世界は……ウチらがいた世界より未来の世界なのか……でなきゃ咲夜が吸血鬼になっている理由が……。そして……『旦那様』?あの二人……もしかして……?)

 

 

 

「……テラスなんて、自分の世界の紅魔館でも行ったこと無かったなぁ……」

 

「あれ?行った事無かったっけ?私はレミリア達とよくお茶会してたけど……」

 

「俺基本、部屋にいるか剣の修行してるかだしな……外に行くのも大体深夜だし」

 

「剣?」

 

「ん?あぁ。これの事だ」

 

 腰に提げた二つの大剣に手を当て、レイスはそう言う。細身の割にあんなモノを使うとは、やはり、人間ではない。漫画の世界の住人でもなければあの双剣……しかも大剣なんて扱えないだろう。

 

「随分とデカい剣だな」

 

「ま、俺のお手製の剣だからな。大事な愛剣さ」

 

「正直、レイスが剣を使うと勝てる奴はかなり限られてくるよ。私でも勝てる時は少ないからね」

 

「……マジか」

 

 見た所、力押し専用の剣に見えるがどうだろう。だが俺の剣と違い、自らの力を込めて分身のようにしているワケでは無さそうに見えるので、彼本人に気を付けていれば勝てなくもなさそうだ。

 こう言っては悪いが、レイスがあの妖忌より強いようにも見えない。……いや、人は見た目によらないという言葉は知っている。しかし纏う雰囲気というものが強さを物語ってくれるというものだ。

 

「なぁ、幻想郷にいるなら、スペカは持っているだろ?どんなのがあるか、教えてくれないか?」

 

「あー?……そーだなー、雷落としたり追尾させたりかなぁ」

 

「雷?て事は能力は雷関係か?」

 

「《雷を操る程度の能力》。力量に限界は無い。この左眼はその代償みてぇなモンだな」

 

「へぇ……限界が無い……か。まぁ、能力で限界を無くせる俺が言えたことじゃないよな」

 

「能力で限界が無いとか、チートっぽいなー。あ、一応褒め言葉だから気にすんなよ?幻想郷にゃあ、チートが多すぎらァ……。そっちの幻想郷も、そんな感じなのか?」

 

「まだ幻想郷に来てそんな経って無くてな。あまり場所を見てないが、少なくともサクラを超えるチートはなかなかいないと思うぞ。なんせ創造の力を持っているからな」

 

「母さんと同じか〜。概念も色々イジれるワケ?」

 

「勿論。世界を創り出すのも最近出来る様になったからね。……ていうか……母さん?……あぁ、魔界神か」

 

(え?俺そんなの初耳なんだけど)

 

「そ、魔界神。概念も何もかも生み出したお方。……ところでよ、『創造神』とは言うけど、ぶっちゃけ概念的破壊も出来るよな?母さんから話聞いた事は無いんだけど、サクラ……さんは特定の物体の存在を消す事は出来る?」

 

「……出来る……事は出来るね。でも私はそんなに存在の抹消自体はあまりやらないし、取り敢えず出来るって感じかな」

 

「ま、やらなくて済むならそれが一番だよな。出来るってだけでやっぱスゲーな……。力借りれば俺にも出来るけど、俺単体じゃ無理だ」

 

「……?『力借りれば』?……どういう事?」

 

「ほら、巫女って霊力があんじゃん?そんで、神をその身に降ろして、力を借りられる。俺にも霊力があるんだ。だから神から力を借りられる。本来の吸血鬼には無いんだけどな」

 

「要するに貴方は特殊なのね」

 

「そゆこと」

 

 混ざり物の吸血鬼だしな、と心の中で付け足す。最初は母さんの薬が不完全だったから。次に、娘の細胞も含めた薬で再吸血鬼化したから。

 どちらにせよ霊力はあるし、寧ろ再吸血鬼化後の方が増えたと言える。特訓で増やしたのもあるが、やはり薬による影響が大きいだろう。例えるなら、そう、上限が増えたような感じだ。

 

「なら……俺とも出来るのか?俺も神の一人、白黒天龍神なんだが……」

 

 と、レイスは初めて聞く神の名を言う。竜人でもあるのに神でもあるなんて、なんというかもう属性盛り込みすぎだ。早苗が人間であり神だったという現人神(竜人ver)みたいなものなのだろうか。

 

「出来るんじゃねーかな。今の所、唯一神、異国の神、八百万の神とは出来てるし。レイスは……八百万の神とは少し分類が違うっぽい?」

 

「んー、俺は……多分唯一神に分類されるのかな?八百万の神だとそもそも信仰してる人がいないし……異国なんて行ったことが無いしな……」

 

「今俺が言った区分なら唯一神かな。異国の神っつーのは異国に住む神って言うより神話内に出てくる神だ。ギリシャ神話とかローマ神話とか聞いた事無い?」

 

「あー、聞いた事はあるな。その神話とかに出てくる神は異国の神になるのか。確かに唯一神になるな」

 

「日本神話の神って信仰心さえあれば最高神クラスの力を出せるんだ。が、信仰心が無きゃ……少し力が強い妖怪にすら押される。案外デリケートなんだよな、日本の神って。そう考えると唯一神って楽だよな」

 

「確かにそうだな。……それで……通信を始めようと思うが……問題は無いか?」

 

「……特に」

 

「なら……」

 

 これまた、頭の中がうるさくなりそうだ。少し、頭を休める時間を増やしたい。そうでないと、俺が過労死してしまいそうだ。

 

《聞こえるか?》

 

《うん、聞こえてる》

 

《うわぁっ!?なんか、また知らない人来たぁ!?何!?今度は誰!?》

 

《落ち着いて諏訪子……害は無いから。唯一神らしい》

 

《まぁ!なら神綺さんと同じね!ま、私よりかは下でしょうけど♪》

 

《へカーティアの強さは異常だしね》

 

《また騒がしくなるのか……》

 

《お、男の人ですか……》

 

《貴様、我の器に何か用か?》

 

《あーもーっ!!ちょっとうっさいよ!……それと、レイス!俺の許可無く俺の守護神達と会話すんの禁止な!何となく危険な感じがする!色んな意味でだけど》

 

《……?よく分からんが、取り敢えず分かった》

 

「心覗いて分かったけど、エスカルゴとの通信の時に聞こえた声は守矢神社の早苗、諏訪子、神奈子と異国の神?だと思うへカーティア?と八百万の神、雷神の武甕槌命で合っているはずだよ」

 

「要するに、俺を除いた計6人で話していた訳か。なかなかに多いな、これは。……大丈夫か?」

 

「あぁ……。疲れはするが、悪いこっちゃねぇ」

 

 もう慣れた。それでも疲れるのは間違いないが、要は、慣れてしまえばこっちのモンなのだ。全ては慣れに通じる。そうとしか言えない。

 

「そうか……。いつもあんな感じなのか?それとも、俺が入って来たからか?」

 

「後者」

 

「……なんかすまん」

 

「ホントだぜ。まぁ、すぐ収まると思うから、別に良いよ。何事も慣れだ」

 

「そうか……。俺の与える加護は精神力等のコントロールをしやすくする。……困ったら呼んでくれ」

 

「オッケ。そうさせてもらうよ」

 

 ただ異世界間のやり取りだと俺への負担が酷いと予想される。となれば、世界滅亡レベルの大災害を除いてレイスと会話しない方が良さそうだ。

 そんなことを思っていると、レイスが言う。

 

「……ところでその二つの剣……剣術でも使っているのか?」

 

「型なんて無いし、完全な我流だがな。無闇矢鱈に振り回し力を解放し敵を殲滅する」

 

「物騒だな。……俺は、自ら編み出した『竜華閃』、

『神竜閃』を使って敵を打ちのめすけどな」

 

「かっこいーな。……俺、誰かを斬るのにはあんま剣使わないんだよな。刀剣使いと戦う時は使うけど。だって治癒させるのめんどいし殺したらヤバいし。俺が本気で剣使うのは殺さなきゃいけない時かな。そっちはどういう時に剣使うん?」

 

「基本斬撃による遠距離攻撃や弾幕を切り裂いての相殺とかに使う。攻撃は呪文やレーザーとかの弾幕を主に使ってる。刀剣使いとなら急所を当てない様に切り裂く。……峰打ちでな」

 

「俺のは両刃だから剣の腹で叩くしか出来ないな。まぁそんな技術は無いから、相殺は今は弾幕同士でやる」

 

「被弾数無しなら特攻で終わらせるけどな……。大体決まってるしな、遠くからしか攻撃出来ない」

 

「それなー。特攻は良いよな。なんなら自爆テロすればいいし」

 

「自爆テロか……確かに出来るけど威力がデカすぎるから使うに使えないんだよな……。あまり調整も出来ないし」

 

「同じだな。俺もだ」

 

 ニヤリ……と笑って見せる。自爆テロという言葉に反応したという事は、きっと2人は純粋な幻想郷の住人ではない。俺のように幻想入りした者だ。

 全くの推測だが、きっとそうだ。

 

「後爆発した衝撃で鱗が四方八方に高速で撃ち出されて辺り一面を切り裂くから後始末が面倒なんだよな」

 

 そういえば竜人及び竜なら鱗があるのか。確かによく見れば鱗のようなものがあるが、俺の翼よりも色々と大変そうに思える。だがまぁ、種族としての特徴なら仕方なさそうだが……。

 翼もあるのに鱗もあるとは難儀な事だ。

 

「洗うのも、大変そうだな。隙間に汚れが溜まったら……」

 

「普段は人間状態で過ごすからな。そこまで困る事は無いかな」

 

 人間状態に戻ったらしく、鱗は消えた。しかし、やはり竜人と思しき鈍重な気配は残っている。人間なんかには思えようがない。やはり人外だ。

 

「なるほどなー。俺は蝙蝠になれる程度だな。あ、これは俺だけじゃなく吸血鬼全般の特性なんだが」

 

「あぁ……こっちのレミリアが何かそんな事言ってたような……。あと、俺がなれる姿は人間状態、竜人状態、完全龍化状態、蛇神状態くらいかな?」

 

「スゲー。俺は今のこれと蝙蝠とあとは力を借りる神による擬似神化形態かねぇ」

 

「ほぉ……。あ、他にもな、この翼はな、俺の自由に消したりできるし、自分の好きな翼に変化出来るんだ。こんな風にな」

 

 そう言って、レイスは少し得意げに左にフランの翼、反対側に天使の翼を生やした。形態変化が可能なのは羨ましく思えるが、どこか……こう……。

 

「うわぁ〜……全然違う翼で不便な事無いのか?てかアンバランス……」

 

「同じ重さにして調整してるからね。レパートリーも多いしな」

 

 すると、フランと天使の翼を消して、一対の竜のような翼を出した。竜なんて存在は見た事がないがゲームや漫画でなら見た事がある。そんな感じの、ザ・竜(ドラゴン)といった感じだ。

 

「でもバリエーション豊かでも戦闘でそれ生かせるのか?」

 

「生かせるか、と言うと微妙だな。素早く羽ばたいて被弾を避けるとかには使えるな。用途によって切り替えるな。地上なら消している。飛ぶ必要も無いからな」

 

「そうだな」

 

「……まぁ、剣を使うなら俺は強いけど……サクラはトラップ、呪文、ワープなどを巧みに使って追い詰めて来るからな」

 

「あー、そういうタイプね。トラップはゴリ押し、ワープは能力封じで行けるかな。呪文は利用出来るし」

 

「そう考えるか……。その場合、私は別の手を次々出すよ。無効化の能力とか」

 

「別に対抗する気はねぇよ。こっちの幻想郷にそういう奴が居たら、行動される前に破壊すりゃいいだけだからな。問答無用だ」

 

「……ま、あくまで対抗策を言ったまで。気にしないでね。……ところでさ、その剣、持ってみても良い?」

 

「そんな重くないぞ。俺の戦闘は、動きやすさ重視だからな」

 

「……結界なんて張られてたんだ。ふぅん。見た目は結構カッコイイね」

 

「禍々しい力を感じるって顔してんな。俺には分からんが、よく言われるよ。『そんなもの持ってると邪気に呑まれる』とかも言われたっけな。まぁ、結果はこの通りピンピンしてるがな」

 

「……確かに問題なさそうだね。……レイスもその剣見せて見たら?」

 

「ん?……まぁいいけど。そらよっ」

 

 ブンッと空気を切りながら剣を投げる。もう少し丁寧に扱ってやればいいものを……。

 しかしこの剣、大剣なだけありそれなりに重い。一振りだけで13キロ〜15キロ程度はありそうだ。

 

「おっ、俺のとは違って重いのな。パワー重視?」

 

「まぁそうだね。重いと振る速度とか普通遅くなっちまうけど……そこは力で何とか出来るからな」

 

「へぇ……。俺は、パワーはスピードで補ってるね。速くなれば破壊力とか底上げされるしさ」

 

「だよな。……俺は、もっと練習が必要だねぇ……と言っても剣を思い切り振れる場所がないけど」

 

「白玉楼で妖夢に相手してもらえば?それかどこか異世界に行って妖夢の爺ちゃん探すとか」

 

「いやー……俺ね?向こうでは、妖夢の師匠的な事をやっていてさ…………ん?異世界の妖夢の爺ちゃん?誰の事なんだ?」

 

「妖夢の師匠。魂魄妖忌。物質は勿論のこと、物質じゃないイミワカラン物まで切れる」

 

「Oh……マジかよ。俺とほぼ変わらんのか?俺も一応時を斬るまでは会得しているが……」

 

「俺の知る限りでは空間にかけた能力ごと斬れる」

 

「まさかとは思うが……やられたことがあるのか?」

 

「まーね。俺実は、母さんから『重力を操る程度の能力』貰っていてさ、それ使って攻めたら……うん。能力効かない場合を想定して空間そのものに能力をかけたが、ものの見事に斬られたよ」

 

「えぇ……?……でもそんなに手練なら一度は戦ってみたいな。……帰ったら妖夢に聞いてみるよ」

 

「妖夢が幼い内に頓悟したから妖夢は何も分からないと思うぞ」

 

「幽々子さんなら何か知ってると思う?あの人なら多分……」

 

「知って……そうではあるが、はぐらかされるか弄ばれてオシマイだろうな。そもそもどこに行くのかも言わないで突然消えたらしい。主にも言ってなさそうだしな」

 

「やっぱりか……。地道に探すしか無さそうだな」

 

「それがいいな」

 

 と言ってもレイスは神だし、サクラはチートだし何だかんだその気になればすぐ見つけられそうだ。新たに能力を付与して、その能力を使えばいいだけなのだから。羨ましいやら羨ましくないやら、俺もよく分からない。

 

「ねぇ、エスカルゴ。こっちのレミリア達はどうしてるの?やっぱり世界での違いはあるのかなーって思って」

 

「……………………驚かない?」

 

「……あぁ、成程」

 

「え?……多分?」

 

「レイスは絶対無理」

 

「え?それってどういう……」

 

 流石サトリ妖怪の力があるだけある。俺の思考を読んでさえしまえば、驚くも驚かないも無いのだ。ただ、レイスはそうもいかないらしい。

 

「いいから、聞けば分かるよ。……お願い」

 

「……俺の子産んでる」

 

「……………………」

 

 やはりかなりの衝撃だったか、まるでポカーンの顔文字のような顔になってしまったレイス。尤も、読心の能力でも無ければこんな反応になってしまうのは仕方ない。

 レミリアと言えば幻想郷でも指折りの実力者だ。そんなレミリアが、幼いレミリアが、まさか出産を既に経験しているなんて。

 

「あ……こいつショックで放心状態になってるし……てゐっ!」

 

「いてっ!?」

 

 サクラは一瞬で手元にピコピコハンマーを創り、迷いなくレイスに思い切りハンマーを叩きつけた。ピコピコハンマーなのはせめてもの優しさだろう。

 

「……やり方に悪意を感じたけど、まあいい。名前は何?」

 

「レイチェル・スカーレットだ。レミリアがさらに幼くなった感じで、姉妹にしか見えねーけど……まぁ母娘なんだ」

 

「ふぅん……いい名前じゃん。……姿を見せて貰う事って出来ない?」

 

「……ちょっと部屋行ってくる」

 

 悟空のように額に指二本を当てて、瞬間移動してレイチェルの元へ。レミリアもそばに居たので話はすぐに通せた。

 レミリアも、別の幻想郷の住人にそれなりに強い興味を示したので2人揃って連れていくことにした。

 

「連れてきた」

 

「うー✩」

 

「初めまして。こっちの幻想郷のレミリアよ。レイチェル、挨拶なさい」

 

「こんにちはー!」

 

 右手を上げて元気いっぱいな様子で挨拶をする。我が娘ながら、大変良い子に育ってくれたものだ。将来が楽しみな子供の1人である。

 

「初めまして。別の幻想郷から来たサクラです」

 

「初めまして。同じく別の幻想郷から来たレイス・スカーレット・ドラゴニールだ。どうぞよろしく」

 

「よろしく。……やっぱり並行世界っていうのは幾つもあるのねぇ。そっちの私はどんな感じかしら?」

 

「んー、この前プリン戦争が勃発してたかな」

 

「馬鹿ねぇ……」

 

「いやこの前までしてたろ」

 

「2、3年してないしぃ〜……」

 

「子供め……」

 

「ていうか子供の前で言わないでくれる!?腹違いの子達とそんな下らない事で喧嘩したらどうするの!」

 

「下らないって事は自覚してんだな。まぁ、それはエリスのせいだったんだけど」

 

「くっ、あの女……!」

 

 少し置いてけぼりになってしまったか。レイスが何とも言えない顔で苦笑いしてしまっている。

 するとこちらの会話が一段落したところで、彼が口を開く。

 

「まぁ、うちの場合は、サクラが瞬時に縛り上げて沈静化してたな。いやー、あれは忘れられない」

 

「そうなのか。こっちは、争いを発生・激化させる能力者が近くに居てさ、自然の争いよりも激しかったから止めるのが大変だったよ」

 

「さっき言ってたエリス?って人の事か?」

 

「そ。負の感情を増幅させるんだ。だから少しだけ

『あ、プリン食いやがった……』みたいな事を思えば

『プリン食いやがってこの野郎!』みたいになり、食った方は『なんでそれくらいでキレるんだよコンニャロ!』みたいになり、喧嘩はより激しくなる」

 

「ふーん。ま、何かあった時の為に一応覚えておくかな。……ん?……どうやらおやつが来たみたいだね」

 

「お待たせ致しました」

 

 弦月姫が、先程頼んでいたおやつを持ってきた。顔を見せるには丁度いいタイミングだと思う。時を止めずに持ってきたのは、別の幻想郷の住人がいるからだろうか。

 

「お、キタキタ……って、子供咲夜っ!?」

 

「……やっぱりか……」

 

 やはりサクラは驚かずレイスは目を向いて驚く。そりゃあ「レミリアの子」を見た次に「咲夜さんの子」を見れば、こんな反応にもなろうものである。

 

「十六夜弦月姫です。以後お見知り置きを」

 

「エスカルゴ?まさかとは思うけど……この子も?」

 

「うん。レイチェルの腹違いの姉、俺の娘」

 

「ふぅん……」

 

 まだ子供が居そうだな、みたいな顔をして何やら考え込んでいるサクラ。すると次の瞬間、彼女は、何かワザを使って見せた。

 

「ちょいと失礼。『探知結界』」

 

「……?」

 

「今サクラは、幻想郷全土を探知して、エスカルゴの……残りの子供を探してるんだろな。……多分だけど。一応聞くけど、あと何人いるんだ?」

 

「9人。合計11人」

 

 うわぁ、とも、ほぉ……とも取れる絶妙な顔をするレイス。どっちなんだか、サトリ妖怪でない俺には少し読み取りにくい表情だ。

 

「……分析完了。1人ずつ言うから、ちょっと説明をお願い」

 

「オッケ。軽〜くな。軽〜く」

 

「えーっと、まずはここ、一箇所目。多分レイチェルと弦月姫だね。この2人はさっき聞いたね。二箇所目は……白玉楼だね。珍しく男子の気配だけど。この子は?」

 

「魂魄妖舞。5歳の男子」

 

「魂魄って事は妖夢か……サクラ、様子は?」

 

「ん。妖舞と妖夢、そして……妖忌だね。多分、動きからして修行中っぽい」

 

「動きまで探知出来んのな。てかそこ幻想郷じゃなくて冥界だぞ?緩んでるとはいえ結界を越えて探知できるとかヤバすぎ」

 

「チートですから。……まぁ、それは置いといて、三箇所目は……妖怪の山だね。2人分の反応があった。んーと、1人は高速で移動してて、もう1人は守矢神社にいるね。この子達は?」

 

「速い方は射命丸穹、11歳。神社にいるのは東風谷樹里愛、5歳だ。どうも俺の子達は、女子率が高い様でな」

 

「ホントだね」

 

 クスッと可愛らしくサクラが笑う。女児にしては落ち着いた話し方だしどこか子供らしくないように見えるが、笑う姿は、年相応に見えなくもない。

 

「えーっと、射命丸だから文か。確かに納得の速さだね」

 

「俺は亜光速で飛べるけどなー……その2人の様子は?」

 

 子供相手に対抗するだなんて、どうやらレイスは負けず嫌いが激しいらしい。将来子供ができたら、親子喧嘩が勃発しそうだ。

 

「樹里愛はどうやら諏訪子を宥めてるらしい……穹はあちこち飛び回ってるね。探知がやっとできるレベルだよ」

 

「……また喧嘩してたらしい。内容は……『またヤバい神が来た』って神奈子様に八つ当たりしただけっぽいが」

 

「あ、これは俺が原因だわ」

 

 そうだぞ、レイス。とは言わない。君が強すぎるから「頼ってくれなくなるかもしれない」なんて、諏訪子が暴れてしまったのだ。……やれやれだ。

 

「後……何か守矢組とは違う……何か見た目が子供の神の武甕槌命がいるんだけど……」

 

「え、守矢神社にいんの?めっずらし。俺が武甕槌命の器だから、幻想郷にも、拠点を構えたんだよ。守矢神社の境内に分社あるだろ?それだ」

 

「んー?……ホントだ。よく見えなかったよ。……次に行くね。四箇所目、竹林の奥の建物から、雷落としてる子から反応してるね」

 

「何やってんだ……。その子は巫月・優曇華院・スカーレット。13歳。俺の初めての子であり、現時点で最強の娘だ」

 

「様子を見る限り……何か桃色の服を来たウサギを狙ってる。……あ、とうとう直撃して捕まった」

 

「一発で当てなかった辺り、手ェ抜いてたんだな。悪ノリして遊んでたかイタズラされたんだろ」

 

「イタズラされたんじゃない?何か捕まった時抵抗してたし。何か巫月がかなりの良い笑顔だけど……。これ以上はいいか。……次に行くね。五箇所目は博麗神社?吸血鬼と半妖?」

 

「うん。半妖の方が博麗霊愛、12歳だ。純血の方が霊麗、5歳。霊愛は巫月と同じレベルで俺の子達の中では最強だ。巫月と戦ったら必ず引き分ける」

 

「何その壮絶な姉妹バトル」

 

「私からしたらまだ伸び代があるけどね。それでも強いけど」

 

「姉妹バトルは、やっぱり上の4姉妹が群を抜いているよなぁ。弦月姫は今でも強いが、追いつけるように頑張ろうな」

 

「はい!」

 

「……うん。次に行くね……。六箇所目は……ん?またここか。……図書館にいるけど……ミニ小悪魔?しかも2人」

 

「ツインテがここあ、サイドテールがシガレット。生まれて半年経ってないが、種族の特性上生まれた時から成体だ」

 

「どっちもお菓子なんじゃ……」

 

 そう言ったレイスを、サクラが本物のハンマーで殴る。今度は容赦がない。仲良し……なんだろうが、子供の前でそれをやるのはちょっとやめてほしい。うちの子に悪影響だ。

 

「えーとツインがここあでサイドがシガレットね。魔力体……使い魔か」

 

「うん。俺と小悪魔の子でパチュリーに仕えてる」

 

「あ、やっぱり?気質って言うか……気配が似てたからさ……魔力の質がね」

 

「ほーん……そんなに読み取れるのな。個人情報ガバガバじゃん……」

 

「さとり妖怪にそれを言っちゃうか。まぁその通りなんだけど」

 

「さとり妖怪は基本的には心読むだけだ、そっちは色々と強化されてるじゃんか」

 

「まぁ、そこを言われると何も言えないね。……で、最後なんだけど何か反応が微かすぎて上手く感知が出来ないんだけど……これはどういう事?」

 

「異空間にいるからだね。どこにいるのかは俺にもわからん」

 

「異空間?」

 

「詳しい事はわからん。ま、害はないからほっとけほっとけ」

 

 賢者の娘の事だ、例え心を読まれたとしても何も言わない方がいい。賢者関連ともなれば、こちらの幻想郷の機密事項とも言える。

 

「そうするよ。……にしても、話してる間に結構時間経ってたね。どの位経ったかな?」

 

「1時間?」

 

「結構経ってるの……かな?この後はどうする?」

 

「解散しよ。思念通信出来んなら、いつでも話せるしよ。なんなら俺もそっちに行けるし」

 

 紫さんや茜に頼んでになってしまうし、そもそも2人に何のメリットも無いので手伝ってくれるとも限らないが。

 というより、平行世界に遊びに行く暇が果たして俺にあるのやら。多分、もう無いと思う。

 

「そうしようかな。……あっ、ちょっと待ってて」

 

「?」

 

「よいしょっと。はい、エスカルゴ。私からの贈り物。切れにくいミサンガ」

 

「おっ……良い、のか?」

 

 彼女の創造物らしいが、それを受け取るのを遠慮しようか、それとも……と躊躇っていると、レーテの頭を撫でながらレミリアが言う。

 

「素直に頂いておきなさい?」

 

「……そーだな。ありがとう、サクラ」

 

 こちらからは何も贈れないのがもどかしい。この2人が能力的にも色々と凄いので、俺が何をしても大差なくなってしまう。何かを贈ろうとするのさえ烏滸がましいかもしれない。

 

「剣を使うなら、こういうのが良いでしょ。願いを聞いても良いかな?」

 

「願いは……皆をs」

 

「たまには自分の事を願ってもバチは当たらないんじゃない?」

 

 皆を幸せにしたい──という俺の願いは、彼女に遮られてしまった。彼女の言葉もご尤もだが、俺はそこまでして叶えたい願いも無いのが現状だ。

 

「俺は……自分の事はいいよ。皆の幸せが俺の幸せ、的な?」

 

「クサイセリフねぇ……」

 

「うっせ……。んーと、皆を幸せに出来ますように、かな。ムズいかもしんねーけど、いつかは達成出来る様にね」

 

「いい願いだな」

 

「……なんなら自分の願い用にもう1つ創る?」

 

「ぶっちゃけ、俺の願いって自分でも分からないんだよな。強いて言うなら、『霊夢以外の奴には負けないように』だけど」

 

 幻想郷のヤバい子達を差し置いて俺が霊夢以外に勝つなんて、果たして、今の俺にできるだろうか。今より成長してさえ、難しく思えてしまう。

 

「ならその願いを込めればいいんじゃない?ホイっと。……はい」

 

 サクラは目の前でさっきとは色違いのミサンガを一瞬で創造してしまう。手馴れたものだ。編み込み部分を考えたりすると俺なら創るのにもっと時間が掛かってしまいそうだ。

 

「サンキュ。……うん。つけても違和感無いな」

 

「それなら良かった。それは私の力がかかっていてね、経年劣化でないと絶対に切れなくしたよ。刃物とか、力任せに引っ張っても大丈夫」

 

「おおー、それはいいな」

 

「あと……ついでに言うなら、自爆した時は、それにはキズはつかないって事を覚えておいてね。ちょっと『あらゆる攻撃を受けない程度の能力』をそのミサンガに付与したから」

 

「助かるよ」

 

 よく分からないが、物にも能力なんかを付与する事が叶うのであれば、向かうところ敵無し同然だと思う。彼らの幻想郷のパワーバランスは、凄い事になっていそうだ。

 

「……んじゃ、そろそろ自分の世界に戻るとするか。サクラ。頼む」

 

「あいよ。『虚無の罅』」

 

 またあの耳障りな音と共に穴が開いた。近付いて中を覗こう、とは思えなかった。まるで、こちらの意識を吸い込むかのような得体の知れなさがあり、それがとても酷く不気味に思えたから。

 

「それじゃあね。またいつかここに遊びに来るね。こっちの世界も歓迎するよ」

 

「こっちの世界に来たら俺の本気の形態を見せるよ。それまで元気でな」

 

「おう、そっちもな」

 

「また会いましょ」

 

 軽く手を挙げて見送ると、レイスとサクラは背を向け穴の方へ向かう。何の躊躇いもなくアレに身を投じる事が出来るのはある意味凄いと思う。

 

「よいしょ……っと」

 

「……またね」

 

 パキィンと甲高い音を残して、レイスとサクラが通った穴が閉じた。

 俺のスキマとも紫さんのスキマともまた違った、とても異質な技術……。結局彼女達について詳しくは分からなかったが、ハーフや混血が極まるとあんな常軌を逸した能力を持つようになるのだろう。

 2人は善良そうなので大丈夫だろうが、俺の子となると吸血鬼の血を継いでるお陰で攻撃性抜群だ。果たして、あの2人のような力を持つどうなるか、想像するだけで寒気がする。

 住む世界を守る為に我が子を手に掛けるとかいうクソを極めたような鬱展開にはならないでほしい。俺も嫁も彼女も子供達も、安心して、平和に楽しく暮らす。それが、ハーレム主として、父親としての俺の願いだ。

 

 

 ◆

 

 

「って、待てよ…………!?」

 

「ど、どうしました?」

 

「俺……年月の感覚が狂ってるような気がして……。子供達の年齢、正確に記憶できてなかった……」

 

「あら……。とはいえ、妖怪達で自分達の年齢を気にしている者は居ません。子供達と言えど、そこまで気にしなくていいのでは?」

 

「……確かに誕生日すら既にあやふやですしね……」

 

「そうです。レイチェル様以外は、冬生まれの子が多いという印象です。おおよそでいいのでは?」

 

「あー、レイチェルは夏生まれでしたね。本来なら春生まれの予定だったのにレミリアが……」

 

「ふふ……あの件は驚きました。あそこまでいくと、失礼ながら、ワガママの極地とも言えますね」

 

「あはは……言いますねぇ」

 

「いえいえ、旦那様程ではありません」

 

「えー……俺、レミリアレベルですか?」

 

「そりゃあもう。モルモーを捕らえ、驪駒早鬼をも紅魔館に住まわせる。確かにここはあなたの家でもありますから、お嬢様も許して下さっているのだと思いますが……。やはり事前に連絡は欲しいですね、私としても色々と準備などがあるんですから」

 

「う……それについては本当にすみませんでした……以後気を付けます……」

 

「気を付けて下さればそれでいいです。…………さ、久しぶりに真夜中のデザートなんて如何です?」

 

「おっ、良いですねぇ。満月の下で食べるのも乙なもんです。今夜はなんですか?」

 

「……わ・た・し♡……なんて言ってみたり……///」

 

「っ!」

 

 照れながらそんな事を言う咲夜さんに萌えた俺は躊躇う事無く彼女に、その場で襲い掛かった。

 白い満月が沈んで日輪が昇りかけるまで、俺達の深夜の密会は続いた。

 尚その頃、置いてけぼりにされたメイドは……。

 

「ごひゅいん……ひゃまぁ……どこに…………行ったん、れすかぁ…………zzz」

 

 遂に力尽き壁にもたれて寝落ちしてしまったとかしてなかったとか……。

 メイドを連れて歩く事に不慣れな俺は、もう少し彼女の待遇や扱い等を一から考え直すことにした。

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